線源を「どこに置けるか」で決まる―密封小線源治療の適応を見抜く
第99回医師国家試験 D問題 第112問
国試問題にチャレンジ
密封小線源治療の適応でないのはどれか。
- a.舌癌
- b.食道癌
- c.胆囊癌
- d.前立腺癌
- e.子宮頸癌
対話形式の解説
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ドクターまとめ
密封小線源治療は、密封した放射線源を腫瘍の内部や近傍に置き、逆2乗則を利用して腫瘍に高線量を集中させながら周囲の正常組織の線量を抑える治療です。線源を直接刺す組織内照射(舌癌、前立腺癌など)と、管腔にアプリケータを入れる腔内照射(子宮頸癌、食道癌、胆管癌など)があり、線源を置きやすい部位にある限局した腫瘍が適応となります。胆囊癌は線源を安定して留置する経路がなく、早期から周囲へ浸潤しやすいため、手術と化学療法が治療の中心で小線源治療の適応にはなりません。胆管癌の腔内照射と混同しないことや、125I・192Ir・131Iなどの核種と照射法の対応を整理しておくことが重要です。「線源をどこに置けるか」という視点は、放射線治療の選択を理解するうえでの土台になります。
解答・解説
正解はcです
密封小線源治療(brachytherapy)は、放射性同位元素を金属カプセルなどに封入した小さな線源を、腫瘍の内部やすぐそばに置いて照射する放射線治療である。放射線の強さは線源からの距離の2乗に反比例して急速に弱まる(逆2乗則)ため、線源の近くの腫瘍には大線量を集中させつつ、少し離れた周囲の正常組織の線量を低く抑えられる。これが外部照射(体外から放射線を当てる方法)にはない最大の利点である。 線源の置き方には大きく2つある。 ・組織内照射: 針・ワイヤー・シード(粒状線源)を腫瘍組織に直接刺入する(舌癌、前立腺癌など) ・腔内照射: 子宮腔・腟、食道、気管支、胆管などの管腔にアプリケータ(線源を通す管)を挿入し、内腔から照射する(子宮頸癌、食道癌など) したがって、小線源治療の適応となるのは、①線源を刺入または挿入しやすい部位にあり、②比較的限局した腫瘍である。舌・前立腺は刺入しやすく、子宮頸部・食道は管腔を利用できる。これに対し胆囊癌は、胆囊という袋状の臓器の壁から発生して周囲の肝臓や胆管へ浸潤しやすく、線源を安定して留置できる経路がない。さらに治療の基本は外科的切除と化学療法であり、小線源治療の対象とはならない。
選択肢考察
- ×a. 舌癌
適応となる。早期の舌癌(T1〜T2程度、I・II期)では、線源を舌の腫瘍に直接刺入する組織内照射が行われる。線源としては192Ir(イリジウム192)のワイヤーやヘアピン、198Au(金198)グレイン(粒子)などが用いられ、かつては137Cs(セシウム137)針も使われた。舌の形態と機能を温存しながら高い局所制御が得られるのが利点である。なお現在の日本では、早期舌癌の治療として手術(部分切除)が選ばれることが多い。
- ×b. 食道癌
適応となる。食道は管腔臓器であるため、内腔にアプリケータを挿入して192Irなどの線源で照射する腔内照射が可能である。主に外部照射に追加して局所の線量を高める目的(ブースト)や、表在癌・限局した病変、外部照射後の遺残・再発に対して行われる。ただし、化学放射線療法の普及もあり、現在の実施件数は少なく、一般的な治療は外部照射(多くは化学療法併用)である。
- ○c. 胆囊癌
適応とならない。胆囊癌は袋状の胆囊壁から発生し、早期から肝臓・肝十二指腸間膜・リンパ節へ浸潤・転移しやすい。線源を刺入したり留置したりする適切な経路がなく、小線源治療は行われない。治療の基本は外科的切除であり、切除不能例や再発例では化学療法(ゲムシタビンを中心とした併用療法など)が行われる。なお、胆管癌(肝外胆管癌)では、経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)などのルートを利用して胆管内から照射する腔内照射が行われることがあり、胆囊癌と混同しないよう注意する。
- ×d. 前立腺癌
適応となる。限局性前立腺癌に対しては、経直腸超音波で前立腺を観察しながら会陰部から針を刺して線源を留置する組織内照射が行われる。125I(ヨウ素125)のシード線源を前立腺内に永久に埋め込む低線量率(LDR)小線源治療と、192Irの線源を一時的に挿入して照射する高線量率(HDR)小線源治療がある。低リスク群ではLDR単独、中〜高リスク群では外部照射やホルモン療法との併用も行われる。
- ×e. 子宮頸癌
適応となる。子宮頸癌は小線源治療の歴史が最も古い代表的な対象疾患である。子宮腔内と腟内にアプリケータを挿入して照射する腔内照射を、全骨盤への外部照射と組み合わせるのが根治的放射線治療の標準であり、局所進行例では化学療法(シスプラチンなど)を併用した同時化学放射線療法として行う。現在は192Irを用いた遠隔操作式後充塡法(RALS)による高線量率照射が主流で、CT・MRIを用いて線量分布を最適化する画像誘導小線源治療も普及している。
密封小線源治療と非密封線源治療
密封小線源: 放射性物質をカプセルなどに封入し、体内の腫瘍近くに置いて照射する。放射性物質自体は体内に拡散しない。 非密封線源(内用療法): 放射性物質を内服・静注して体内に取り込ませる。例: 131I(甲状腺癌・バセドウ病)、223Ra(前立腺癌の骨転移)、177Lu(神経内分泌腫瘍)など。
照射方法による分類
・組織内照射: 舌癌などの口腔癌、前立腺癌、乳癌の部分照射、軟部腫瘍など ・腔内照射: 子宮頸癌、子宮体癌、食道癌、気管支癌、胆管癌、上咽頭癌など ・表面照射(モールド照射): 皮膚癌、口腔の表在病変など
線量率・留置期間による分類
・低線量率(LDR): 長時間かけて照射する。125Iシードの永久挿入(前立腺癌)、198Auグレインなど ・高線量率(HDR): 192Irなどの高放射能線源を遠隔操作式後充塡法(RALS)で短時間照射する。医療従事者の被ばくを避けられる
代表的な線源
192Ir(イリジウム192): HDRの主流、組織内・腔内照射に広く使用 125I(ヨウ素125): 前立腺癌の永久挿入シード 198Au(金198): 口腔癌などのグレイン 137Cs(セシウム137)、226Ra(ラジウム226): かつて用いられたが、現在はほとんど使われない 60Co(コバルト60): RALSに用いられることがある
胆道の悪性腫瘍と放射線治療
胆管癌では、胆管内にアプリケータを挿入する腔内照射が姑息的・補助的に行われることがある。胆囊癌は外科的切除が治療の中心で、小線源治療の対象にはならない。
POINT
・密封小線源治療は、線源を腫瘍内部(組織内照射)または管腔内(腔内照射)に置き、逆2乗則を利用して腫瘍に線量を集中させる ・代表的適応: 子宮頸癌(腔内照射、外部照射と併用が標準)、前立腺癌(125Iシード永久挿入など)、舌癌(組織内照射)、食道癌(腔内照射) ・胆囊癌は線源を留置する経路がなく、手術・化学療法が中心で小線源治療の適応とならない(胆管癌の腔内照射と区別)
