StudyMed医師国家試験

卵巣は止まっても下垂体は元気―Turner症候群の成人期を見据える

第111回医師国家試験 A問題 第19問

国試問題にチャレンジ

第111回 A問題 第19問

Turner症候群の成人期にきたしやすいのはどれか。3つ選べ。

  1. a.無月経
  2. b.骨粗鬆症
  3. c.耐糖能異常
  4. d.下垂体機能低下症
  5. e.低コレステロール血症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、Turner症候群の女性が大人になったときにどんな問題を抱えやすいかを問う問題だ。小児期の特徴だけでなく、その先の長い人生で何が起こるかに目を向ける必要がある。ポイントは「どこが障害されていて、どこは保たれているか」を見きわめることだよ。
医学生医学生
Turner症候群は、X染色体が1本しかない45,Xの女性ですよね。遺伝学の講義で習いました。
ドクタードクター
そう。ただ45,Xは約半数で、残りは45,X/46,XXのようなモザイクや、等腕染色体などのX染色体の構造異常なんだ。出生女児のおよそ2,000〜2,500人に1人とされる。症状は2つの軸で整理するとわかりやすい。ひとつは性腺異形成、もうひとつはX染色体上の遺伝子、特にSHOX遺伝子の量の不足だ。
医学生医学生
SHOXの不足が低身長や外反肘、第4中手骨の短縮につながるんでしたね。性腺のほうはどうなるんですか。
ドクタードクター
卵巣は胎児期にはいったんできるんだけど、卵胞が急速に失われて、線維性の索状性腺になってしまう。だから思春期になってもエストロゲンが出ず、二次性徴が来ないまま原発性無月経になる。成人期でも無月経は最も代表的な特徴で、これは正解のひとつだ。
医学生医学生
モザイクの人だと、一度は月経が来ることもあると聞いた気がします。
ドクタードクター
よく知っているね。モザイク例などでは月経が始まっても早いうちに卵巣機能が尽きて、続発性無月経、つまり早発卵巣不全になることがある。治療としてはエストロゲンを補充して、子宮内膜が育ってきたら黄体ホルモンも加えて周期的に消退出血を起こす。Kaufmann療法だね。
医学生医学生
エストロゲンがずっと足りないなら、閉経後の女性と同じように骨も弱くなりそうです。
ドクタードクター
まさにその発想でいい。骨量を獲得して維持するにはエストロゲンが欠かせない。思春期にエストロゲンが出ないと、最大骨量、いわゆるピーク・ボーン・マスが十分に積み上がらない。だから若いうちから骨密度が低く、成人期には骨粗鬆症や骨折のリスクが高くなる。適切な時期からエストロゲンを補充することが予防の鍵になるんだ。
医学生医学生
耐糖能異常は少し意外でした。肥満が関係しているんでしょうか。
ドクタードクター
肥満も一因だけど、それだけではないんだ。Turner症候群ではインスリン抵抗性とインスリン分泌能の低下の両方が関わって、小児期から耐糖能異常がみられることがあり、成人では2型糖尿病の頻度が一般女性より明らかに高い。低身長の治療に使う成長ホルモンも耐糖能を悪くしうる。だから定期的に血糖やHbA1cをチェックすることが勧められているよ。これで正解は3つそろったね。
医学生医学生
下垂体機能低下症はどうでしょう。低身長に成長ホルモンを使うということは、成長ホルモンが足りないからなのかと思っていました。
ドクタードクター
そこが今回いちばんの引っかけだね。Turner症候群の低身長はSHOX遺伝子の不足による骨の成長障害で、成長ホルモンの分泌は通常保たれている。それでも成長ホルモン療法で身長の改善が期待できるから使う、という位置づけなんだ。性腺機能低下も卵巣そのものの障害、つまり原発性だよ。
医学生医学生
卵巣からの負のフィードバックがなくなるので、FSHやLHはむしろ高くなるんですね。
ドクタードクター
その通り。高ゴナドトロピン性性腺機能低下症だ。下垂体はちゃんと働いていて、だからこそゴナドトロピンが上がる。下垂体機能低下症はきたしやすい合併症とはいえない。では最後の低コレステロール血症は?
医学生医学生
エストロゲンは肝臓のLDL受容体を増やしてLDLを下げるので、欠乏しているならむしろ高くなりそうです。
ドクタードクター
正解。そこに肥満や耐糖能異常、橋本病による甲状腺機能低下症の合併も加わって、コレステロールは正常から高値になりやすい。問題になるのは脂質異常症のほうで、低コレステロール血症ではないんだ。
医学生医学生
整理すると、卵巣が止まることでエストロゲン欠乏が起こり、そこから無月経と骨粗鬆症、さらに代謝の問題として耐糖能異常、ということですね。
ドクタードクター
よくまとまったね。成人期の管理でもう一つ強調しておきたいのが心血管系だ。大動脈縮窄症や二尖大動脈弁が多く、大人になると大動脈の拡張や解離のリスクがある。高血圧の管理と、定期的な画像評価が欠かせないんだ。
医学生医学生
小児科の実習で、小児期から成人の診療科へつなぐ移行期医療の話を聞きましたが、Turner症候群はまさにその対象ですね。
ドクタードクター
その通り。ほかにも中耳炎や感音難聴、自己免疫性甲状腺炎などにも目を配る必要がある。また、核型にY染色体成分を含む場合は性腺芽腫などの性腺腫瘍のリスクがあり、予防的な性腺摘除が検討される。比較として、男性の性染色体異常であるKlinefelter症候群も原発性性腺機能低下でゴナドトロピン高値となり、骨粗鬆症や耐糖能異常をきたしやすい点が共通しているよ。

まとめ

Turner症候群は45,Xなどの核型をもつ女性の性染色体異常症で、卵巣が索状性腺となる原発性性腺機能低下症と、SHOX遺伝子の不足による低身長・骨格異常が二本柱です。成人期にはエストロゲン欠乏による無月経や、最大骨量の獲得不足による骨粗鬆症がみられ、インスリン抵抗性と分泌低下による耐糖能異常・2型糖尿病も起こりやすくなります。一方、下垂体機能は保たれており、負のフィードバック消失によってFSH・LHは高値を示し、脂質はエストロゲン欠乏などにより高値になりやすいため、下垂体機能低下症や低コレステロール血症は当てはまりません。大動脈拡張・解離、高血圧、甲状腺機能低下症、難聴なども含め、小児期から成人期へ切れ目なく合併症を管理する移行期医療の視点が重要です。「どこが障害され、どこが保たれているか」を区別して考えることは、性腺機能低下症全般の病態理解にも通じます。

解答・解説

正解はa, b, cです

Turner症候群は、2本あるべきX染色体の1本が全部または一部欠失している女性の性染色体異常症である。核型は45,Xが約半数で、残りは45,X/46,XXなどのモザイクやX染色体の構造異常(等腕染色体など)である。出生女児のおよそ2,000〜2,500人に1人の頻度とされる。 主な症状は次の2つの軸で整理できる。 ①性腺異形成:卵巣は胎児期には形成されるが、卵胞が急速に失われて索状性腺(streak gonad)となる。このため思春期になってもエストロゲンが分泌されず、二次性徴の欠如・原発性無月経をきたす。卵巣からの負のフィードバックが働かないため、FSH・LHは高値となる(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症)。 ②X染色体上の遺伝子(特に低身長ホメオボックス遺伝子SHOX)の量の不足による症状:低身長、外反肘、第4中手骨短縮などの骨格異常、翼状頸、リンパ浮腫、心血管系・腎の奇形など。 成人期には、長期のエストロゲン欠乏に関連する骨粗鬆症、また代謝面では耐糖能異常・2型糖尿病、脂質異常症、高血圧、甲状腺機能低下症(橋本病)などの合併が増える。下垂体そのものの機能は保たれていることがポイントであり、低身長も成長ホルモン分泌不全によるものではない。

選択肢考察

  1. ○a.  無月経

    卵巣が索状性腺となりエストロゲンが産生されないため、多くの患者で二次性徴が発来せず、原発性無月経となる(卵巣性無月経)。モザイク例などでは一度月経が始まっても早期に卵巣機能が廃絶し、続発性無月経・早発卵巣不全となることがある。治療としてエストロゲン補充療法を行い、子宮内膜の増殖が得られた後は黄体ホルモンを併用して周期的な消退出血を起こす(Kaufmann療法)。成人期に無月経をきたすことは本症候群の最も代表的な特徴である。

  2. ○b.  骨粗鬆症

    骨量の獲得と維持にはエストロゲンが不可欠であり、思春期以降もエストロゲンが欠乏したままであるTurner症候群では、最大骨量(ピーク・ボーン・マス)が十分に得られず、若年から骨密度が低い。成人期には骨粗鬆症と骨折のリスクが高く、適切な時期からのエストロゲン補充療法がその予防に重要である。なお骨量低下の主因は性ホルモンの欠乏であり、成長ホルモンの分泌不全によるものではない。

  3. ○c.  耐糖能異常

    Turner症候群では、インスリン抵抗性とインスリン分泌能低下の双方が関与して、小児期から耐糖能異常を示すことがあり、成人では2型糖尿病の頻度が一般女性より明らかに高い。肥満の合併や、低身長治療として用いる成長ホルモンの影響も耐糖能を悪化させうる。このため定期的な血糖・HbA1cの評価が推奨される。脂質異常症や高血圧も合併しやすく、心血管疾患リスクの管理が成人期の重要な課題である。

  4. ×d.  下垂体機能低下症

    Turner症候群の性腺機能低下は卵巣自体の障害(原発性)によるものであり、下垂体は正常に機能している。むしろ卵巣からのエストロゲンやインヒビンによる負のフィードバックが失われるため、FSH・LHは高値を示す。低身長も主にSHOX遺伝子の量の不足による骨の成長障害で、成長ホルモンの分泌は通常保たれている(それでも成長ホルモン療法で身長の改善が期待できるため、治療に用いられる)。したがって下垂体機能低下症はきたしやすい合併症とはいえない。

  5. ×e.  低コレステロール血症

    エストロゲンには肝臓のLDL受容体を増やして血中LDLコレステロールを下げる作用がある。エストロゲンが欠乏するTurner症候群では、肥満や耐糖能異常、甲状腺機能低下症の合併も加わって、コレステロールはむしろ正常〜高値となりやすく、脂質異常症(高コレステロール血症)が問題となる。低コレステロール血症はみられない。

Turner症候群の主な特徴

・性腺:索状性腺、原発性無月経、二次性徴欠如、不妊。FSH・LH高値、エストロゲン低値。核型にY染色体成分を含む場合は性腺腫瘍(性腺芽腫)のリスクがあり、予防的性腺摘除が検討される。 ・成長:低身長(SHOX遺伝子のハプロ不全による)。成長ホルモン療法の適応となる。 ・外表奇形:翼状頸、後頸部の毛髪線低位、盾状胸、外反肘、第4中手骨短縮、多発色素性母斑、新生児期の手足のリンパ浮腫。 ・心血管:大動脈縮窄症、二尖大動脈弁が多い。成人期には大動脈拡張・大動脈解離のリスクがあり、高血圧の管理と定期的な画像評価が重要である。 ・腎:馬蹄腎などの腎奇形。 ・その他:中耳炎・感音難聴、自己免疫性甲状腺炎による甲状腺機能低下症、セリアック病、肝機能異常。知能は通常正常範囲だが、空間認知などの特定領域の苦手さがみられることがある。

成人期に問題となる合併症

骨粗鬆症、耐糖能異常・2型糖尿病、脂質異常症、高血圧、大動脈拡張・解離、甲状腺機能低下症、難聴など。小児期から成人期への移行期医療(トランジション)が重視される。

比較:Klinefelter症候群(47,XXYなど)

男性の性染色体異常で、高身長、精巣萎縮、無精子症、女性化乳房を示す。こちらも原発性性腺機能低下でゴナドトロピン高値となり、骨粗鬆症や耐糖能異常をきたしやすい。

POINT

・Turner症候群(45,Xなど)は卵巣が索状性腺となる原発性性腺機能低下症:原発性無月経、FSH・LH高値 ・低身長はSHOX遺伝子の不足による(成長ホルモン分泌は正常だが、成長ホルモン療法の適応となる) ・成人期には骨粗鬆症、耐糖能異常・糖尿病、脂質異常症(高コレステロール)、高血圧、大動脈解離、甲状腺機能低下症に注意 ・下垂体機能は保たれる

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。