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主治医意見書は「介護の手間」を語る書類―何を書き、何を書かないか

第119回医師国家試験 C問題 第32問

国試問題にチャレンジ

第119回 C問題 第32問

介護保険制度における主治医意見書に必ず記載するのはどれか。2つ選べ。

  1. a.家族歴
  2. b.診断名
  3. c.アレルギー歴
  4. d.ワクチン接種歴
  5. e.日常生活の自立度

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は介護保険制度の主治医意見書がテーマだ。考えるときの軸はひとつで、「この書類は何のために使われるのか」。それがわかれば、必須の記載事項は自然に絞り込めるよ。
医学生医学生
紹介状みたいに、患者さんの情報をひととおり書く書類だと思っていました。
ドクタードクター
そう思う人は多いね。でも主治医意見書は、診療情報提供書とは目的がまったく違う。まず流れから確認しよう。介護保険のサービスを使うには、市町村に申請して要介護認定を受ける必要がある。申請を受けた市町村が、本人のかかりつけ医に意見書の作成を依頼するんだ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、認定には一次判定と二次判定があると習いました。
ドクタードクター
その通り。一次判定では、認定調査員の訪問調査の結果と意見書の一部の項目をもとに、コンピュータが介護にかかる時間を推計する。二次判定では、保健・医療・福祉の専門家からなる介護認定審査会が、一次判定の結果や調査の特記事項、そして主治医意見書を総合して要介護度を最終決定する。つまり意見書は、介護の手間がどれだけかかるかを医学的に裏づける資料なんだ。
医学生医学生
だとすると、生活機能が落ちた原因と、今どのくらい生活できているかが中心になりそうですね。
ドクタードクター
まさにそれが正解の考え方だ。意見書の様式は全国共通で、傷病に関する意見、特別な医療、心身の状態に関する意見、生活機能とサービスに関する意見、特記すべき事項という構成になっている。この中で必ず書くものを選ぶと、診断名と日常生活の自立度の2つになる。
医学生医学生
診断名は、生活機能低下の原因を示すために必要ということですか。
ドクタードクター
そう。傷病に関する意見の欄に、発症年月日とともに診断名を書く。生活機能低下の直接の原因になっている傷病を1番目に書くのがルールだ。さらに40〜64歳の第2号被保険者では、脳血管疾患や初老期における認知症、パーキンソン病関連疾患などの特定疾病に該当するかどうかでサービスを使えるかが決まるから、診断名は欠かせない。症状が安定しているかどうかや、投薬を含む治療内容も同じ欄に書くよ。
医学生医学生
日常生活の自立度というのは、寝たきり度のことでしょうか。
ドクタードクター
半分正解。心身の状態に関する意見の冒頭に、2種類の自立度を書く欄がある。ひとつは障害高齢者の日常生活自立度、いわゆる寝たきり度で、J、A、B、Cのランクに分かれる。もうひとつは認知症高齢者の日常生活自立度で、IからIV、そしてMに分かれる。どちらも介護の必要度を直接反映する指標だね。
医学生医学生
Jは独力で外出できる、Aは屋内はおおむね自立だけど介助なしには外出しない、Bはベッド上が主体だけど座位は保てる、Cは1日中ベッド上、でしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。認知症の方は、IIで「誰かが注意していれば自立できる」、IIIで介護が必要、IVで常に介護が必要、Mは著しい精神症状や重い身体疾患で専門医療が必要な状態、と押さえておこう。
医学生医学生
家族歴やアレルギー歴は、医療情報としては大事だと思うんですが、書かなくていいんですか。
ドクタードクター
大事な情報なのはその通り。でも要介護度の判定には使われないから、意見書に記載欄はない。家族歴は遺伝性疾患の診断では重要だけど、本人の介護の手間とは直接関係しないよね。なお、介護者がいるかどうかといった家族の介護力は、認定調査やケアマネジャーのアセスメントで把握するもので、家族歴とは別物だ。
医学生医学生
アレルギーは、サービスを受けるときに配慮が必要な場合もありそうです。
ドクタードクター
いい視点だ。そういう配慮が必要なら、サービス提供時の医学的な留意事項や特記すべき事項の欄に任意で書くことはできる。ただ必須項目ではない。ワクチン接種歴も同じで、記載欄はない。感染に関しては「感染症の有無」を書く項目があって、施設や通所サービスでの感染対策に使われるけれど、予防接種歴を問うものではないんだ。
医学生医学生
介護の必要度判定に直接関わるかどうか、という視点で選べばいいんですね。
ドクタードクター
そうだね。実際に意見書を書く立場になると、診断名を並べるだけでなく、その病気で生活のどこが困っているのかを具体的に書くことが大切になる。訪問調査は1回きりで、その日の調子がよいと実態より軽く判定されることもあるから、普段の様子を知る主治医の意見が二次判定で重みを持つんだ。ちなみに作成費用は介護保険から支払われ、申請者の自己負担はないよ。
医学生医学生
在宅医療の実習で、先生が「この欄をしっかり書かないと、本当に必要なサービスにつながらない」とおっしゃっていた意味がわかりました。

まとめ

主治医意見書は、要介護認定の申請を受けた市町村がかかりつけ医に作成を依頼する書類で、介護認定審査会による二次判定で「介護の手間」を医学的に裏づける重要資料となります。必ず記載するのは、生活機能低下の原因となる診断名(第2号被保険者では特定疾病該当の判断にも必要)と、障害高齢者および認知症高齢者の日常生活自立度で、ほかに症状の安定性、特別な医療、認知症症状、身体の状態、感染症の有無などの項目があります。一方、家族歴・アレルギー歴・ワクチン接種歴は要介護度の判定に用いないため記載欄はありません。書類の目的から記載内容を逆算する考え方を身につけておくと、将来主治医として意見書を書く際に、患者さんを必要な介護サービスへ確実につなぐことができます。

解答・解説

正解はb, eです

主治医意見書とは

介護保険の給付を受けるには、市町村に申請して要介護認定(または要支援認定)を受ける必要がある。申請を受けた市町村は、申請者のかかりつけ医(主治医)に「主治医意見書」の作成を依頼する(介護保険法第27条)。主治医がいない場合は市町村が指定する医師が診察して作成する。

要介護認定の流れと意見書の役割

認定は二段階で行われる。 ・一次判定: 認定調査員による訪問調査(基本調査74項目)の結果と主治医意見書の一部の項目をもとに、コンピュータで要介護認定等基準時間を推計する。 ・二次判定: 保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会が、一次判定結果・認定調査の特記事項・主治医意見書を総合して要介護度を最終決定する。 つまり主治医意見書は「介護の手間がどれだけかかるか」を医学的立場から裏づける資料であり、記載項目は生活機能の低下の原因となる病気と、その結果としての心身の状態・生活機能に焦点が当てられている。

考え方

意見書の様式は全国共通で、大きく「1. 傷病に関する意見」「2. 特別な医療」「3. 心身の状態に関する意見」「4. 生活機能とサービスに関する意見」「5. 特記すべき事項」で構成される。診断名は1に、日常生活の自立度は3に記載欄がある。一方、家族歴・アレルギー歴・ワクチン接種歴のような、一般の診療録や紹介状で扱う既往・背景情報の記載欄は設けられていない。介護の必要度判定に直接関わる情報かどうか、という視点で選ぶとよい。

選択肢考察

  1. ×a.  家族歴

    主治医意見書に家族歴の記載欄はない。家族歴は遺伝性疾患の診断などでは重要だが、本人の介護の手間の評価には直接関係しない。なお、介護者の有無や家族の介護力といった生活環境の情報は、認定調査の特記事項や介護支援専門員(ケアマネジャー)によるアセスメントで把握されるものであり、家族歴とは別物である。

  2. ○b.  診断名

    「1. 傷病に関する意見」に診断名の記載欄があり、発症年月日とともに記載する(最大3つ)。生活機能低下の直接の原因となっている傷病名を1番目に書くことになっており、40〜64歳の第2号被保険者では特定疾病(例: 脳血管疾患、初老期における認知症、パーキンソン病関連疾患など)に該当するかどうかが判定上重要になるため、診断名は欠かせない。同じ欄に、症状としての安定性(安定・不安定)や、経過・投薬内容を含む治療内容も記載する。

  3. ×c.  アレルギー歴

    アレルギー歴の記載欄は設けられていない。薬物アレルギーなどは診療情報提供書では重要な情報だが、要介護度の判定には用いられない。サービス提供時に医学的な配慮が必要な事項があれば、「4. 生活機能とサービスに関する意見」の留意事項欄や「5. 特記すべき事項」に任意で書くことはできるが、必須の項目ではない。

  4. ×d.  ワクチン接種歴

    ワクチン接種歴の記載欄はない。感染に関しては、「4. 生活機能とサービスに関する意見」の中に「感染症の有無」(有りの場合は病名を記入)という項目があり、施設入所や通所サービス利用時の感染対策の参考にされるが、予防接種の履歴を問う欄ではない。

  5. ○e.  日常生活の自立度

    「3. 心身の状態に関する意見」の冒頭に「日常生活の自立度等について」の欄があり、障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度: 自立、J1・J2、A1・A2、B1・B2、C1・C2)と、認知症高齢者の日常生活自立度(自立、I、IIa・IIb、IIIa・IIIb、IV、M)の2つを判定して記載する。これらは介護の必要度を直接反映する指標であり、認定審査会での判断や、要支援2と要介護1の振り分けなどにも活用される。

主治医意見書の主な構成

・基本情報: 申請者の氏名・生年月日、医師・医療機関名、最終診察日、意見書作成回数(初回・2回目以上)、他科受診の有無 ・1. 傷病に関する意見: 診断名と発症年月日、症状としての安定性、生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過および投薬内容を含む治療内容 ・2. 特別な医療: 過去14日間以内に受けた医療(点滴の管理、中心静脈栄養、透析、ストーマの処置、酸素療法、レスピレーター、気管切開の処置、疼痛の看護、経管栄養、モニター測定、褥瘡の処置、カテーテル) ・3. 心身の状態に関する意見: 日常生活の自立度(障害高齢者・認知症高齢者)、認知症の中核症状(短期記憶、日常の意思決定を行うための認知能力、自分の意思の伝達能力)、認知症の行動・心理症状(BPSD)、その他の精神・神経症状、身体の状態(利き腕、身長・体重、麻痺、筋力低下、関節の拘縮、褥瘡など) ・4. 生活機能とサービスに関する意見: 移動、栄養・食生活、現在あるかまたは今後発生の可能性の高い状態とその対処方針、サービス利用による生活機能の維持・改善の見通し、医学的管理の必要性、サービス提供時の医学的観点からの留意事項、感染症の有無 ・5. 特記すべき事項

日常生活自立度の目安

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度) ・ランクJ: 何らかの障害はあるが、日常生活はほぼ自立し独力で外出できる ・ランクA: 屋内の生活はおおむね自立しているが、介助なしには外出しない(準寝たきり) ・ランクB: 屋内でも何らかの介助を要し、日中もベッド上の生活が主体だが座位は保てる ・ランクC: 1日中ベッド上で過ごし、排泄・食事・着替えに介助を要する 認知症高齢者の日常生活自立度 ・I: 何らかの認知症はあるが、日常生活は家庭内・社会的にほぼ自立 ・II: 日常生活に支障を来す症状・行動や意思疎通の困難さが多少みられても、誰かが注意していれば自立できる(IIaは家庭外、IIbは家庭内でもみられる) ・III: 日常生活に支障を来す症状・行動や意思疎通の困難さがみられ、介護を必要とする(IIIaは日中中心、IIIbは夜間中心) ・IV: 上記の症状が頻繁にみられ、常に介護を必要とする ・M: 著しい精神症状や周辺症状、あるいは重篤な身体疾患がみられ、専門医療を必要とする

関連事項

・主治医意見書の作成費用は介護保険から支払われ、申請者の自己負担はない。 ・主治医は意見書の中で、意見書を介護サービス計画(ケアプラン)作成に利用することへの同意の有無も示す。

POINT

・要介護認定の申請があると、市町村は主治医に主治医意見書の作成を依頼する。 ・一次判定(認定調査+意見書の一部をもとにしたコンピュータ判定)→ 二次判定(介護認定審査会)で、意見書は二次判定の重要資料となる。 ・必須の記載内容: 診断名(生活機能低下の直接原因を1番目に)、症状の安定性、治療内容、特別な医療、日常生活自立度(寝たきり度・認知症)、認知症症状、身体の状態、生活機能とサービスに関する意見、感染症の有無など。 ・家族歴、アレルギー歴、ワクチン接種歴の欄はない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。