1本足りなくても生まれてくる―Turner症候群だけが示す「数の減少」
第118回医師国家試験 C問題 第26問
国試問題にチャレンジ
染色体数の減少が原因となる疾患はどれか。
- a.Down症候群
- b.Klinefelter症候群
- c.Marfan症候群
- d.Prader-Willi症候群
- e.Turner症候群
対話形式の解説
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ドクターまとめ
染色体異常は「数の異常」と「構造の異常」に分けられ、さらに単一遺伝子病やゲノムインプリンティング異常とは区別して理解する必要があります。常染色体のモノソミーは原則として致死的なため、出生児にみられる染色体数の減少は事実上X染色体モノソミーであるTurner症候群(45,X)に限られます。Down症候群(21トリソミー)とKlinefelter症候群(47,XXY)は数の増加、Marfan症候群はFBN1遺伝子変異による単一遺伝子病、Prader-Willi症候群は15q11-q13の父由来アレルの機能喪失によるインプリンティング疾患で、いずれも本数の減少ではありません。Turner症候群は低身長、原発性無月経、翼状頸、大動脈縮窄症などを特徴とし、Y成分を含むモザイクでは性腺腫瘍に注意が必要です。遺伝性疾患を原因のカテゴリーごとに整理しておくことは、低身長や無月経の鑑別、遺伝カウンセリングの理解の土台になります。
解答・解説
正解はeです
染色体異常は大きく「数の異常」と「構造の異常」に分けられ、さらに単一遺伝子の変異やゲノムインプリンティング(親由来によって遺伝子の発現が変わる現象)の異常による疾患とは区別して理解する必要がある。 数の異常のうち、正常の2本より1本多い状態をトリソミー(例: 47本)、1本少ない状態をモノソミー(例: 45本)という。常染色体のモノソミーは原則として生存できず流産に終わるため、出生児にみられる「染色体数の減少」による疾患は、事実上X染色体のモノソミーであるTurner症候群(45,X)に限られる。 選択肢を「数の増加」「数の減少」「単一遺伝子病」「インプリンティング異常」の4群に振り分けて考えると、減少に該当するのはTurner症候群のみである。
選択肢考察
- ×a. Down症候群
21番染色体が3本存在する21トリソミー(標準型は47,XX,+21または47,XY,+21)であり、染色体数の「増加」による疾患である。なお約5%はRobertson転座による転座型、数%はモザイク型で、転座型では染色体総数は46本だが21番染色体長腕の過剰という点は同じである。
- ×b. Klinefelter症候群
X染色体が過剰な男性で、代表的な核型は47,XXYである。性染色体の数が「増加」した疾患であり、高身長、小さく硬い精巣、無精子症による男性不妊、女性化乳房などを呈する。
- ×c. Marfan症候群
15番染色体上のフィブリリン1をコードするFBN1遺伝子の変異による常染色体顕性(優性)遺伝の結合組織疾患である。染色体の数や形態に異常はない単一遺伝子病で、高身長・くも状指などの骨格症状、水晶体偏位、大動脈基部拡張・大動脈解離が特徴である。
- ×d. Prader-Willi症候群
15番染色体長腕(15q11-q13)の父由来アレルが機能しないことで生じるインプリンティング疾患である。原因は父由来染色体の微細欠失が約70%、母性片親性ダイソミーが約25%などであり、染色体数は46本で数の減少ではない。新生児期の筋緊張低下・哺乳不良、幼児期以降の過食と肥満、知的障害、性腺機能低下が特徴である。
- ○e. Turner症候群
X染色体が1本しかない45,X(45,XOとも表記)が代表的核型で、染色体総数が45本に減少した疾患である。したがって「染色体数の減少が原因となる疾患」に該当する。モザイク(45,X/46,XX)やX染色体の構造異常(同腕染色体など)の例もあるが、典型例はX染色体モノソミーである。
染色体異常・遺伝性疾患の整理
・常染色体トリソミー: Down症候群(21トリソミー)、Edwards症候群(18トリソミー)、Patau症候群(13トリソミー) ・性染色体の数の増加: Klinefelter症候群(47,XXY)、トリプルX(47,XXX)、47,XYY ・性染色体の数の減少: Turner症候群(45,X) ・微細欠失症候群: 22q11.2欠失症候群、Williams症候群(7q11.23)、猫鳴き症候群(5p欠失、構造異常) ・インプリンティング疾患: Prader-Willi症候群(父由来15q11-q13の機能喪失)、Angelman症候群(母由来UBE3Aの機能喪失) ・単一遺伝子病: Marfan症候群(FBN1)など
Turner症候群の臨床像
・低身長(成長ホルモン治療の対象となる) ・卵巣形成不全(索状性腺)による原発性無月経・二次性徴の欠如、ゴナドトロピン高値(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症) ・翼状頸、外反肘、第4中手骨短縮、楯状胸、新生児期の手足のリンパ浮腫 ・大動脈縮窄症、二尖大動脈弁などの心血管合併症、馬蹄腎 ・知能は概ね正常 ・Y染色体成分を含むモザイクでは性腺腫瘍(性腺芽腫)のリスクがあり、予防的性腺摘出を考慮する
なぜ出生児の数の減少はTurner症候群のみか
常染色体のモノソミーは遺伝子量の不足が大きく致死的である。X染色体は女性では1本が不活化されているため、1本欠けても生存しうる。ただし45,Xの胎児の大部分も流産に終わり、出生に至るのはごく一部である。
POINT
・染色体数の減少(モノソミー)で出生に至るのはTurner症候群(45,X)のみ ・Down症候群(21トリソミー)とKlinefelter症候群(47,XXY)は数の増加 ・Marfan症候群はFBN1遺伝子変異による単一遺伝子病(常染色体顕性遺伝) ・Prader-Willi症候群は15q11-q13のインプリンティング異常(父由来欠失、母性片親性ダイソミー)
