StudyMed医師国家試験

分母は「1-特異度」―陽性尤度比を100人で解き明かす

第112回医師国家試験 B問題 第17問

国試問題にチャレンジ

第112回 B問題 第17問

感度80%,特異度60%の検査の陽性尤度比はどれか。

  1. a.0.3
  2. b.0.5
  3. c.1.3
  4. d.2.0
  5. e.4.8

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、感度と特異度から陽性尤度比を求める計算問題だ。式を丸暗記するより、「誰の中で陽性が出る確率を比べているのか」を意識すると、迷わず解けるようになる。まず、陽性尤度比ってどんな指標だったかな。
医学生医学生
公衆衛生の講義で習いましたが、感度と特異度を組み合わせた何か、くらいしか覚えていません……。
ドクタードクター
大丈夫、定義から確認しよう。陽性尤度比は、検査陽性という結果が、疾患のない人に比べて疾患のある人で何倍出やすいかを表す指標だ。つまり「疾患ありで陽性になる確率」を「疾患なしで陽性になる確率」で割ったものだよ。
医学生医学生
疾患ありで陽性になる確率は、感度そのものですね。
ドクタードクター
その通り。では、疾患なしで陽性になる確率はどう表せる?
医学生医学生
特異度は疾患なしで陰性になる割合だから……疾患なしで陽性になるのは1から特異度を引いた値、偽陽性率ですね。
ドクタードクター
完璧だ。だから陽性尤度比は感度を「1-特異度」で割ったもの。今回なら0.8を0.4で割って2.0になる。
医学生医学生
実は最初、感度を特異度で割って1.3にしかけました。
ドクタードクター
それが一番多い落とし穴だね。分母は特異度そのものではなく、疾患のない人で陽性が出る割合だ。式で迷ったら、具体的な人数で考えるといい。疾患ありの人100人、疾患なしの人100人に検査したらどうなる?
医学生医学生
疾患ありの100人では80人が陽性、疾患なしの100人では60人が陰性なので、40人が陽性です。80対40で、やっぱり2倍ですね。
ドクタードクター
そう、この検算をしておけば取り違えない。他の選択肢も見ておこう。0.3に近い値は何を計算すると出てくると思う?
医学生医学生
陰性尤度比でしょうか。1から感度を引いた0.2を、特異度の0.6で割ると約0.33です。
ドクタードクター
正解。陰性尤度比は、陰性という結果が疾患ありで疾患なしの何倍出やすいかを表す。陽性と陰性を取り違えると選んでしまう値だね。0.5は偽陰性率を偽陽性率で割った値に一致するけれど、そんな定義の指標はない。4.8は正しい式に当てはめてもどこにも出てこない数字だ。
医学生医学生
CBTの勉強のときは2×2表を書いてから解くようにしていました。
ドクタードクター
いい習慣だよ。真陽性をa、偽陽性をb、偽陰性をc、真陰性をdとすれば、感度はa/(a+c)、特異度はd/(b+d)、陽性的中率はa/(a+b)だ。ここで大事なのは、尤度比は感度と特異度だけで決まるので有病率に左右されないが、的中率は有病率で変わるという違いだ。
医学生医学生
では、尤度比は実際の臨床でどう使うんですか。
ドクタードクター
検査後オッズは検査前オッズに尤度比を掛けて求められる。たとえば検査前確率が20%なら、オッズは0.2÷0.8で0.25。この検査で陽性なら0.25×2.0で0.5、確率に戻すと0.5÷1.5で約33%になる。
医学生医学生
20%が33%になるだけだと、陽性でも確定とは言いにくいですね。
ドクタードクター
その感覚が大切だ。一般に陽性尤度比が10以上、陰性尤度比が0.1以下なら診断を大きく動かす検査とされる。尤度比が1なら、その結果は何の情報も与えない。今回の検査は陽性尤度比2.0、陰性尤度比約0.33なので、診断を動かす力は小さい部類だね。
医学生医学生
総合内科の実習で、先生が「この所見の尤度比はどのくらい?」とよく聞いていた意味がやっとわかりました。
ドクタードクター
検査や身体所見の結果を「陽性だから病気」と短絡せず、検査前確率と尤度比から「どのくらい確率が動いたか」を考える。これが臨床推論の基本になるんだ。

まとめ

陽性尤度比は、検査陽性という結果が疾患のない人に比べて疾患のある人で何倍出やすいかを示す指標で、感度÷(1-特異度)で求めます。感度80%、特異度60%なら0.8÷0.4=2.0となり、分母を特異度そのものにすると約1.3、陰性尤度比((1-感度)÷特異度)と取り違えると約0.33という誤答につながります。迷ったときは、疾患あり・なし各100人で陽性者数を比べる検算が有効です。尤度比は有病率に左右されず、検査前オッズに掛けることで検査後オッズが得られ、陽性尤度比10以上・陰性尤度比0.1以下が診断を大きく動かす目安とされます。検査結果を確率の変化として捉える考え方は、国試の計算問題だけでなく、日常の臨床推論の土台となります。

解答・解説

正解はdです

尤度比(likelihood ratio:LR)は、ある検査結果が「疾患のある人」で得られる確率と「疾患のない人」で得られる確率の比である。陽性尤度比(LR+)は、検査陽性という結果が、疾患のない人に比べて疾患のある人で何倍出やすいかを表す。

定義の確認

疾患あり群のうち検査陽性となる割合が感度、疾患なし群のうち検査陰性となる割合が特異度である。したがって、疾患なし群で検査陽性となる割合(偽陽性率)は 1-特異度 である。 陽性尤度比 =(疾患ありで陽性となる確率)/(疾患なしで陽性となる確率)= 感度 /(1-特異度)

計算

感度 = 0.80、特異度 = 0.60 を代入すると、 陽性尤度比 = 0.80 /(1-0.60)= 0.80 / 0.40 = 2.0 よって正解は d である。

検算(具体的な人数で考える)

疾患ありの人100人、疾患なしの人100人に検査を行ったとする。疾患ありの100人のうち陽性は80人(感度80%)、疾患なしの100人のうち陰性は60人なので陽性は40人である。同じ人数で比べると、陽性の出やすさは疾患あり群で80、疾患なし群で40であり、その比は80/40 = 2.0 となる。

選択肢考察

  1. ×a.  0.3

    誤り。0.3は陰性尤度比の値に相当する。陰性尤度比(LR−)=(1-感度)/特異度 = 0.20 / 0.60 ≒ 0.33 である。陽性尤度比と陰性尤度比を取り違えると選んでしまう値である。

  2. ×b.  0.5

    誤り。0.5は、偽陰性率(1-感度 = 0.20)を偽陽性率(1-特異度 = 0.40)で割った値(0.20 / 0.40)に一致するが、この比は尤度比の定義に当てはまらない。陽性尤度比は感度を偽陽性率で割って求める。

  3. ×c.  1.3

    誤り。1.3は感度を特異度で割った値(0.80 / 0.60 ≒ 1.33)である。陽性尤度比の分母は特異度そのものではなく、疾患のない人で陽性となる割合、すなわち 1-特異度 であることに注意する。

  4. ○d.  2.0

    正しい。陽性尤度比 = 感度 /(1-特異度)= 0.80 / 0.40 = 2.0 である。これは、検査陽性という結果が、疾患のない人に比べて疾患のある人で2倍出やすいことを意味する。検査前オッズにこの値を掛けると検査後オッズが求められ、陽性結果によって疾患のオッズは2倍になる。

  5. ×e.  4.8

    誤り。4.8は感度と特異度から求める陽性尤度比・陰性尤度比のいずれとも一致しない。陽性尤度比 = 感度 /(1-特異度)の式に正しく当てはめれば2.0となる。

2×2分割表による整理

疾患あり・検査陽性を真陽性(a)、疾患なし・検査陽性を偽陽性(b)、疾患あり・検査陰性を偽陰性(c)、疾患なし・検査陰性を真陰性(d)とすると、 感度 = a /(a+c) 特異度 = d /(b+d) 陽性的中率 = a /(a+b) 陰性的中率 = d /(c+d) 陽性尤度比 = 感度 /(1-特異度) 陰性尤度比 =(1-感度)/ 特異度

尤度比の意味と使い方

尤度比は感度と特異度だけから計算されるため、有病率(検査前確率)の影響を受けない。一方、陽性的中率・陰性的中率は有病率によって変化する。 検査後オッズ = 検査前オッズ × 尤度比 の関係がある。オッズと確率の変換は、オッズ = 確率 /(1-確率)、確率 = オッズ /(1+オッズ)である。 例:検査前確率が20%の場合、検査前オッズは0.2/0.8 = 0.25である。本問の検査で陽性となれば検査後オッズは0.25×2.0 = 0.5となり、検査後確率は0.5/1.5 ≒ 33%に上昇する。

尤度比の目安

陽性尤度比は1より大きいほど、陰性尤度比は1より小さい(0に近い)ほど、診断に役立つ検査である。尤度比が1であれば、その検査結果は疾患の有無の判断に何の情報も与えない。一般に陽性尤度比が10以上、陰性尤度比が0.1以下であれば診断を大きく動かす検査とされる。本問の検査(LR+ 2.0、LR− 約0.33)は診断を動かす力が小さい検査である。

POINT

・陽性尤度比 = 感度 /(1-特異度)、陰性尤度比 =(1-感度)/ 特異度。 ・本問:0.80 /(1-0.60)= 2.0。 ・分母を特異度そのもの(→1.3)にしたり、陰性尤度比(→約0.3)と取り違えたりしないように注意する。 ・検査後オッズ = 検査前オッズ × 尤度比。尤度比は有病率に左右されない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。