StudyMed医師国家試験

「見逃さない検査」で引っかからなければ―SnNoutで読み解く診断の除外

第118回医師国家試験 B問題 第17問

国試問題にチャレンジ

第118回 B問題 第17問

診断の除外に有用なのはどれか。

  1. a.感度の高い検査が陽性のとき
  2. b.感度の高い検査が陰性のとき
  3. c.特異度の高い検査が陽性のとき
  4. d.特異度の高い検査が陰性のとき
  5. e.感度/(1-特異度)が1より大きいとき

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、検査の感度・特異度を、診断の「除外」と「確定」にどう結びつけるかを問う問題だ。数式を覚えるより、それぞれの指標が「何を見逃さないのか」「何を誤報しないのか」をイメージできるかがカギになる。まず、感度と特異度の定義を言えるかな。
医学生医学生
感度は病気のある人を陽性と判定できる割合、特異度は病気のない人を陰性と判定できる割合です。公衆衛生の講義で2×2表を何度も書かされました。
ドクタードクター
その通り。2×2表で言えば、感度は真陽性を「真陽性+偽陰性」で割ったもの、特異度は真陰性を「偽陽性+真陰性」で割ったものだ。裏返すと、1-感度が偽陰性率、1-特異度が偽陽性率になる。では、除外に役立つのはどんなときだと思う?
医学生医学生
除外ということは「病気がない」と言いたいわけなので……特異度の高い検査が陰性のとき、でしょうか。特異度は病気のない人を陰性と判定する力なので。
ドクタードクター
多くの人がそこでつまずくんだ。発想を変えてみよう。「陰性」という結果を信じて病気を否定したいとき、一番困るのはどんな誤りかな。
医学生医学生
本当は病気があるのに陰性と出てしまうこと、つまり偽陰性です。
ドクタードクター
そう。偽陰性の少なさを決めているのは特異度ではなく感度なんだ。感度が高い検査は病気のある人をほとんど見逃さない。だから、その検査で陰性なら「病気はなさそうだ」と強く言える。これが正解で、英語の語呂でSnNout、つまりSensitivity・Negative・rule outと覚える。
医学生医学生
なるほど、「見逃しの少ない検査で引っかからなかったら、病気はない」ということですね。じゃあ特異度の高い検査が陰性のときは、どうして除外に使えないんですか。
ドクタードクター
特異度が高いことは偽陽性が少ないことを保証するけれど、偽陰性については何も言っていない。特異度が高くても感度が低い検査なら、病気のある人がかなりの割合で陰性に出てしまう。だから陰性でも安心できないんだ。
医学生医学生
逆に、特異度の高い検査が陽性のときは確定に使える、ということですよね。SpPinでしたっけ。
ドクタードクター
正解。Specificity・Positive・rule inだね。誤報の少ない検査で引っかかったなら、病気がある可能性は高い。ただ、この問題は除外を問うているから、確定向きの組み合わせは当てはまらない。感度の高い検査が陽性のときはどうかな。
医学生医学生
病気のある人はほとんど陽性になりますが、病気のない人も陽性になっているかもしれないので、陽性だけでは何とも言えない気がします。
ドクタードクター
その通り。偽陽性の多さは特異度で決まるから、感度が高いだけでは陽性の意味は弱い。高感度の検査は、スクリーニングで候補者を広く拾い上げる用途に向いているんだ。最後の「感度/(1-特異度)が1より大きいとき」は、何を表す式かわかるかな。
医学生医学生
CBTの勉強で見た気がします。尤度比ですか。
ドクタードクター
そう、陽性尤度比だ。疾患のある人が陽性になる確率が、疾患のない人が陽性になる確率の何倍かを示す。1より大きければ、陽性結果で疾患の確率は上がる方向に動くから、これは確定側の話で除外とは逆向きだ。目安として、陽性尤度比が10程度以上なら確定に強く役立つ。除外の力を表すのは陰性尤度比、つまり(1-感度)/特異度で、これが0.1程度以下と小さいほど陰性結果の除外力が強い。
医学生医学生
陰性尤度比の式を見ると、感度が1に近いほど分子が0に近づくので、SnNoutと数式がつながりますね。
ドクタードクター
よく気づいたね。臨床での例を挙げると、D-ダイマーは感度が高いので、検査前確率が低い患者で陰性なら深部静脈血栓症や肺塞栓症をかなり否定できる。逆に検査前確率が高い患者では、陰性でも画像検査に進むことが多い。尤度比は「検査前オッズ×尤度比=検査後オッズ」の形で使うから、検査前確率を抜きに結果を解釈してはいけないんだ。
医学生医学生
救急外来の実習で、D-ダイマーが陽性でもそれだけで肺塞栓とは言えない、と指導医に言われた理由がわかりました。
ドクタードクター
そうだね。もう一つ、感度・特異度は検査そのものの性能で有病率に左右されないけれど、陽性的中率・陰性的中率は有病率の影響を受ける。有病率が低い集団では陽性的中率が下がり、陰性的中率が上がる。カットオフ値を下げると感度が上がって特異度が下がる、というトレードオフも合わせて押さえておこう。

まとめ

感度の高い検査は偽陰性が少ないため、その検査が陰性であれば疾患の可能性は大きく下がり、診断の除外に役立ちます(SnNout)。一方、特異度の高い検査は偽陽性が少ないため、陽性であれば診断の確定に役立ちます(SpPin)。感度/(1-特異度)は陽性尤度比で、1より大きければ陽性結果は疾患の確率を上げる方向に働くため確定側の指標であり、除外の力は陰性尤度比(1-感度)/特異度が小さいことで表されます。尤度比は検査前オッズに掛けて検査後オッズを求めるために使い、D-ダイマーによる肺塞栓症の除外のように、検査前確率と組み合わせて解釈することが重要です。感度・特異度・尤度比を「何を見逃さず、何を誤報しないか」という視点で理解しておくことは、検査の選択と結果の解釈を適切に行う臨床推論の土台になります。

解答・解説

正解はbです

検査特性(感度・特異度・尤度比)と、検査結果を診断の「除外(rule out)」と「確定(rule in)」にどう使うかを問う問題である。

基本の2×2表

疾患あり・検査陽性=真陽性(A)、疾患なし・検査陽性=偽陽性(B)、疾患あり・検査陰性=偽陰性(C)、疾患なし・検査陰性=真陰性(D)とする。 ・感度=A/(A+C):疾患のある人を検査が正しく陽性と判定する割合。1-感度が偽陰性率である。 ・特異度=D/(B+D):疾患のない人を検査が正しく陰性と判定する割合。1-特異度が偽陽性率である。

除外と確定の考え方

感度が高い検査は、疾患のある人をほとんど見逃さない(偽陰性が少ない)。したがって、その検査が「陰性」であれば、疾患がある可能性は低いと判断でき、診断の除外に役立つ。英語の語呂で「SnNout(Sensitivity・Negative・rule out)」と覚える。 逆に特異度が高い検査は、疾患のない人をほとんど陽性にしない(偽陽性が少ない)。その検査が「陽性」であれば疾患がある可能性が高く、診断の確定に役立つ。こちらは「SpPin(Specificity・Positive・rule in)」である。 直感的には「見逃しの少ない検査で引っかからなければ、病気はなさそう」「誤報の少ない検査で引っかかれば、病気がありそう」と理解するとよい。

選択肢考察

  1. ×a.  感度の高い検査が陽性のとき

    感度が高い検査は疾患のある人の大部分を陽性として拾い上げるが、感度の高さは偽陽性の少なさを保証しない(偽陽性の多さは特異度で決まる)。そのため陽性という結果だけでは疾患があるとも、ないとも強くはいえず、除外には使えない。高感度の検査はスクリーニングで疾患候補者を拾い上げる目的に向く。

  2. ○b.  感度の高い検査が陰性のとき

    感度が高いほど偽陰性率(1-感度)は低くなる。疾患のある人がこの検査で陰性になることはまれなので、陰性の結果が出れば疾患の存在する確率(検査後確率)は大きく下がり、診断の除外に有用である(SnNout)。尤度比で表すと、陰性尤度比=(1-感度)/特異度は感度が高いほど0に近づき、陰性結果の除外力が強くなる。例として、D-ダイマー陰性による深部静脈血栓症・肺塞栓症の除外(検査前確率が低い場合)が挙げられる。

  3. ×c.  特異度の高い検査が陽性のとき

    特異度が高いほど偽陽性率(1-特異度)は低い。疾患のない人がこの検査で陽性になることはまれなので、陽性の結果は疾患の存在を強く示し、診断の確定に有用である(SpPin)。問われているのは除外であり、確定に役立つ組み合わせであるこの選択肢は誤りである。

  4. ×d.  特異度の高い検査が陰性のとき

    特異度の高さは偽陽性が少ないことを意味するが、偽陰性の少なさ(感度)については何も保証しない。特異度が高くても感度が低い検査では、疾患のある人が陰性と判定されることが少なくないため、陰性という結果で疾患を除外することはできない。

  5. ×e.  感度/(1-特異度)が1より大きいとき

    感度/(1-特異度)は陽性尤度比(LR+)であり、「疾患のある人で陽性となる確率」が「疾患のない人で陽性となる確率」の何倍かを示す。LR+が1より大きければ、検査陽性によって疾患の存在確率は上がる方向に動く。したがってこれは陽性結果が診断を支持する(確定方向に働く)ことを示す指標であり、除外とは逆の方向である。なお一般にLR+が10程度以上で確定に強く役立ち、1に近い値では診断的価値は乏しい。除外に役立つのは陰性尤度比(1-感度)/特異度が小さい(0.1程度以下)場合である。

2×2表と主な指標

・感度=真陽性/(真陽性+偽陰性) ・特異度=真陰性/(偽陽性+真陰性) ・陽性的中率(PPV)=真陽性/(真陽性+偽陽性):検査陽性者のうち実際に疾患がある割合 ・陰性的中率(NPV)=真陰性/(偽陰性+真陰性):検査陰性者のうち実際に疾患がない割合 感度・特異度は検査そのものの性能で有病率に左右されないが、的中率は有病率(検査前確率)の影響を受ける。有病率が低い集団では陽性的中率が下がり、陰性的中率が上がる。

尤度比

・陽性尤度比(LR+)=感度/(1-特異度) ・陰性尤度比(LR−)=(1-感度)/特異度 検査前オッズ×尤度比=検査後オッズという関係があり、尤度比を用いると検査結果によって疾患の確率がどれだけ変化するかを定量的に評価できる。目安として、LR+が10以上、LR−が0.1以下の検査は診断上の価値が大きい。LR=1の検査は確率を全く変えない。

ROC曲線

縦軸に感度、横軸に偽陽性率(1-特異度)をとり、カットオフ値を変えたときの組み合わせをプロットした曲線である。曲線下面積(AUC)が1に近いほど識別能の高い検査であり、左上隅に最も近い点などを最適なカットオフ値の候補とする。原点と曲線上の点を結ぶ直線の傾きが、その点での陽性尤度比に相当する。

検査の使い分け

スクリーニングや除外目的には高感度の検査を、確定診断には高特異度の検査を用いる。カットオフ値を下げると感度が上がり特異度が下がる、というトレードオフの関係がある。

POINT

・SnNout:感度の高い検査が陰性なら除外に有用。 ・SpPin:特異度の高い検査が陽性なら確定に有用。 ・感度/(1-特異度)=陽性尤度比。1より大きければ陽性結果は疾患の確率を上げる(確定方向)。 ・除外の指標は陰性尤度比(1-感度)/特異度が小さいこと。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。