StudyMed医師国家試験

「濃い尿」か「薄い尿」か―多尿を2つに分ければ浸透圧利尿が見えてくる

第115回医師国家試験 E問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第115回 E問題 第13問

浸透圧利尿による多尿をきたすのはどれか。

  1. a.高血糖
  2. b.心因性多飲
  3. c.腎性尿崩症
  4. d.中枢性尿崩症
  5. e.低カリウム血症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は多尿の機序を問う問題だ。多尿は大きく「水利尿」と「浸透圧利尿」の2つに分けて考えると整理しやすい。各選択肢がどちらに当てはまるかを見ていこう。
医学生医学生
浸透圧利尿というと、マンニトールのような利尿薬のイメージがあります。
ドクタードクター
いいところに目をつけたね。浸透圧利尿は、尿細管の中に再吸収されにくい溶質がたくさんあるせいで、管腔内の浸透圧が高く保たれ、水やNaが引き戻せなくなって尿が増える状態だ。マンニトールはまさにその代表。体の中で同じことを起こすものは何だと思う?
医学生医学生
生理学の講義で習った腎閾値の話ですね。血糖が高いと、ブドウ糖が再吸収しきれずに尿に出てきます。
ドクタードクター
その通り。糸球体で濾過されたグルコースは、近位尿細管のSGLT2などでほぼ全部再吸収されるけれど、運べる量には上限がある。血糖がおおむね170〜180 mg/dLを超えると尿糖が出て、それが管腔内の浸透圧を高めて多尿になる。だから高血糖が正解だ。
医学生医学生
糖尿病の口渇・多飲・多尿は、この浸透圧利尿が出発点なんですね。
ドクタードクター
そう。尿にグルコースがたくさん溶けているから、尿浸透圧は血漿と同程度かそれ以上で、尿比重も高めになる。一方、水利尿は溶質の量は普通なのに水だけが多く出る状態で、尿は薄くなる。ここが見分けのカギだよ。では心因性多飲はどうかな。
医学生医学生
水を飲みすぎて出しているだけなので、薄い尿が出る水利尿だと思います。
ドクタードクター
正解。ADHが抑えられて低張尿が大量に出る。血清Naは正常から低めになり、尿崩症では正常から高めになる点が鑑別のヒントだ。水制限試験をすれば、心因性多飲なら尿はちゃんと濃縮される。
医学生医学生
尿崩症は中枢性も腎性も、ADHが働かないから水を再吸収できない、という理解でいいですか。
ドクタードクター
その理解でいい。中枢性尿崩症は視床下部・下垂体後葉の障害でADH自体が出ない。原因には胚細胞腫や頭蓋咽頭腫などの腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球症、手術・外傷などがある。腎性尿崩症はADHは出ているのに、集合管のV2受容体やアクアポリン2の異常で反応できない。どちらも水利尿だ。
医学生医学生
鑑別はデスモプレシンへの反応でしたっけ。CBTの問題で何度も出てきた気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。デスモプレシンを投与して尿浸透圧が上がれば中枢性、上がらなければ腎性だ。最後の低カリウム血症はどうだろう。
医学生医学生
低カリウム血症で多尿……電解質異常で尿細管に何か溶質が増えて、浸透圧利尿になるのかなと思いました。
ドクタードクター
そう考えたくなるよね。でも実際は、持続する低カリウム血症では集合管のアクアポリン2の発現が落ちて、ADHへの反応が鈍くなる。つまり後天性の腎性尿崩症の原因の一つで、機序は水利尿なんだ。高カルシウム血症やリチウム製剤も同じ仲間として覚えておこう。
医学生医学生
正解以外の4つは全部、薄い尿が出る水利尿なんですね。
ドクタードクター
その通り。だから多尿の患者を診たら、まず本当に尿量が増えているかを確かめ、次に尿浸透圧を測る。おおむね300 mOsm/kg未満なら水利尿、それ以上なら浸透圧利尿として、尿糖や尿素、Na負荷などの溶質を探しにいく。尿比重はグルコースや造影剤で高めに出やすいから、より正確には浸透圧で評価するのがいい。
医学生医学生
内科の実習で、高浸透圧高血糖状態の高齢の患者さんが著しい脱水で入院していました。あれも浸透圧利尿のせいですね。
ドクタードクター
まさにそう。浸透圧利尿では水と一緒にNaやKも失われるから、脱水と電解質異常が進み、高浸透圧高血糖状態や糖尿病ケトアシドーシスの悪化につながる。逆にこの仕組みを治療に使っているのが、脳浮腫に使うマンニトールや、尿糖排泄を増やすSGLT2阻害薬だ。SGLT2阻害薬の開始時に脱水に気をつけるよう言われるのも、同じ理屈なんだよ。

まとめ

多尿は、溶質量は正常で水の再吸収が不足する水利尿(低張尿)と、再吸収されにくい溶質が尿細管内に多いために水やNaの再吸収が妨げられる浸透圧利尿(等張〜高張尿)に分けて考えます。高血糖では腎閾値(約170〜180 mg/dL)を超えたグルコースが尿中に残り、浸透圧利尿を起こします。心因性多飲、中枢性尿崩症、腎性尿崩症、そして腎性尿崩症の原因となる低カリウム血症は、いずれも水利尿に分類されます。鑑別の第一歩は尿浸透圧の測定で、浸透圧利尿は脱水や電解質異常を招きやすい一方、マンニトールやSGLT2阻害薬のように治療にも応用されており、病態生理の理解が臨床判断に直結するテーマです。

解答・解説

正解はaです

多尿とは、成人で1日尿量がおおむね3 L(または体重1 kgあたり40~50 mL)を超える状態をいう。多尿は機序によって大きく二つに分けられる。

水利尿

尿中に排泄される溶質の量は正常範囲だが、水の再吸収が不足して「薄い尿」が大量に出る状態である。尿浸透圧は低く(一般に300 mOsm/kg未満、しばしば血漿より低い)、尿比重も低い(多くは1.005以下)。 ・水の過剰摂取:心因性多飲など ・バソプレシン(抗利尿ホルモン:ADH)の分泌低下:中枢性尿崩症 ・ADHに対する腎集合管の反応低下:腎性尿崩症(先天性、リチウムなどの薬剤性、低カリウム血症、高カルシウム血症など)

浸透圧利尿

尿細管腔内に再吸収されにくい溶質が大量に存在するため、管腔内の浸透圧が高く保たれ、水(およびNa)の再吸収が妨げられて尿量が増える状態である。尿浸透圧は300 mOsm/kg以上で血漿と同程度かそれ以上、尿比重も比較的高い。 ・グルコース:高血糖(糖尿病、高浸透圧高血糖状態など) ・マンニトールなどの浸透圧利尿薬、造影剤 ・尿素:高タンパク食・経管栄養、異化亢進、閉塞解除後利尿など ・Na(塩分)の大量負荷 本問では、尿細管で再吸収しきれない溶質(グルコース)が尿中に出て浸透圧利尿を起こす病態を選べばよい。他の選択肢はいずれも水利尿に分類される。

選択肢考察

  1. ○a.  高血糖

    正しい。糸球体で濾過されたグルコースは近位尿細管のナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT2など)でほぼすべて再吸収されるが、その能力には上限がある。血糖値がおおむね170~180 mg/dLの腎閾値を超えると、再吸収しきれないグルコースが尿細管腔に残って尿糖となり、管腔内の浸透圧を高める。その結果、水とNaの再吸収が減少して多尿となる(浸透圧利尿)。糖尿病の古典的症状である口渇・多飲・多尿はこの機序による。尿中にグルコースが多く含まれるため、尿比重は高くなる。著しい高血糖が続くと脱水が進み、高浸透圧高血糖状態や糖尿病ケトアシドーシスの悪化につながる。

  2. ×b.  心因性多飲

    誤り。心因性多飲(一次性多飲)は、精神疾患などを背景に水を過剰に摂取するために、体内の余分な水を排泄しようとして多尿になる状態である。ADHの分泌が抑制され、溶質の少ない薄い尿が出る水利尿であり、尿浸透圧・尿比重は低い。血清Na濃度は正常~低値(ときに低Na血症)を示す点が、尿崩症(正常~高値)との鑑別に役立つ。水制限試験では尿が濃縮される。

  3. ×c.  腎性尿崩症

    誤り。腎性尿崩症は、ADHは分泌されているが、腎集合管がADHに反応しない(ADH受容体V2やアクアポリン2の異常など)ために水を再吸収できず、低張な尿が大量に出る水利尿である。原因には先天性(V2受容体遺伝子やアクアポリン2遺伝子の異常)と後天性(リチウム製剤などの薬剤、低カリウム血症、高カルシウム血症など)がある。ADH(デスモプレシン)を投与しても尿浸透圧は上昇しない。

  4. ×d.  中枢性尿崩症

    誤り。中枢性尿崩症は、視床下部・下垂体後葉の障害(特発性、胚細胞腫・頭蓋咽頭腫などの腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球症、リンパ球性漏斗下垂体後葉炎、手術・外傷など)によりADHの分泌が低下し、集合管での水の再吸収ができなくなって低張尿が大量に出る水利尿である。高張食塩水負荷でもADHが十分に上昇せず、デスモプレシン投与で尿浸透圧が上昇する点が腎性尿崩症との鑑別点である。

  5. ×e.  低カリウム血症

    誤り。持続する低カリウム血症では、集合管でのアクアポリン2の発現が低下するなどしてADHへの反応性が落ち、尿濃縮力が障害される。これは後天性の腎性尿崩症の原因の一つであり、多尿の機序は水利尿である。同様に高カルシウム血症も尿濃縮障害による多尿をきたす。

多尿の鑑別の進め方

1. 本当に多尿か(頻尿との区別):1日尿量を測定する。頻尿は排尿回数が多いだけで尿量は増えていないことがある。 2. 尿浸透圧(または尿比重)を測定する。 ・尿浸透圧が低い(300 mOsm/kg未満)→ 水利尿:心因性多飲、中枢性尿崩症、腎性尿崩症を鑑別 ・尿浸透圧が高い(300 mOsm/kg以上)→ 浸透圧利尿:尿糖、尿素、Na、マンニトールなどの溶質負荷を検索 3. 水利尿の鑑別 ・血清Na:心因性多飲では正常~低値、尿崩症では正常~高値 ・高張食塩水負荷試験:中枢性尿崩症ではADH(またはコペプチン)の上昇が不十分 ・デスモプレシン負荷試験:中枢性では尿浸透圧が上昇、腎性では上昇しない

尿比重と浸透圧の注意点

尿比重は溶質の重さの影響を受けるため、グルコースや造影剤が多量に含まれると、浸透圧の割に比重が高く出る。より正確な評価には尿浸透圧を用いる。

浸透圧利尿の臨床的意義

浸透圧利尿では水とともにNaやKも失われるため、脱水や電解質異常をきたしやすい。高血糖による浸透圧利尿が続くと循環血液量が減少し、高浸透圧高血糖状態に至ることがある。逆に、この機序を治療に利用したものがマンニトール(脳浮腫に対する頭蓋内圧降下)であり、SGLT2阻害薬も尿糖排泄を増やして軽度の浸透圧利尿を起こす。

POINT

・多尿は水利尿(低張尿)と浸透圧利尿(等張~高張尿)に分けて考える。 ・浸透圧利尿:高血糖(尿糖)、マンニトール、尿素、Na負荷など。 ・水利尿:心因性多飲、中枢性尿崩症、腎性尿崩症(低カリウム血症・高カルシウム血症・リチウムによるものを含む)。 ・グルコースの腎閾値はおおむね170~180 mg/dL。 ・鑑別の第一歩は尿浸透圧・尿比重の測定。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。