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肉腫なのに放射線が効く?―Ewing肉腫が「例外」になる理由をBergonié-Tribondeauの法則で読み解く

第104回医師国家試験 G問題 第24問

国試問題にチャレンジ

第104回 G問題 第24問

放射線感受性の高い腫瘍はどれか。

  1. a.膵癌
  2. b.腎細胞癌
  3. c.Ewing肉腫
  4. d.悪性黒色腫
  5. e.神経膠芽腫

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、腫瘍ごとの放射線感受性を問う問題だ。一覧を丸暗記するより、どんな細胞が放射線に弱いのかという原則から考えると、初見の腫瘍にも対応できる。まずは、その原則を思い出せるかな。
医学生医学生
放射線医学の講義で、Bergonié-Tribondeauの法則というのを習いました。分裂が盛んな細胞ほど弱い、という内容だったと思います。
ドクタードクター
その通り。正確には、分裂頻度が高いほど、将来の分裂回数が多いほど、そして形態・機能が未分化なほど放射線感受性が高い。放射線はDNAを傷つけて、細胞が分裂しようとしたときに死なせるからね。もう一つの原則は、腫瘍の感受性はおおむね由来となった正常組織の性質を反映する、ということだ。
医学生医学生
正常組織だと、リンパ球や骨髄、生殖腺、腸上皮が弱くて、神経や筋肉、骨は強いんでしたね。
ドクタードクター
よく覚えている。だから悪性リンパ腫、白血病、骨髄腫、セミノーマはとても放射線がよく効く。さらに癌腫では、未分化癌、扁平上皮癌、腺癌の順に感受性が下がる。この原則で選択肢を見てみよう。膵癌はどうかな。
医学生医学生
膵癌はほとんどが膵管由来の腺癌なので、感受性は低い側ですね。
ドクタードクター
正解。しかも膵臓の周りには放射線に弱い胃や十二指腸、小腸があって、腫瘍に十分な線量を当てにくい。局所進行例では化学放射線療法が行われることはあるけれど、放射線単独で治せる腫瘍ではないんだ。腎細胞癌も同じく上皮性腫瘍のなかで放射線抵抗性の代表で、治療の中心は手術、進行例では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬になる。
医学生医学生
Ewing肉腫は骨の肉腫ですよね。整形外科の講義で、肉腫は放射線が効きにくいと聞いたので、最初は外してしまいました。
ドクタードクター
そこがこの問題の落とし穴だね。肉腫は一般に放射線抵抗性で、骨肉腫や軟骨肉腫はまさにそうだ。でもEwing肉腫は、未分化な小円形細胞が盛んに分裂する腫瘍だから、Bergonié-Tribondeauの法則どおり例外的に放射線感受性が高い。だから正解はEwing肉腫だ。
医学生医学生
小円形細胞腫瘍というと、病理学の講義で神経芽腫やWilms腫瘍と一緒に並べて習いました。
ドクタードクター
まさにそのグループ。神経芽腫、Wilms腫瘍、髄芽腫、網膜芽細胞腫など、小児に多い未分化な小円形細胞腫瘍はまとめて高感受性と覚えるといい。Ewing肉腫は小児〜若年者の長管骨の骨幹部や骨盤に好発し、多くはt(11;22)転座によるEWSR1-FLI1融合遺伝子をもつ。化学療法もよく効くので、多剤併用化学療法を軸に、手術か放射線で局所制御を図るんだ。
医学生医学生
悪性黒色腫が抵抗性なのは、未分化でもないからですか。
ドクタードクター
それに加えて、放射線による亜致死損傷から回復する能力が高いことが大きい。そのため通常の1回線量が少ない分割照射では効きにくい。治療の中心は手術と、免疫チェックポイント阻害薬やBRAF阻害薬などの薬物療法で、放射線は脳転移や骨転移への緩和が主な役割だ。
医学生医学生
神経膠芽腫は脳腫瘍で、術後に放射線をかけると脳神経外科の実習で見ました。それでも抵抗性なんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。神経膠芽腫は術後にテモゾロミド併用で60 Gy程度の放射線治療を行うのが標準だけれど、それは延命のためで、腫瘍を制御しきれず予後は不良だ。治療に使われることと感受性が高いことは別物なんだ。同じ脳腫瘍でも、胚腫(ジャーミノーマ)や髄芽腫は感受性が高いので対比して覚えよう。
医学生医学生
感受性が高いかどうかは、由来組織と分化度、それに回復能力で判断するということですね。
ドクタードクター
その通り。発展として、細胞周期ではM期とG2期後半が最も感受性が高く、S期後半が最も低い。また酸素が十分にあるほどX線の効果は高まる、これを酸素効果という。腫瘍の内部の低酸素細胞は抵抗性になりやすい。
医学生医学生
感受性が高い腫瘍なら、放射線で治りやすいと考えていいんでしょうか。
ドクタードクター
そこは注意が必要だ。感受性が高いとは「照射でよく縮小する」という意味で、放射線で治しきれるかどうか、つまり放射線治癒性とは必ずしも一致しない。周囲の正常組織がどこまで線量に耐えられるか、腫瘍の大きさ、転移の有無も治療成績を左右する。臨床では、この両方を考えて治療法を選ぶんだよ。

まとめ

腫瘍の放射線感受性は、Bergonié-Tribondeauの法則(分裂が盛んで未分化な細胞ほど感受性が高い)と、由来組織の感受性を反映するという原則で整理できます。悪性リンパ腫、白血病、骨髄腫、セミノーマ、ジャーミノーマや、Ewing肉腫・神経芽腫・Wilms腫瘍・髄芽腫などの小児の小円形細胞腫瘍は高感受性で、肉腫は一般に抵抗性ですがEwing肉腫は例外的に感受性が高いのが特徴です。一方、膵癌などの腺癌、腎細胞癌、骨肉腫、亜致死損傷からの回復能が高い悪性黒色腫、神経膠芽腫は抵抗性の代表です。細胞周期や酸素効果も感受性を左右し、さらに「よく縮小すること」と「放射線で治せること」は別であると理解しておくことが、実際の治療選択を考えるうえで重要です。

解答・解説

正解はcです

腫瘍の放射線感受性(放射線によってどれだけ細胞が死にやすいか)を問う問題である。腫瘍ごとの感受性を丸暗記するより、次の原則で考えると整理しやすい。

原則1:Bergonié-Tribondeau(ベルゴニー・トリボンドー)の法則

細胞は、①分裂頻度が高いほど、②将来行う分裂の回数が多いほど、③形態・機能が未分化であるほど放射線感受性が高い。放射線はDNAを傷つけて細胞を分裂死させるため、盛んに増殖する未熟な細胞ほど障害を受けやすい。

原則2:由来組織の感受性を反映する

腫瘍の感受性はおおむね発生母地となった正常組織の感受性を反映する。リンパ球や造血細胞、精原細胞は正常組織の中でも最も感受性が高く、これらに由来する悪性リンパ腫・白血病・骨髄腫・精上皮腫(セミノーマ)は非常に放射線がよく効く。

原則3:同じ由来なら低分化なほど高感受性

癌腫では一般に 未分化癌 > 扁平上皮癌 > 腺癌 の順に感受性が高い。

原則4:小児の小円形細胞腫瘍は高感受性

Ewing肉腫、神経芽腫、Wilms腫瘍(腎芽腫)、髄芽腫、網膜芽細胞腫など、小児に多く未分化な小円形細胞からなる腫瘍は放射線感受性が高い。 選択肢のうち、腺癌系の膵癌・腎細胞癌、メラノサイト由来の悪性黒色腫、グリア細胞由来の神経膠芽腫はいずれも放射線抵抗性の代表である。肉腫は一般に放射線感受性が低いが、Ewing肉腫は未分化な小円形細胞腫瘍であり例外的に感受性が高い。したがって正解はEwing肉腫である。

選択肢考察

  1. ×a.  膵癌

    膵癌の大部分は膵管上皮に由来する浸潤性膵管癌、すなわち腺癌であり、放射線感受性は低い。さらに膵臓の周囲には放射線に弱い胃・十二指腸・小腸があるため、腫瘍に十分な線量を当てにくい。局所進行例などでは化学療法と組み合わせた化学放射線療法が行われることがあるが、放射線単独で根治できる腫瘍ではない。

  2. ×b.  腎細胞癌

    腎細胞癌は近位尿細管上皮に由来する癌で、最も多い組織型は淡明細胞型である。上皮性腫瘍のなかでも放射線抵抗性の代表であり、通常の分割照射では効果が乏しい。治療の中心は手術で、進行例には分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が用いられる。放射線治療は骨転移・脳転移に対する症状緩和や、1回線量を大きくした定位放射線照射として用いられる程度である。

  3. ○c.  Ewing肉腫

    Ewing肉腫は小児〜若年者の骨(長管骨の骨幹部や骨盤など)に好発する悪性腫瘍で、未分化な小円形細胞からなり、多くはEWSR1-FLI1融合遺伝子(t(11;22)転座)をもつ。肉腫は一般に放射線抵抗性であるが、Ewing肉腫は分裂が盛んで未分化な細胞からなるため例外的に放射線感受性が高い。化学療法の感受性も高く、治療は多剤併用化学療法を軸に、手術または放射線治療による局所療法を組み合わせる。これに対し、同じ骨の悪性腫瘍でも骨肉腫や軟骨肉腫は放射線抵抗性である。

  4. ×d.  悪性黒色腫

    悪性黒色腫はメラノサイト(色素細胞)に由来する悪性腫瘍で、放射線抵抗性の代表である。放射線による損傷(亜致死損傷)からの回復能力が高いため、通常の少ない1回線量の分割照射では効果が乏しい。治療の中心は手術と、免疫チェックポイント阻害薬やBRAF阻害薬などの薬物療法であり、放射線治療は主に脳転移・骨転移などへの緩和目的で用いられる。

  5. ×e.  神経膠芽腫

    神経膠芽腫(膠芽腫、glioblastoma)はグリア細胞(神経膠細胞)に由来する最も悪性度の高い神経膠腫(WHO grade 4)であり、放射線抵抗性を示す。標準治療は可能な限りの摘出術の後、テモゾロミドを併用した放射線治療(60 Gy程度)を行うことで、放射線は延命のために用いられるが、腫瘍を制御しきれず予後は不良である。同じ脳腫瘍でも、胚腫(ジャーミノーマ)や髄芽腫は放射線感受性が高い点と対比して覚えるとよい。

腫瘍の放射線感受性の目安

・高感受性:悪性リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、精上皮腫(セミノーマ)、胚腫(ジャーミノーマ)、Ewing肉腫、神経芽腫、Wilms腫瘍、髄芽腫、網膜芽細胞腫、小細胞肺癌 ・中等度:扁平上皮癌(頭頸部癌、食道癌、子宮頸癌、皮膚癌など)、基底細胞癌 ・低感受性:腺癌(胃癌、大腸癌、膵癌など)、腎細胞癌、骨肉腫・軟骨肉腫などの肉腫、悪性黒色腫、神経膠芽腫

正常組織の放射線感受性

感受性が高い組織:リンパ組織、骨髄(造血組織)、生殖腺(精巣・卵巣)、腸上皮、水晶体 感受性が低い組織:神経組織、筋肉、骨、結合組織 腫瘍の感受性はこれら由来組織の性質をおおむね反映する。

放射線感受性に影響する因子

・細胞周期:M期とG2期後半が最も感受性が高く、S期後半が最も低い ・酸素効果:酸素が十分にあるほど放射線(特にX線などの低LET放射線)の効果が高まる。腫瘍内部の低酸素細胞は抵抗性となる ・亜致死損傷からの回復能:悪性黒色腫などは回復能が高く抵抗性を示す

感受性と治癒可能性の違い

放射線感受性が高いことは「照射で腫瘍がよく縮小する」ことを意味するが、必ずしも放射線で治りやすいこと(放射線治癒性)とは一致しない。周囲の正常組織の耐容線量、腫瘍の大きさ、転移の有無なども治療成績を左右する。

POINT

・Bergonié-Tribondeauの法則:分裂頻度が高く、未分化な細胞ほど放射線感受性が高い ・癌腫の感受性:未分化癌 > 扁平上皮癌 > 腺癌 ・肉腫は一般に放射線抵抗性だが、Ewing肉腫は例外的に高感受性 ・高感受性の代表:悪性リンパ腫、白血病、骨髄腫、セミノーマ、ジャーミノーマ、Ewing肉腫、神経芽腫、Wilms腫瘍、髄芽腫 ・抵抗性の代表:腺癌、腎細胞癌、骨肉腫、悪性黒色腫、神経膠芽腫

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。