StudyMed医師国家試験

1,000Hzは2倍で数える―オージオグラムから読み解く4分法の平均聴力レベル

第113回医師国家試験 F問題 第25問

国試問題にチャレンジ

第113回 F問題 第25問

両側難聴を主訴に受診した患者のオージオグラムを別に示す。  右耳の平均聴力レベル(4分法)はどれか。

第113回 F問題 第25問の問題画像
  1. a.(40+50+50+60)/4=50dB
  2. b.(40+50+60+70)/4=55dB
  3. c.(50+60+60+70)/4=60dB
  4. d.(50+60+70+80)/4=65dB
  5. e.(50+50+60+70)/4=57.5dB

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はオージオグラムから平均聴力レベルを計算する問題だ。ポイントは2つ。どの記号が右耳かを正しく読むことと、4分法の計算式を正確に覚えていること。まずはオージオグラムの見方から確認しよう。縦軸と横軸はそれぞれ何を表しているかな。
医学生医学生
横軸が周波数で、縦軸が聴力レベルのdBです。下に行くほど聞こえが悪い、でしたよね。
ドクタードクター
その通り。下に行くほど大きな音でないと聞こえない、つまり閾値が高いということだ。では、右耳と左耳の記号は?
医学生医学生
気導は右が○、左が×だったと思います。耳鼻咽喉科の臨床実習で、色も右が赤、左が青と教わりました。
ドクタードクター
よく覚えているね。骨導は右が⊏、左が⊐で表す。この問題では右耳を聞いているから、○をたどることになる。右耳は500Hzで50dB、1,000Hzで60dB、2,000Hzで70dBと、高音になるほど閾値が上がっていく右下がりの型だね。では4分法の式は?
医学生医学生
4つの周波数を足して4で割る……だから、500、1,000、2,000、4,000Hzを平均するんでしょうか。
ドクタードクター
そこが一番多い勘違いなんだ。4分法は「4つの値を足す」けれど、使う周波数は500Hz、1,000Hz、2,000Hzの3つだけ。会話音域の中心である1,000Hzに2倍の重みをつけて、500Hz+1,000Hz×2+2,000Hzを4で割る。
医学生医学生
なるほど、1,000Hzを2回数えるから分母が4になるんですね。右耳だと50+60+60+70で240、4で割って60dBです。
ドクタードクター
正解。では、ほかの計算がなぜ違うのか見ていこう。分子が40、50、50、60になっているものは何の値だと思う?
医学生医学生
右耳より10dBずつ低いので……左耳の×を読んでしまった場合ですか。
ドクタードクター
その通り。左耳で計算すれば50dBになるけれど、問われているのは右耳だ。記号の取り違えは試験でも臨床でも起こりやすいミスだね。次に、4,000Hzの80dBまで入れて単純平均した65dBはどうかな。
医学生医学生
さっきの僕の勘違いそのものです。4,000Hzは4分法には入らないし、1,000Hzも2倍にしていません。
ドクタードクター
そう。4,000Hzを入れるのは6分法で、500Hz+1,000Hz×2+2,000Hz×2+4,000Hzを6で割る。騒音性難聴や労災の評価で使われる計算法だ。250Hzから2,000Hzまでを単純平均した55dBも、250Hzを使う点と重みづけがない点で誤り。そして500Hzを2回数えた57.5dBは、2倍にする周波数を取り違えた計算だね。
医学生医学生
選択肢がどれも「ありがちなミス」になっているんですね。式を正確に覚えていないと引っかかりそうです。
ドクタードクター
まさにそれを狙った問題だ。さて、60dBという値は難聴の程度でいうとどのくらいだろう。
医学生医学生
日本聴覚医学会の分類で、40dB以上70dB未満が中等度難聴だったので、中等度難聴です。
ドクタードクター
よくできました。25dB未満が正常、25〜40dBが軽度、70〜90dBが高度、90dB以上が重度。もう一つ、この症例は骨導も気導とほぼ同じ値で、気骨導差がほとんどない。これは何を意味する?
医学生医学生
外耳・中耳ではなく内耳以降の障害、つまり感音難聴です。高音から悪くなる型なので、加齢性難聴を考えます。
ドクタードクター
いい推論だね。高音漸傾型の両側感音難聴は加齢性難聴でよくみられる。最後に計算法の使い分けもまとめておこう。3分法は500、1,000、2,000Hzの単純平均で中耳手術前後の評価などに、5分法は250Hzと4,000Hzも加えた単純平均で突発性難聴の重症度評価に使われる。そして4分法は最も一般的で、身体障害者福祉法の聴覚障害の認定にも用いられるんだ。
医学生医学生
4分法の結果が障害者手帳の判断にもつながるなら、記号の読み違いは患者さんの不利益に直結しますね。
ドクタードクター
その意識が大切だ。数字の計算そのものは簡単だけれど、どの耳のどの周波数を拾うかを一つずつ確認する習慣をつけておこう。

まとめ

オージオグラムは横軸が周波数、縦軸が聴力レベルで、気導は右耳が○、左耳が×、骨導は右が⊏、左が⊐で示されます。4分法の平均聴力レベルは(500Hz+1,000Hz×2+2,000Hz)÷4で求め、本例の右耳では(50+60+60+70)÷4=60dBとなり、中等度難聴に相当します。左右の記号の取り違え、4,000Hzや250Hzの混入、重みづけする周波数の誤りは典型的なミスであり、3分法・5分法・6分法の式と用途もあわせて整理しておくと混同を防げます。さらに気骨導差の有無から伝音難聴と感音難聴を見分けられ、本例のような高音漸傾型の感音難聴は加齢性難聴などでみられます。4分法は身体障害者の認定にも用いられるため、正確な読み取りと計算は臨床で患者の利益に直結する基本技能です。

解答・解説

正解はcです

オージオグラムの読み方

オージオグラム(純音聴力検査の結果を示す図)では、横軸が周波数(Hz)、縦軸が聴力レベル(dB)で、下に行くほど聞こえが悪い(大きな音でないと聞こえない)ことを示す。記号は決まっており、気導聴力は右耳が○(実線で結ぶ)、左耳が×(破線で結ぶ)、骨導聴力は右耳が⊏、左耳が⊐で表す。

本例の右耳(○)の気導閾値

125Hz 40dB、250Hz 40dB、500Hz 50dB、1,000Hz 60dB、2,000Hz 70dB、4,000Hz 80dB、8,000Hz 100dB と、高い周波数ほど閾値が上昇する右下がりの型である。 (参考:左耳(×)は 500Hz 40dB、1,000Hz 50dB、2,000Hz 60dB、4,000Hz 70dB である。骨導閾値は両耳とも気導閾値とほぼ同じ値にあり、気導と骨導の差(気骨導差)がほとんどないことから、両側の感音難聴と考えられる。)

4分法の計算

4分法の平均聴力レベルは、会話音域の中心である1,000Hzに2倍の重みをつけて、 (500Hzの閾値+1,000Hzの閾値×2+2,000Hzの閾値)÷4 で求める。右耳の値を代入すると、 (50+60+60+70)÷4=240÷4=60dB となる。 この値は日本聴覚医学会の難聴の程度分類では中等度難聴(40dB以上70dB未満)に相当する。

選択肢考察

  1. ×a.  (40+50+50+60)/4=50dB

    500Hz 40dB、1,000Hz 50dB(2回)、2,000Hz 60dBという値は、左耳(×)の気導閾値を4分法で計算したものである。左耳の平均聴力レベルは50dBであるが、設問が問うているのは右耳(○)なので誤りである。右耳と左耳の記号を取り違えないことが重要である。

  2. ×b.  (40+50+60+70)/4=55dB

    右耳の250Hz(40dB)、500Hz(50dB)、1,000Hz(60dB)、2,000Hz(70dB)の4周波数を、重みをつけずに単純平均したものである。4分法では250Hzは用いず、1,000Hzを2倍して計算するので誤りである。

  3. ○c.  (50+60+60+70)/4=60dB

    右耳の気導閾値は500Hzが50dB、1,000Hzが60dB、2,000Hzが70dBである。4分法の式(500Hz+1,000Hz×2+2,000Hz)÷4に正しく当てはめると、(50+60+60+70)÷4=60dBとなり、これが右耳の平均聴力レベルである。

  4. ×d.  (50+60+70+80)/4=65dB

    右耳の500Hz(50dB)、1,000Hz(60dB)、2,000Hz(70dB)、4,000Hz(80dB)の4周波数を単純平均したものである。4分法には4,000Hzは含まれず、1,000Hzを2倍にする必要もあるため誤りである。4,000Hzを含める計算は6分法(騒音性難聴の評価などに用いる)で行う。

  5. ×e.  (50+50+60+70)/4=57.5dB

    右耳の値を用いているが、2倍にすべき1,000Hz(60dB)ではなく500Hz(50dB)を2回数えてしまっている。4分法で重みをつけるのは1,000Hzであり、計算式の取り違えによる誤りである。

平均聴力レベルの計算法(a:500Hz、b:1,000Hz、c:2,000Hz、d:4,000Hzの閾値)

・3分法:(a+b+c)÷3。中耳手術前後の聴力評価などに用いる。 ・4分法:(a+2b+c)÷4。最も一般的に用いられ、身体障害者福祉法の聴覚障害の認定にも使われる。 ・5分法:(250Hz+a+b+c+d)÷5。突発性難聴など急性感音難聴の重症度評価や治療効果判定に用いる。 ・6分法:(a+2b+2c+d)÷6。騒音性難聴や労災補償における聴力評価などに用いる。

オージオグラムの記号

・気導:右○、左×。 ・骨導:右⊏、左⊐。 ・スケールアウト(最大出力でも聞こえない)は記号に下向きの矢印をつけて示す。

難聴の程度分類(日本聴覚医学会、平均聴力レベル)

・正常:25dB未満 ・軽度難聴:25dB以上40dB未満 ・中等度難聴:40dB以上70dB未満 ・高度難聴:70dB以上90dB未満 ・重度難聴:90dB以上

難聴の型の見分け方

・伝音難聴:骨導は正常で気導のみ悪い(気骨導差あり)。外耳・中耳の障害。 ・感音難聴:気導・骨導ともに同程度に悪い(気骨導差なし)。内耳・後迷路の障害。本例のような高音漸傾型は加齢性難聴(老人性難聴)などでみられる。 ・混合難聴:骨導も悪いうえに気骨導差もある。

POINT

・4分法=(500Hz+1,000Hz×2+2,000Hz)÷4。1,000Hzを2倍にする。 ・オージオグラムの記号:右耳は○(気導)・⊏(骨導)、左耳は×(気導)・⊐(骨導)。 ・本例の右耳:(50+60+60+70)÷4=60dB(中等度難聴)。 ・3分法・5分法・6分法の用途と計算式も併せて覚える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。