StudyMed医師国家試験

ビール、ダッシュ、そして薬の飲み始め―痛風発作は「尿酸値の上昇」と「急な変動」で起こる

第111回医師国家試験 A問題 第20問

国試問題にチャレンジ

第111回 A問題 第20問

痛風発作の原因になるのはどれか。3つ選べ。

  1. a.禁煙
  2. b.ビールの大量摂取
  3. c.急激な激しい運動
  4. d.乳製品の大量摂取
  5. e.高尿酸血症治療薬の開始

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は痛風発作の誘因を選ぶ問題だ。ポイントは、発作を起こすものを「尿酸値を上げるもの」と「尿酸値を急に動かすもの」の2つに分けて考えること。この枠組みがあれば、丸暗記しなくても各選択肢を判断できるよ。まず、痛風発作がどうして起こるのか説明できるかな。
医学生医学生
高尿酸血症が続いて、関節に尿酸の結晶がたまって炎症を起こす、ですよね。基礎医学の生化学で、ヒトはウリカーゼを持たないから尿酸値が上がりやすいと習いました。
ドクタードクター
その通り。正確には尿酸ナトリウムの結晶が関節内に沈着し、それを好中球などが異物として攻撃して起こる結晶誘発性関節炎だ。血清尿酸値が7.0 mg/dLを超えると高尿酸血症とされ、第1中足趾節関節、つまり足の親指の付け根に突然、激痛・発赤・腫脹が出るのが典型だね。
医学生医学生
尿酸値が高いほど発作が起きやすいなら、尿酸を下げる薬を飲み始めるのは発作を防ぐ方向に働きそうです。高尿酸血症治療薬の開始は誘因じゃない気がするんですが。
ドクタードクター
そこがこの問題で一番ひっかかりやすいところだ。尿酸降下薬を始めて血清尿酸値が急に下がると、関節内に沈着していた結晶の表面が溶けて不安定になり、結晶が関節腔に剥がれ落ちる。それに好中球が反応して発作が起こるんだ。動員発作と呼ばれることもある。だから高尿酸血症治療薬の開始は正しい誘因なんだよ。
医学生医学生
尿酸値が下がっても発作が起こるんですね。上がるときだけでなく、急に動くことが問題なんだ。
ドクタードクター
そういうこと。だから尿酸降下薬は発作が治まってから少量で始め、数か月かけて徐々に増量する。必要に応じてコルヒチンを少量併用して発作を予防することもある。では次に、ビールの大量摂取はどうかな。
医学生医学生
ビールはプリン体が多いから、ですよね。
ドクタードクター
半分正解。実はアルコール自体が種類を問わず尿酸値を上げる。肝臓でエタノールが代謝されるときにATPが消費され、その分解産物がプリン体分解経路に流れ込んで尿酸の産生が増える。さらに代謝で生じた乳酸が腎尿細管で尿酸の排泄と競合し、利尿作用による脱水も加わる。そこへ麦芽由来のプリン体が上乗せされるのがビールなんだ。
医学生医学生
産生の増加と排泄の低下の両方なんですね。プリン体ゼロのビールなら安心、というわけではないと。
ドクタードクター
その理解で大丈夫。急激な激しい運動も同じ考え方で説明できるよ。
医学生医学生
短距離走や筋トレみたいな無酸素運動だと、筋肉でATPがどんどん分解されて尿酸ができて、乳酸もたまって排泄が落ちる……ということでしょうか。
ドクタードクター
完璧だ。汗による脱水も加わって尿酸値が一過性に上がるし、関節への物理的な負荷や局所の温度低下も結晶の析出や剥離を促すと考えられている。だから患者さんには、激しい無酸素運動ではなく、水分をとりながらの軽い有酸素運動を勧めるんだ。では残りの2つ。禁煙はどう?
医学生医学生
禁煙すると体重が増えやすいので、それで尿酸値が上がる……とか考えてしまいました。
ドクタードクター
発想は面白いけれど、喫煙・禁煙のいずれも尿酸値や痛風発作の誘発との明確な関連は示されていない。むしろ痛風の患者さんは高血圧や脂質異常症、心血管疾患を合併しやすいから、心血管予防の観点から禁煙は勧めるべきものなんだ。
医学生医学生
乳製品はどうでしょう。牛乳やチーズは栄養が多いので、プリン体も多そうなイメージがあります。
ドクタードクター
それはよくある誤解だね。プリン体は核酸に由来するから、細胞の数が多い食品、つまりレバーなどの内臓、魚卵、干物に多い。乳製品はプリン体をほとんど含まず、疫学研究では乳製品の摂取が多いほど尿酸値が低く、痛風のリスクも低いことが示されている。鶏卵も大きくても1つの細胞だからプリン体は少ないんだ。
医学生医学生
臨床実習で腎臓内科を回ったとき、栄養指導で「卵や牛乳は大丈夫」と説明していたのはそういう理由だったんですね。
ドクタードクター
いいつながりだね。最後に臨床での注意点をまとめよう。発作中はNSAIDsを短期間、比較的大量に使い、ステロイドも選択肢になる。前兆期ならコルヒチンが有効だ。そして発作中に尿酸降下薬を新しく始めたり用量を変えたりはしない。ただし、すでに飲んでいる薬は中止せずに続けるのが原則だ。
医学生医学生
止めるのも尿酸値を急に動かすことになるから、ですね。発作が落ち着いてから少量で始めて、目標は尿酸値6.0 mg/dL以下でしたっけ。
ドクタードクター
その通り。ほかにもサイアザイド系やループ利尿薬、少量アスピリン、ピラジナミドなど尿酸値を上げる薬があるから、内服歴の確認も忘れずにね。果糖を多く含む清涼飲料水も尿酸値を上げるから、生活指導では飲酒やプリン体だけでなく甘い飲み物にも触れておきたい。

まとめ

痛風発作は、関節内に沈着した尿酸ナトリウム結晶に好中球が反応して起こる急性関節炎で、その誘因は「尿酸値を上げるもの」と「尿酸値を急に変動させるもの」に整理できます。ビールをはじめとするアルコールの大量摂取や急激な無酸素運動は、尿酸の産生亢進・排泄低下・脱水を通じて尿酸値を上げ、尿酸降下薬の開始や増量は急な尿酸値低下により結晶を剥がれ落ちさせて発作を誘発します。一方、禁煙は尿酸値と明らかな関係がなく、乳製品はプリン体が少なくむしろ尿酸値を下げる方向に働きます。治療では発作が治まってから尿酸降下薬を少量で始めて徐々に増量し、血清尿酸値6.0 mg/dL以下を目標とし、発作中は服用中の薬を中止せず用量も変えません。誘因を病態から理解しておくことは、試験対策だけでなく、患者への生活指導や薬物療法の安全な導入にも直結します。

解答・解説

正解はb, c, eです

痛風は、高尿酸血症が持続した結果、関節内に尿酸ナトリウム(尿酸塩)の結晶が沈着し、その結晶に対して好中球などが反応して起こる急性の結晶誘発性関節炎である。高尿酸血症は性・年齢を問わず血清尿酸値7.0 mg/dLを超えるものと定義される。発作は第1中足趾節関節(足の親指の付け根)に好発し、激痛・発赤・腫脹が突然出現する。 痛風発作の誘因を考えるうえで重要なのは、次の2点である。 ①血清尿酸値を上昇させる要因:プリン体の過剰摂取、尿酸の産生亢進(アルコール、激しい運動、果糖の過剰摂取など)、尿酸の排泄低下(脱水、乳酸の増加、利尿薬など)。 ②血清尿酸値の急激な変動:尿酸値が急に下がると、関節内に沈着していた結晶の表面が溶けて不安定になり、結晶が関節腔内に剥がれ落ちて炎症を引き起こす。このため尿酸降下薬の開始直後や増量時にも発作が起こりうる。 つまり「尿酸値を上げるもの」と「尿酸値を急に動かすもの」が発作の誘因となる。これに当てはまるのは、ビールの大量摂取、急激な激しい運動、高尿酸血症治療薬の開始である。禁煙は尿酸値と明らかな関係がなく、乳製品はむしろ尿酸値を下げる方向に働く。

選択肢考察

  1. ×a.  禁煙

    喫煙・禁煙のいずれも、血清尿酸値や痛風発作の誘発との明確な関連は示されていない。喫煙は動脈硬化を進めるため、高尿酸血症・痛風患者が合併しやすい心血管疾患の予防の観点からは禁煙が推奨されるが、禁煙そのものが痛風発作を引き起こすことはない。

  2. ○b.  ビールの大量摂取

    アルコール(エタノール)は種類を問わず尿酸値を上げる。肝臓でエタノールが代謝される際にATPが消費され、その分解産物であるアデニンヌクレオチドがプリン体分解経路に流れ込んで尿酸の産生が増える。さらにエタノール代謝により生じる乳酸が、腎尿細管で尿酸と排泄を競合して尿酸の排泄を低下させる。アルコールの利尿作用による脱水も尿酸濃度を高める。これに加えて、ビールは原料の麦芽などに由来するプリン体を比較的多く含むため、大量摂取では尿酸値がより上がりやすい。このため飲酒、とりわけビールの多飲は代表的な発作誘因である。

  3. ○c.  急激な激しい運動

    短距離走や筋力トレーニングのような無酸素運動を急に激しく行うと、筋肉でATPが大量に消費・分解されてプリン体の代謝が亢進し、尿酸の産生が増える。同時に、無酸素運動で生じた乳酸が腎での尿酸排泄を妨げ、発汗による脱水も加わって血清尿酸値が一過性に上昇する。また運動による関節への物理的な負荷や局所の温度低下も、結晶の析出や剥離を促す要因になると考えられている。このため急激な激しい運動は発作の誘因となる。高尿酸血症の患者には、無酸素運動ではなく軽い有酸素運動を、十分な水分補給とともに行うよう指導する。

  4. ×d.  乳製品の大量摂取

    牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品はプリン体をほとんど含まない食品である。さらに疫学研究では乳製品の摂取量が多いほど血清尿酸値が低く、痛風の発症リスクも低いことが示されており、乳蛋白には尿酸の排泄を促す作用があると考えられている。したがって乳製品の摂取は痛風発作の原因にはならず、高尿酸血症の食事療法でも推奨される食品の一つである。

  5. ○e.  高尿酸血症治療薬の開始

    アロプリノールやフェブキソスタット(尿酸生成抑制薬)、ベンズブロマロン(尿酸排泄促進薬)などの尿酸降下薬を開始すると、血清尿酸値が急速に低下する。すると関節内に沈着していた尿酸塩結晶の表面が溶けて結晶が遊離し、これが関節腔内で炎症を引き起こして発作が誘発される(いわゆる動員発作)。このため尿酸降下薬は発作が治まってから少量で開始し、数か月かけて徐々に増量する。必要に応じてコルヒチンを少量併用して発作を予防する。また、発作中に新たに尿酸降下薬を開始したり、既に服用中の薬の量を変更したりすると発作が増悪するおそれがあるため避ける(服用中の薬は中止せず継続する)。

尿酸の産生と排泄

尿酸はプリン体(核酸の構成成分であるアデニン、グアニンなど)の最終代謝産物であり、キサンチンオキシダーゼによりヒポキサンチン→キサンチン→尿酸と変換される。体内のプリン体の大部分は細胞の代謝で内因性に生じ、食事由来は一部である。尿酸の約3分の2は腎臓から、残りは腸管から排泄される。ヒトは尿酸を分解する酵素(ウリカーゼ)を持たないため、高尿酸血症をきたしやすい。

食品とプリン体

プリン体は核酸に由来するため、単位重量あたりの細胞数が多い食品ほど多く含まれる。レバーなどの内臓類、魚卵(たらこ、白子など)、干物、ビールなどに多い。一方、鶏卵は大きくても1個の細胞であるためプリン体は極めて少なく、乳製品や野菜もプリン体が少ない。果糖(ショ糖や清涼飲料水を含む)の過剰摂取も、肝臓でのATP分解を介して尿酸値を上げる。

痛風発作の治療と尿酸管理

・発作時:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を短期間比較的大量に用いる。副腎皮質ステロイドも使用でき、発作の前兆期にはコルヒチンが有効である。発作中は尿酸降下薬の新規開始や用量変更を行わない。 ・発作が治まった後:尿酸降下薬を少量から開始し、血清尿酸値6.0 mg/dL以下を目標に維持する。 ・生活指導:飲酒制限、プリン体・果糖の摂取制限、肥満の是正、十分な飲水(尿量の確保)、適度な有酸素運動。

尿酸値を上げる主な薬剤

サイアザイド系・ループ利尿薬、少量アスピリン、ピラジナミド、エタンブトール、シクロスポリンなど。

POINT

・痛風発作の誘因は「尿酸値を上げるもの」と「尿酸値を急に変動させるもの」 ・アルコール(特にビール)、無酸素運動・激しい運動、脱水、プリン体・果糖の過剰摂取は尿酸値を上げる ・尿酸降下薬は発作が治まってから少量で開始し、徐々に増量する(開始・増量時の急激な尿酸低下で発作が誘発される) ・乳製品は尿酸値を下げる方向に働く。喫煙・禁煙は尿酸値と明らかな関係がない ・尿酸管理目標は血清尿酸値6.0 mg/dL以下

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。