分母は「1-特異度」―陽性尤度比を100人で解き明かす
第112回医師国家試験 B問題 第17問
国試問題にチャレンジ
感度80%,特異度60%の検査の陽性尤度比はどれか。
- a.0.3
- b.0.5
- c.1.3
- d.2.0
- e.4.8
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
陽性尤度比は、検査陽性という結果が疾患のない人に比べて疾患のある人で何倍出やすいかを示す指標で、感度÷(1-特異度)で求めます。感度80%、特異度60%なら0.8÷0.4=2.0となり、分母を特異度そのものにすると約1.3、陰性尤度比((1-感度)÷特異度)と取り違えると約0.33という誤答につながります。迷ったときは、疾患あり・なし各100人で陽性者数を比べる検算が有効です。尤度比は有病率に左右されず、検査前オッズに掛けることで検査後オッズが得られ、陽性尤度比10以上・陰性尤度比0.1以下が診断を大きく動かす目安とされます。検査結果を確率の変化として捉える考え方は、国試の計算問題だけでなく、日常の臨床推論の土台となります。
解答・解説
正解はdです
尤度比(likelihood ratio:LR)は、ある検査結果が「疾患のある人」で得られる確率と「疾患のない人」で得られる確率の比である。陽性尤度比(LR+)は、検査陽性という結果が、疾患のない人に比べて疾患のある人で何倍出やすいかを表す。
定義の確認
疾患あり群のうち検査陽性となる割合が感度、疾患なし群のうち検査陰性となる割合が特異度である。したがって、疾患なし群で検査陽性となる割合(偽陽性率)は 1-特異度 である。 陽性尤度比 =(疾患ありで陽性となる確率)/(疾患なしで陽性となる確率)= 感度 /(1-特異度)
計算
感度 = 0.80、特異度 = 0.60 を代入すると、 陽性尤度比 = 0.80 /(1-0.60)= 0.80 / 0.40 = 2.0 よって正解は d である。
検算(具体的な人数で考える)
疾患ありの人100人、疾患なしの人100人に検査を行ったとする。疾患ありの100人のうち陽性は80人(感度80%)、疾患なしの100人のうち陰性は60人なので陽性は40人である。同じ人数で比べると、陽性の出やすさは疾患あり群で80、疾患なし群で40であり、その比は80/40 = 2.0 となる。
選択肢考察
- ×a. 0.3
誤り。0.3は陰性尤度比の値に相当する。陰性尤度比(LR−)=(1-感度)/特異度 = 0.20 / 0.60 ≒ 0.33 である。陽性尤度比と陰性尤度比を取り違えると選んでしまう値である。
- ×b. 0.5
誤り。0.5は、偽陰性率(1-感度 = 0.20)を偽陽性率(1-特異度 = 0.40)で割った値(0.20 / 0.40)に一致するが、この比は尤度比の定義に当てはまらない。陽性尤度比は感度を偽陽性率で割って求める。
- ×c. 1.3
誤り。1.3は感度を特異度で割った値(0.80 / 0.60 ≒ 1.33)である。陽性尤度比の分母は特異度そのものではなく、疾患のない人で陽性となる割合、すなわち 1-特異度 であることに注意する。
- ○d. 2.0
正しい。陽性尤度比 = 感度 /(1-特異度)= 0.80 / 0.40 = 2.0 である。これは、検査陽性という結果が、疾患のない人に比べて疾患のある人で2倍出やすいことを意味する。検査前オッズにこの値を掛けると検査後オッズが求められ、陽性結果によって疾患のオッズは2倍になる。
- ×e. 4.8
誤り。4.8は感度と特異度から求める陽性尤度比・陰性尤度比のいずれとも一致しない。陽性尤度比 = 感度 /(1-特異度)の式に正しく当てはめれば2.0となる。
2×2分割表による整理
疾患あり・検査陽性を真陽性(a)、疾患なし・検査陽性を偽陽性(b)、疾患あり・検査陰性を偽陰性(c)、疾患なし・検査陰性を真陰性(d)とすると、 感度 = a /(a+c) 特異度 = d /(b+d) 陽性的中率 = a /(a+b) 陰性的中率 = d /(c+d) 陽性尤度比 = 感度 /(1-特異度) 陰性尤度比 =(1-感度)/ 特異度
尤度比の意味と使い方
尤度比は感度と特異度だけから計算されるため、有病率(検査前確率)の影響を受けない。一方、陽性的中率・陰性的中率は有病率によって変化する。 検査後オッズ = 検査前オッズ × 尤度比 の関係がある。オッズと確率の変換は、オッズ = 確率 /(1-確率)、確率 = オッズ /(1+オッズ)である。 例:検査前確率が20%の場合、検査前オッズは0.2/0.8 = 0.25である。本問の検査で陽性となれば検査後オッズは0.25×2.0 = 0.5となり、検査後確率は0.5/1.5 ≒ 33%に上昇する。
尤度比の目安
陽性尤度比は1より大きいほど、陰性尤度比は1より小さい(0に近い)ほど、診断に役立つ検査である。尤度比が1であれば、その検査結果は疾患の有無の判断に何の情報も与えない。一般に陽性尤度比が10以上、陰性尤度比が0.1以下であれば診断を大きく動かす検査とされる。本問の検査(LR+ 2.0、LR− 約0.33)は診断を動かす力が小さい検査である。
POINT
・陽性尤度比 = 感度 /(1-特異度)、陰性尤度比 =(1-感度)/ 特異度。 ・本問:0.80 /(1-0.60)= 2.0。 ・分母を特異度そのもの(→1.3)にしたり、陰性尤度比(→約0.3)と取り違えたりしないように注意する。 ・検査後オッズ = 検査前オッズ × 尤度比。尤度比は有病率に左右されない。
