StudyMed医師国家試験

最後に書く一枚の重み―死亡診断書の「誰が・何を・どう書くか」

第113回医師国家試験 F問題 第24問

国試問題にチャレンジ

第113回 F問題 第24問

死亡診断書について正しいのはどれか。

  1. a.病院が届け出る。
  2. b.剖検所見は記載しない。
  3. c.署名と押印とが必要である。
  4. d.主治医以外は記載できない。
  5. e.死因として老衰と記載できる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は死亡診断書の基本ルールを問う問題だ。整理のポイントは、誰が作成して誰が届け出るのか、何を記載するのか、誰が書けるのか、そして死因として何を書けるのか、の4つ。医師になれば誰もが必ず書く書類だから、しっかり押さえておこう。
医学生医学生
死亡診断書は病院が役所に出すものだと思っていました。
ドクタードクター
そう思っている人は多いんだ。実は死亡診断書は、左半分が死亡届、右半分が死亡診断書になった1枚の用紙なんだよ。医師は右側を作成して交付し、左側の死亡届は同居の親族など戸籍法で定められた届出義務者が記入して、死亡を知った日から7日以内に市区町村へ提出する。葬儀業者が提出を代行することは多いけれど、届出人はあくまで親族などで、病院が届出の主体ではない。
医学生医学生
なるほど、医師は作成と交付まで、届け出るのは家族なんですね。
ドクタードクター
その通り。そのあと埋火葬許可証が出て、火葬や埋葬ができるようになる。次は記載内容だ。剖検所見は書くと思う?
医学生医学生
解剖の結果が出るのは死亡からだいぶ後なので、書かないのかなと思いました。
ドクタードクター
実は書く欄があるんだ。解剖の有無を記入し、解剖を行った場合は主要な所見を書く。手術についても、有無や部位、主要所見、手術年月日を書く欄がある。解剖で死因が明らかになれば、その内容を死因欄に反映させることも求められる。
医学生医学生
病理実習で病理解剖を見学したとき、先生が臨床診断と解剖所見の突き合わせが大事だとおっしゃっていたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそれが死因統計の質を支えているんだ。では署名と押印についてはどうかな。
医学生医学生
公文書なので、署名もはんこも両方必要という気がします。
ドクタードクター
ここが引っかけだね。この試験の当時は、医師が自筆で署名すれば押印は不要で、ゴム印や印字で記名した場合に押印が必要、つまり署名または記名押印のどちらかでよかった。両方必要というのは誤りだ。しかも行政手続きの押印見直しで、2021年度版以降の様式では押印欄そのものがなくなっている。
医学生医学生
では主治医が不在のときはどうなりますか。夜中に患者さんが亡くなったら、主治医が来るまで書けないのでしょうか。
ドクタードクター
その心配はいらない。死亡診断書は死亡を診断した医師が作成するもので、主治医に限られない。同じ病院で診療に関わっていた医師や、夜間に死亡を確認した当直医も、診察に基づいて判断すれば作成できる。歯科医師も死亡診断書は交付できるんだ。
医学生医学生
医師法第20条の24時間ルールも関係しますか。
ドクタードクター
関係するね。診療中の患者が最終診察から24時間以内に診療中の傷病で亡くなった場合は、死後に改めて診察しなくても交付できる。ただし24時間を超えたら書けない、というわけではない。死後に診察して診療中の傷病による死亡と判断できれば交付できる、と正しく理解しておこう。最後に老衰はどうかな。
医学生医学生
老衰ってあいまいな言葉なので、死因には書けないと思っていました。
ドクタードクター
そう思いがちだけど、正解はこれだ。高齢者で、ほかに死因となる病気や外因が見当たらない、いわゆる自然死の場合は、死因として老衰と記載できる。死因の種類は病死及び自然死に分類される。近年の人口動態統計では、老衰は悪性新生物、心疾患に次ぐ第3位なんだ。
医学生医学生
もし老衰の経過で誤嚥性肺炎を起こして亡くなったら、どう書けばいいですか。
ドクタードクター
その場合は誤嚥性肺炎を直接死因として書き、老衰はその原因として下の欄に書く。死因欄は直接死因から順にさかのぼって、一番下に原死因を書く構造になっているからね。また、心不全や呼吸不全を終末期の状態として書くことは避けるよう推奨されている。
医学生医学生
死亡診断書と死体検案書の使い分けも確認したいです。
ドクタードクター
大事なところだね。自分の診療管理下にある患者が、診療していた傷病に関連して亡くなった場合は死亡診断書。それ以外、たとえば外因死やその疑い、診療管理下にない人の死亡では死体を検案して死体検案書を交付する。死体検案書は医師しか交付できない。検案して異状を認めたら、医師法第21条により24時間以内に所轄警察署へ届け出る義務がある。
医学生医学生
研修医になったらすぐ書く場面が来そうなので、記入マニュアルにも目を通しておきます。

まとめ

死亡診断書は死亡届と1枚の用紙になっており、医師が作成・交付し、届出は同居の親族などが7日以内に市区町村へ行います。手術や解剖の有無と主要所見を記載する欄があり、作成は死亡を診断した医師であれば主治医に限られず、歯科医師も交付できます。署名と押印の両方は不要で、高齢者でほかに死因となる病態がない自然死では死因として老衰と記載でき、死因の種類は病死及び自然死に分類されます。診療管理下での傷病による死亡か否かで死亡診断書と死体検案書を使い分け、異状死は24時間以内に警察へ届け出ることも併せて押さえましょう。死亡診断書は個人の死を法的に証明すると同時に死因統計の基礎資料となるため、正確に書く力はすべての医師に求められます。

解答・解説

正解はeです

死亡診断書(死体検案書)は、人の死亡を医学的・法律的に証明する文書であり、同時に人口動態統計(死因統計)の基礎資料にもなる。医師法第19条第2項により、診察・検案をした医師は交付を求められたら正当な理由なく拒んではならず、第20条により、自ら診察しないで診断書を交付してはならないと定められている。 本問では、次の点を正しく理解しているかが問われている。 ・誰が作成し、誰が役所に届け出るのか(作成者は医師、届出人は親族など) ・何を記載するのか(死因の連鎖、手術・解剖の有無と所見など) ・誰が作成できるのか(死亡を診断した医師であればよく、主治医に限らない) ・死因として何を書けるのか(老衰も記載できる) これらを、厚生労働省の「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」の内容と照らし合わせて判断する。

選択肢考察

  1. ×a.  病院が届け出る。

    死亡診断書は、左半分が死亡届、右半分が死亡診断書(死体検案書)という1枚の用紙になっている。医師が死亡診断書の部分を作成して交付し、届出義務者(同居の親族など、戸籍法で定められた者)が死亡届の部分を記入して、死亡の事実を知った日から7日以内(国内の場合)に市区町村へ提出する。役所への提出を葬儀業者などが代行することは多いが、届出人は親族などであり、病院が届出の主体になるわけではない。

  2. ×b.  剖検所見は記載しない。

    死亡診断書には「解剖」の欄があり、解剖の有無を記入し、解剖を行った場合には主要な所見を記載する。手術についても同様に、手術の有無・部位・主要所見・手術年月日を記載する欄がある。解剖により死因が明らかになった場合、その内容を死因欄に反映させることも求められる。

  3. ×c.  署名と押印とが必要である。

    本試験の当時は、医師本人が自筆で署名していれば押印は不要であり、記名(ゴム印や印字など)の場合に押印が必要とされていた(署名または記名押印のいずれか)。したがって「署名と押印の両方が必要」という記述は誤りである。なお、行政手続きの押印見直しに伴い、2021年度版以降の様式では医師の押印欄そのものが廃止されている。

  4. ×d.  主治医以外は記載できない。

    死亡診断書は、患者の死亡を診断した医師が作成するもので、主治医に限られない。たとえば同じ病院で診療に関わっていた医師や、夜間に死亡を確認した当直医も、診察に基づいて死亡を判断すれば作成できる。なお、医師法第20条ただし書により、診療中の患者が最終の診察から24時間以内に診療中の傷病で死亡した場合は、改めて死後に診察しなくても死亡診断書を交付できる(24時間を超えた場合でも、死後に診察して診療中の傷病による死亡と判断できれば交付できる)。また、歯科医師も死亡診断書を交付できる。

  5. ○e.  死因として老衰と記載できる。

    高齢者で、死亡の原因となるほかの病気や外因が見当たらない、いわゆる自然死の場合には、死因として「老衰」と記載できる。死因の種類としては「病死及び自然死」に分類される。ただし、老衰から他の病態(たとえば誤嚥性肺炎)を併発して死亡した場合は、その病態を直接死因として書き、老衰は原因欄の下位に書くことになる。人口動態統計では、老衰は近年、悪性新生物、心疾患に次いで死因の第3位を占めている。

死亡診断書と死体検案書の使い分け

・死亡診断書:自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡したと認められる場合に交付する。医師または歯科医師が交付できる。 ・死体検案書:上記以外の場合、すなわち診療管理下にない者の死亡や、外因死・外因の関与が疑われる死亡などで、死体を検案して交付する。医師のみが交付できる。 ・死体を検案して異状があると認めた場合は、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない(医師法第21条)。

死亡診断書の主な記載事項

・氏名、性別、生年月日、死亡日時、死亡場所。 ・死亡の原因:Ⅰ欄に直接死因(ア)から、それを引き起こした原因(イ、ウ、エ)を因果関係の順に書き、最も下の欄に原死因(死亡の原因となった一連の事象のおおもとの病態)を書く。Ⅱ欄には直接には死因に関係しないが、経過に影響を及ぼした傷病を書く。発病(受傷)から死亡までの期間も記入する。 ・手術・解剖の有無と主要所見。 ・死因の種類:病死及び自然死、外因死(不慮の外因死、自殺、他殺など)、不詳の死。 ・傷病名は日本語で書き、略語やあいまいな表現(「心不全」「呼吸不全」を終末期の状態として書くことなど)は避けることが推奨されている。

死亡届の流れ

医師が死亡診断書を作成・交付 → 届出義務者(同居の親族など)が死亡届を市区町村に提出(死亡の事実を知った日から7日以内、国外での死亡は3か月以内) → 埋火葬許可証の交付。

POINT

・死亡診断書と死亡届は1枚の用紙。医師が作成し、届出は親族などが市区町村に行う(7日以内)。 ・解剖・手術の有無と所見を記載する欄がある。 ・死亡を診断した医師であれば主治医でなくても作成できる。歯科医師も死亡診断書は交付可(死体検案書は医師のみ)。 ・老衰は死因として記載でき、死因の種類は「病死及び自然死」。日本の死因順位は悪性新生物、心疾患、老衰の順(近年)。 ・押印:試験当時は署名なら押印不要(署名または記名押印)、2021年度以降の様式では押印欄自体が廃止。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。