肺炎は治ったのに歩けない―退院支援は「できないこと」から逆算する
第120回医師国家試験 C問題 第54問
国試問題にチャレンジ
79歳の女性。肺炎で入院中である。入院5日目に肺炎が改善し,退院の準備を行うこととなった。入院後にADLが低下し,移動に歩行器が必要である。息子と2人暮らし。認知機能に問題はなく,服薬管理はできる。入浴,食事および整容は自立している。要介護度は要介護1である。福祉用具貸与および外来診療を予定している。 退院に際して,この患者に必要な介護サービスはどれか。
- a.訪問栄養指導
- b.訪問入浴介護
- c.訪問薬剤管理
- d.ショートステイ
- e.通所リハビリテーション
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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ドクター
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ドクターまとめ
高齢者は肺炎などの急性疾患で入院すると、病気が治ってもADLが低下したまま退院することが多く、これを入院関連機能障害(廃用症候群)と呼びます。退院支援では、本人ができなくなったことを見きわめ、それを補うサービスを選ぶのが原則で、自立している領域にサービスを入れる必要はありません。本例は歩行能力の低下だけが問題で、外来に通える移動能力もあるため、医師の指示のもとリハビリ専門職の訓練を受けられる通所リハビリテーション(デイケア)が最も適しています。訪問入浴は入浴困難な重度者、訪問薬剤管理や訪問栄養指導(居宅療養管理指導)は服薬管理や栄養に問題がある人、ショートステイは家族の介護負担軽減や一時的に介護できないときに使います。介護保険サービスそれぞれの対象を理解することは、多職種と連携して患者の生活を支える医師の基本的な素養です。
解答・解説
正解はeです
所見の整理
・79歳の女性。肺炎で入院し、5日目に改善したため退院の準備に入った。 ・入院してから日常生活動作〈ADL:activities of daily living〉が落ち、移動に歩行器が必要になった。入院前より歩く能力が下がったと読み取れる。 ・息子と2人暮らし。日中は息子が仕事などで不在となり、本人が1人で過ごす時間があると考えられる。 ・認知機能は保たれ、服薬管理もできる。入浴、食事、整容(洗面・歯みがき・身だしなみ)は自立している。 ・要介護1の認定を受けている。福祉用具貸与(歩行器など)と外来通院はすでに予定されている。
問題点の抽出
高齢者は、入院中の安静臥床や急性疾患による消耗で、短い期間でも筋力・体力が急に落ちやすい。これを入院関連機能障害(hospital-associated disability)、あるいは廃用症候群という。本例も肺炎そのものは治ったが、歩く能力が下がったことが残った問題である。このままでは転倒の危険が高く、活動量が減ってさらに機能が落ちるという悪循環に陥るおそれがある。 一方で、認知機能、服薬、入浴、食事、整容など、ほかの生活機能は保たれている。退院後に必要な支援は「歩く能力を回復させるためのリハビリテーションを続けること」に絞られる。
サービスの選び方
介護保険サービスは、本人ができないこと、困っていることを補うために、介護支援専門員(ケアマネジャー)がケアプランに組み込んで利用する。自立している領域にサービスを入れる必要はない。歩行器の貸与で移動の安全を確保しつつ、病院や介護老人保健施設などに通って理学療法士などによる機能訓練を受ける通所リハビリテーション(デイケア)を利用するのが、本例の問題に最も直接合ったサービスである。
選択肢考察
- ×a. 訪問栄養指導
誤り。管理栄養士が自宅を訪ねて栄養管理の指導をするサービスで、介護保険では居宅療養管理指導の一つである。通院が難しく、低栄養、嚥下障害、糖尿病や腎臓病で特別な食事が必要な人などが対象となる。本例は食事が自立しており、栄養面の特別な問題も示されていない。外来にも通えるので必要ない。
- ×b. 訪問入浴介護
誤り。移動式の浴槽を自宅に持ち込み、看護職員と介護職員が入浴を介助するサービスである。寝たきりなどで自宅の浴室でも通所施設でも入浴が難しい、重度の人が主な対象となる。本例は入浴が自立しているので必要ない。
- ×c. 訪問薬剤管理
誤り。薬剤師が自宅を訪ねて、服薬状況の確認、残っている薬の管理、副作用のチェック、飲み方の指導などを行うサービスで、居宅療養管理指導の一つである。認知機能が落ちて自分で服薬を管理できない人や、通院が難しい人などが対象となる。本例は認知機能が保たれ、服薬管理もできるので必要ない。
- ×d. ショートステイ
誤り。短期入所生活介護・短期入所療養介護のことで、施設に数日から数週間泊まって、介護や機能訓練を受けるサービスである。家族が病気や冠婚葬祭、仕事で介護できないときや、介護する家族の負担を軽くする(レスパイト)ために使われることが多い。本例は退院して自宅で生活し、外来に通う予定である。息子の介護ができなくなるような事情も示されていないので、いま必要なサービスではない。
- ○e. 通所リハビリテーション
正しい。デイケアとも呼ばれ、介護老人保健施設、病院、診療所などに日帰りで通い、医師の指示のもとで理学療法士・作業療法士・言語聴覚士によるリハビリテーションを受ける介護保険サービスである。本例の主な問題は入院中に落ちた歩く能力なので、退院後も機能訓練を続けて筋力と歩く能力を回復させ、自宅で安全に暮らせるようにすることが最も重要である。外来に通える程度の移動能力があり、送迎もつくので利用できる。日中1人で過ごす時間が減り、見守りや人との交流の機会にもなる。
入院関連機能障害(廃用症候群)
・高齢者は、急性疾患で入院すると、病気が治ってもADLが入院前より落ちたまま退院することが少なくない。 ・安静臥床が続くと、筋力は短い期間で目に見えて落ちる。早期離床と入院中からのリハビリテーションで予防し、退院後も訓練を続けることが大切である。
介護保険の主な居宅サービス
・訪問系:訪問介護(ホームヘルプ)、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導(医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士などによる自宅での療養上の管理・指導) ・通所系:通所介護(デイサービス:入浴・食事などの介護や機能訓練、交流が中心)、通所リハビリテーション(デイケア:医師の指示のもとリハビリ専門職による訓練が中心) ・短期入所系:短期入所生活介護、短期入所療養介護(ショートステイ) ・福祉用具貸与・特定福祉用具販売、住宅改修(手すりの取り付け、段差の解消など)
訪問リハビリテーションとの使い分け
通院・通所が難しい人には、訪問リハビリテーション(自宅でのリハビリ)を選ぶ。本例は外来通院を予定しており、通う能力があるので通所が適している。
要介護認定
・要支援1・2、要介護1〜5の7段階がある。介護保険の区分支給限度基準額の範囲内で、ケアマネジャーがケアプランを作り、サービスを組み合わせる(要支援の場合は、地域包括支援センターなどが介護予防ケアプランを作る)。 ・65歳以上(第1号被保険者)は、原因を問わず要介護状態と認定されれば介護保険サービスを利用できる。
POINT
・退院支援では、本人ができないこと(問題点)を見きわめ、それを補うサービスを選ぶ。自立している領域にサービスは要らない。 ・入院中に落ちた歩く能力(廃用)には、リハビリの継続が必要である。通えるなら通所リハビリテーション(デイケア)、通えなければ訪問リハビリテーションを選ぶ。 ・訪問入浴は入浴が難しい重度の人、訪問薬剤管理(居宅療養管理指導)は服薬管理が難しい人、訪問栄養指導は低栄養や食事療法が必要な人が対象である。 ・ショートステイは、介護する家族の負担軽減(レスパイト)や、一時的に介護できないときに使う。
