StudyMed医師国家試験

発作を消すか、尿酸を下げるか―痛風治療は「時期」で薬が決まる

第104回医師国家試験 I問題 第28問

国試問題にチャレンジ

第104回 I問題 第28問

痛風発作初期に用いる薬剤はどれか。2つ選べ。

  1. a.コルヒチン
  2. b.プロベネシド
  3. c.インドメタシン
  4. d.アロプリノール
  5. e.ベンズブロマロン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は痛風発作の初期に使う薬を選ぶ問題だ。着眼点はひとつ。痛風の薬は「炎症を抑える薬」と「尿酸値を下げる薬」の2系統に分かれていて、どの時期にどちらを使うかが決まっている。まず、痛風発作がどうやって起こるか説明できるかな。
医学生医学生
高尿酸血症で関節に尿酸の結晶がたまって、それが炎症を起こす、という理解です。
ドクタードクター
大筋はそれでいい。もう少し詳しく言うと、関節内に析出していた尿酸ナトリウム結晶が何かのきっかけで関節腔に剥がれ落ち、それを好中球などが貪食する。すると細胞内でNLRP3インフラマソームが活性化してIL-1βが出て、さらに好中球が集まって炎症が一気に増幅される。つまり発作の正体は「結晶に対する激しい急性炎症」なんだ。
医学生医学生
基礎の免疫学で習ったインフラマソームがここで出てくるんですね。だとすると、発作のときに必要なのは炎症を止める薬ということですか。
ドクタードクター
その通り。だから発作初期に使うのはコルヒチンとインドメタシンの2つが正解だ。コルヒチンは微小管の重合を阻害して、好中球の遊走や貪食、脱顆粒、インフラマソームの活性化を抑える。炎症が広がる「入口」を塞ぐイメージだね。
医学生医学生
コルヒチンは痛み止めとしても効くんでしょうか。
ドクタードクター
そこは誤解しやすいところで、コルヒチンには鎮痛作用はない。炎症が完成して激痛になってからではあまり効かず、関節のムズムズ感や違和感といった前兆を自覚した時点で少量を飲むのが効果的なんだ。昔は大量投与もされたけど、下痢や嘔吐、骨髄抑制、ミオパチーなどの副作用が多く、今は前兆期に少量を使うのが基本になっている。
医学生医学生
では、すでに激痛になってしまった極期にはインドメタシンの出番ですね。
ドクタードクター
そう。インドメタシンはCOXを阻害してプロスタグランジン産生を抑えるNSAIDで、強い抗炎症・鎮痛作用がある。極期には常用量より多めを短期間使うNSAIDパルス療法が行われる。腎機能障害や消化性潰瘍などでNSAIDsが使いにくい人には、副腎皮質ステロイドの内服や関節内注射で代用するよ。
医学生医学生
薬理の講義で、アスピリンは痛風に使わないと聞いた気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。少量のアスピリンは尿酸排泄を低下させ、血清尿酸値を変動させるから痛風発作には向かない。では残りの3つ、アロプリノール、プロベネシド、ベンズブロマロンはどうだろう。
医学生医学生
全部尿酸を下げる薬なので、発作のときこそ早く下げたほうがいい気もしてしまうのですが……。
ドクタードクター
それがこの問題の落とし穴だ。発作中に尿酸降下薬を新しく始めると、血清尿酸値が急に変動して関節内の結晶が溶けたり剥がれたりし、発作がかえって悪化・遷延するおそれがある。だから尿酸降下薬は発作が治まってから少量で開始するのが原則なんだ。アロプリノールはキサンチンオキシダーゼを阻害して尿酸の生成を抑える尿酸生成抑制薬。プロベネシドとベンズブロマロンは尿細管での尿酸再吸収を阻害する尿酸排泄促進薬だね。
医学生医学生
排泄促進薬だと尿中の尿酸が増えるので、尿路結石が心配になりますね。
ドクタードクター
鋭い。だから排泄促進薬を使うときは飲水励行と、クエン酸製剤による尿アルカリ化を併用することが多い。尿路結石のある人には生成抑制薬が選ばれやすい。ほかにもベンズブロマロンはまれに劇症肝炎を起こすので定期的な肝機能検査が必要、プロベネシドはペニシリン系薬などの腎排泄も抑える、アロプリノールは腎機能に応じた減量と重症薬疹に注意、と個別の注意点もある。
医学生医学生
もともとアロプリノールを飲んでいる人が発作を起こしたら、いったん止めるべきですか。
ドクタードクター
いい質問だ。中止すると尿酸値がまた変動してしまうので、原則としてそのまま継続する。「新しく始めない、でも飲んでいるものはやめない」と覚えておこう。
医学生医学生
臨床実習の内科外来で、発作が治まって2週間くらいしてから尿酸を下げる薬を始めていた患者さんがいました。あれはこの原則だったんですね。
ドクタードクター
まさにそれ。慢性期の目標は血清尿酸値6.0 mg/dL以下。ただ、降下療法を始めた直後は結晶の溶解でかえって発作が起きやすいから、少量から段階的に増やし、必要に応じてコルヒチンを1日1錠続ける「コルヒチン・カバー」を併用することもある。あわせて肥満の是正、プリン体やアルコール、果糖の摂りすぎを控えること、十分な飲水といった生活指導も欠かせないよ。
医学生医学生
前兆期はコルヒチン、極期はNSAIDs、使えなければステロイド、治まってから尿酸降下薬という流れで整理できました。
ドクタードクター
完璧だ。薬の名前を覚えるだけでなく「今は炎症の時期か、尿酸管理の時期か」を考える習慣をつけると、実際の外来でも迷わなくなるよ。

まとめ

痛風発作は、関節内に剥がれ落ちた尿酸ナトリウム結晶を好中球が貪食し、インフラマソーム活性化を介して生じる急性炎症であり、発作初期には抗炎症薬を用います。前兆期には好中球の遊走・活性化を抑えるコルヒチンを少量内服し、極期にはインドメタシンなどのNSAIDsを短期間高用量で用い、NSAIDsが使えない場合はステロイドで代用します。アロプリノール(尿酸生成抑制薬)やプロベネシド・ベンズブロマロン(尿酸排泄促進薬)は、発作中に新規開始すると尿酸値の変動で発作を悪化させうるため、発作が治まってから少量で開始し、血清尿酸値6.0 mg/dL以下を目標とします。一方、すでに服用中の尿酸降下薬は発作時も継続するのが原則です。「発作を抑える薬」と「尿酸を下げる薬」を時期で使い分ける考え方は、痛風診療の基本となります。

解答・解説

正解はa, cです

痛風発作とは

痛風発作(急性痛風性関節炎)は、高尿酸血症が続いて関節内に析出した尿酸ナトリウム結晶が何らかのきっかけで関節腔内に剥がれ落ち、それを好中球などの白血球が貪食することで起こる激しい急性炎症である。結晶を取り込んだ細胞内でインフラマソーム(NLRP3)が活性化され、IL-1βなどの炎症性サイトカインが放出されて好中球がさらに集まり、炎症が増幅される。典型的には中年以降の男性の第1中足趾節関節(足の親指の付け根)に、夜間から早朝にかけて突然の激痛・発赤・腫脹が生じる。

時期ごとの薬物治療の考え方

痛風の薬物治療は「発作(炎症)を抑える薬」と「血清尿酸値を下げる薬」に分けて考えることが重要である。 1. 前兆期(発作の予感がある時期):コルヒチンを少量内服して発作を頓挫させる。 2. 極期(激痛の時期):NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を比較的高用量・短期間で用いる(NSAIDパルス療法)。NSAIDsが使いにくい場合は副腎皮質ステロイドを用いる。 3. 発作が治まった後の慢性期:尿酸降下薬(尿酸生成抑制薬、尿酸排泄促進薬)を少量から開始し、血清尿酸値を6.0 mg/dL以下に保つ。 発作中に尿酸降下薬を新たに開始すると、血清尿酸値の急な変動によって関節内の結晶が溶けたり剥がれたりし、発作を悪化・遷延させるおそれがある。したがって「発作初期に用いる薬剤」は抗炎症作用をもつコルヒチンとインドメタシンの2つとなる。

選択肢考察

  1. ○a.  コルヒチン

    発作初期に用いる薬剤である。コルヒチンは微小管の重合を阻害し、好中球の遊走(走化性因子への反応)や貪食・脱顆粒、インフラマソームの活性化を抑えることで、結晶に対する炎症反応の拡大を防ぐ。鎮痛薬としての作用はないため、炎症が完成した後の激痛にはあまり効かず、発作の前兆(関節の違和感やムズムズ感)を自覚した時点、あるいは発作のごく初期に使うと効果的である。日本の診療ガイドラインでは前兆期に0.5 mgを1錠内服する方法が推奨され、かつての大量投与は下痢・嘔吐などの消化器症状や骨髄抑制、ミオパチーといった副作用が多いため行われなくなった。頻繁に発作を繰り返す場合は1日1錠を継続する「コルヒチン・カバー」が用いられることもある。

  2. ×b.  プロベネシド

    発作初期には用いない。プロベネシドは近位尿細管での尿酸の再吸収を阻害して尿中への排泄を増やす尿酸排泄促進薬であり、発作が治まった後の慢性期に血清尿酸値を下げるために使う。発作中に新たに開始すると尿酸値の急変動で発作を悪化させうる。また尿中尿酸が増えるため尿路結石の予防として尿アルカリ化や飲水励行が必要であり、他剤(ペニシリン系薬など)の腎排泄も抑制する点に注意が必要である。

  3. ○c.  インドメタシン

    発作初期に用いる薬剤である。インドメタシンはアリール酢酸系のNSAIDで、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害してプロスタグランジンの産生を抑え、強い抗炎症・鎮痛作用を示す。発作の極期にはNSAIDsを常用量より多めに短期間用いるNSAIDパルス療法が行われ、インドメタシンやナプロキセンなどが使われる。腎機能障害、消化性潰瘍、心不全などNSAIDsを使いにくい患者では、副腎皮質ステロイドの内服や関節内注射で代用する。なおアスピリンは少量では尿酸の排泄を低下させ、血清尿酸値を変動させるため痛風発作には用いない。

  4. ×d.  アロプリノール

    発作初期には用いない。アロプリノールはキサンチンオキシダーゼを阻害してヒポキサンチン→キサンチン→尿酸の生成を抑える尿酸生成抑制薬である。発作が治まってから少量で開始し、段階的に増量して血清尿酸値を6.0 mg/dL以下に保つ。発作中に新規開始すると発作を悪化・遷延させうる。一方、すでに服用中の患者に発作が起きた場合は、中止すると尿酸値が変動するため原則としてそのまま継続する。腎機能低下時は減量が必要であり、重症薬疹(Stevens-Johnson症候群など)にも注意する。

  5. ×e.  ベンズブロマロン

    発作初期には用いない。ベンズブロマロンは腎尿細管の尿酸トランスポーター(URAT1)を阻害して尿酸の再吸収を抑える尿酸排泄促進薬であり、プロベネシドと同様に慢性期の尿酸降下療法に用いる。尿酸排泄が低下している型(尿酸排泄低下型)の高尿酸血症に適するが、尿路結石のある患者では避ける。まれに劇症肝炎を起こすことがあるため、投与開始後は定期的な肝機能検査が必要である。

痛風・高尿酸血症の治療薬の整理

発作に対する薬(抗炎症薬) ・コルヒチン:前兆期に少量内服。好中球の遊走・活性化を抑える。副作用は下痢、骨髄抑制、ミオパチー・末梢神経障害など。 ・NSAIDs(インドメタシン、ナプロキセンなど):極期に短期間・高用量で用いる。 ・副腎皮質ステロイド:NSAIDsが使えない場合や、多関節の発作に用いる(経口、関節内注射)。 尿酸降下薬(慢性期に使用) ・尿酸生成抑制薬:アロプリノール、フェブキソスタット、トピロキソスタット(いずれもキサンチンオキシダーゼ阻害)。尿酸産生過剰型や腎機能障害、尿路結石のある患者に選ばれやすい。 ・尿酸排泄促進薬:プロベネシド、ベンズブロマロン、ドチヌラド。尿酸排泄低下型に選ばれやすい。尿路結石予防のため尿アルカリ化薬(クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合薬)を併用することが多い。

尿酸降下療法の原則

・発作が治まってから(おおむね2週間程度の間隔を置いて)少量で開始し、徐々に増量する。 ・目標は血清尿酸値6.0 mg/dL以下。 ・尿酸降下療法を開始すると、結晶の溶解に伴い一時的に発作が誘発されやすくなるため、開始初期にはコルヒチン・カバーを併用することがある。 ・すでに服用している尿酸降下薬は、発作が起きても中止せず継続する。

生活指導

肥満の是正、プリン体・果糖・アルコール(特にビール)の過剰摂取を控えること、十分な飲水による尿量確保などが基本となる。

POINT

・痛風発作の前兆期はコルヒチン、極期はNSAIDs(インドメタシン等、NSAIDパルス療法)、NSAIDsが使えなければステロイド。 ・コルヒチンには鎮痛作用はなく、前兆期に少量用いるのが効果的である。 ・尿酸降下薬(アロプリノール、フェブキソスタット、プロベネシド、ベンズブロマロンなど)は発作中に新規開始しない。発作寛解後に少量から開始する。 ・既に服用中の尿酸降下薬は発作時も継続する。 ・血清尿酸値の治療目標は6.0 mg/dL以下。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。