StudyMed医師国家試験

けいれんの裏に潜む「代謝の乱れ」―血糖・Na・Caを真っ先に疑う理由

第103回医師国家試験 G問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第103回 G問題 第6問

けいれんをきたすのはどれか。3つ選べ。

  1. a.低血糖
  2. b.低クロール血症
  3. c.低カリウム血症
  4. d.低ナトリウム血症
  5. e.低カルシウム血症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、どんな代謝・電解質の異常がけいれんを起こすかを問う問題だ。ポイントは「その異常がどの臓器に一番響くか」を考えること。脳に響く異常なのか、筋や心臓に響く異常なのかを分けて整理していこう。
医学生医学生
電解質異常って全部まとめて「意識障害やけいれん」って覚えてしまっていました。
ドクタードクター
そう覚えている人は多いけれど、実は異常ごとに得意分野がある。まず低血糖から。脳はエネルギー源をほぼブドウ糖だけに頼っていて、しかも蓄えがほとんどない。だから血糖が下がると、真っ先に影響を受けるのが脳なんだ。
医学生医学生
救急科の実習で、意識障害の患者さんが来たら最初に簡易血糖を測っていました。
ドクタードクター
まさにそれが鉄則。低血糖ではまず発汗や動悸、手のふるえといった交感神経症状が出て、さらに下がると異常行動、意識障害、けいれんといった中枢神経症状が出てくる。長引けば不可逆的な脳障害を残すから、ブドウ糖を静注すればすぐ治せる低血糖は最初に否定すべき原因なんだ。インスリンやスルホニル尿素薬を使っている糖尿病患者、新生児、インスリノーマなどが代表的な背景だね。
医学生医学生
低ナトリウム血症は、浸透圧が下がって脳がむくむからけいれんする、という理解で合っていますか。
ドクタードクター
合っているよ。血漿浸透圧が下がると水が脳細胞の中へ移動して脳浮腫が起こる。軽いうちは頭痛や悪心、倦怠感程度だけど、急に進んだ場合や高度な低下では意識障害やけいれん、さらには脳ヘルニアに至ることもある。SIADHや水中毒、サイアザイド系利尿薬、副腎不全などが原因になる。逆に高ナトリウム血症でも脳細胞が脱水して縮むから、けいれんの原因になりうる。
医学生医学生
低ナトリウム血症は速く補正しすぎると橋中心髄鞘崩壊症になる、と腎臓内科の講義で強調されていました。
ドクタードクター
大事なポイントだね。慢性の低ナトリウム血症はゆっくり補正する、が原則だ。次は低カルシウム血症。カルシウムイオンが減ると神経細胞膜が興奮しやすくなって、口周りや手足のしびれ、テタニー、喉頭けいれん、そして全身けいれんも起こしうる。
医学生医学生
OSCEの練習で、Trousseau徴候とChvostek徴候の手技を確認しました。甲状腺の手術後に出ることがあるんですよね。
ドクタードクター
その通り。術後の副甲状腺機能低下症は典型例で、ほかにビタミンD欠乏や慢性腎臓病も原因になる。心電図ではQT延長がみられる。では低カリウム血症はどうだろう。
医学生医学生
カリウムも膜電位に関わるので、けいれんを起こしそうに思えるんですが……。
ドクタードクター
そこが引っかけどころ。低カリウム血症では静止膜電位が深くなる、つまり過分極して、むしろ筋細胞が興奮しにくくなる。だから出てくるのは筋力低下、周期性四肢麻痺、麻痺性イレウス、U波や不整脈、それに尿濃縮力低下による多尿だ。主に骨格筋と心筋に響く異常で、中枢神経への影響は小さく、けいれんの原因としては扱わない。
医学生医学生
「興奮しすぎる」のではなく「動かなくなる」方向なんですね。低クロール血症はどうですか。
ドクタードクター
低クロール血症は嘔吐による胃液喪失やループ利尿薬で起こり、代謝性アルカローシスを伴いやすい。でもクロールの低値そのものには特有の症状がほとんどない。症状が出るとすれば脱水や低カリウム血症、アルカローシスといった随伴異常によるものだ。強いアルカローシスではイオン化カルシウムが減ってテタニーが起こりうるけれど、それはカルシウムの問題なんだ。
医学生医学生
なるほど、だからけいれんの原因は低血糖、低ナトリウム血症、低カルシウム血症の3つになるんですね。
ドクタードクター
正解。もう一つ覚えておきたいのが低マグネシウム血症で、これもテタニーやけいれん、torsades de pointesを起こす。しかも低カルシウム血症や低カリウム血症を合併しやすく、マグネシウムを補わないとそれらがなかなか治らない。
医学生医学生
補正してもカルシウムが上がらないときはマグネシウムを確認する、ということですね。
ドクタードクター
そう。最後に臨床の流れをまとめよう。けいれんで運ばれてきたら、気道確保と酸素投与、バイタル確認をしつつすぐに血糖を測り、低血糖ならブドウ糖を静注する。アルコール依存などでビタミンB1欠乏が疑われる場合はビタミンB1も併せて投与する。けいれんが続けばベンゾジアゼピン系薬で止め、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、血液ガス、薬物、画像検査で原因を探っていく。尿毒症や肝性脳症、アルコール離脱なども急性症候性発作の原因になることを忘れずにね。

まとめ

代謝・電解質異常による急性症候性発作の代表は、低血糖、低ナトリウム血症(高ナトリウム血症も)、低カルシウム血症、低マグネシウム血症です。低血糖はブドウ糖に依存する脳のエネルギー不足、低ナトリウム血症は浸透圧低下による脳浮腫、低カルシウム血症は神経細胞膜の興奮性亢進によってけいれんを起こします。一方、低カリウム血症は過分極によって筋力低下や周期性四肢麻痺、不整脈をきたし、低クロール血症は単独では特有の症状を示しにくい異常です。けいれん患者ではまず血糖を測ってすぐ治せる低血糖を否定し、続いて電解質を確認するという初期対応の流れは、救急の現場で必ず役立つ基本です。

解答・解説

正解はa, d, eです

テーマの要点

けいれん(全身性の強直間代発作など)は、脳神経細胞が過剰に同期して興奮することで起こる。脳の外に原因がある「急性症候性発作」の代表が、代謝・電解質の異常である。主なものは次のとおりである。 ・低血糖:脳はほぼブドウ糖だけをエネルギー源とするため、供給が途絶えると神経細胞が機能を保てなくなる。 ・ナトリウムの異常(低Na血症・高Na血症):血漿の浸透圧が変わり、脳細胞がむくんだり(脳浮腫)縮んだりする。 ・低カルシウム血症・低マグネシウム血症:神経や筋の細胞膜が興奮しやすくなる。

正解を導く考え方

各電解質の異常でどの臓器にどんな症状が出やすいかを整理する。カリウムの異常は主に骨格筋・心筋に影響し、筋力低下、麻痺、不整脈として現れ、けいれんの原因としては重視されない。クロールは、単独の異常で特有の症状を示すことがほとんどない。したがって、けいれんの原因になるのは低血糖、低ナトリウム血症、低カルシウム血症の3つである。 救急で原因のわからないけいれんを診たときは、まず血糖を測定し、あわせてNa・Ca・Mgを確認することが大切である。特に低血糖は、すぐにブドウ糖を静注すれば治せるため、真っ先に否定する。

選択肢考察

  1. ○a.  低血糖

    脳のエネルギーはほぼブドウ糖に頼っており、しかもほとんど蓄えられないため、低血糖は中枢神経症状を起こしやすい。血糖値が下がると、まず交感神経症状(発汗、動悸、手のふるえ、空腹感)が出る。さらにおおむね50 mg/dL以下になると、中枢神経のブドウ糖不足による症状(集中力の低下、異常行動、意識障害、けいれん)が現れ、長く続くと不可逆的な脳障害を残す。インスリンやスルホニル尿素薬を使用中の糖尿病患者、新生児(特に糖尿病の母親から生まれた児や低出生体重児)、インスリノーマなどが代表的な原因である。けいれん患者では必ず血糖を測る。

  2. ×b.  低クロール血症

    低クロール血症は、嘔吐による胃液の喪失やループ利尿薬の使用などで起こり、代謝性アルカローシスを伴うことが多い。ただし、クロールの低値そのものが特有の症状、ましてやけいれんを起こすことはほとんどない。症状はもとの病気や一緒に起こる異常(脱水、低カリウム血症、アルカローシス)によるものである。なお、強いアルカローシスではイオン化カルシウムが減ってテタニーが起こりうるが、これはカルシウムの問題であり、低クロール血症がけいれんを起こしているわけではない。

  3. ×c.  低カリウム血症

    カリウムは細胞膜の静止膜電位を決める主要なイオンである。低カリウム血症では静止膜電位が深くなり(過分極)、筋細胞が興奮しにくくなる。このため、筋力低下、四肢の弛緩性麻痺(低カリウム性周期性四肢麻痺など)、横紋筋融解症、腸管の動きの低下(麻痺性イレウス)、心電図でのT波平低化・U波出現、不整脈、そして尿濃縮力の低下による多尿がみられる。中枢神経への影響は小さく、けいれんの原因としては扱わない。

  4. ○d.  低ナトリウム血症

    低ナトリウム血症では、血漿の浸透圧が下がり、水が脳細胞の中に移動して脳浮腫が起こる。軽いうちは食欲不振、悪心、頭痛、倦怠感程度だが、特に急に進んだ場合や120 mEq/L程度を下回るような高度な低下では、意識障害、けいれん、脳ヘルニアによる呼吸停止に至ることがある。原因には、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、水中毒、サイアザイド系利尿薬、副腎不全などがある。なお、補正が速すぎると浸透圧性脱髄症候群(橋中心髄鞘崩壊症など)を起こすため、慢性の低ナトリウム血症はゆっくり補正する。高ナトリウム血症も、脳細胞の脱水からけいれんや意識障害をきたす。

  5. ○e.  低カルシウム血症

    細胞外のカルシウムイオンが減ると、神経細胞膜のナトリウムチャネルが開きやすくなり、神経や筋が興奮しやすくなる。末梢では、口のまわりや手足のしびれ、テタニー(助産師の手位などの手足の筋の強直性けいれん)、喉頭けいれんが起こり、中枢では全身けいれんを起こすこともある。診察所見として、Trousseau徴候(上腕をマンシェットで圧迫すると手のけいれんが誘発される)やChvostek徴候(顔面神経を叩くと顔の筋肉が収縮する)が知られる。原因は、副甲状腺機能低下症(甲状腺手術後など)、ビタミンD欠乏、慢性腎臓病、新生児の低カルシウム血症などである。心電図ではQT延長がみられる。

電解質・代謝異常と主な症状の整理

・低Na血症:頭痛、悪心、意識障害、けいれん(脳浮腫) ・高Na血症:口渇、易刺激性、意識障害、けいれん(脳細胞の脱水)。急な変化では脳の血管が引っ張られて頭蓋内出血を起こすこともある。 ・低K血症:筋力低下、周期性四肢麻痺、麻痺性イレウス、U波、不整脈、多尿(腎性尿崩症に似た状態) ・高K血症:しびれ、筋力低下、テント状T波、QRS幅の拡大、徐脈、心停止 ・低Ca血症:しびれ、テタニー、Trousseau徴候・Chvostek徴候、けいれん、QT延長 ・高Ca血症:口渇、多尿、便秘、悪心、意識障害、QT短縮、尿路結石 ・低Mg血症:テタニー、けいれん、不整脈(torsades de pointes)。低Ca血症・低K血症を合併しやすく、Mgを補わないとこれらが治りにくい。 ・低血糖:発汗、動悸、振戦(交感神経症状)→ 意識障害、けいれん(中枢神経症状) ・低P血症:筋力低下、横紋筋融解症、溶血、呼吸不全(リフィーディング症候群で問題になる)

けいれん以外の代謝性の原因

尿毒症、肝性脳症、高浸透圧高血糖状態、ビタミンB6依存症(乳児)、薬物中毒・薬物離脱(アルコール離脱など)なども急性症候性発作の原因となる。

けいれん患者の初期対応

気道確保と酸素投与を行い、バイタルサインを確認する。そのうえですぐに血糖を測り、低血糖なら50%ブドウ糖を静注する(アルコール依存などでビタミンB1欠乏が疑われる場合は、ビタミンB1の投与も併せて行う)。けいれんが続いていればベンゾジアゼピン系薬で止め、電解質(Na、Ca、Mg)、血液ガス、薬物、画像検査などで原因を探る。

POINT

・けいれんを起こす代謝・電解質異常:低血糖、低Na血症(高Na血症も)、低Ca血症、低Mg血症 ・低K血症は筋力低下・周期性四肢麻痺・不整脈・多尿をきたすが、けいれんは起こさない。 ・低Cl血症には特有の症状がほとんどない(代謝性アルカローシスを伴いやすい)。 ・低Ca血症のテタニーでは、Trousseau徴候とChvostek徴候を確認する。 ・けいれん患者では、まず血糖を測る。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。