主治医意見書は「介護の手間」を語る書類―何を書き、何を書かないか
第119回医師国家試験 C問題 第32問
国試問題にチャレンジ
介護保険制度における主治医意見書に必ず記載するのはどれか。2つ選べ。
- a.家族歴
- b.診断名
- c.アレルギー歴
- d.ワクチン接種歴
- e.日常生活の自立度
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
主治医意見書は、要介護認定の申請を受けた市町村がかかりつけ医に作成を依頼する書類で、介護認定審査会による二次判定で「介護の手間」を医学的に裏づける重要資料となります。必ず記載するのは、生活機能低下の原因となる診断名(第2号被保険者では特定疾病該当の判断にも必要)と、障害高齢者および認知症高齢者の日常生活自立度で、ほかに症状の安定性、特別な医療、認知症症状、身体の状態、感染症の有無などの項目があります。一方、家族歴・アレルギー歴・ワクチン接種歴は要介護度の判定に用いないため記載欄はありません。書類の目的から記載内容を逆算する考え方を身につけておくと、将来主治医として意見書を書く際に、患者さんを必要な介護サービスへ確実につなぐことができます。
解答・解説
正解はb, eです
主治医意見書とは
介護保険の給付を受けるには、市町村に申請して要介護認定(または要支援認定)を受ける必要がある。申請を受けた市町村は、申請者のかかりつけ医(主治医)に「主治医意見書」の作成を依頼する(介護保険法第27条)。主治医がいない場合は市町村が指定する医師が診察して作成する。
要介護認定の流れと意見書の役割
認定は二段階で行われる。 ・一次判定: 認定調査員による訪問調査(基本調査74項目)の結果と主治医意見書の一部の項目をもとに、コンピュータで要介護認定等基準時間を推計する。 ・二次判定: 保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会が、一次判定結果・認定調査の特記事項・主治医意見書を総合して要介護度を最終決定する。 つまり主治医意見書は「介護の手間がどれだけかかるか」を医学的立場から裏づける資料であり、記載項目は生活機能の低下の原因となる病気と、その結果としての心身の状態・生活機能に焦点が当てられている。
考え方
意見書の様式は全国共通で、大きく「1. 傷病に関する意見」「2. 特別な医療」「3. 心身の状態に関する意見」「4. 生活機能とサービスに関する意見」「5. 特記すべき事項」で構成される。診断名は1に、日常生活の自立度は3に記載欄がある。一方、家族歴・アレルギー歴・ワクチン接種歴のような、一般の診療録や紹介状で扱う既往・背景情報の記載欄は設けられていない。介護の必要度判定に直接関わる情報かどうか、という視点で選ぶとよい。
選択肢考察
- ×a. 家族歴
主治医意見書に家族歴の記載欄はない。家族歴は遺伝性疾患の診断などでは重要だが、本人の介護の手間の評価には直接関係しない。なお、介護者の有無や家族の介護力といった生活環境の情報は、認定調査の特記事項や介護支援専門員(ケアマネジャー)によるアセスメントで把握されるものであり、家族歴とは別物である。
- ○b. 診断名
「1. 傷病に関する意見」に診断名の記載欄があり、発症年月日とともに記載する(最大3つ)。生活機能低下の直接の原因となっている傷病名を1番目に書くことになっており、40〜64歳の第2号被保険者では特定疾病(例: 脳血管疾患、初老期における認知症、パーキンソン病関連疾患など)に該当するかどうかが判定上重要になるため、診断名は欠かせない。同じ欄に、症状としての安定性(安定・不安定)や、経過・投薬内容を含む治療内容も記載する。
- ×c. アレルギー歴
アレルギー歴の記載欄は設けられていない。薬物アレルギーなどは診療情報提供書では重要な情報だが、要介護度の判定には用いられない。サービス提供時に医学的な配慮が必要な事項があれば、「4. 生活機能とサービスに関する意見」の留意事項欄や「5. 特記すべき事項」に任意で書くことはできるが、必須の項目ではない。
- ×d. ワクチン接種歴
ワクチン接種歴の記載欄はない。感染に関しては、「4. 生活機能とサービスに関する意見」の中に「感染症の有無」(有りの場合は病名を記入)という項目があり、施設入所や通所サービス利用時の感染対策の参考にされるが、予防接種の履歴を問う欄ではない。
- ○e. 日常生活の自立度
「3. 心身の状態に関する意見」の冒頭に「日常生活の自立度等について」の欄があり、障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度: 自立、J1・J2、A1・A2、B1・B2、C1・C2)と、認知症高齢者の日常生活自立度(自立、I、IIa・IIb、IIIa・IIIb、IV、M)の2つを判定して記載する。これらは介護の必要度を直接反映する指標であり、認定審査会での判断や、要支援2と要介護1の振り分けなどにも活用される。
主治医意見書の主な構成
・基本情報: 申請者の氏名・生年月日、医師・医療機関名、最終診察日、意見書作成回数(初回・2回目以上)、他科受診の有無 ・1. 傷病に関する意見: 診断名と発症年月日、症状としての安定性、生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過および投薬内容を含む治療内容 ・2. 特別な医療: 過去14日間以内に受けた医療(点滴の管理、中心静脈栄養、透析、ストーマの処置、酸素療法、レスピレーター、気管切開の処置、疼痛の看護、経管栄養、モニター測定、褥瘡の処置、カテーテル) ・3. 心身の状態に関する意見: 日常生活の自立度(障害高齢者・認知症高齢者)、認知症の中核症状(短期記憶、日常の意思決定を行うための認知能力、自分の意思の伝達能力)、認知症の行動・心理症状(BPSD)、その他の精神・神経症状、身体の状態(利き腕、身長・体重、麻痺、筋力低下、関節の拘縮、褥瘡など) ・4. 生活機能とサービスに関する意見: 移動、栄養・食生活、現在あるかまたは今後発生の可能性の高い状態とその対処方針、サービス利用による生活機能の維持・改善の見通し、医学的管理の必要性、サービス提供時の医学的観点からの留意事項、感染症の有無 ・5. 特記すべき事項
日常生活自立度の目安
障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度) ・ランクJ: 何らかの障害はあるが、日常生活はほぼ自立し独力で外出できる ・ランクA: 屋内の生活はおおむね自立しているが、介助なしには外出しない(準寝たきり) ・ランクB: 屋内でも何らかの介助を要し、日中もベッド上の生活が主体だが座位は保てる ・ランクC: 1日中ベッド上で過ごし、排泄・食事・着替えに介助を要する 認知症高齢者の日常生活自立度 ・I: 何らかの認知症はあるが、日常生活は家庭内・社会的にほぼ自立 ・II: 日常生活に支障を来す症状・行動や意思疎通の困難さが多少みられても、誰かが注意していれば自立できる(IIaは家庭外、IIbは家庭内でもみられる) ・III: 日常生活に支障を来す症状・行動や意思疎通の困難さがみられ、介護を必要とする(IIIaは日中中心、IIIbは夜間中心) ・IV: 上記の症状が頻繁にみられ、常に介護を必要とする ・M: 著しい精神症状や周辺症状、あるいは重篤な身体疾患がみられ、専門医療を必要とする
関連事項
・主治医意見書の作成費用は介護保険から支払われ、申請者の自己負担はない。 ・主治医は意見書の中で、意見書を介護サービス計画(ケアプラン)作成に利用することへの同意の有無も示す。
POINT
・要介護認定の申請があると、市町村は主治医に主治医意見書の作成を依頼する。 ・一次判定(認定調査+意見書の一部をもとにしたコンピュータ判定)→ 二次判定(介護認定審査会)で、意見書は二次判定の重要資料となる。 ・必須の記載内容: 診断名(生活機能低下の直接原因を1番目に)、症状の安定性、治療内容、特別な医療、日常生活自立度(寝たきり度・認知症)、認知症症状、身体の状態、生活機能とサービスに関する意見、感染症の有無など。 ・家族歴、アレルギー歴、ワクチン接種歴の欄はない。
