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亡くなった後に答え合わせをする場―臨床病理検討会〈CPC〉の本当の役割

第118回医師国家試験 F問題 第19問

国試問題にチャレンジ

第118回 F問題 第19問

臨床病理検討会〈CPC〉で正しいのはどれか。

  1. a.稀な疾患の治療法を相談する。
  2. b.入院中の診断困難症例を相談する。
  3. c.医療行為と医療事故の因果関係を評価する。
  4. d.術前検査の結果から手術の術式を検討する。
  5. e.臨床経過と病理解剖の所見を比較検討する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、病院で開かれるいろいろなカンファレンスのうち、臨床病理検討会、いわゆるCPCが何をする場なのかを問う問題だ。ポイントは「誰を対象に」「何と何を突き合わせるのか」。ここを押さえれば迷わないよ。
医学生医学生
CPCって、名前に「臨床」と「病理」が入っているので、難しい症例を臨床医と病理医で相談する会というイメージです。
ドクタードクター
半分正解かな。臨床医と病理医が一緒に議論するのはその通り。でも対象になるのは、基本的に病理解剖、つまり剖検が行われた症例なんだ。すでに亡くなった患者さんの経過を振り返る場だということが一番大事な点だよ。
医学生医学生
あ、病理学の講義で剖検の話を聞いたとき、「CPCで発表する」と言われていた気がします。
ドクタードクター
そうだね。CPCでは、まず主治医側が生前の症状、検査所見、診断、行った治療とその経過を提示する。次に病理医が、剖検で得られた肉眼所見や組織所見を示す。そのうえで両者を突き合わせて、生前の臨床診断は正しかったか、直接死因とそれに至った原疾患は何か、治療がどう効いたか、病変はどこまで広がっていたか、説明のつかなかった症状は何によるものだったか、を明らかにしていくんだ。
医学生医学生
つまり、臨床経過と病理解剖の所見を比較検討する、というのがCPCそのものなんですね。
ドクタードクター
その通り、それが正解だ。では、ほかの選択肢がなぜ違うのかも整理しよう。まず「入院中の診断困難症例を相談する」はどうかな。
医学生医学生
臨床実習で総合内科を回ったとき、診断のつかない入院患者さんを毎週のカンファレンスで話し合っていました。あれはCPCではないということですか。
ドクタードクター
そう、それは診療科内のカンファレンスや、関連する科との合同カンファレンス、あるいは他科へのコンサルテーションの役割だ。CPCは現在診療中の患者さんの方針を決める場ではないんだ。
医学生医学生
「稀な疾患の治療法を相談する」も、同じ理由で違いそうですね。でも、CPCでは珍しい病気が取り上げられることが多いと聞きました。
ドクタードクター
鋭いね。確かに稀な疾患の剖検例はCPCでよく扱われる。ただ目的は、病理所見をもとに行われた治療や経過を振り返り、病態を理解することであって、これから行う治療をどうするかを相談するわけではない。診療中の稀な疾患なら、指導医や専門医へのコンサルトで検討するのが普通だね。
医学生医学生
術前検査の結果から術式を決めるのは、外科の術前カンファレンスですよね。外科実習で毎朝やっていました。
ドクタードクター
そうだね。がん診療なら、外科、腫瘍内科、放射線科、病理などが集まるキャンサーボードで治療方針を決めることもある。いずれも「これからの治療」を決める場で、終わった経過を検証するCPCとは性格が違う。
医学生医学生
医療事故との因果関係の評価は、剖検の結果も使いそうなので、ちょっとCPCっぽく見えました。
ドクタードクター
そこは引っかかりやすいところだね。医療行為と事故の因果関係を評価するのは、院内の医療安全管理部門や事故調査委員会の役割だ。2015年10月からは医療事故調査制度が始まっていて、医療に起因する予期しない死亡が起きると、医療機関は医療事故調査・支援センターに報告し、院内調査を行う。この制度の目的も責任追及ではなく原因究明と再発防止なんだ。CPCはあくまで診療の振り返りと学習の場で、事故の責任や因果関係を判定する場ではない。
医学生医学生
似た「振り返り」でも、目的によって場が分かれているんですね。M&Mカンファレンスというのも聞いたことがあります。
ドクタードクター
morbidity and mortality conferenceだね。合併症や死亡に至った症例の診療過程を振り返り、問題点と改善策を話し合う場だ。CPCが病理解剖所見との照合を軸にするのに対して、M&Mは診療プロセスそのものの改善に重点がある。
医学生医学生
病理解剖は、司法解剖とはまた違うんですよね。
ドクタードクター
そう。病理解剖は病死した患者さんの死因や病態を明らかにするため、遺族の承諾を得て行う解剖で、犯罪の疑いがある場合などの司法解剖とは目的が異なる。剖検では生前に気づかなかった病変が見つかることも少なくない。そこから学んだことを次の患者さんの診療や教育に還元する仕組みがCPCなんだ。初期臨床研修でもCPCに参加して症例を考察することが求められているから、研修医になったら必ず関わることになるよ。
医学生医学生
ご遺族の協力があって初めて成り立つ学びの場なんですね。発表する機会があったら、臨床と病理の食い違いに注目して考えてみます。
ドクタードクター
それがいちばん大切な姿勢だね。臨床診断と剖検所見のずれにこそ、次の診療に生きる学びが詰まっているんだ。

まとめ

臨床病理検討会(CPC)は、病理解剖が行われた症例を対象に、臨床医が生前の経過・検査・診断・治療を、病理医が剖検の肉眼・組織所見を提示し、両者を比較検討する振り返りの場です。臨床診断の妥当性、死因、治療効果、病変の広がりを検証し、病態の理解と今後の診療・医学教育に還元することが目的で、初期臨床研修でも参加が求められています。入院中の診断困難例や治療方針の相談は診療科内カンファレンスやコンサルテーション、術式の検討は術前カンファレンスやキャンサーボード、医療事故の因果関係の評価は医療安全部門や医療事故調査制度が担います。各カンファレンスが「これからの診療を決める場」か「終わった経過を検証する場」かを区別して整理しておくと、類似問題にも対応しやすくなります。

解答・解説

正解はeです

問われていること

病院内で行われるさまざまなカンファレンス(症例検討会)のうち、臨床病理検討会〈CPC:clinicopathological conference〉の目的と対象を正しく理解しているかが問われている。

CPCとは

CPCは、亡くなった患者のうち病理解剖(剖検)が行われた症例を主な対象として、主治医をはじめとする臨床医と病理医が合同で行う討論形式の検討会である。臨床側は生前の症状・検査所見・診断・治療と経過を提示し、病理側は剖検で得られた肉眼所見・組織所見を提示する。そのうえで両者を突き合わせ、 ・生前の臨床診断は正しかったか ・死因(直接死因とそれに至った原疾患)は何か ・治療はどのような効果をもたらしたか、病変はどこまで広がっていたか ・臨床経過で説明のつかなかった症状や所見は何によるものだったか を振り返って明らかにする。こうした検証を通じて病態の理解を深め、今後の診療の質を高めることが目的であり、医学教育の場としても重要である。初期臨床研修でも、CPCに参加して症例を考察することが求められている。

考え方

CPCの本質は、「すでに終わった臨床経過」を「病理解剖という客観的な所見」で検証する振り返りの場である点にある。現在診療中の患者の診断や治療方針、術式を決める場ではなく、また医療事故の責任や因果関係を判定する場でもない。この観点で選択肢を見ると、臨床経過と病理解剖所見の比較検討を挙げたものが正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  稀な疾患の治療法を相談する。

    稀な疾患の剖検例がCPCで取り上げられることは多いが、その目的は病理所見を踏まえて臨床経過や行われた治療を振り返り、病態や治療の妥当性を検証することである。これから行う治療法をどうするかを相談する場ではない。診療中の稀な疾患の治療方針は、指導医への相談、診療科内のカンファレンス、専門医へのコンサルテーションなどで検討する。

  2. ×b.  入院中の診断困難症例を相談する。

    CPCの対象は主として病理解剖が行われた症例、すなわち既に亡くなった患者である。入院中で診断がついていない患者については、診療科内のカンファレンスや関連する診療科との合同カンファレンス、他科へのコンサルテーションなどで検討するのが通常である。

  3. ×c.  医療行為と医療事故の因果関係を評価する。

    医療行為と医療事故の因果関係の評価は、院内の医療安全管理部門や院内事故調査委員会が担う。2015年10月からは医療法に基づく医療事故調査制度が始まり、医療に起因する予期しない死亡が起きた場合には、医療機関が医療事故調査・支援センターへ報告したうえで院内調査を行い、その結果を同センターが収集・分析して再発防止に役立てる仕組みとなっている。CPCは診療の振り返りと学習の場であり、事故の責任や因果関係を判定する場ではない。

  4. ×d.  術前検査の結果から手術の術式を検討する。

    術前検査の結果をもとに術式を決めるのは、外科の術前カンファレンスや、がん診療で外科・内科・放射線科・病理などが集まるキャンサーボードの役割である。手術・生検で得られた標本を対象とする外科病理CPCも行われることはあるが、一般的なCPCは剖検例を対象としたものであり、いずれにしてもこれから行う術式を決める場ではない。

  5. ○e.  臨床経過と病理解剖の所見を比較検討する。

    CPCでは、臨床医が生前の経過・検査所見・診断・治療を、病理医が剖検による肉眼所見と組織所見を提示し、両者の整合性や食い違いを議論する。これにより臨床診断の妥当性、死因、治療効果、病変の広がりなどが明らかになり、病態の理解と今後の診療の改善につながる。これがCPCの本来の目的である。

院内で行われる主なカンファレンスとその役割

・臨床病理検討会(CPC):剖検例を対象に、臨床経過と病理解剖所見を比較し、診断・死因・治療効果を振り返る。 ・診療科内カンファレンス:入院・外来患者の診断や治療方針を検討する。 ・術前カンファレンス:術前の検査結果をもとに手術適応や術式を決める。 ・キャンサーボード:がん患者の治療方針を、外科・腫瘍内科・放射線科・病理など多職種・多診療科で検討する。 ・M&Mカンファレンス(morbidity and mortality conference):合併症や死亡に至った症例を取り上げ、診療過程の問題点と改善策を検討する。 ・医療安全・事故調査関係の委員会:医療事故の原因究明と再発防止策を検討する。

病理解剖(剖検)の位置づけ

病理解剖は、病死した患者の死因や病態を明らかにするために、遺族の承諾を得て行われる解剖である(死体解剖保存法に基づく)。犯罪の疑いがある場合などの司法解剖とは目的が異なる。病理解剖によって生前には分からなかった病変が見つかることも少なくなく、CPCはその知見を診療と教育に還元する仕組みである。

医療事故調査制度

2015年10月施行。医療に起因し、管理者が予期しなかった死亡・死産が対象となる。医療機関は医療事故調査・支援センターへ報告し、院内調査を行って結果を遺族とセンターに報告する。目的は責任追及ではなく、原因究明と再発防止である。

POINT

・CPCは剖検例を対象に、臨床医と病理医が臨床経過と病理解剖所見を突き合わせる振り返りの検討会である。 ・目的は臨床診断の検証、死因の解明、治療効果の評価と、今後の診療・医学教育への還元である。 ・現在の患者の診断・治療方針や術式を決める場ではない(科内カンファレンス、術前カンファレンス、キャンサーボードの役割)。 ・医療事故の因果関係の評価は、医療安全部門・院内事故調査や医療事故調査制度が担う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。