StudyMed医師国家試験

「こうししょう」の罠―見え方の異常から眼の病変部位を読み解く

第120回医師国家試験 F問題 第29問

国試問題にチャレンジ

第120回 F問題 第29問

症状と疾患の組合せで誤っているのはどれか。

  1. a.羞明 ―― 白内障
  2. b.光視症 ―― 緑内障
  3. c.変視症 ―― 加齢黄斑変性
  4. d.夜盲 ―― 網膜色素変性
  5. e.飛蚊症 ―― 裂孔原性網膜剝離

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、眼の自覚症状と疾患の対応を問う知識問題だ。眼科では、患者さんが訴える「見え方の異常」の性質から、角膜・水晶体・硝子体・網膜・黄斑・視神経のどこに問題があるかをかなり絞り込める。だから症状を丸暗記するより、「その症状はどの構造の異常で起こるのか」を考えると整理しやすいよ。
医学生医学生
眼科の講義でも症状の用語がたくさん出てきて、羞明とか霧視とか、正直ごっちゃになっていました。
ドクタードクター
多くの人がそうなるよ。ひとつずつ見ていこう。まず、白内障とまぶしさの組合せはどうかな。
医学生医学生
水晶体が濁ると見えにくくなるのはわかりますが、まぶしくなるのは少し不思議です。
ドクタードクター
濁った水晶体の中で光が乱反射、つまり散乱するからなんだ。すりガラス越しに強い光を見るとギラギラするのと同じで、夜の対向車のライトなどを強くまぶしく感じる。特に皮質白内障や後嚢下白内障では、視力低下より先に羞明を訴えることもある。だからこの組合せは正しい。
医学生医学生
角膜炎や虹彩炎でもまぶしがると臨床実習で聞きました。光を散乱させる混濁や前眼部の炎症が羞明の原因、とまとめればいいですね。
ドクタードクター
その通り。次は加齢黄斑変性とゆがみ、つまり変視症だ。
医学生医学生
黄斑に新生血管ができて出血や浮腫が起こるから、視細胞の並びが乱れてゆがんで見える、ということでしょうか。
ドクタードクター
完璧だね。特に滲出型で、脈絡膜からの新生血管による滲出や網膜浮腫で黄斑の視細胞の配列が乱れ、直線がゆがんで見える。物が小さく見える小視症や中心暗点も起こる。評価には格子状の図表であるアムスラーチャートを使う。変視症は黄斑上膜や黄斑円孔など、黄斑疾患全般に共通するサインだよ。
医学生医学生
網膜色素変性と夜盲は、CBTの勉強で何度も見た組合せです。杆体が先にやられるからですよね。
ドクタードクター
そう。暗いところでの視覚を担う杆体がまず障害されるので、初発症状は夜盲。続いて周辺から視野が狭くなる求心性視野狭窄が進み、晩期には錐体も障害されて中心視力も落ちる。眼底では骨小体様色素沈着、網膜血管の狭細化、視神経乳頭の蝋様萎縮がみられ、網膜電図は早い段階から減弱する。夜盲はビタミンA欠乏でも起こることも一緒に覚えておこう。
医学生医学生
裂孔原性網膜剝離と飛蚊症も正しいと思います。裂孔ができるときに出血したり、色素上皮の細胞が硝子体に散らばったりするから、急に黒い点がたくさん見えるんですよね。
ドクタードクター
いいね。飛蚊症は硝子体中の混濁が網膜に影を落とす症状だ。網膜剝離が広がるとカーテンがかかったような視野欠損になり、黄斑に及べば視力が落ちる。ということは、残る緑内障と光視症の組合せが誤り、ということになる。
医学生医学生
でも、緑内障の発作で光の周りに虹が見えると習った気がします。それも光の症状なので、光視症でいいのかと思っていました。
ドクタードクター
そこがまさにこの問題の落とし穴だ。急性閉塞隅角緑内障の発作で起こるのは「虹視症」。眼圧が急上昇して角膜が浮腫を起こし、光源の周りに虹色の輪、つまりハローが見える症状だ。一方の光視症は、実際には光がないのに視野の端に稲妻や閃光が走って見える症状で、硝子体が網膜を引っ張って機械的に刺激することで起こる。どちらも読みは「こうししょう」だけど、まったく別物なんだ。
医学生医学生
読みが同じだから混同しやすいんですね。光視症は網膜の牽引、虹視症は角膜浮腫、と原因の部位で区別すれば間違えなさそうです。
ドクタードクター
その整理がいちばん確実だ。そもそも緑内障は視神経が進行性に障害されて特徴的な視野欠損をきたす病気で、慢性の開放隅角緑内障ではかなり進むまで自覚症状に乏しい。だから光が見えるような派手な症状は典型的ではないんだ。ちなみに片頭痛の前兆である閃輝暗点も光が見えるけれど、これは脳の視覚野由来で、ギザギザの光が広がっていくのが特徴だよ。
医学生医学生
光視症と飛蚊症が一緒に出てきたら、網膜裂孔や網膜剝離を考えるべきということですね。
ドクタードクター
そこが臨床で一番大事なポイントだ。多くは加齢に伴う生理的な後部硝子体剝離だけれど、中に網膜裂孔が隠れていることがある。だから急に飛蚊症や光視症を訴えた人には、必ず散瞳して周辺部まで眼底を確認する。裂孔の段階で見つかればレーザー光凝固で剝離への進行を防げるからね。「よくある飛蚊症」と片づけないことが大切だ。
医学生医学生
眼科以外の外来でも、そういう訴えを聞いたら眼科に回すべきだと覚えておきます。

まとめ

眼の自覚症状は、障害部位と結びつけて理解すると整理しやすくなります。羞明は角膜・水晶体の混濁や前眼部の炎症(白内障など)、変視症は黄斑部の網膜の配列の乱れ(加齢黄斑変性など、評価はアムスラーチャート)、夜盲は杆体障害(網膜色素変性やビタミンA欠乏)、飛蚊症は硝子体混濁(後部硝子体剝離や裂孔原性網膜剝離など)で生じます。光視症は硝子体による網膜の牽引で起こる症状で緑内障の典型症状ではなく、急性緑内障発作でみられるのは角膜浮腫による「虹視症」であり、同じ読みの両者を混同しないことが重要です。急な飛蚊症や光視症は網膜裂孔・網膜剝離のサインとなりうるため、散瞳下の眼底検査で見逃さない姿勢が臨床で求められます。

解答・解説

正解はbです

眼科疾患では、患者が訴える「見え方の異常」の性質から、障害されている部位(角膜・水晶体・硝子体・網膜・黄斑・視神経など)をかなり絞り込める。本問は代表的な自覚症状と、それを起こす典型的な疾患の対応を問う知識問題である。 考え方としては、各症状が「眼のどの構造の異常で起こるか」を押さえるとよい。 ・羞明(まぶしさ):光を散乱させる中間透光体の混濁(角膜・水晶体)や、虹彩・角膜の炎症で生じる。 ・光視症(光が走って見える):網膜が機械的に引っ張られて刺激されることで生じる。 ・変視症(ゆがんで見える):黄斑部の網膜の配列の乱れで生じる。 ・夜盲(暗所で見えにくい):杆体(暗所視を担う視細胞)の障害で生じる。 ・飛蚊症(虫や糸くずが浮いて見える):硝子体中の混濁が網膜に影を落とすことで生じる。 この観点で各組合せを検討すると、光視症は網膜への牽引(後部硝子体剝離や網膜裂孔)の症状であり、視神経障害である緑内障の典型症状ではない。したがって誤っている組合せはbである。なお、急性緑内障発作でみられるのは「虹視症」であり、読みが同じ「こうししょう」であるため混同しないよう注意が必要である。

選択肢考察

  1. ×a.  羞明 ―― 白内障

    正しい組合せである。白内障は水晶体が混濁する疾患で、混濁部で入射光が乱反射(散乱)するため、明るい場所や対向車のライトなどで強いまぶしさ(羞明)を感じる。特に皮質白内障や後嚢下白内障では初期から羞明が目立ちやすく、視力低下よりも先に訴えることもある。進行すると霧視(かすみ)や視力低下が加わる。

  2. ○b.  光視症 ―― 緑内障

    誤っている組合せであり、これが正解である。光視症とは、実際には光がないのに視野の端に稲妻や閃光のような光が走って見える症状で、硝子体が網膜を牽引して網膜が機械的に刺激されることで生じる。後部硝子体剝離、網膜裂孔、裂孔原性網膜剝離の前兆として重要である(片頭痛の閃輝暗点とは区別する)。一方、緑内障は視神経が進行性に障害され特徴的な視野欠損をきたす疾患で、慢性型では自覚症状に乏しい。急性閉塞隅角緑内障の発作時には角膜浮腫により光源の周囲に虹色の輪(ハロー)が見える「虹視症」を訴えるが、これは光視症とは別の症状である。

  3. ×c.  変視症 ―― 加齢黄斑変性

    正しい組合せである。加齢黄斑変性(特に滲出型)では、脈絡膜から黄斑部に新生血管が侵入し、滲出・出血・網膜浮腫・網膜色素上皮剝離などが起こる。黄斑部の視細胞の配列が乱れるため、直線がゆがんで見える変視症や、物が小さく見える小視症(まれに大視症)、中心暗点が生じる。変視症の評価にはアムスラーチャート(格子状の図表)が用いられる。変視症は黄斑疾患に特徴的な症状であり、黄斑上膜や中心性漿液性脈絡網膜症、黄斑円孔などでもみられる。

  4. ×d.  夜盲 ―― 網膜色素変性

    正しい組合せである。網膜色素変性は主に遺伝性の網膜変性疾患で、まず杆体(暗い所での視覚を担う視細胞)が障害され、その後に錐体も障害される。そのため初発症状として夜や暗い場所で見えにくくなる夜盲が現れ、続いて周辺から視野が狭くなる求心性視野狭窄(輪状暗点から始まることが多い)が進行し、晩期には中心視力も低下する。眼底には骨小体様色素沈着、網膜血管の狭細化、視神経乳頭の蝋様萎縮がみられ、網膜電図(ERG)は早期から減弱〜消失する。

  5. ×e.  飛蚊症 ―― 裂孔原性網膜剝離

    正しい組合せである。裂孔原性網膜剝離は、網膜に裂孔(または円孔)が生じ、そこから液化した硝子体が網膜下に入り込んで網膜が剝がれる疾患である。裂孔形成時に網膜血管が切れて硝子体出血を起こしたり、網膜色素上皮細胞や組織片が硝子体中に散らばったりするため、急に多数の黒い点や虫・墨を流したような影が見える飛蚊症が出現する。光視症を伴うことも多く、剝離が広がると剝離部位に対応する視野欠損(カーテンがかかったような見え方)や、黄斑に及べば視力低下をきたす。

主な視覚異常の症状と原因部位・代表疾患

・羞明:角膜・水晶体の混濁や炎症による光の散乱。白内障、角膜炎、虹彩炎(前部ぶどう膜炎)、先天緑内障(小児の羞明・流涙)など。 ・霧視:中間透光体の混濁や角膜浮腫。白内障、角膜浮腫、ぶどう膜炎など。 ・光視症:網膜への機械的刺激。後部硝子体剝離、網膜裂孔、網膜剝離。 ・虹視症:角膜上皮浮腫による光の回折。急性閉塞隅角緑内障の発作時など。 ・飛蚊症:硝子体混濁。生理的飛蚊症、後部硝子体剝離、硝子体出血、裂孔原性網膜剝離、ぶどう膜炎など。 ・変視症・小視症:黄斑部の網膜の変形。加齢黄斑変性、黄斑上膜、黄斑円孔、中心性漿液性脈絡網膜症、黄斑浮腫など。 ・夜盲:杆体機能の障害。網膜色素変性、ビタミンA欠乏症、小口病、白点状眼底など。 ・昼盲:錐体機能障害や中心部の混濁。錐体ジストロフィ、白内障(核や後嚢下の中心部混濁では縮瞳時に見えにくい)など。

飛蚊症・光視症を訴えた患者への対応

多くは加齢に伴う生理的な後部硝子体剝離によるが、網膜裂孔や網膜剝離が隠れていることがあるため、散瞳下での眼底検査(周辺部まで)が必須である。裂孔のみの段階で見つかればレーザー光凝固で剝離への進行を予防できる。

POINT

・羞明=中間透光体(角膜・水晶体)の混濁や炎症(白内障など) ・光視症=網膜の牽引(後部硝子体剝離、網膜裂孔・網膜剝離) ・虹視症=角膜浮腫(急性緑内障発作)。光視症と読みが同じなので混同しない ・変視症=黄斑疾患(加齢黄斑変性など)、評価はアムスラーチャート ・夜盲=杆体障害(網膜色素変性、ビタミンA欠乏) ・飛蚊症=硝子体混濁(後部硝子体剝離、硝子体出血、裂孔原性網膜剝離)

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。