StudyMed医師国家試験

胎生16週、血をつくるのはどこ?―卵黄嚢から肝臓、そして骨髄へと移る造血の旅

第104回医師国家試験 G問題 第23問

国試問題にチャレンジ

第104回 G問題 第23問

胎生16週の胎児の造血の場はどれか。

  1. a.卵黄嚢
  2. b.肝臓
  3. c.脾臓
  4. d.骨髄
  5. e.胸腺

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、胎児の造血の場が発生の進行とともにどう移り変わるかを問う問題だ。ポイントは「胎生16週が何か月目にあたるか」と「その時期の造血の主役はどこか」の2つ。まずは大きな流れを思い出してみよう。
医学生医学生
発生学の講義で、卵黄嚢から始まって最後は骨髄、という順番を習った気がします。その間に何が入るかがあやふやです。
ドクタードクター
間に入るのが肝臓だ。流れは卵黄嚢、肝臓(少し遅れて脾臓も参加)、骨髄の順。それぞれの時期を押さえよう。造血は胎生3週ごろ、卵黄嚢の壁にできる血島という細胞集団から始まる。ここでは有核の原始赤血球がつくられるけれど、この時期は胎生2か月ごろまでで終わるんだ。
医学生医学生
血島は組織学の実習でスケッチした記憶があります。血管と血球が同じ場所から生まれるというのが印象的でした。
ドクタードクター
いいところを覚えているね。次に、胎生6週ごろから肝臓で造血が始まり、胎生2か月から7か月ごろまで造血の主座になる。特に3〜6か月ごろが最盛期だ。では、胎生16週は何か月目かな。
医学生医学生
4週で1か月と数えると、16週は胎生4か月ですね。肝臓期のまっただ中ということになります。
ドクタードクター
その通り。だから正解は肝臓だ。肝臓では主に赤血球系がつくられ、胎児型ヘモグロビン(HbF)をもつ無核の赤血球が主体になっていく。ほかの選択肢も確認しておこう。骨髄はどうだろう。
医学生医学生
正直、4か月なら骨髄もそろそろ始まっているのでは、と迷いました。
ドクタードクター
鋭い迷いだね。骨髄造血の開始時期は文献によって幅があって、胎生4〜5か月ごろから始まって徐々に増えると考えておけばいい。つまり16週では始まったばかりで量は少ない。骨髄が主役になるのは7か月ごろ以降で、出生後は骨髄だけが造血を担う。「場はどれか」と一つを選ばせる問題では、その時期の中心的な臓器を答えればいいんだ。
医学生医学生
脾臓も同じ理屈で、造血はしているけれど主役ではない、ということですね。
ドクタードクター
そう。脾臓は肝臓に遅れて造血に加わるけれど、量は肝臓よりずっと少なく、胎生後期には減っていく。卵黄嚢は先ほど話した通り、2か月ごろで役目を終えているから外れる。
医学生医学生
胸腺はリンパ球を育てる場所なので、造血器官とは少し違う気がします。
ドクタードクター
正確だね。胸腺は、骨髄(胎児期には肝臓)から移ってきたリンパ球系の前駆細胞がT細胞へと分化・成熟する一次リンパ器官だ。赤血球や顆粒球をつくる造血の場ではない。
医学生医学生
卵黄嚢、肝臓、骨髄という流れを、それぞれの時期とセットで覚えればいいわけですね。
ドクタードクター
その通り。ここから発展知識を2つ。一つはヘモグロビンの切り替えだ。卵黄嚢期にはGower 1、Gower 2、Portlandといった胎芽型ヘモグロビン、肝臓期以降は酸素親和性の高いHbF(α2γ2)が主体になる。HbFは母体血から酸素を受け取るのに有利なんだ。出生前後からγ鎖からβ鎖への切り替えが進み、生後6か月〜1歳ごろには成人型のHbA(α2β2)が大部分を占める。
医学生医学生
小児科の実習で、乳児の貧血を考えるときにHbFの話が出てきました。つながっているんですね。
ドクタードクター
もう一つは髄外造血だ。骨髄で造血ができなくなると、胎児期に造血を担っていた肝臓や脾臓で再び造血が起こることがある。代表は原発性骨髄線維症で、骨髄穿刺がドライタップになり、著明な脾腫を来す。末梢血には涙滴赤血球や、幼若な赤芽球・顆粒球が出る白赤芽球症がみられる。
医学生医学生
巨大な脾腫の理由が、胎児期の造血の場の「先祖返り」だと考えると覚えやすいです。
ドクタードクター
いい捉え方だね。重症のサラセミアでも髄外造血による肝脾腫がみられる。発生学の知識が、そのまま臨床の病態理解につながる好例だよ。

まとめ

胎児期の造血は、胎生3週ごろの卵黄嚢の血島に始まり、胎生2〜7か月ごろは肝臓(少し遅れて脾臓も参加)が主座となり、7か月ごろ以降は骨髄へと移って、出生後は骨髄のみが造血を担います。胎生16週は胎生4か月にあたり肝臓期の最盛期で、骨髄や脾臓の造血はまだ補助的な規模にとどまるため、主たる造血の場は肝臓です。胸腺はT細胞が分化・成熟する一次リンパ器官であり、造血の場ではありません。造血部位の移行は、胎芽型ヘモグロビンからHbF、さらにHbAへの切り替えとも対応して理解するとよいでしょう。また、骨髄線維症や重症サラセミアで肝臓・脾臓に髄外造血が起こり肝脾腫を来すことも、この発生学的背景から説明でき、基礎と臨床をつなぐ重要な知識です。

解答・解説

正解はbです

胎児期の造血は、発生の進行に伴って場所を移していく。この移り変わりを時期とともに覚えておくことが本問の鍵である。 大まかな流れは次のとおりである。 1. 卵黄嚢期(中胚葉期):胎生3週ごろ、卵黄嚢壁の血島で造血が始まる。胎生2か月ごろまで続く。 2. 肝臓期:胎生6週ごろから肝臓で造血が始まり、胎生2か月ごろから7か月ごろまで造血の主座となる。特に胎生3〜6か月ごろが最盛期である。脾臓も肝臓より遅れて造血に加わるが、その量は肝臓に比べて少ない。 3. 骨髄期:骨髄での造血は胎生4〜5か月ごろから始まって次第に増え、胎生7か月ごろ以降は骨髄が主な造血の場となる。出生後は骨髄のみで造血が行われる。 胎生16週は胎生4か月にあたり、肝臓期のまっただ中である。骨髄や脾臓でも造血はみられ始めているが、主たる造血の場は肝臓であるため、正解は肝臓となる。「〜の場はどれか」と1つを選ばせる問題では、その時期の中心的な造血臓器を答えればよい。

選択肢考察

  1. ×a.  卵黄嚢

    卵黄嚢は最初の造血の場である。胎生3週ごろ、卵黄嚢壁に血島(血管と血球の原基となる細胞集団)が形成され、主に有核の原始赤血球(胎芽型ヘモグロビンを含む)が作られる。しかし卵黄嚢での造血は胎生2か月ごろまでに終わり、肝臓へと移行するため、胎生16週の造血の場ではない。

  2. ○b.  肝臓

    肝臓は胎生6週ごろから造血を開始し、胎生2か月から7か月ごろまで造血の主座となる。胎生3〜6か月ごろが最も盛んであり、胎生16週(胎生4か月)はこの時期に当たる。肝臓では主に赤血球系の造血が行われ、胎児型ヘモグロビン(HbF)を持つ無核の赤血球が作られるようになる。

  3. ×c.  脾臓

    脾臓も胎児期に造血を行い、胎生16週でも造血がみられる。ただしその規模は肝臓に比べて小さく、この時期の主たる造血の場とはいえない。脾臓の造血は胎生後期には減っていき、出生後は通常は行われなくなる。

  4. ×d.  骨髄

    骨髄での造血は胎生4〜5か月ごろから始まるため、胎生16週の段階では始まったばかりで量はまだ少ない。骨髄が主な造血の場となるのは胎生7か月ごろ以降であり、出生後は骨髄が唯一の造血の場となる。成長とともに四肢の長管骨の骨髄は脂肪髄に置き換わり、成人では椎骨・胸骨・肋骨・骨盤などの体幹の扁平骨が主な造血部位となる。

  5. ×e.  胸腺

    胸腺は、骨髄(胎児期には肝臓)から移動してきたリンパ球系前駆細胞がT細胞へと分化・成熟する一次リンパ器官である。赤血球系・顆粒球系などの血球を作る造血器官としての役割はもたないため、胎児期の造血の場には含まれない。

胎児期の造血部位の移り変わり

・卵黄嚢:胎生3週ごろ〜2か月ごろ(原始赤血球、胎芽型ヘモグロビン:Gower 1、Gower 2、Portland) ・肝臓:胎生6週ごろ〜7か月ごろ、最盛期は3〜6か月(胎児型ヘモグロビン HbF が主体) ・脾臓:肝臓に遅れて参加。量は少ない ・骨髄:胎生4〜5か月ごろに開始、7か月ごろ以降は主座。出生後は唯一の造血の場

ヘモグロビンの変化

胎児期は酸素親和性の高いHbF(α2γ2)が主体であり、母体血から酸素を受け取りやすい。出生前後からγ鎖からβ鎖への切り替えが進み、生後6か月〜1歳ごろには成人型のHbA(α2β2)が大部分を占めるようになる。

髄外造血との関係

骨髄での造血が障害されると、胎児期に造血を担っていた肝臓や脾臓で再び造血が行われることがある(髄外造血)。代表例は原発性骨髄線維症であり、骨髄の線維化により骨髄穿刺でドライタップ(骨髄液が吸引できない)となり、髄外造血によって著明な脾腫(と肝腫大)を来す。末梢血では涙滴赤血球や、幼若な赤芽球・顆粒球が出現する白赤芽球症がみられる。重症のサラセミアでも髄外造血により肝脾腫がみられる。

POINT

・胎児期の造血の場は 卵黄嚢 → 肝臓(+脾臓) → 骨髄 の順に移る ・胎生2〜7か月ごろは肝臓が主座(胎生16週=胎生4か月は肝臓期) ・骨髄は胎生7か月ごろ以降の主座、出生後は骨髄のみ ・胸腺はT細胞の分化・成熟の場であり、造血器官ではない ・骨髄線維症では髄外造血により肝脾腫(特に脾腫)を来す

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。