尿酸は「つくる」と「捨てる」で決まる―高尿酸血症の原因からFanconi症候群を見抜く
第112回医師国家試験 A問題 第3問
国試問題にチャレンジ
高尿酸血症をきたさないのはどれか。
- a.サイアザイド系利尿薬
- b.Lesch-Nyhan症候群
- c.腫瘍崩壊症候群
- d.Fanconi症候群
- e.慢性腎不全
対話形式の解説
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ドクターまとめ
血清尿酸値は、プリン体の分解による「産生」と、主に腎臓からの「排泄」のバランスで決まり、高尿酸血症は産生過剰型・排泄低下型・混合型に分けて整理できます。Lesch-Nyhan症候群(HGPRT欠損)や腫瘍崩壊症候群は産生過剰、慢性腎不全やサイアザイド系・ループ利尿薬は排泄低下によって高尿酸血症をきたします。一方、Fanconi症候群は近位尿細管の再吸収が全般的に障害され、糖・アミノ酸・リン・重炭酸とともに尿酸も尿中へ失われるため、むしろ低尿酸血症となります。同じ腎疾患でも、ろ過の低下か再吸収の障害かで尿酸値の動きが逆になる点が重要です。尿酸の出入りという一つの軸で考える習慣は、薬剤性の変化や低尿酸血症も含めた臨床判断に役立ちます。
解答・解説
正解はdです
問われていること
高尿酸血症とは、血清尿酸値が7.0 mg/dLを超える状態をいう(性別・年齢を問わない)。本問は、選択肢のうち高尿酸血症の原因にならないものを1つ選ぶ問題である。
尿酸の出入りで考える
尿酸はプリン体(核酸の構成成分であるアデニン・グアニンなど)が肝臓で分解されてできる最終産物である。ヒトは尿酸をさらに分解する酵素(ウリカーゼ)をもたないため、尿酸は主に腎臓から尿へ、一部は腸管から便へ排泄される。腎臓では、糸球体でろ過された尿酸の大部分が近位尿細管でいったん再吸収され、その後の分泌などを経て、最終的にろ過量のおよそ1割前後が尿中に出る。 したがって血清尿酸値は「つくる量」と「捨てる量」のバランスで決まり、高尿酸血症は次の3つに分けられる。 ・産生過剰型:プリン体の合成亢進(Lesch-Nyhan症候群など)や細胞の大量崩壊(腫瘍崩壊症候群、化学療法、溶血など) ・排泄低下型:腎機能低下(慢性腎不全)、薬剤(サイアザイド系・ループ利尿薬、少量アスピリンなど)、乳酸・ケトン体の増加など ・混合型
解き方
各選択肢を「産生が増えるか」「排泄が減るか」で判定する。サイアザイド系利尿薬と慢性腎不全は排泄低下、Lesch-Nyhan症候群と腫瘍崩壊症候群は産生過剰で、いずれも高尿酸血症をきたす。これに対しFanconi症候群は近位尿細管での再吸収が障害され、尿酸が尿へ失われる。つまり「捨てる量が増える」病態であり、むしろ低尿酸血症となる。
選択肢考察
- ×a. サイアザイド系利尿薬
高尿酸血症をきたす(排泄低下型)。サイアザイド系利尿薬は近位尿細管で尿酸と同じ有機陰イオン輸送体を使って尿細管腔へ分泌されるため、尿酸の分泌と競合する。さらに利尿によって循環血液量が減ると、近位尿細管での再吸収が全体に高まり、尿酸の再吸収も増える。この結果、尿酸の尿中排泄が減って血清尿酸値が上がる。ループ利尿薬も同様の機序で高尿酸血症を起こし、痛風発作の誘因となることがある。
- ×b. Lesch-Nyhan症候群
高尿酸血症をきたす(産生過剰型)。Lesch-Nyhan症候群はX連鎖劣性遺伝の疾患で、プリン体の再利用経路(サルベージ経路)の酵素であるヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)が欠損する。ヒポキサンチンやグアニンを再利用できないため、これらが尿酸へ分解されてしまう。加えて、使われずに余ったPRPP(ホスホリボシルピロリン酸)が増えてプリン体の新規合成(de novo合成)も亢進し、尿酸が大量につくられる。男児に発症し、高尿酸血症・尿酸結石・痛風のほか、自傷行為(唇や指を噛む)、不随意運動、知的障害を伴うことが特徴である。
- ×c. 腫瘍崩壊症候群
高尿酸血症をきたす(産生過剰型)。腫瘍崩壊症候群は、抗癌薬などで腫瘍細胞が短期間に大量に壊れたときに、細胞の内容物が一気に血中へ放出されて起こる代謝異常である。細胞の核酸から放出されたプリン体が肝臓で尿酸へ分解されるため、高尿酸血症となる。同時にカリウムやリンも細胞内から流出して高カリウム血症・高リン血症を、リンと結合したカルシウムが沈着して低カルシウム血症をきたす。尿酸やリン酸カルシウムが尿細管に析出すると急性腎障害を起こす。白血病や悪性リンパ腫(特にBurkittリンパ腫)など増殖の速い腫瘍で起こりやすく、予防・治療には大量輸液やアロプリノール・フェブキソスタット、ラスブリカーゼ(尿酸分解酵素製剤)を用いる。
- ○d. Fanconi症候群
高尿酸血症をきたさない。Fanconi症候群は近位尿細管の再吸収機能が全般的に障害される病態で、本来ここで再吸収されるブドウ糖、アミノ酸、リン、重炭酸、尿酸などが尿中に漏れ出る。その結果、腎性糖尿(血糖は正常なのに尿糖陽性)、汎アミノ酸尿、低リン血症、近位尿細管性アシドーシス(2型RTA)、そして尿酸の排泄増加による低尿酸血症をきたす。小児ではシスチン症などの先天代謝異常、成人では多発性骨髄腫(軽鎖による尿細管障害)や薬剤(イホスファミド、テノホビルなど)、重金属が原因となる。低リン血症によりくる病・骨軟化症を合併することがある。
- ×e. 慢性腎不全
高尿酸血症をきたす(排泄低下型)。尿酸の排泄の主経路は腎臓であるため、糸球体濾過量(GFR)が低下すると尿酸のろ過・排泄が減り、血清尿酸値が上昇する。腎機能が低下するほど腸管からの排泄の割合が増えて一部代償されるが、十分ではない。逆に高尿酸血症自体も腎障害の進行因子となりうる(痛風腎)。
尿酸の代謝経路
プリンヌクレオチド(AMP・GMP)→ ヒポキサンチン → キサンチン → 尿酸。ヒポキサンチン→キサンチン→尿酸の2段階を触媒するのがキサンチンオキシダーゼ(キサンチン酸化還元酵素)で、アロプリノール・フェブキソスタット・トピロキソスタットはこれを阻害して尿酸産生を抑える。
二次性高尿酸血症の主な原因
・産生過剰:Lesch-Nyhan症候群(HGPRT完全欠損)、PRPP合成酵素活性亢進症、腫瘍崩壊症候群、白血病・骨髄増殖性腫瘍、溶血性貧血、乾癬、糖原病I型(von Gierke病)、高プリン食(レバー、魚卵、干物など)、過度のアルコール摂取(ATP分解亢進による)、果糖の大量摂取 ・排泄低下:慢性腎臓病、利尿薬(サイアザイド系・ループ)、少量アスピリン、ピラジナミド・エタンブトール、シクロスポリン、乳酸アシドーシス・ケトアシドーシス(乳酸やケトン体が尿酸の排泄と競合)、脱水、鉛中毒
低尿酸血症の主な原因
・産生低下:キサンチン尿症(キサンチンオキシダーゼ欠損)、重症肝障害、アロプリノールなどの尿酸生成抑制薬 ・排泄増加:腎性低尿酸血症(URAT1やGLUT9の遺伝子異常。日本人に比較的多く、運動後急性腎障害や尿路結石の原因になる)、Fanconi症候群、SIADH(体液量増加による再吸収低下)、尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロン)
POINT
・高尿酸血症=血清尿酸値 7.0 mg/dL超。産生過剰型・排泄低下型・混合型に分けて考える ・産生過剰:Lesch-Nyhan症候群(HGPRT欠損、自傷行為)、腫瘍崩壊症候群 ・排泄低下:慢性腎不全、サイアザイド系・ループ利尿薬、少量アスピリン、アシドーシス ・Fanconi症候群は近位尿細管の再吸収障害(糖・アミノ酸・リン・重炭酸・尿酸が尿中へ)→ 低尿酸血症
