小泉門はどこへ行った?―内診の「時計」で読み解く後方後頭位
第119回医師国家試験 F問題 第47問
国試問題にチャレンジ
28歳の初産婦(1妊0産)。妊娠40週,陣痛発来のため入院した。入院時内診所見で,子宮口は3cm開大,展退度50%,児頭下降度はSP-2cm。第1頭位。小泉門が先進し,3時方向に触知する。入院8時間後の内診所見で,子宮口は8cm開大,展退度80%,児頭下降度はSP±0cm。小泉門が先進し,6時方向に触知する。 分娩経過の評価で正しいのはどれか。
- a.正常経過
- b.第1回旋の異常
- c.第2回旋の異常
- d.第3回旋の異常
- e.第4回旋の異常
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
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ドクター
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ドクター
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ドクターまとめ
内診所見の時計方向は、12時が母体前方(恥骨側)、6時が後方(仙骨側)、3時が母体左側を表します。小泉門が先進していれば第1回旋(屈位)は正常で、第1頭位では入口部で3時方向にあった小泉門が、第2回旋(内回旋)によって12時方向へ移動するのが正常です。本例では小泉門が6時方向(母体後方)へ回っており、後方後頭位という第2回旋の異常と評価されます。第3回旋は児頭娩出時の伸展、第4回旋は児頭娩出後の外回旋であり、分娩第1期では評価しません。後方後頭位は分娩第2期の遷延や会陰裂傷の原因となるため、内診所見から回旋を立体的にイメージできることは、分娩管理の基本として重要です。
解答・解説
正解はcです
所見の整理
・28歳の初産婦、妊娠40週(正期産)で陣痛発来のため入院した。 ・入院時:子宮口3cm開大、展退度50%、児頭下降度SP−2cm(SP:坐骨棘間線を0とした児頭先進部の高さ。マイナスは坐骨棘より上方)。第1頭位(児背が母体の左側)で、小泉門が先進し3時方向に触知する。 ・入院8時間後:子宮口8cm開大、展退度80%、SP±0cm。小泉門が先進しているが、6時方向に触知する。
内診所見の方向の読み方
内診での時計方向は、砕石位の妊婦に検者が向き合った視点で表す。12時方向が母体の前方(恥骨結合側)、6時方向が母体の後方(仙骨側)、3時方向が母体の左側、9時方向が母体の右側である。
回旋の評価
・入院時:第1頭位で児背は母体左側にあり、児頭は骨盤入口部で矢状縫合を横径に一致させて進入する。小泉門が先進して3時方向(母体左側)にあるのは、児頭が屈位をとり(第1回旋)、後頭が母体左側を向いている正常な状態である。第1回旋は正常に行われている。 ・8時間後:児頭が骨盤腔を下降する際、正常では後頭が母体前方へ向かう回旋(第2回旋、内回旋)が起こり、小泉門は12時方向(恥骨側)に近づいていく。ところが本例では小泉門が6時方向、すなわち母体後方(仙骨側)に回っている。後頭が後方を向いたまま下降しており、第2回旋の異常(後方後頭位)と評価される。
分娩進行速度
初産婦の分娩第1期の所要時間はおおむね10〜12時間とされ、8時間で子宮口が3cmから8cmに開大し、児頭もSP±0cmまで下降している。時間経過だけをみれば著しい遷延とはいえない。しかし回旋に異常があるため、分娩経過全体は正常とは評価できない。
選択肢考察
- ×a. 正常経過
子宮口開大や児頭下降の進み方は、初産婦の分娩第1期として大きく逸脱してはいない。しかし正常な第2回旋では後頭が母体前方へ回り、小泉門は12時方向に近づくはずである。本例では小泉門が6時方向(母体後方)にあり、後方後頭位という回旋異常が生じている。したがって正常経過とはいえず、誤りである。
- ×b. 第1回旋の異常
第1回旋は、児頭が骨盤入口部に進入する際に顎を胸に近づけて屈曲(屈位)し、小泉門が先進部となる回旋である。これにより児頭は最も小さい周囲径(小斜径周囲)で産道を通過できる。本例では入院時・8時間後とも小泉門が先進しており、屈位は保たれている。第1回旋の異常(前方前頭位、額位、顔位などの反屈位)ではないため、誤りである。
- ○c. 第2回旋の異常
第2回旋(内回旋)は、児頭が骨盤腔を下降しながら縦軸を中心に回り、後頭(小泉門)が母体前方(恥骨側)を向く回旋である。骨盤の形が入口部では横に長く、出口部では前後に長いため、児頭の長軸を産道の最も広い径に合わせるために起こる。第1頭位では、入口部で3時方向にあった小泉門が下降とともに12時方向へ移動するのが正常である。本例では小泉門が6時方向、つまり母体後方に回っており、後頭が仙骨側を向いた後方後頭位となっている。これは第2回旋の異常であり、正しい。
- ×d. 第3回旋の異常
第3回旋は、児頭が骨盤出口に達し、後頭部が恥骨結合下を通過したのち、項部(うなじ)を支点に児頭が伸展(反屈)して額・顔面・顎が会陰から娩出される回旋である。子宮口全開大後、児頭が排臨・発露する時期に起こる。本例は子宮口8cm開大の分娩第1期で、まだ第3回旋の時期に至っていない。誤りである。
- ×e. 第4回旋の異常
第4回旋(外回旋)は、児頭娩出後、肩甲が骨盤出口の前後径に一致するよう回旋するのに伴い、児の顔面が母体の大腿内側(第1頭位では母体右大腿側)を向く回旋である。児頭娩出後に起こるもので、子宮口8cm開大の本例では評価の対象にならない。誤りである。
胎位・胎向の用語
・胎位:胎児の縦軸と子宮の縦軸の関係(頭位、骨盤位、横位)。 ・胎向:児背(横位では児頭)が母体のどちら側にあるか。頭位で児背が母体左側なら第1胎向(第1頭位)、右側なら第2胎向(第2頭位)。第1頭位の方が多い。
正常な回旋(第1〜第4回旋)
・第1回旋(屈曲):骨盤入口部で児頭が屈位をとり、小泉門が先進する。矢状縫合は入口部の横径に一致する。 ・第2回旋(内回旋):骨盤腔で後頭が母体前方へ回り、矢状縫合が横径から前後径に一致していく。 ・第3回旋(伸展、反屈):後頭が恥骨結合下を通過後、項部を支点に伸展して顔面が娩出される。 ・第4回旋(外回旋):児頭娩出後、肩甲の内回旋に伴い児の顔面が母体大腿内側を向く。
主な回旋異常
・第1回旋の異常:反屈位(前頭位、額位、顔位)。大泉門や額、顔面が先進する。 ・第2回旋の異常:後方後頭位(後頭が母体後方を向く)、低在横定位(骨盤底近くまで下降しても矢状縫合が横径に一致したまま回旋しない)。
後方後頭位の特徴
・後頭が仙骨側を向いたまま下降するため、児頭がより大きな周囲径で産道を通過することになり、分娩第2期の遷延や会陰裂傷が起こりやすい。 ・そのまま経腟分娩に至ることも多いが、分娩停止や胎児機能不全があれば吸引分娩・鉗子分娩や帝王切開を考慮する。
内診所見の表記
・児頭下降度(station):坐骨棘間線を0とし、上方をマイナス、下方をプラスとしてcmで表す。 ・時計方向:検者から見て12時が母体前方(恥骨側)、6時が後方(仙骨側)、3時が母体左側、9時が母体右側。
POINT
・内診の時計方向は12時が母体前方(恥骨側)、6時が後方(仙骨側)、3時が母体左側。 ・第1頭位では入口部で小泉門が3時方向にあり、第2回旋で12時方向へ移動するのが正常。 ・小泉門が先進していれば第1回旋(屈位)は正常。 ・小泉門が6時方向(母体後方)に回っていれば後方後頭位で、第2回旋の異常。 ・第3回旋は児頭娩出時の伸展、第4回旋は児頭娩出後の外回旋であり、分娩第1期では評価しない。
