StudyMed医師国家試験

小脳に潜む小児の悪性腫瘍―年齢と部位で読み解く髄芽腫

第107回医師国家試験 I問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第107回 I問題 第2問

小児でよくみられる脳腫瘍はどれか。

  1. a.膠芽腫
  2. b.髄芽腫
  3. c.髄膜腫
  4. d.下垂体腺腫
  5. e.悪性リンパ腫

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は脳腫瘍の好発年齢を問う知識問題だ。脳腫瘍は組織型によって「どの年齢に」「脳のどこに」できやすいかがはっきり分かれている。小児と成人で顔ぶれがどう違うかを整理するのが着眼点だよ。
医学生医学生
小児の固形腫瘍というと、神経芽腫やWilms腫瘍が先に浮かびます。脳腫瘍はあまり整理できていません。
ドクタードクター
実は小児の固形腫瘍のなかで、脳腫瘍は白血病に次いで多いグループなんだ。そして小児では成人と比べて、小脳や脳幹といったテント下、あるいは鞍上部・松果体部などの正中部にできる腫瘍の割合が高い。この「部位の違い」も年齢とセットで覚えると強いよ。
医学生医学生
成人だと大脳半球、テント上に多いというイメージですね。では、選択肢の中で小児に多いのは髄芽腫でしょうか。
ドクタードクター
正解。髄芽腫は小脳に発生する未分化な胎児性腫瘍で、小児の悪性脳腫瘍の代表格だ。主に10歳未満に多く、男児にやや多い。小児脳腫瘍全体でも、星細胞腫に次いで多い組織型とされている。
医学生医学生
小脳虫部にできて、第四脳室を押しつぶすんでしたよね。
ドクタードクター
そう。第四脳室が閉塞すると髄液の流れがせき止められて閉塞性水頭症になる。だから、朝方の頭痛や嘔吐、うっ血乳頭といった頭蓋内圧亢進症状と、虫部障害による体幹失調、つまり歩くときのふらつきで見つかることが多いんだ。
医学生医学生
小児科実習で、「朝に吐くけれど胃腸炎らしくない子は頭蓋内も考えて」と言われたのを思い出しました。
ドクタードクター
大事な教えだね。下痢がなく、朝に繰り返す嘔吐とふらつきがあれば、頭部画像を考える価値がある。では、ほかの選択肢がなぜ小児に多くないか見ていこう。膠芽腫はどうかな。
医学生医学生
悪性度が一番高い神経膠腫なので、子どもにもできそうな気がしてしまいます。
ドクタードクター
そこは誤解しやすいところだ。膠芽腫は中高年から高齢者の大脳半球、前頭葉や側頭葉に好発する。造影MRIで壊死を囲むリング状増強を示し、手術・放射線・テモゾロミドを組み合わせても予後は不良だ。小児にも高悪性度の神経膠腫は生じるけれど、頻度は低い。「悪性度が高い=小児」ではないんだね。
医学生医学生
髄膜腫は原発性脳腫瘍で最多と習いましたが、これも成人ですよね。
ドクタードクター
その通り。くも膜の細胞から発生する多くは良性の腫瘍で、中高年の女性に多い。硬膜に広く付着して、造影で硬膜尾徴候を示すのが特徴だ。小児ではまれだよ。
医学生医学生
下垂体腺腫は視野の講義で両耳側半盲とセットで出てきました。小児の鞍上部ならむしろ頭蓋咽頭腫でしょうか。
ドクタードクター
いい整理だ。下垂体腺腫は主に成人の腫瘍で、プロラクチンや成長ホルモンを過剰に出す機能性のものと非機能性のものがある。小児の鞍上部腫瘍では、石灰化を伴う頭蓋咽頭腫や胚細胞腫瘍のほうが重要だ。最後に悪性リンパ腫は?
医学生医学生
中枢神経原発のリンパ腫は高齢者や免疫不全の人に多いと聞きました。
ドクタードクター
そう。大部分がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫で、高齢者に多く、HIV感染や臓器移植後の免疫不全も危険因子だ。ステロイドで一時的に縮小するので、生検前に投与すると診断が難しくなる点は臨床でも要注意。治療は大量メトトレキサート療法が中心になる。
医学生医学生
整理すると、小児はテント下や正中部の腫瘍、成人は大脳半球や髄膜、下垂体の腫瘍が多い、という対比ですね。
ドクタードクター
その理解でばっちり。発展として髄芽腫の特徴をもう少し押さえておこう。病理では核と細胞質の比が高い小型の未分化細胞が密に増殖し、Homer Wrightロゼットを形成することがある。CBTの病理でも問われるポイントだ。
医学生医学生
治療は摘出だけでは足りないのですか。
ドクタードクター
髄芽腫は髄液を介して播種しやすいから、摘出術に加えて全脳全脊髄照射と化学療法を組み合わせる。放射線や抗がん薬への感受性が比較的高いのも特徴だ。近年はWNT型、SHH型、Group 3、Group 4という分子分類で予後や治療強度を層別化していて、WNT型は予後良好、Group 3は予後不良とされる。ただ、幼い子への全脳照射は知能や成長への影響が大きいので、長期的なフォローも欠かせないんだ。
医学生医学生
小児の他の脳腫瘍も部位と一緒に覚えます。小脳なら毛様細胞性星細胞腫、第四脳室なら上衣腫、松果体部なら胚細胞腫瘍ですね。
ドクタードクター
完璧だね。毛様細胞性星細胞腫は嚢胞と壁在結節が典型、松果体部の胚細胞腫瘍は男児に多く上方注視麻痺を起こしやすい。年齢と部位から組織型を推定する習慣をつけておこう。

まとめ

脳腫瘍は組織型ごとに好発年齢と好発部位が異なり、小児では小脳・脳幹などのテント下や鞍上部・松果体部などの正中部の腫瘍が多くなります。髄芽腫は小脳虫部に好発する小児の代表的な悪性胎児性腫瘍で、第四脳室の閉塞による閉塞性水頭症(朝方の頭痛・嘔吐、うっ血乳頭)と体幹失調で発症し、髄液播種を起こしやすいため摘出術に全脳全脊髄照射と化学療法を組み合わせます。一方、膠芽腫は高齢者の大脳半球、髄膜腫は中高年女性、下垂体腺腫は成人、中枢神経系原発悪性リンパ腫は高齢者や免疫不全者に多い腫瘍です。小児ではほかに毛様細胞性星細胞腫、上衣腫、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫瘍も重要です。「年齢」と「部位」から組織型を絞り込む視点は、画像診断や症例問題を解くうえでの基盤になります。

解答・解説

正解はbです

【テーマ】脳腫瘍の好発年齢 脳腫瘍は組織型ごとに好発年齢と好発部位がはっきり異なり、年齢と発生部位から組織型をある程度推定できる。国家試験では「小児に多い腫瘍」と「成人・高齢者に多い腫瘍」の区別が繰り返し問われる。 小児(15歳未満)の脳腫瘍で多いのは、星細胞腫(とくに小脳に好発する毛様細胞性星細胞腫)、髄芽腫、胚細胞腫瘍(ジャーミノーマなど)、頭蓋咽頭腫、上衣腫などである。小児では成人と比べてテント下(小脳・脳幹)や正中部(鞍上部、松果体部)に発生する腫瘍の割合が高い。 一方、成人・高齢者では髄膜腫、膠芽腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、中枢神経系原発悪性リンパ腫などが多く、腫瘍はテント上(大脳半球など)に発生することが多い。 選択肢のうち小児に好発するのは、小児の悪性脳腫瘍の代表である髄芽腫だけである。

選択肢考察

  1. ×a.  膠芽腫

    膠芽腫はグリア細胞系(星細胞系)の腫瘍のうち最も悪性度が高いもの(WHO grade 4)で、中高年〜高齢者の大脳半球(前頭葉、側頭葉など)に好発する。浸潤性に急速に増大し、造影MRIで壊死を囲むリング状増強効果を示すのが典型である。手術、放射線療法、テモゾロミドによる化学療法を組み合わせても予後は不良である。小児にも悪性度の高い神経膠腫は生じるが頻度は低く、「小児でよくみられる」腫瘍ではない。

  2. ○b.  髄芽腫

    髄芽腫は小脳に発生する未分化な胎児性腫瘍(WHO grade 4)で、小児の悪性脳腫瘍の代表である。好発年齢は主に10歳未満で、男児にやや多い。小脳虫部に好発して第四脳室を圧排・閉塞するため、閉塞性水頭症による頭蓋内圧亢進症状(頭痛、朝方の嘔吐、うっ血乳頭)と、体幹失調(歩行時のふらつき)で発症することが多い。髄液を介した播種を起こしやすいため、治療は腫瘍の摘出に加えて全脳全脊髄照射と化学療法を組み合わせる。小児脳腫瘍全体でも星細胞腫に次いで多い組織型である。

  3. ×c.  髄膜腫

    髄膜腫はくも膜の細胞から発生する、多くは良性の腫瘍である。わが国の原発性脳腫瘍の中で最も頻度が高く、中高年の女性に多い(女性ホルモンとの関連が示唆されている)。大脳鎌、円蓋部、蝶形骨縁などに好発し、硬膜に広く付着して造影で硬膜尾徴候(dural tail sign)を示すのが特徴である。小児ではまれである。

  4. ×d.  下垂体腺腫

    下垂体腺腫は下垂体前葉の細胞から発生する良性腫瘍で、原発性脳腫瘍のなかで髄膜腫、神経膠腫に並ぶ頻度の高い腫瘍である。主として成人に発生する。ホルモンを過剰に分泌する機能性腺腫(プロラクチン産生腺腫、成長ホルモン産生腺腫、ACTH産生腺腫など)と非機能性腺腫があり、大きくなると視交叉を圧迫して両耳側半盲を生じる。小児では少ない。なお2022年のWHO分類では下垂体神経内分泌腫瘍(PitNET)という名称も用いられている。小児の鞍上部腫瘍としては頭蓋咽頭腫や胚細胞腫瘍の方が重要である。

  5. ×e.  悪性リンパ腫

    中枢神経系原発悪性リンパ腫は脳などの中枢神経に限局して発生するリンパ腫で、大部分がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。原発性脳腫瘍の数%を占め、高齢者に多く、近年増加している。HIV感染症や臓器移植後などの免疫不全も危険因子である。脳室周囲や脳梁などに発生し、MRIで均一に造影されるのが典型である。副腎皮質ステロイドで一時的に縮小するため、生検前の投与は診断を困難にする。治療は大量メトトレキサート療法を中心とした化学療法である。小児ではまれである。

年齢別に多い脳腫瘍

・小児:星細胞腫(毛様細胞性星細胞腫が多い)、髄芽腫、胚細胞腫瘍(ジャーミノーマなど)、頭蓋咽頭腫、上衣腫、脳幹部神経膠腫 ・成人〜高齢者:髄膜腫、神経膠腫(膠芽腫など)、下垂体腺腫、神経鞘腫(聴神経鞘腫など)、中枢神経系原発悪性リンパ腫、転移性脳腫瘍

小児脳腫瘍の好発部位

・小脳:毛様細胞性星細胞腫(嚢胞と壁在結節が典型)、髄芽腫(虫部、正中) ・第四脳室:上衣腫 ・脳幹:びまん性の脳幹部神経膠腫(予後不良) ・鞍上部:頭蓋咽頭腫(石灰化を伴う)、胚細胞腫瘍 ・松果体部:胚細胞腫瘍(男児に多く、上方注視麻痺〈パリノー徴候〉を呈する)

髄芽腫の要点

・小脳虫部に好発し、第四脳室を閉塞して閉塞性水頭症を起こす ・症状:頭痛、嘔吐(特に早朝)、うっ血乳頭などの頭蓋内圧亢進症状、体幹失調 ・画像:CTで高吸収域を示す小脳正中の腫瘤として描出されることが多い ・病理:小型で核/細胞質比の高い未分化な細胞が密に増殖し、ホーマー・ライト(Homer Wright)ロゼットを形成することがある ・髄液播種を起こしやすい ・治療:摘出術+全脳全脊髄照射+化学療法。放射線感受性・化学療法感受性が高い ・分子分類:WNT型、SHH型、Group 3、Group 4に分けられ、予後や治療方針の層別化に用いられる(WNT型は予後良好、Group 3は予後不良)

POINT

・小児に多い脳腫瘍:星細胞腫(毛様細胞性)、髄芽腫、胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫 ・髄芽腫:小児の小脳虫部に好発する悪性胎児性腫瘍。閉塞性水頭症と体幹失調で発症し、髄液播種を起こしやすい ・成人・高齢者に多い脳腫瘍:髄膜腫(原発性で最多、中年女性)、膠芽腫(高齢者の大脳半球)、下垂体腺腫、中枢神経系原発悪性リンパ腫(高齢者)

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。