StudyMed医師国家試験

溜まるビタミン、流れるビタミン―「脂溶性か水溶性か」で読み解く過剰症

第102回医師国家試験 I問題 第28問

国試問題にチャレンジ

第102回 I問題 第28問

過剰症を起こすことがあるのはどれか。2つ選べ。

  1. a.ナイアシン
  2. b.ビタミンA
  3. c.ビタミンB1
  4. d.ビタミンC
  5. e.ビタミンD

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はビタミンの過剰症がテーマだ。5つの選択肢を一つずつ暗記で判断するより、「そのビタミンは体に溜まるのか、尿で流れていくのか」という一つの軸で整理すると、一気に見通しがよくなるよ。
医学生医学生
生化学の講義で、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分けて習いました。脂溶性はA、D、E、Kでしたよね。
ドクタードクター
その通り、「ADEK」と覚えておくといい。脂溶性ビタミンは脂質と一緒に吸収されて、肝臓や脂肪組織に貯蔵される。尿へ速やかに捨てる経路がないから、大量摂取が続くと体内に蓄積して毒性が出てくるんだ。
医学生医学生
逆に水溶性のB群やCは、余った分がおしっこに出ていくから溜まりにくい、ということですね。
ドクタードクター
そう。だから臨床的に問題になる過剰症は起こりにくい。この問題では、脂溶性のビタミンAとビタミンDを選べばいい。まずビタミンAの過剰症にはどんな症状があるか、思い出せるかな。
医学生医学生
欠乏症の夜盲症は覚えているんですが、過剰症はあまり自信がありません。
ドクタードクター
ビタミンAは主に肝臓に貯蔵されるから、サプリメントや肝油、レバーの大量摂取で過剰症が起こる。急性では頭痛や嘔吐など頭蓋内圧亢進の症状が出て、乳児では大泉門が膨隆する。慢性では皮膚の乾燥や落屑、脱毛、骨・関節痛、肝障害などがみられるよ。
医学生医学生
産婦人科の実習で、妊娠初期にはビタミンAのサプリを摂りすぎないよう指導していました。あれは催奇形性のためですか。
ドクタードクター
まさにそれ。妊娠初期の過剰摂取は催奇形性があるので注意が必要で、レチノイド系の薬剤も同様だ。ちなみに、緑黄色野菜に多いβ-カロテンは必要な分だけビタミンAに変換されるから、たくさん摂っても過剰症にはならず、皮膚が黄色くなる柑皮症くらいで済むんだ。
医学生医学生
次にビタミンDですが、カルシウムの吸収を増やす作用があるので、過剰になると高カルシウム血症でしょうか。
ドクタードクター
正解。活性型ビタミンDは腸管からのカルシウム・リン吸収を促し、骨吸収も促すので、過剰では高カルシウム血症と高カルシウム尿症になる。食欲不振、悪心・嘔吐、便秘、多尿・口渇、脱力、意識障害といった症状が出て、進むと腎結石や腎石灰化、腎機能障害、異所性石灰化を起こすんだ。
医学生医学生
腎臓内科を回ったとき、骨粗鬆症で活性型ビタミンD製剤を飲んでいた高齢の方が、高カルシウム血症と腎機能悪化で入院していました。
ドクタードクター
臨床でとてもよく出会う状況だね。サプリメントよりも、活性型ビタミンD製剤の投与中に脱水などが重なって起こるケースが重要だ。だから処方中は血清カルシウム値を定期的にモニタリングする。では、残りの水溶性ビタミンも確認しよう。ナイアシンはどうだろう。
医学生医学生
ナイアシンは欠乏でペラグラ、皮膚炎・下痢・認知症の3Dですよね。でも脂質異常症の薬として使うと顔が赤くなると聞いた気がします。
ドクタードクター
よく知っているね。薬理量のニコチン酸では皮膚の紅潮、瘙痒感、肝障害、耐糖能悪化などの副作用が出ることがある。ただ、これは大量投与時の薬物有害反応で、脂溶性ビタミンのような蓄積による典型的な過剰症とは区別して考えよう。ビタミンB1も水溶性で、経口摂取で過剰症はほとんど問題にならない。大事なのは脚気やWernicke脳症といった欠乏症のほうだ。
医学生医学生
ビタミンCも大量に摂る人がいますが、問題はないんでしょうか。
ドクタードクター
1日数gレベルの大量摂取で下痢や、代謝産物のシュウ酸が尿中に増えることによるシュウ酸カルシウム結石のリスクが指摘される程度だね。典型的な過剰症とは言いにくい。欠乏症の壊血病のほうをしっかり押さえておこう。
医学生医学生
つまり「溜まるものは過剰症、流れるものは欠乏症」が基本で、試験で過剰症として明確に問われるのはAとDということですね。
ドクタードクター
その理解でいい。ただし例外も一つ知っておこう。ビタミンB6は水溶性だけれど、大量摂取で感覚性の末梢神経障害を起こすことが知られている。また、脂溶性ビタミンは貯蔵があるぶん欠乏症の出現は比較的ゆっくりだ。外来でサプリメントを複数飲んでいる患者さんは珍しくないから、原因不明の高カルシウム血症や頭痛、肝障害をみたら、サプリメントや処方薬の内容を必ず確認する習慣をつけてほしい。

まとめ

ビタミンは脂溶性(A・D・E・K)と水溶性(B群・C)に分けられ、脂溶性ビタミンは肝臓や脂肪組織に蓄積して尿中に排泄されにくいため、長期・大量摂取で過剰症を起こしえます。なかでも臨床的に重要なのは、頭蓋内圧亢進・骨関節痛・肝障害・催奇形性をきたすビタミンA過剰症と、高カルシウム血症・腎結石・異所性石灰化をきたすビタミンD過剰症です。水溶性ビタミンは余剰分が速やかに尿中へ排泄されるため典型的な過剰症は起こりにくく、ナイアシンの大量投与時の副作用やビタミンCの大量摂取による結石リスク、ビタミンB6大量摂取による末梢神経障害は例外的な事項として整理しておくとよいでしょう。活性型ビタミンD製剤の投与中の血清カルシウム値の確認や、サプリメント摂取歴の聴取は日常診療で欠かせない視点であり、「溜まるか流れるか」という性質から過剰症と欠乏症を体系的に理解することが大切です。

解答・解説

正解はb, eです

ビタミンは溶解性によって脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分けられ、過剰症の起こりやすさはこの性質で大きく異なる。 ・脂溶性ビタミン:ビタミンA、D、E、Kの4種類。脂肪組織や肝臓に蓄積され、尿中へ排泄されにくいため、長期・大量摂取で体内に蓄積し、過剰症(ビタミン過剰症)を起こしうる。 ・水溶性ビタミン:ビタミンB群(B1、B2、ナイアシン、B6、B12、葉酸、パントテン酸、ビオチン)とビタミンC。余剰分は速やかに尿中へ排泄されるため体内に蓄積しにくく、臨床的に問題となる過剰症は起こりにくい。 脂溶性ビタミンの中でも、臨床的に明確な過剰症が知られ試験で頻出なのはビタミンAとビタミンDである(ビタミンEやKの過剰症は通常の摂取ではまれ)。したがって選択肢のうち脂溶性であるビタミンAとビタミンDを選べばよい。

選択肢考察

  1. ×a.  ナイアシン

    誤り。ナイアシン(ニコチン酸とニコチンアミドの総称、ビタミンB3)は水溶性ビタミンであり、通常の食事で過剰症を起こすことはない。欠乏症はペラグラ(皮膚炎・下痢・認知症の3D)である。なお、脂質異常症の治療薬として薬理量のニコチン酸を用いると、皮膚の紅潮(フラッシング)、瘙痒感、肝障害、耐糖能悪化などの副作用が生じることがあり、食事摂取基準でも耐容上限量が設定されているが、これは大量投与時の薬物有害反応であり、脂溶性ビタミンのような蓄積による典型的な過剰症とは区別される。

  2. ○b.  ビタミンA

    正しい。ビタミンA(レチノール)は脂溶性で主に肝臓に貯蔵されるため、サプリメントや肝油、動物の肝臓(レバー)の大量摂取で過剰症を起こす。急性中毒では頭痛、悪心・嘔吐、頭蓋内圧亢進(乳児では大泉門膨隆)がみられる。慢性中毒では皮膚の乾燥・落屑、脱毛、口唇炎、骨・関節痛や四肢の疼痛性腫脹(長管骨の骨膜下骨新生)、肝障害(肝線維化)、特発性頭蓋内圧亢進症などをきたす。妊娠初期の過剰摂取は催奇形性があるため注意が必要である(レチノイド系薬剤も同様)。なお、植物由来のβ-カロテンは必要に応じてビタミンAに変換されるため、ビタミンA過剰症は起こさず、大量摂取しても柑皮症(皮膚の黄染)をきたす程度である。

  3. ×c.  ビタミンB1

    誤り。ビタミンB1(チアミン)は水溶性ビタミンで、余剰分は速やかに尿中へ排泄されるため、経口摂取で過剰症を起こすことはほとんどない。臨床的に重要なのは欠乏症であり、脚気(末梢神経障害・心不全)やWernicke脳症(眼球運動障害・運動失調・意識障害)を起こす。

  4. ×d.  ビタミンC

    誤り。ビタミンC(アスコルビン酸)は水溶性ビタミンで、過剰分は尿中に排泄されるため、典型的な過剰症は起こりにくい。大量摂取(1日数gレベル)で下痢などの消化器症状や、代謝産物であるシュウ酸の尿中排泄増加によるシュウ酸カルシウム結石のリスクが指摘される程度である。欠乏症は壊血病(歯肉出血、皮下出血、創傷治癒遅延、小児では骨膜下出血)である。

  5. ○e.  ビタミンD

    正しい。ビタミンDは脂溶性で脂肪組織などに蓄積するため、サプリメントや活性型ビタミンD製剤の過量投与で過剰症を起こす。活性型ビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD)は腸管からのカルシウム・リン吸収を促進し骨吸収も促すため、過剰になると高カルシウム血症・高カルシウム尿症をきたす。症状は食欲不振、悪心・嘔吐、便秘、多尿・口渇(腎性尿崩症様)、脱力、意識障害などで、進行すると腎結石、腎石灰化症、腎機能障害、血管・軟部組織の異所性石灰化を生じる。骨粗鬆症や慢性腎臓病の治療で活性型ビタミンD製剤を使用する際には、血清カルシウム値のモニタリングが必要である。

ビタミンの分類と主な欠乏症

脂溶性ビタミン ・ビタミンA:欠乏で夜盲症、眼球乾燥症(角膜乾燥症、Bitot斑)、皮膚角化。過剰で頭蓋内圧亢進、骨・関節痛、肝障害、催奇形性。 ・ビタミンD:欠乏で小児のくる病、成人の骨軟化症。過剰で高カルシウム血症、腎結石、異所性石灰化。 ・ビタミンE:欠乏で溶血性貧血(特に未熟児)、脊髄小脳変性様の神経障害。大量で出血傾向の報告がある。 ・ビタミンK:欠乏で凝固因子(II、VII、IX、X)の産生低下による出血傾向(新生児メレナ、乳児の頭蓋内出血)。 水溶性ビタミン ・B1(チアミン):脚気、Wernicke脳症。 ・B2(リボフラビン):口角炎、口内炎、舌炎、脂漏性皮膚炎。 ・ナイアシン(B3):ペラグラ(皮膚炎・下痢・認知症)。 ・B6(ピリドキシン):末梢神経障害、口角炎、けいれん。なおB6は大量摂取で感覚性末梢神経障害を起こすことがあり、水溶性ビタミンの例外として知られる。 ・B12(コバラミン):巨赤芽球性貧血、亜急性連合性脊髄変性症。 ・葉酸:巨赤芽球性貧血、胎児の神経管閉鎖障害。 ・C(アスコルビン酸):壊血病。

脂溶性ビタミンが過剰症を起こしやすい理由

脂溶性ビタミンは脂質とともに吸収され、肝臓や脂肪組織に貯蔵される。水溶性ビタミンのように尿から速やかに排泄される経路がないため、摂取量が多い状態が続くと体内に蓄積して毒性を示す。一方、貯蔵があるため欠乏症の出現は比較的緩徐である。

POINT

・脂溶性ビタミンはA、D、E、K(覚え方「ADEK」)。体内に蓄積し、過剰症を起こしうる。 ・水溶性ビタミン(B群・C)は尿中へ速やかに排泄され、過剰症は起こりにくい(B6の大量摂取による末梢神経障害は例外的に知られる)。 ・ビタミンA過剰:頭蓋内圧亢進(乳児の大泉門膨隆)、骨・関節痛、肝障害、催奇形性。 ・ビタミンD過剰:高カルシウム血症、腎結石・腎石灰化、異所性石灰化。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。