StudyMed医師国家試験

手すり1本から見える介護保険のしくみ―保険者・被保険者・給付・負担を一気に整理

第114回医師国家試験 F問題 第21問

国試問題にチャレンジ

第114回 F問題 第21問

介護保険について正しいのはどれか。

  1. a.保険者は都道府県である。
  2. b.被保険者は65歳以上に限定される。
  3. c.介護給付費は国民医療費に含まれる。
  4. d.転倒防止のための住宅改修に利用できる。
  5. e.自己負担割合は所得にかかわらず1割である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は介護保険制度の基本的な枠組みを問う問題だ。「誰が運営し」「誰が加入し」「何に使えて」「いくら払うのか」という4つの軸で整理すると、どの選択肢も迷わず判定できるよ。まず運営主体、つまり保険者は誰だと思う?
医学生医学生
国民健康保険は都道府県も保険者になったと公衆衛生の講義で聞いたので、介護保険も都道府県なのかなと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこがよくある混同だね。2018年度から国民健康保険は都道府県も市町村とともに保険者になったけれど、介護保険の保険者は今も市町村と特別区、つまり東京23区なんだ。介護サービスは住民の生活に密着しているから、一番身近な自治体が運営する、と理解すると覚えやすい。
医学生医学生
では都道府県は何もしていないわけではないんですよね。
ドクタードクター
もちろん。公費の一部を負担したり、事業者を指定・監督したり、要介護認定などへの不服申し立てを審査する介護保険審査会を置いたりして、市町村を支える立場にある。次は加入者だ。被保険者は65歳以上だけかな?
医学生医学生
40歳から保険料を払うと聞いた気がします。親が40歳になったとき、給与明細に介護保険料の欄が増えたと言っていました。
ドクタードクター
その通り。65歳以上が第1号被保険者、40〜64歳の医療保険加入者が第2号被保険者だ。ただし給付の条件が違っていて、第1号は原因を問わず要介護・要支援になれば使えるけれど、第2号は加齢に伴う16の特定疾病が原因の場合に限られる。脳血管疾患、末期がん、Parkinson病関連疾患などがその例だね。
医学生医学生
40代で交通事故の後遺症によって介護が必要になっても、介護保険は使えないということですか。
ドクタードクター
そう、特定疾病に当たらないから原則として対象外で、障害福祉など別の制度を使うことになる。次は国民医療費との関係。介護給付費は国民医療費に含まれると思う?
医学生医学生
高齢者の医療と介護は一体のイメージがあるので、含まれそうな気がします。
ドクタードクター
実は含まれないんだ。国民医療費は傷病の治療にかかった費用の推計で、医科・歯科診療医療費、薬局調剤医療費、入院時食事・生活医療費、訪問看護医療費などで構成される。介護保険から払われる費用は範囲外だ。ほかにも正常な妊娠・分娩、健診や予防接種、義眼・義肢、差額ベッド代も含まれない。CBTでも頻出の論点だよ。
医学生医学生
では、転倒防止のための住宅改修はどうでしょう。地域医療実習で訪問看護に同行したとき、利用者さんの家のトイレに手すりが付いていました。
ドクタードクター
まさにそれが正解の内容だ。手すりの取り付け、段差の解消、滑りにくい床材への変更、引き戸への扉の取り替え、和式から洋式への便器の取り替えなどが住宅改修費の支給対象になる。上限は原則1人20万円で、その範囲で費用の9割(所得により8割・7割)が支給される。要支援の人も使えるよ。
医学生医学生
自己負担は1割と覚えていましたが、「所得にかかわらず」という部分が引っかかります。
ドクタードクター
いい勘だね。原則は1割だけど、一定以上の所得がある第1号被保険者は2割、特に所得が高い人は3割になる。一方、第2号被保険者は所得にかかわらず1割だ。負担が重くなりすぎないよう、月の上限を超えた分が払い戻される高額介護サービス費の仕組みもある。
医学生医学生
保険者は市町村、被保険者は40歳以上、介護給付費は国民医療費の外、負担は所得で1〜3割、住宅改修も給付対象、という整理ですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に臨床医として知っておきたい点をまとめよう。サービスを使うには市町村に申請して要介護認定を受ける必要があり、その判定には医師の主治医意見書が欠かせない。訪問調査とコンピュータによる一次判定のあと、介護認定審査会が二次判定をして、要支援1・2か要介護1〜5が決まるんだ。
医学生医学生
主治医意見書は研修医になったら書く機会がありそうですね。生活の様子まで書くのは難しそうです。
ドクタードクター
そうなんだ。病名だけでなく、認知機能や日常生活の自立度、転倒リスクなども具体的に書くことが、患者さんに合ったサービスにつながる。それから、訪問看護のように医療保険と介護保険の両方にあるサービスは原則として介護保険が優先されるけれど、末期がんや一部の神経難病などでは医療保険が適用される。退院支援や在宅医療では、こうした制度の知識がそのまま患者さんの生活の質を左右するよ。

まとめ

介護保険は2000年に施行された社会保険制度で、保険者は市町村・特別区、被保険者は65歳以上の第1号と40〜64歳の医療保険加入者である第2号に分かれ、第2号は16の特定疾病による場合のみ給付を受けられます。利用者負担は原則1割ですが、一定以上の所得がある第1号被保険者は2割・3割となり、介護給付費は国民医療費には含まれません。給付は居宅・施設サービスに加え、福祉用具の貸与・購入や、手すり設置・段差解消など転倒予防のための住宅改修(原則20万円まで)にも及びます。利用には要介護認定が必要で、医師の主治医意見書が判定の重要な材料となります。制度の枠組みを理解しておくことは、退院支援や在宅医療で患者さんの生活を支える医師として欠かせない素養です。

解答・解説

正解はdです

介護保険制度は、介護保険法(1997年制定、2000年施行)に基づき、加齢に伴って介護が必要となった人を社会全体で支える社会保険制度である。本問は制度の基本的な枠組み(保険者、被保険者、給付の内容、利用者負担、国民医療費との関係)を問うている。

押さえるべき枠組み

・誰が運営するか(保険者):市町村および特別区(東京23区) ・誰が加入するか(被保険者):40歳以上の住民。65歳以上が第1号被保険者、40〜64歳の医療保険加入者が第2号被保険者 ・どうすれば使えるか:市町村に申請し、要介護認定(要支援1・2、要介護1〜5)を受ける ・何に使えるか:居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービスのほか、福祉用具の貸与・購入費、住宅改修費の支給など ・いくら払うか:原則1割、一定以上の所得がある第1号被保険者は2割または3割 これらと照らし合わせると、手すりの取り付けや段差の解消など、転倒を防ぎ自立した生活を助けるための住宅改修は介護保険の給付対象であり、dが正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  保険者は都道府県である。

    誤り。介護保険の保険者は市町村および特別区である。介護サービスは住民の生活に密着したものであるため、最も身近な自治体が運営主体となっている。都道府県は保険者ではなく、介護保険財政への公費負担、事業者の指定・監督、介護保険審査会(要介護認定などへの不服申し立てを審査する機関)の設置などで市町村を支援する立場にある。なお、2018年度から国民健康保険は都道府県も市町村とともに保険者となったが、介護保険の保険者は市町村のままである。

  2. ×b.  被保険者は65歳以上に限定される。

    誤り。被保険者は65歳以上の第1号被保険者と、40〜64歳の医療保険加入者である第2号被保険者の2種類である。第1号被保険者は原因を問わず要介護・要支援状態となれば給付を受けられるが、第2号被保険者は加齢に伴う16の特定疾病(脳血管疾患、末期がん、Parkinson病関連疾患など)が原因である場合に限って給付対象となる。保険料は40歳以上の全員に納付義務があり、第2号被保険者の保険料は加入している医療保険の保険料と合わせて徴収される。

  3. ×c.  介護給付費は国民医療費に含まれる。

    誤り。国民医療費は、その年度内に医療機関などで傷病の治療に要した費用を推計したもので、医科診療医療費、歯科診療医療費、薬局調剤医療費、入院時食事・生活医療費、訪問看護医療費などから構成される。介護保険から支払われる介護給付費は国民医療費に含まれない。このほか、正常な妊娠・分娩、健康診断・予防接種、固定した身体障害に対する義眼・義肢、差額ベッド代なども国民医療費の範囲外である。

  4. ○d.  転倒防止のための住宅改修に利用できる。

    正しい。介護保険の居宅介護(介護予防)住宅改修費の支給として、手すりの取り付け、段差の解消、滑りの防止や移動を円滑にするための床材の変更、引き戸などへの扉の取り替え、和式から洋式などへの便器の取り替え、およびこれらに付帯する工事が対象となる。いずれも転倒予防や自立した在宅生活の維持を目的とするものである。支給限度基準額は原則として1人あたり20万円で、その範囲内で費用の9割(所得に応じて8割・7割)が支給される。要支援者も利用できる。

  5. ×e.  自己負担割合は所得にかかわらず1割である。

    誤り。利用者負担は原則1割であるが、一定以上の所得がある第1号被保険者は2割(2015年8月から)、特に所得の高い者は3割(2018年8月から)となる。第2号被保険者は所得にかかわらず1割である。また、1か月の自己負担額が上限を超えた場合には高額介護サービス費として払い戻される仕組みがある。施設での食費・居住費は原則として保険給付外(自己負担)である。

介護保険制度の概要

・根拠法:介護保険法(2000年4月施行) ・保険者:市町村・特別区 ・被保険者:第1号(65歳以上)、第2号(40〜64歳の医療保険加入者) ・財源:保険料50%と公費50%。公費は国・都道府県・市町村が負担する(居宅給付費では国25%、都道府県12.5%、市町村12.5%)。

利用までの流れ

1 本人・家族などが市町村に申請する 2 認定調査員による訪問調査と、主治医意見書の作成 3 コンピュータによる一次判定 4 市町村に置かれた介護認定審査会(保健・医療・福祉の専門家で構成)による二次判定 5 非該当、要支援1・2、要介護1〜5のいずれかに認定 6 介護支援専門員(ケアマネジャー)がケアプラン(介護サービス計画)を作成し、サービス利用開始(要支援者は地域包括支援センターが介護予防ケアプランを担当することが多い)

主な給付

・居宅サービス:訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)、短期入所(ショートステイ)など ・施設サービス:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護医療院(要介護者のみ対象) ・福祉用具:車椅子・特殊寝台・歩行器などの貸与、入浴や排泄に用いる用具(腰掛便座、入浴補助用具など)の購入費支給 ・住宅改修費の支給

第2号被保険者が給付対象となる特定疾病(16疾病)

末期がん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、後縦靱帯骨化症、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症、進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症およびParkinson病、脊髄小脳変性症、脊柱管狭窄症、早老症、多系統萎縮症、糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患、両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

医療保険との関係

介護保険と医療保険の両方で同じサービス(訪問看護など)が利用できる場合は、原則として介護保険が優先される。ただし、末期がんや厚生労働大臣が定める疾病(神経難病など)の患者、急性増悪時の特別訪問看護指示期間などは医療保険の訪問看護が適用される。

POINT

・保険者は市町村・特別区(都道府県ではない)。 ・被保険者は第1号(65歳以上)と第2号(40〜64歳)。第2号は16の特定疾病による場合のみ給付。 ・利用者負担は原則1割、所得に応じて2割・3割。 ・介護給付費は国民医療費に含まれない。 ・手すり取り付け・段差解消などの住宅改修、福祉用具の貸与・購入も給付対象(住宅改修は原則20万円まで)。 ・要介護認定は市町村の介護認定審査会が行い、主治医意見書が必要。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。