StudyMed医師国家試験

血流が止まっても託せる命―心停止後に提供できる臓器を「虚血への強さ」で読み解く

第119回医師国家試験 B問題 第24問

国試問題にチャレンジ

第119回 B問題 第24問

我が国で心臓死の後に移植で提供できる臓器はどれか。

  1. a.肺
  2. b.角膜
  3. c.肝臓
  4. d.小腸
  5. e.心臓

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、我が国の臓器移植制度のうち、心臓死、つまり心停止後にどの臓器を提供できるかを問う問題だ。カギは、臓器ごとの「血流が途絶えることへの強さ」だよ。
医学生医学生
脳死下の提供と心停止後の提供で、提供できる臓器が違うんでしたよね。
ドクタードクター
そう。亡くなった人からの提供には、脳死下と心停止後の2つの経路がある。脳死下では人工呼吸などで心臓が動き続け、臓器に血液が流れたまま摘出できる。だから虚血に弱い臓器も含めて幅広く提供できるんだ。
医学生医学生
心停止後だと血流が止まってしまうので、臓器が傷んでいくということですか。
ドクタードクター
その通り。これを温阻血障害という。この障害にある程度耐えられる臓器・組織に限って、心停止後の提供が認められている。我が国では腎臓、膵臓、眼球(角膜)の3つだ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で「心停止後は腎・膵・眼」と習った気がします。選択肢の中では角膜だけが当てはまりますね。
ドクタードクター
正解。角膜は血管のない組織で、涙液や前房水から酸素や栄養を受け取っている。だから血流が止まっても一定時間は移植に使える状態が保たれるんだ。献眼はアイバンクを通じて広く行われている。
医学生医学生
眼科の実習で角膜移植の手術を見学しましたが、ドナーの多くは亡くなった方からの献眼だと聞きました。
ドクタードクター
まさにそれだね。では、ほかの臓器も確認しよう。肺はどうかな。
医学生医学生
肺移植は脳死下か、家族から肺葉をもらう生体肺移植だったと思います。
ドクタードクター
そう、肺は虚血に弱く、心停止後の提供は認められていない。生体肺移植は主に2人の家族から肺葉を1つずつ提供してもらう方法だ。肝臓も同様で、脳死下か生体部分肝移植。我が国は生体肝移植の件数が多いことが特徴だね。
医学生医学生
小腸も虚血に弱そうなので、心停止後は無理ですよね。
ドクタードクター
その通り。小腸は特に虚血に弱く、脳死下か生体からの部分小腸で行われるが件数は少ない。そして心臓は脳死下に限られる。心停止後の心臓は虚血で傷むし、1つしかない臓器だから生体からの提供もあり得ない。
医学生医学生
心臓は脳死下のみ、と一つだけ特別なんですね。腎臓は脳死下・心停止後・生体の全部いける、という整理でしょうか。
ドクタードクター
よく整理できているね。腎臓は2つあるから生体腎移植もできるし、虚血にも比較的耐えられる。膵臓は脳死下と心停止後で、生体はない、と覚えておこう。
医学生医学生
法律の歴史もCBTの勉強で出てきた記憶があります。昔は角膜と腎臓だけだったとか。
ドクタードクター
そう、かつての角膜及び腎臓の移植に関する法律、いわゆる角腎法では心停止後の角膜と腎臓の移植が認められていた。1997年に臓器移植法が施行されて角腎法は廃止され、本人の書面による意思表示と家族の承諾で脳死下提供が可能になった。2010年の改正法全面施行では、本人の意思が不明でも家族の書面承諾で脳死下提供ができるようになり、15歳未満からの脳死下提供や親族への優先提供の意思表示も認められた。
医学生医学生
あっせんする組織も臓器と角膜で違いましたよね。
ドクタードクター
臓器は日本臓器移植ネットワーク、角膜はアイバンクがあっせんする。臨床では、救急や集中治療の現場で患者さんが亡くなる場面に臓器提供の意思確認が関わることもあるから、制度を正しく知っておくことが家族への丁寧な説明につながるよ。

まとめ

我が国の臓器移植は臓器移植法に基づき、亡くなった人からの提供には脳死下と心停止後の2つの経路があります。心停止後は血流が途絶えて温阻血障害が進むため、提供できるのは虚血に比較的強い腎臓・膵臓・眼球(角膜)に限られ、無血管組織の角膜はその代表です。心臓・肺・肝臓・小腸は亡くなった人からは脳死下でのみ提供でき、肺・肝臓・小腸には生体からの部分提供もありますが、心臓には生体提供はありません。角腎法から1997年の臓器移植法、2010年の改正法全面施行へと続く制度の流れや、日本臓器移植ネットワークとアイバンクの役割もあわせて押さえておきましょう。臓器ごとの虚血耐性という生理学的な理由から制度を理解しておくと、暗記に頼らず整理でき、臨床で家族に説明する際の土台にもなります。

解答・解説

正解はbです

我が国の臓器移植は「臓器の移植に関する法律(臓器移植法)」に基づいて行われる。亡くなった人からの臓器提供には、脳死下での提供と心臓死(心停止)後の提供の2つの経路があり、どちらで提供できるかは臓器ごとに決まっている。

脳死下と心停止後の違い

脳死下での提供では、人工呼吸などにより心臓が動き続け、臓器に血液が流れている状態で摘出できる。そのため、虚血(血流の途絶)に弱い心臓・肺・肝臓・小腸を含め、多くの臓器を提供できる。 一方、心停止後は臓器への血流が止まり、時間とともに組織が傷む(温阻血障害)。この障害にある程度耐えられる臓器・組織に限って提供が認められており、我が国では腎臓・膵臓・眼球(角膜)が該当する。

考え方

選択肢のうち、心停止後に提供できるのは眼球に含まれる角膜だけである。角膜には血管がなく、周囲の液体から酸素や栄養を受け取っているため、血流が止まっても比較的長く状態が保たれる。肺・肝臓・小腸・心臓は、心停止後の提供は認められていない。

選択肢考察

  1. ×a.  肺

    肺は虚血に弱く、我が国では心停止後の提供は認められていない。肺移植は、脳死下での提供か、生体肺移植(主に2人の健康な家族から肺葉を1つずつ提供してもらう方法)で行われる。

  2. ○b.  角膜

    心停止後に提供できると法で定められている眼球に、角膜が含まれる。角膜は血管のない組織で、涙液や前房水から酸素・栄養を受けているため、心停止後も一定時間は移植に使える状態が保たれる。そのため、亡くなった後の角膜提供(献眼)はアイバンクを通じて広く行われており、脳死下でも心停止後でも提供できる。

  3. ×c.  肝臓

    肝臓は温阻血障害を受けやすく、我が国では心停止後の提供は認められていない。肝移植は、脳死下での提供か、生体肝移植(健康な家族の肝臓の一部を提供してもらう方法)で行われる。我が国では生体肝移植の件数が多いことが特徴である。

  4. ×d.  小腸

    小腸は虚血に特に弱い臓器であり、我が国では心停止後の提供は認められていない。小腸移植は、脳死下での提供か、生体からの部分小腸の提供で行われるが、件数は少ない。

  5. ×e.  心臓

    心臓の提供は脳死下に限られる。心停止後の心臓は虚血により傷み、移植に使えないためである。また、心臓は生命維持に不可欠な1つしかない臓器なので、生体からの提供はあり得ない。

臓器ごとの提供経路(我が国)

・心臓:脳死下のみ ・肺:脳死下、生体(肺葉) ・肝臓:脳死下、生体(部分肝) ・小腸:脳死下、生体(部分小腸) ・腎臓:脳死下、心停止後、生体 ・膵臓:脳死下、心停止後 ・眼球(角膜):脳死下、心停止後

法律の経緯

・かつては「角膜及び腎臓の移植に関する法律(角腎法)」により、心停止後の角膜と腎臓の移植が認められていた。 ・1997年に「臓器の移植に関する法律」が施行され、角腎法は廃止された。この法律で、本人の書面による意思表示と家族の承諾がある場合に、脳死下での臓器提供ができるようになった。 ・2010年の改正法全面施行により、本人の意思が不明な場合でも家族の書面による承諾があれば脳死下での提供ができるようになり、15歳未満の小児からの脳死下臓器提供も可能となった。また、親族への優先提供の意思表示も認められた。

臓器移植の仲介

亡くなった人からの臓器のあっせんは日本臓器移植ネットワークが担い、角膜はアイバンクがあっせんを行う。

POINT

・心停止後に提供できるのは、腎臓・膵臓・眼球(角膜)の3つである。 ・心臓・肺・肝臓・小腸は脳死下でしか亡くなった人から提供できない。 ・心臓は脳死下のみで、生体からの提供はない。 ・角膜は無血管組織で虚血に強く、心停止後でも移植できる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。