溜まるビタミン、流れるビタミン―「脂溶性か水溶性か」で読み解く過剰症
第102回医師国家試験 I問題 第28問
国試問題にチャレンジ
過剰症を起こすことがあるのはどれか。2つ選べ。
- a.ナイアシン
- b.ビタミンA
- c.ビタミンB1
- d.ビタミンC
- e.ビタミンD
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
ビタミンは脂溶性(A・D・E・K)と水溶性(B群・C)に分けられ、脂溶性ビタミンは肝臓や脂肪組織に蓄積して尿中に排泄されにくいため、長期・大量摂取で過剰症を起こしえます。なかでも臨床的に重要なのは、頭蓋内圧亢進・骨関節痛・肝障害・催奇形性をきたすビタミンA過剰症と、高カルシウム血症・腎結石・異所性石灰化をきたすビタミンD過剰症です。水溶性ビタミンは余剰分が速やかに尿中へ排泄されるため典型的な過剰症は起こりにくく、ナイアシンの大量投与時の副作用やビタミンCの大量摂取による結石リスク、ビタミンB6大量摂取による末梢神経障害は例外的な事項として整理しておくとよいでしょう。活性型ビタミンD製剤の投与中の血清カルシウム値の確認や、サプリメント摂取歴の聴取は日常診療で欠かせない視点であり、「溜まるか流れるか」という性質から過剰症と欠乏症を体系的に理解することが大切です。
解答・解説
正解はb, eです
ビタミンは溶解性によって脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分けられ、過剰症の起こりやすさはこの性質で大きく異なる。 ・脂溶性ビタミン:ビタミンA、D、E、Kの4種類。脂肪組織や肝臓に蓄積され、尿中へ排泄されにくいため、長期・大量摂取で体内に蓄積し、過剰症(ビタミン過剰症)を起こしうる。 ・水溶性ビタミン:ビタミンB群(B1、B2、ナイアシン、B6、B12、葉酸、パントテン酸、ビオチン)とビタミンC。余剰分は速やかに尿中へ排泄されるため体内に蓄積しにくく、臨床的に問題となる過剰症は起こりにくい。 脂溶性ビタミンの中でも、臨床的に明確な過剰症が知られ試験で頻出なのはビタミンAとビタミンDである(ビタミンEやKの過剰症は通常の摂取ではまれ)。したがって選択肢のうち脂溶性であるビタミンAとビタミンDを選べばよい。
選択肢考察
- ×a. ナイアシン
誤り。ナイアシン(ニコチン酸とニコチンアミドの総称、ビタミンB3)は水溶性ビタミンであり、通常の食事で過剰症を起こすことはない。欠乏症はペラグラ(皮膚炎・下痢・認知症の3D)である。なお、脂質異常症の治療薬として薬理量のニコチン酸を用いると、皮膚の紅潮(フラッシング)、瘙痒感、肝障害、耐糖能悪化などの副作用が生じることがあり、食事摂取基準でも耐容上限量が設定されているが、これは大量投与時の薬物有害反応であり、脂溶性ビタミンのような蓄積による典型的な過剰症とは区別される。
- ○b. ビタミンA
正しい。ビタミンA(レチノール)は脂溶性で主に肝臓に貯蔵されるため、サプリメントや肝油、動物の肝臓(レバー)の大量摂取で過剰症を起こす。急性中毒では頭痛、悪心・嘔吐、頭蓋内圧亢進(乳児では大泉門膨隆)がみられる。慢性中毒では皮膚の乾燥・落屑、脱毛、口唇炎、骨・関節痛や四肢の疼痛性腫脹(長管骨の骨膜下骨新生)、肝障害(肝線維化)、特発性頭蓋内圧亢進症などをきたす。妊娠初期の過剰摂取は催奇形性があるため注意が必要である(レチノイド系薬剤も同様)。なお、植物由来のβ-カロテンは必要に応じてビタミンAに変換されるため、ビタミンA過剰症は起こさず、大量摂取しても柑皮症(皮膚の黄染)をきたす程度である。
- ×c. ビタミンB1
誤り。ビタミンB1(チアミン)は水溶性ビタミンで、余剰分は速やかに尿中へ排泄されるため、経口摂取で過剰症を起こすことはほとんどない。臨床的に重要なのは欠乏症であり、脚気(末梢神経障害・心不全)やWernicke脳症(眼球運動障害・運動失調・意識障害)を起こす。
- ×d. ビタミンC
誤り。ビタミンC(アスコルビン酸)は水溶性ビタミンで、過剰分は尿中に排泄されるため、典型的な過剰症は起こりにくい。大量摂取(1日数gレベル)で下痢などの消化器症状や、代謝産物であるシュウ酸の尿中排泄増加によるシュウ酸カルシウム結石のリスクが指摘される程度である。欠乏症は壊血病(歯肉出血、皮下出血、創傷治癒遅延、小児では骨膜下出血)である。
- ○e. ビタミンD
正しい。ビタミンDは脂溶性で脂肪組織などに蓄積するため、サプリメントや活性型ビタミンD製剤の過量投与で過剰症を起こす。活性型ビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD)は腸管からのカルシウム・リン吸収を促進し骨吸収も促すため、過剰になると高カルシウム血症・高カルシウム尿症をきたす。症状は食欲不振、悪心・嘔吐、便秘、多尿・口渇(腎性尿崩症様)、脱力、意識障害などで、進行すると腎結石、腎石灰化症、腎機能障害、血管・軟部組織の異所性石灰化を生じる。骨粗鬆症や慢性腎臓病の治療で活性型ビタミンD製剤を使用する際には、血清カルシウム値のモニタリングが必要である。
ビタミンの分類と主な欠乏症
脂溶性ビタミン ・ビタミンA:欠乏で夜盲症、眼球乾燥症(角膜乾燥症、Bitot斑)、皮膚角化。過剰で頭蓋内圧亢進、骨・関節痛、肝障害、催奇形性。 ・ビタミンD:欠乏で小児のくる病、成人の骨軟化症。過剰で高カルシウム血症、腎結石、異所性石灰化。 ・ビタミンE:欠乏で溶血性貧血(特に未熟児)、脊髄小脳変性様の神経障害。大量で出血傾向の報告がある。 ・ビタミンK:欠乏で凝固因子(II、VII、IX、X)の産生低下による出血傾向(新生児メレナ、乳児の頭蓋内出血)。 水溶性ビタミン ・B1(チアミン):脚気、Wernicke脳症。 ・B2(リボフラビン):口角炎、口内炎、舌炎、脂漏性皮膚炎。 ・ナイアシン(B3):ペラグラ(皮膚炎・下痢・認知症)。 ・B6(ピリドキシン):末梢神経障害、口角炎、けいれん。なおB6は大量摂取で感覚性末梢神経障害を起こすことがあり、水溶性ビタミンの例外として知られる。 ・B12(コバラミン):巨赤芽球性貧血、亜急性連合性脊髄変性症。 ・葉酸:巨赤芽球性貧血、胎児の神経管閉鎖障害。 ・C(アスコルビン酸):壊血病。
脂溶性ビタミンが過剰症を起こしやすい理由
脂溶性ビタミンは脂質とともに吸収され、肝臓や脂肪組織に貯蔵される。水溶性ビタミンのように尿から速やかに排泄される経路がないため、摂取量が多い状態が続くと体内に蓄積して毒性を示す。一方、貯蔵があるため欠乏症の出現は比較的緩徐である。
POINT
・脂溶性ビタミンはA、D、E、K(覚え方「ADEK」)。体内に蓄積し、過剰症を起こしうる。 ・水溶性ビタミン(B群・C)は尿中へ速やかに排泄され、過剰症は起こりにくい(B6の大量摂取による末梢神経障害は例外的に知られる)。 ・ビタミンA過剰:頭蓋内圧亢進(乳児の大泉門膨隆)、骨・関節痛、肝障害、催奇形性。 ・ビタミンD過剰:高カルシウム血症、腎結石・腎石灰化、異所性石灰化。
