最下段が死因を決める―死亡診断書Ⅰ欄で見抜く外因死
第118回医師国家試験 B問題 第18問
国試問題にチャレンジ
死亡診断書および死体検案書の一部を示す。 Ⅰ欄の記載で外因死はどれか。

- a.A
- b.B
- c.C
- d.D
- e.E
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
死亡診断書(死体検案書)のⅠ欄は、直接死因から原因へと因果関係をさかのぼって記載し、最も下の欄に書かれた傷病が原死因となって、死因統計や死因の種類(病死及び自然死か外因死か)を決めます。縊頸による低酸素脳症のように、直接死因が病態名であっても原死因が外因であれば外因死に分類されます。一方、急性虫垂炎による腹膜炎、老衰による誤嚥性肺炎、深部静脈血栓症による肺塞栓、高血圧症による脳幹出血は、原死因が疾患や老衰であるため「病死及び自然死」です。ただし、深部静脈血栓症の背景に交通事故などの外因があればそれが原死因となり外因死となるように、何を最下段に記載するかで分類が変わります。外因死やその疑いがある死体は異状死体として24時間以内に警察へ届け出る義務があり、正しい記載と届出の判断は、医師として避けて通れない実務の基本です。
解答・解説
正解はcです
死亡診断書(死体検案書)の「死亡の原因」Ⅰ欄の記載から、死因の種類が外因死にあたるものを選ぶ問題である。
Ⅰ欄の構造と原死因
Ⅰ欄には、死亡に直接つながった傷病を(ア)直接死因に書き、その原因を(イ)、さらにその原因を(ウ)(エ)と、医学的な因果関係の順に下へさかのぼって記載する。最も下の欄に書かれた傷病が、死亡を引き起こした一連の事象の出発点である「原死因」となる。死因統計は原死因に基づいて集計され、死因の種類(病死及び自然死か、外因死か)も原死因によって決まる。直接死因が疾患名であっても、その出発点が外傷や窒息などの外因であれば外因死となる点が重要である。
各記載の原死因
・A:化膿性腹膜炎←急性虫垂炎(原死因:急性虫垂炎) ・B:誤嚥性肺炎←老衰(原死因:老衰) ・C:低酸素脳症←縊頸(原死因:縊頸) ・D:肺塞栓←深部静脈血栓症(原死因:深部静脈血栓症) ・E:脳幹出血←高血圧症(原死因:高血圧症) 原死因が外因(外部からの作用による損傷・中毒・窒息など)であるのはCの縊頸のみであり、Cが外因死である。他はいずれも疾患または老衰が出発点であり、「病死及び自然死」に分類される。
選択肢考察
- ×a. A
Aは直接死因が化膿性腹膜炎、その原因が急性虫垂炎である。虫垂炎が穿孔して腹腔内に細菌が広がり、汎発性の化膿性腹膜炎から死亡に至ったという流れで、原死因は急性虫垂炎という疾患である。したがって死因の種類は「病死及び自然死」であり、外因死ではない。
- ×b. B
Bは直接死因が誤嚥性肺炎、その原因が老衰である。加齢に伴う全身機能・嚥下機能の衰えにより誤嚥を繰り返し、肺炎で死亡したという流れで、原死因は老衰となる。老衰は、高齢者でほかに記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合に用いる死因名であり、死因の種類は「病死及び自然死」に分類される。誤嚥という言葉から外因を連想しやすいが、疾患や老化に伴う嚥下障害による誤嚥性肺炎は病死として扱われ、食物などが気道を閉塞して窒息した場合(不慮の窒息)とは区別される。
- ○c. C
Cは直接死因が低酸素脳症、その原因が縊頸である。縊頸(いけい)とは、索状物(ひもなど)を頸部にかけ、自分の体重で頸部が圧迫される状態をいう。頸部の血管や気道が圧迫されて脳への血流・酸素供給が途絶え、低酸素脳症に至って死亡したという流れであり、原死因は縊頸という外因である。したがって外因死である。縊頸は日本の自殺手段として最も多いが、事故や他殺の可能性もあるため、死因の種類(自殺・不慮の外因死・他殺など)は状況を確認したうえで判断し、外因死の追加事項(傷害発生の日時・場所・手段や状況)も記載する。また外因による死亡またはその疑いがある死体は異状死体として、医師法第21条に基づき24時間以内に所轄警察署へ届け出る必要がある。
- ×d. D
Dは直接死因が肺塞栓、その原因が深部静脈血栓症である。下肢などの深部静脈にできた血栓が遊離して肺動脈を閉塞し死亡したという流れで、記載上の原死因は深部静脈血栓症という疾患であるため、病死に分類される。ただし、もし深部静脈血栓症の原因として交通事故による骨折など外因があれば、それをさらに下の欄に記載し、原死因は外因となって外因死に分類される。この記載ではそのような外因は示されていない。
- ×e. E
Eは直接死因が脳幹出血、その原因が高血圧症である。長年の高血圧により脳内の細い穿通枝動脈が障害され、脳幹(主に橋)に出血して死亡したという流れで、原死因は高血圧症という疾患である。したがって「病死及び自然死」であり、外因死ではない。外傷による脳幹損傷・出血とは区別される。
死因の種類(死亡診断書の区分)
1 病死及び自然死 外因死:不慮の外因死(2 交通事故、3 転倒・転落、4 溺水、5 煙・火災及び火焔による傷害、6 窒息、7 中毒、8 その他)、その他及び不詳の外因死(9 自殺、10 他殺、11 その他及び不詳の外因) 12 不詳の死
原死因の考え方
WHOは原死因を「直接に死亡を引き起こした一連の事象の起因となった疾病もしくは損傷」または「致命傷を負わせた事故もしくは暴力の状況」と定義している。死亡診断書のⅠ欄最下段に記載された傷病が原則として原死因となり、死因統計や死因の種類の判断に用いられる。例えば、交通事故で脛骨を骨折し、その後に深部静脈血栓症から肺塞栓を起こして死亡した場合、直接死因は肺塞栓であっても原死因は交通事故による骨折であり、死因の種類は「交通事故」(不慮の外因死)となる。
死亡診断書と死体検案書の使い分け
診療中の患者が、診療に係る傷病で死亡した場合は死亡診断書を交付する。それ以外(診療中でない者の死亡、外因死など)では、医師が死体を検案して死体検案書を交付する。
Ⅰ欄・Ⅱ欄の記載上の注意
・Ⅰ欄、Ⅱ欄ともに疾患の終末期の状態としての心不全、呼吸不全などは書かない。 ・Ⅱ欄には、直接には死因に関係しないがⅠ欄の傷病経過に影響を及ぼした傷病を記載する。 ・老衰は、高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない場合にのみ用いる。
縊頸と絞頸
縊頸は自分の体重で索状物が頸部を圧迫するもの、絞頸は体重以外の力(他人の手や器具)で索状物を締めるもの、扼頸は手や腕で頸部を圧迫するものをいう。いずれも外因による窒息・頸部圧迫死である。
POINT
・死因の種類はⅠ欄最下段に書かれた「原死因」で決まる。 ・直接死因が疾患名(低酸素脳症、肺塞栓など)でも、原死因が外因なら外因死である。 ・縊頸は外因であり、縊頸による低酸素脳症は外因死。 ・老衰は「病死及び自然死」に分類される。 ・外因死(疑いを含む)は異状死として24時間以内に警察へ届け出る。
