0時に触れる菱形―泉門と縫合で読み解く前方前頭位
第118回医師国家試験 F問題 第18問
国試問題にチャレンジ
児頭が骨盤に陥入した時点でパルトグラムに記載された児頭の回旋所見を示す。 正しいのはどれか。

- a.顔位
- b.高在縦定位
- c.後方後頭位
- d.前方前頭位
- e.低在横定位
対話形式の解説
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医学生まとめ
パルトグラムでは母体骨盤を時計の文字盤に見立て、0時を母体前方(恥骨側)、6時を母体後方(仙骨側)として泉門と矢状縫合の位置を記録します。正常では第1回旋で児頭が前屈して三角形の小泉門が先進し、第2回旋で小泉門が前方へ回って矢状縫合が前後径に一致します。菱形の大泉門が先進し、それが0時にあって矢状縫合が前後径に一致する所見は、前屈不十分(前頭位)で先進部が前方へ回旋した前方前頭位を示し、周囲径が大きくなるため分娩が遷延しやすくなります。小泉門が6時なら後方後頭位、入口部で縦のまま止まれば高在縦定位、低い位置で横のまま止まれば低在横定位、頤部を指標とするのが顔位です。骨盤入口は横径、出口は前後径が長いという形態と泉門の識別を結びつけることが、回旋異常を理解し分娩経過を評価する土台になります。
解答・解説
正解はdです
図の読み取り
パルトグラム(分娩経過を時間軸に沿って記録する図表)では、内診で触れた児頭の縫合と泉門の位置を、母体の骨盤を時計の文字盤に見立てて記載する。0時が母体の前方(恥骨結合側)、6時が母体の後方(仙骨側)、3時と9時が母体の左右である。 本問の図では、 ・菱形の大泉門が0時方向(母体前方)に描かれている ・矢状縫合が0時と6時を結ぶ線上、すなわち骨盤の前後径に一致している ・小泉門は描かれておらず、先進部(最も低く触れる部位)は大泉門である という所見が読み取れる。しかも、児頭はすでに骨盤に陥入(嵌入)している。
回旋の基本
正常分娩では児頭は次のように回旋する。 ・第1回旋:児頭が前屈して顎を胸につけ、後頭部(小泉門)が先進する屈位となる。 ・第2回旋:骨盤腔内で先進部の小泉門が母体前方(恥骨側)へ約90度回り、矢状縫合が横径から前後径へと一致していく(内回旋)。 ・第3回旋:児頭が反屈しながら娩出される。 ・第4回旋:児頭が外側を向き、肩甲が娩出されやすい向きに戻る(外回旋)。
判断のプロセス
大泉門が先進しているということは、第1回旋で児頭が十分に前屈せず、やや反屈した姿勢(前頭位)になっていることを意味する(第1回旋の異常)。さらに矢状縫合が前後径に一致しているので、第2回旋は進んで先進部の大泉門が前方(0時)へ回っている。正常では前方に回るべきは小泉門であり、大泉門が前方に来ている点も正常とは異なる。したがって、反屈位のうち前頭位で、先進部の大泉門が母体前方を向いた「前方前頭位」と判断できる。
選択肢考察
- ×a. 顔位
顔位は第1回旋の異常のうち反屈の程度が最も強いもので、児頭が大きく後屈して顔面が先進し、内診では頤部(おとがい、下顎の先)や眼窩・鼻・口を触れる。指標となるのは頤部であり、泉門ではない。本図では大泉門が先進部として記載されているので、顔位ではない。
- ×b. 高在縦定位
高在縦定位は、児頭が骨盤入口部にある高い位置で、矢状縫合が前後径(0時-6時)に一致したまま進まず、陥入できない状態である。骨盤入口部は横径が最も長いため、正常では児頭は矢状縫合を横径に合わせて進入する。高在縦定位では大泉門と小泉門がほぼ同じ高さに触れることが多い。本問は児頭がすでに骨盤に陥入した時点の所見であり、大泉門が先進している点からも当てはまらない。
- ×c. 後方後頭位
後方後頭位は、第1回旋は正常に行われて小泉門が先進する屈位(後頭位)となったが、第2回旋で小泉門が前方ではなく後方(6時、仙骨側)へ回った状態である。矢状縫合は前後径に一致し、先進部の小泉門が6時に触れるのが特徴である。本図では先進部が大泉門であり、小泉門ではないため該当しない。
- ○d. 前方前頭位
前方前頭位は、第1回旋の異常で児頭が軽度反屈し大泉門が先進する前頭位となり、さらに第2回旋で先進部の大泉門が母体前方(0時)へ回旋した状態である。内診では大泉門が0時方向に触れ、矢状縫合は骨盤の前後径に一致する。このとき児の後頭部は母体の後方(仙骨側)を向いている。図の所見(大泉門が0時、矢状縫合が0時-6時方向、骨盤に陥入済み)はこれに一致する。前頭位では児頭が通過するときの周囲径が屈位よりも大きくなるため、分娩が遷延しやすい。
- ×e. 低在横定位
低在横定位は、児頭が骨盤腔の低い位置(骨盤底付近)まで下降しているにもかかわらず第2回旋が起こらず、矢状縫合が横径(3時-9時)に一致したまま分娩が停止した状態である。本図では矢状縫合が前後径(0時-6時)に一致しているため、横定位ではない。
回旋異常の整理
1. 第1回旋の異常(反屈位) 前屈が不十分または逆に後屈した姿勢で、反屈の程度が軽いものから順に次のようになる。 ・頭頂位:大泉門と小泉門がほぼ同じ高さ ・前頭位:大泉門が先進 ・額位:額(前頭縫合・眉間付近)が先進。最も周囲径が大きく、経腟分娩は困難なことが多い ・顔位:顔面が先進し、頤部が指標となる 2. 第2回旋の異常 ・後方後頭位:屈位だが小泉門が後方(仙骨側)へ回旋 ・低在横定位:骨盤腔の低い位置まで下降しても矢状縫合が横径のまま停止 3. 進入(定位)の異常 ・高在縦定位:骨盤入口部で矢状縫合が前後径のまま停止し、陥入できない
骨盤の形と矢状縫合の向き
骨盤入口部は横径が最も長く、骨盤出口部は前後径が最も長い。そのため児頭は入口部では矢状縫合を横径に合わせて進入し、下降しながら第2回旋で前後径に合わせていく。この関係を理解すると、高在縦定位(入口部で縦)や低在横定位(出口付近で横)がなぜ分娩停止につながるのかがわかる。
内診での指標
・大泉門:菱形で、4本の縫合(矢状縫合・前頭縫合・左右の冠状縫合)が集まる。 ・小泉門:三角形で、3本の縫合(矢状縫合・左右のラムダ縫合)が集まる。 内診でどちらの泉門が低く触れるか、どの方向にあるか、矢状縫合がどの向きかによって、胎勢と回旋の状態を判断する。
POINT
・パルトグラムの時計表示では0時が母体前方(恥骨側)、6時が母体後方(仙骨側)。 ・大泉門(菱形)が先進=第1回旋の異常(前頭位)、小泉門(三角形)が先進=屈位(後頭位)。 ・前方前頭位:大泉門が0時、矢状縫合は前後径に一致。 ・後方後頭位:小泉門が6時、矢状縫合は前後径に一致。 ・高在縦定位は入口部で矢状縫合が前後径、低在横定位は低い位置で矢状縫合が横径のまま停止する。
