StudyMed医師国家試験

「老衰」は書いていい?―死亡診断書の作成者・届出・記載ルールを整理する

第109回医師国家試験 G問題 第18問

国試問題にチャレンジ

第109回 G問題 第18問

死亡診断書について正しいのはどれか。

  1. a.病院が届け出る。
  2. b.剖検所見は記載しない。
  3. c.署名と押印とが必要である。
  4. d.主治医以外は記載できない。
  5. e.死因として老衰と記載できる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は死亡診断書の基本ルールを問う問題だ。死亡診断書は、人の死亡を医学的・法律的に証明する文書で、戸籍の抹消に使われるだけでなく、人口動態統計の死因統計の基礎資料にもなる。誰が書き、誰が届け出て、何を書くのか、の3点を整理しておこう。
医学生医学生
公衆衛生の講義で書式を見ましたけど、実際に書くイメージはまだ湧かないです。
ドクタードクター
研修医になると早い段階で書く機会があるから、今のうちに押さえておくと安心だよ。まず届出から。死亡診断書は病院が役所に届け出るものだと思っていないかな。
医学生医学生
正直、病院が出してくれるものだと思っていました。
ドクタードクター
よくある誤解だね。死亡診断書は死亡届と一体の用紙になっていて、左半分が死亡届、右半分が死亡診断書だ。医師が右側を書いて遺族などに渡し、届出義務者が死亡の事実を知った日から7日以内に市区町村長へ提出する。届出義務者は戸籍法で決まっていて、第一に同居の親族なんだ。医師や病院に届出の義務はない。
医学生医学生
なるほど、受理されると火葬許可証が出るんでしたよね。では、書けるのは主治医だけですか。
ドクタードクター
そこも違う。死亡診断書は死亡を診断した医師が作成するもので、主治医に限られない。当直医が死亡を確認した場合や、在宅医療で主治医から診療情報を引き継いだ医師でも書けるし、歯科医師も作成できるよ。
医学生医学生
医師法20条で、自分で診察せずに診断書を出してはいけない、と習いました。それとの関係はどうなりますか。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。診療中の患者さんが最終診察から24時間以内に、診療していた傷病に関連して亡くなった場合は、改めて死後に診察しなくても交付できる。24時間を超えていても、死後に診察して生前に診療していた傷病に関連する死亡と判断できれば交付できるんだ。
医学生医学生
24時間を超えたら必ず警察に届けるわけではないんですね。CBTの勉強のときに勘違いしていました。
ドクタードクター
そこは混同しやすいポイントだ。警察への届出は医師法21条で、死体を検案して異状があると認めた場合に24時間以内に届け出る、というものだ。診療していない患者さんの死亡や外因死が疑われる場合には、死亡診断書ではなく死体検案書を作成する。次に記載内容を見よう。剖検所見は書くのかな。
医学生医学生
解剖の結果は後から出るので、書かないものだと思っていました。
ドクタードクター
実は、死亡診断書には「解剖」の欄があって、病理解剖や行政解剖が行われた場合は主要所見を記載する。「手術」の欄もあって、術式や所見、手術日を書く。剖検所見は死因を正確に記載するための重要な情報なんだ。
医学生医学生
署名と押印はどうでしょう。公的な書類なので両方必要な気がします。
ドクタードクター
出題当時の規定でも、医師が自筆で署名すれば押印は不要で、押印が必要なのは記名、つまりゴム印や印字で済ませたときだけだった。両方が必要なわけではない。さらに2021年の改正で押印自体が廃止され、今は署名または記名でよいとされているよ。
医学生医学生
となると、正解は死因として老衰と記載できる、ですね。でも老衰って医学的な病名と言えるんでしょうか。
ドクタードクター
その疑問はもっともだね。記入マニュアルでは、老衰は「高齢者でほかに記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合」に用いるとされている。ただし、老衰から誤嚥性肺炎などを併発して亡くなった場合は、その病態を直接死因として書き、医学的な因果関係に応じて老衰を原死因として下の欄に書くんだ。近年の人口動態統計では、老衰は死因順位の上位を占めているね。
医学生医学生
死亡の原因欄は、直接死因から原因をさかのぼって書くんでしたよね。
ドクタードクター
そう。Ⅰ欄に直接死因から順に因果関係をさかのぼって書き、一番下に書いた傷病が原死因になる。死因統計にはこの原死因が使われるから、「心不全」「呼吸不全」のような終末期の状態だけを漫然と書くのではなく、それを引き起こした疾患まで書くことが求められる。直接は死因に関係しないが経過に影響した傷病はⅡ欄に書くよ。
医学生医学生
内科の実習で、指導医の先生が「心不全とだけ書くと統計の役に立たない」とおっしゃっていた意味がわかりました。
ドクタードクター
まさにそれ。死因の種類も、病死及び自然死、外因死、不詳の死から選ぶ。一枚の診断書がご遺族の手続きにも、国の保健医療政策の基礎データにもなる。正確に、丁寧に書くことが医師の大切な仕事なんだ。

まとめ

死亡診断書は、死亡を診断した医師(または歯科医師)が作成する文書で、主治医に限られず、当直医なども作成できます。死亡届と一体の用紙になっており、病院ではなく同居の親族などの届出義務者が、死亡の事実を知った日から7日以内に市区町村長へ提出します。手術や解剖が行われた場合は主要所見を記載する欄があり、医師の氏名は署名または記名でよく、現在は押印も不要です。老衰は高齢者でほかに記載すべき死因がない自然死の場合に死因として記載でき、死亡の原因欄は直接死因から原死因へと因果関係をさかのぼって記載します。死亡診断書は死因統計の基礎となるため、作成のルールを正しく理解しておくことは臨床医として欠かせません。

解答・解説

正解はeです

死亡診断書は、人の死亡を医学的・法律的に証明する文書であり、戸籍の抹消(死亡届)に用いられるほか、人口動態統計(死因統計)の基礎資料にもなる。本問は、その作成者・届出の流れ・記載内容に関する基本事項を問う一般問題である。 押さえるべき事項は次のとおりである。 ・作成者:死亡を診断した医師(または歯科医師)が作成する。自ら診療していた傷病に関連して死亡した場合は死亡診断書を、それ以外(生前に診療していない、異状死の可能性があるなど)では死体を検案して死体検案書を作成する。 ・届出:死亡診断書は死亡届と一体の用紙(左半分が死亡届、右半分が死亡診断書)になっており、届出義務者(同居の親族など)が、死亡の事実を知った日から7日以内(国外での死亡は3か月以内)に市区町村長へ提出する。 ・記載内容:死亡の原因は、直接死因から順に原因をさかのぼってⅠ欄に記載し、直接には死因に関係しないが経過に影響を及ぼした傷病はⅡ欄に記載する。手術や解剖が行われた場合はその主要所見を記載する欄がある。 ・死因の種類:病死及び自然死、外因死(交通事故、窒息、自殺、他殺など)、不詳の死に分類して記載する。 これらに照らすと、高齢者でほかに記載すべき死亡原因がない、いわゆる自然死の場合には死因として「老衰」と記載することが認められており、これが正しい選択肢である。

選択肢考察

  1. ×a.  病院が届け出る。

    誤り。死亡診断書は医師が作成して遺族などに交付し、それと一体になった死亡届とともに届出義務者が市区町村長へ提出する。届出義務者は戸籍法で定められており、第一に同居の親族、次いでその他の同居者、家主・地主・家屋や土地の管理人などとされ、同居していない親族や後見人なども届け出ることができる。医師や病院に届出の義務があるわけではない。

  2. ×b.  剖検所見は記載しない。

    誤り。死亡診断書には「解剖」の欄があり、病理解剖や行政解剖などが行われた場合は、その有無とともに死因に関わる主要所見を記載する。同様に「手術」の欄もあり、手術が行われた場合は術式や主要所見、手術年月日を記載する。剖検所見は死因をより正確に記載するための重要な情報である。

  3. ×c.  署名と押印とが必要である。

    誤り。出題当時の規定では、医師が自筆で署名すれば押印は不要であり、押印が必要なのは氏名を記名(ゴム印や印字など)で済ませた場合に限られていた。すなわち署名と押印の両方が必要なわけではない。なお、2021年の省令改正により押印自体が廃止され、現在は医師の署名または記名でよいとされている。

  4. ×d.  主治医以外は記載できない。

    誤り。死亡診断書は死亡を診断した医師が作成するものであり、主治医に限られない。例えば、当直医や、在宅医療で主治医から診療情報を引き継いだ医師が死亡を確認した場合でも、その医師が作成できる。医師法第20条では、医師は自ら診察しないで診断書を交付してはならないとされるが、診療中の患者が最終診察後24時間以内に、診療していた傷病に関連して死亡した場合には、改めて死後の診察をしなくても死亡診断書を交付できる。24時間を超えていても、死後に診察して生前に診療していた傷病に関連する死亡と判断できれば交付できる。また歯科医師も死亡診断書を作成できる。

  5. ○e.  死因として老衰と記載できる。

    正しい。死亡診断書の記入マニュアルでは、老衰は「高齢者でほかに記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合」に用いるとされている。ただし、老衰から他の病態(誤嚥性肺炎など)を併発して死亡した場合は、その病態を直接死因として記載し、医学的因果関係に応じて老衰を原死因として下欄に記載する。なお、人口動態統計では老衰は近年死因順位の上位を占めている。

死亡診断書と死体検案書の使い分け

・死亡診断書:診療継続中の患者が、診療に係る傷病と関連して死亡した場合 ・死体検案書:上記以外の場合(診療中でない患者の死亡、外因死や異状死の疑いがある場合など) 死体を検案して異状があると認めたときは、医師は24時間以内に所轄警察署に届け出る義務がある(医師法第21条)。

死亡の原因欄の書き方

Ⅰ欄:(ア)直接死因、(イ)(ア)の原因、(ウ)(イ)の原因、(エ)(ウ)の原因と、因果関係の順に記載し、最も下に書いた傷病が原死因となる。各傷病について発病(受傷)から死亡までの期間も記載する。 Ⅱ欄:直接には死因に関係しないが、Ⅰ欄の傷病経過に影響を及ぼした傷病を記載する。 死因統計にはⅠ欄の原死因が用いられるため、「心不全」「呼吸不全」などの終末期の状態を漫然と書くのではなく、それを引き起こした疾患を記載することが求められる。

死因の種類

病死及び自然死/外因死(不慮の外因死:交通事故、転倒・転落、溺水、煙・火災及び火焔による傷害、窒息、中毒、その他。その他及び不詳の外因死:自殺、他殺、その他及び不詳の外因)/不詳の死

死亡届

届出義務者は、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡した場合は3か月以内)に、死亡者の本籍地・届出人の所在地・死亡地のいずれかの市区町村長へ届け出る。死亡届が受理されると火葬許可証が交付される。

POINT

・死亡診断書は死亡を診断した医師(歯科医師)が作成し、主治医に限らない ・死亡届と一体の用紙で、家族などの届出義務者が7日以内に市区町村長へ提出する(病院が届け出るのではない) ・手術・解剖が行われた場合は主要所見を記載する欄がある ・医師の氏名は署名または記名でよい(現在は押印不要) ・老衰は、高齢者でほかに記載すべき死因がない自然死の場合に記載できる

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。