首のひだと肘の角度が教えるもの―Turner症候群は「染色体」で確かめる
第114回医師国家試験 F問題 第40問
国試問題にチャレンジ
14歳の女子。低身長を主訴に母親とともに来院した。身長132cm(-2.0 SD以下)。翼状頸と外反肘を認める。 基礎疾患を診断するために行うべき検査はどれか。
- a.GH測定
- b.遺伝子検査
- c.染色体検査
- d.手根骨エックス線撮影
- e.血中エストラジオール測定
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
女児の低身長に翼状頸・外反肘などの特徴的な身体所見が伴えば、まずTurner症候群を疑います。Turner症候群はX染色体の全体または一部の欠失による染色体異常症であり、確定診断は末梢血リンパ球のGバンド法による染色体検査(核型分析)で行います。GH測定、骨年齢、エストラジオール測定は低身長や性腺機能の評価には役立ちますが確定診断にはならず、遺伝子検査は核型正常のNoonan症候群などを疑う場面で用います。核型でY染色体成分が見つかれば性腺腫瘍予防の性腺摘出を検討し、GH療法やエストロゲン補充、心血管・腎・甲状腺などの合併症スクリーニングを計画します。疾患の本質がどのレベルの異常かを見極めて検査を選ぶ考え方は、先天異常症候群全般の診断に通じる重要な視点です。
解答・解説
正解はcです
所見の整理
・14歳女子で、主訴は低身長。身長132cmで、同年齢女子の平均から−2.0 SD以下にある。−2.0 SD以下は病的な低身長として精査の対象となる。 ・翼状頸(頸部の両側に皮膚のひだが張り出し、首が短く太く見える状態)がある。 ・外反肘(肘を伸ばしたとき、前腕が上腕に対して通常より強く外側に開く状態)がある。
診断へのプロセス
女児の低身長に翼状頸・外反肘という特徴的な身体所見が加われば、まずTurner症候群を考える。翼状頸は、胎児期のリンパ管の発達異常によって生じた頸部の浮腫(嚢胞性ヒグローマ)の名残とされる。外反肘や低身長は、X染色体の短腕にあるSHOX遺伝子が1コピーしかないこと(ハプロ不全)による骨格の異常と考えられている。14歳という年齢から、二次性徴の遅れや欠如(性腺異形成による)も伴っている可能性が高い。 女児で身体所見が似る疾患にNoonan症候群がある。Noonan症候群は翼状頸・低身長を示すが、染色体核型は正常で、RAS/MAPK経路の遺伝子変異による。両者を区別する意味でも、まず核型を確認する必要がある。
設問への考え方
問われているのは「基礎疾患(=Turner症候群)を確定するための検査」である。Turner症候群はX染色体の数や構造の異常(45,X、モザイク、X短腕欠失、同腕染色体など)による疾患なので、確定診断は末梢血リンパ球のGバンド法による染色体検査(核型分析)で行う。GH測定・骨年齢・性ホルモン値は低身長の評価や合併症の把握に役立つが、いずれも診断を確定できない。
選択肢考察
- ×a. GH測定
誤り。GH(成長ホルモン)の分泌刺激試験は、成長ホルモン分泌不全性低身長症の診断に用いる。Turner症候群の低身長の主因はSHOX遺伝子のハプロ不全による骨格の成長障害で、GHの分泌は通常保たれている。そのため、GHを測ってもTurner症候群の診断にはつながらない。なお、Turner症候群と診断されれば、GH分泌が正常でもGH治療の保険適用があり、最終身長の改善が期待できる。
- ×b. 遺伝子検査
誤り。Turner症候群は、特定の遺伝子の点変異による単一遺伝子疾患ではない。X染色体1本の全体または一部が欠けている染色体異常症である。SHOX遺伝子の量の不足が症状の一部に関わるものの、診断に必要なのは染色体の数と構造を調べる核型分析である。一般的な遺伝子変異の検査では確定診断できない。遺伝子検査は、Noonan症候群(PTPN11などの変異)など単一遺伝子疾患を疑うときに考慮する。
- ○c. 染色体検査
正しい。Turner症候群の確定診断は染色体検査(Gバンド法による核型分析)で行う。代表的な核型は45,Xで、ほかに45,X/46,XXなどのモザイク、X短腕の欠失、X長腕の同腕染色体〔46,X,i(Xq)〕などがある。核型でY染色体成分が見つかった場合(45,X/46,XYなど)は、性腺芽腫などの性腺腫瘍が発生しやすくなるため、予防的な性腺摘出を検討する。その意味でも、染色体検査は治療方針の決定に欠かせない。
- ×d. 手根骨エックス線撮影
誤り。手根骨を含む手のエックス線撮影は骨年齢の評価に使う。低身長の鑑別(甲状腺機能低下症やGH分泌不全での骨年齢の遅れ、体質性思春期遅発症など)や、残りの成長の見込み(GH治療の適応判断)の評価には役立つ。Turner症候群では第4中手骨の短縮がみられることもあるが、これは特異的な所見ではなく、画像だけでは診断を確定できない。
- ×e. 血中エストラジオール測定
誤り。Turner症候群では卵巣が線維性の索状性腺となるため、思春期年齢ではエストラジオールが低く、ゴナドトロピン(FSH・LH)が高くなる(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症)。この所見から原発性の卵巣機能不全はわかるが、Turner症候群に特有の所見ではなく、確定診断にはならない。診断がついた後は、エストロゲン補充療法を始める時期の判断に使われる。
Turner症候群の概要
・頻度: 出生女児約2,000〜2,500人に1人。比較的多い性染色体異常である。 ・核型: 45,X(約半数)、モザイク(45,X/46,XXなど)、X染色体の構造異常(Xp欠失、i(Xq)、環状Xなど)。
主な臨床像
・低身長: 成長率は小児期から徐々に落ち、思春期の成長スパートもないため、治療しなければ成人身長は一般女性より約20cm低くなる。 ・性腺異形成: 卵母細胞が早く失われ、卵巣は索状性腺となる。多くは二次性徴が起こらず原発性無月経となるが、モザイク例では自然に月経が来た後に続発性無月経となることもある。 ・身体所見: 翼状頸、後頭部の毛髪線が低い、楯状胸(乳頭間の距離が広い)、外反肘、第4中手骨の短縮、多発する色素性母斑、新生児期の手足のリンパ浮腫。 ・合併症: 心血管系(大動脈縮窄症、二尖大動脈弁、大動脈拡張・解離)、腎奇形(馬蹄腎など)、中耳炎・難聴、甲状腺機能低下症(橋本病)、耐糖能異常、高血圧、骨粗鬆症。 ・知能: 多くは正常範囲である。ただし、空間認知などの苦手さがみられることがある。
治療
・GH療法: 身長を伸ばすことを目的に行う。GH分泌が正常でも適応がある。 ・エストロゲン補充療法: 思春期の年齢になったら少量から始め、二次性徴を誘導する。骨量も維持する。その後は周期的にプロゲスチンを併用する。 ・合併症の定期検査: 心エコー、腎エコー、聴力、甲状腺機能など。 ・Y染色体成分がある場合: 性腺腫瘍の予防のため性腺摘出を考える。
低身長の鑑別に用いる主な検査
・染色体検査: Turner症候群などの染色体異常 ・GH分泌刺激試験、IGF-1: 成長ホルモン分泌不全性低身長症 ・甲状腺機能検査: 甲状腺機能低下症 ・骨年齢: 成長障害の種類の推定、残された成長の評価
POINT
・女児の低身長+翼状頸・外反肘を見たら、まずTurner症候群を疑う。 ・確定診断は染色体検査(核型分析)で行う。代表的な核型は45,Xで、モザイクも多い。 ・Turner症候群の低身長はGH分泌不全によるものではない(SHOXハプロ不全による)が、GH治療の適応はある。 ・性腺異形成により、高ゴナドトロピン性性腺機能低下症(FSH高値・エストラジオール低値)となる。 ・Y染色体成分を含む場合は性腺腫瘍のリスクがあり、性腺摘出を検討する。
