同じ「窒息」でも分類は別物―死因の種類は"出発点"で決まる
第120回医師国家試験 B問題 第7問
国試問題にチャレンジ
死亡診断書・死体検案書の死因の種類が「不慮の外因死」になるのはどれか。
- a.喉頭癌による気道閉塞
- b.脳梗塞後の誤嚥性肺炎
- c.餅を喉に詰まらせた窒息
- d.肝臓癌破裂による汎発性腹膜炎
- e.出血性胃潰瘍による出血性ショック
対話形式の解説
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医学生
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医学生まとめ
死亡診断書・死体検案書の死因の種類は、直接死因ではなく原死因(死亡の原因欄I欄の最下段に書かれた傷病)で決まります。そのため、喉頭癌による気道閉塞、脳梗塞後の誤嚥性肺炎、癌の破裂や胃潰瘍出血によるショックなど、出発点が疾病であれば最終的な死因にかかわらず「病死及び自然死」となります。一方、餅による窒息のように体外からの作用が起点で故意でないものは「不慮の外因死」に分類され、自殺・他殺は「その他及び不詳の外因死」に入ります。外因死では受傷の日時・場所・状況を追加事項に記載し、異状死であれば24時間以内の警察署への届出も必要です。原死因に基づく正確な記載は死因統計の基礎となり、予防策や公衆衛生政策を支える重要な医師の業務です。
解答・解説
正解はcです
本問は、死亡診断書・死体検案書の「死因の種類」欄の決め方を問う問題である。
死因の種類の分類
死亡診断書・死体検案書では、死因の種類を次の12区分から選ぶ。 ・病死及び自然死(1) ・外因死 不慮の外因死:交通事故(2)、転倒・転落(3)、溺水(4)、煙・火災及び火焔による傷害(5)、窒息(6)、中毒(7)、その他(8) その他及び不詳の外因死:自殺(9)、他殺(10)、その他及び不詳の外因(11) ・不詳の死(12)
原死因で決める
死因の種類は、直接死因ではなく原死因によって決まる。原死因とは「直接に死亡を引き起こした一連の出来事の起点となった疾病や損傷」のことであり、死亡の原因欄(I欄)では、直接死因を最上段に書き、その原因を順に下の段へ書いていき、最も下の段に書かれたものが原死因となる。
考え方
各選択肢について「死に至る一連の流れの出発点は何か」を考える。出発点が疾病(癌、脳梗塞、胃潰瘍など)であれば、途中で気道閉塞、肺炎、腹膜炎、ショックといった経過をたどっても「病死及び自然死」となる。一方、出発点が体の外からの作用(事故・中毒・異物など)であれば外因死となり、そのうち故意でない事故によるものが「不慮の外因死」である。直接の死因が「窒息」や「気道閉塞」でも、その原因が病気によるのか外からの異物によるのかで分類が変わる点に注意する。
選択肢考察
- ×a. 喉頭癌による気道閉塞
直接死因は気道閉塞であるが、それを引き起こしたのは喉頭癌の増大である。原死因は喉頭癌という疾病であるため、死因の種類は「病死及び自然死」となる。同じ気道の閉塞でも、腫瘍という病気が原因であれば外因死には当たらない。
- ×b. 脳梗塞後の誤嚥性肺炎
脳梗塞の後遺症として嚥下機能が低下し、その結果として誤嚥性肺炎を起こして死亡した流れである。直接死因は誤嚥性肺炎であるが、原死因は脳梗塞であり、死因の種類は「病死及び自然死」となる。I欄には上から「誤嚥性肺炎」「脳梗塞」の順に記載する。
- ○c. 餅を喉に詰まらせた窒息
食物(餅)という体外からの異物が気道をふさいだことによる窒息死であり、原死因は外からの作用、すなわち事故である。故意によるもの(自殺・他殺)ではないため、死因の種類は「不慮の外因死」のうち「窒息」に分類される。外因死の場合は、死亡診断書・死体検案書の「外因死の追加事項」欄に、傷害が発生した日時、場所(自宅など)、手段及び状況(餅を食べていて喉に詰まらせた、など)を記載する。食物による窒息は高齢者や乳幼児に多く、特に年末年始の餅による窒息事故がよく知られている。
- ×d. 肝臓癌破裂による汎発性腹膜炎
肝臓癌が破裂して腹腔内に出血・内容物が漏れ、汎発性腹膜炎を起こして死亡した流れである。直接死因は汎発性腹膜炎であるが、原死因は肝臓癌であり、死因の種類は「病死及び自然死」となる。腫瘍の破裂は外力によらない病気の経過として生じたものであり、外因死には当たらない。
- ×e. 出血性胃潰瘍による出血性ショック
胃潰瘍からの出血により循環血液量が失われ、出血性ショックで死亡した流れである。直接死因は出血性ショックであるが、原死因は胃潰瘍という疾病であり、死因の種類は「病死及び自然死」となる。
死亡診断書と死体検案書の使い分け
・死亡診断書:診療中の患者が、その診療に関連する傷病で死亡した場合に、診療していた医師が交付する。 ・死体検案書:診療中の患者以外の者が死亡した場合や、診療中の患者でも診療していた傷病と関連しない原因で死亡した場合などに、死体を検案した医師が交付する。 ・死体に異状があると認めた医師は、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない(医師法第21条)。外因による死亡が疑われる場合は、この届出の要否を検討する必要がある。
死亡の原因欄の書き方
・I欄:(ア)直接死因、(イ)(ア)の原因、(ウ)(イ)の原因、(エ)(ウ)の原因、の順に因果関係をさかのぼって書く。最下段に書いたものが原死因となる。 ・II欄:直接には死因に関係しないが、I欄の傷病の経過に影響を及ぼした傷病を書く。 ・それぞれに発病(発症)または受傷から死亡までの期間を記載する。 ・「心不全」「呼吸不全」などの終末期の状態だけを書くことは避け、その原因となった疾患を記載する。
原死因の意義
人口動態統計の死因統計は、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD)に基づき原死因で集計される。原死因を正確に記載することが、疾病対策や予防策の基礎資料として重要である。わが国の不慮の事故による死亡では、窒息、転倒・転落、溺死などが多く、高齢者の割合が高い。
POINT
・死因の種類は原死因(I欄の最下段に書かれた傷病)で決まる。 ・原死因が疾病なら、直接死因が窒息・腹膜炎・ショックなどでも「病死及び自然死」。 ・食物による窒息、交通事故、転倒・転落、溺水、火災、中毒などで故意でないものは「不慮の外因死」。 ・自殺・他殺は「その他及び不詳の外因死」に分類される。 ・外因死では「外因死の追加事項」(受傷の日時・場所・手段及び状況)を記載する。
