その一枚が国の統計になる―死体検案書をめぐる5つの誤解
第102回医師国家試験 F問題 第3問
国試問題にチャレンジ
死体検案書について正しいのはどれか。
- a.死因統計の資料となる。
- b.歯科医師も交付できる。
- c.直接死因は警察官が決定する。
- d.検案日と検案書発行日は同一である。
- e.検案をした医師以外の医師も交付できる。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
死体検案書は、診療していなかった人の死亡や診療中の傷病と無関係な死亡の際に、医師が死体を検案したうえで交付する書類で、死亡診断書と同じ様式です。死亡届に添付されて市区町村に提出され、人口動態統計(死因統計)の資料となるため、原死因が分かるよう医学的に正確な記載が求められます。交付できるのは自ら検案した医師のみで(医師法第20条)、歯科医師は死亡診断書は交付できても死体検案書は交付できず、死因の判断も警察官ではなく医師が行います。検案日と発行日は異なってよく、異状死体を認めた場合は24時間以内に警察署へ届け出る義務がある(医師法第21条)点も重要です。一枚の書類が国の死因統計を支えていることを意識すると、関連法規も筋道立てて覚えやすくなります。
解答・解説
正解はaです
問われていること
死体検案書の法的な位置づけ、誰が交付できるか、何に使われるかを理解しているかが問われている。
死体検案と死体検案書
死体検案とは、医師が死体の外表を観察し、必要に応じて検査を行い、死因・死亡時刻(死後経過時間)・損傷の有無や性状などを医学的に判断することである。その結果を記載した公的な証明書が死体検案書であり、様式は死亡診断書と共通である(同じ用紙で、不要な方を二重線で消して使う)。
死亡診断書との使い分け
・死亡診断書:自らが診療していた患者が、その診療していた傷病に関連して死亡した場合に交付する。 ・死体検案書:上記以外、すなわち診療していなかった者の死亡や、診療中の患者でも診療中の傷病と関係のない原因(外因死など)で死亡した場合に、死体を検案したうえで交付する。
考え方
死体検案書は死亡届に添付されて市区町村に提出され、人口動態統計(死因統計)の基礎資料となる。交付できるのは検案を自ら行った医師に限られ(医師法第20条)、歯科医師は交付できない。死因の判断は医師の医学的判断であって、警察官が決めるものではない。これらを押さえれば正解を選べる。
選択肢考察
- ○a. 死因統計の資料となる。
死体検案書は死亡診断書と同様に、戸籍法に基づく死亡届(死亡の事実を知った日から7日以内に届出)に添付して市区町村に提出される。その記載内容は人口動態調査の死亡票に転記されて集計され、死因別死亡数・死亡率などの人口動態統計(死因統計)の資料となる。したがって死因は、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD)に基づく原死因選択が可能なよう、医学的に正確に記載する必要がある。
- ×b. 歯科医師も交付できる。
歯科医師法では、歯科医師は自らが診療した患者について死亡診断書を交付することは認められているが、死体検案を行い死体検案書を交付する権限は定められていない。死体検案書を交付できるのは医師のみである。死亡診断書と死体検案書で扱いが異なる点が頻出である。
- ×c. 直接死因は警察官が決定する。
直接死因を含む死因の判断は、検案を行った医師が外表所見や検査結果、状況に関する情報などをもとに医学的に行う。異状死体では警察による検視(捜査上の観点から死体の状況を調べること)が行われ、医師は検視に立ち会って検案することが多いが、死因を決めるのはあくまで医師である。必要があれば司法解剖や行政解剖などで死因を確定する。
- ×d. 検案日と検案書発行日は同一である。
検案書は検案が終わったあとに作成・交付するものであり、解剖や検査の結果を待つ場合や遺族からの交付請求が後日になる場合などには、検案日と発行日が異なることがある。両者を同じ日にしなければならないという規定はなく、書式上も「検案年月日」と「発行年月日」は別の欄として設けられている。
- ×e. 検案をした医師以外の医師も交付できる。
医師法第20条は、医師が自ら検案しないで検案書を交付することを禁じている。したがって死体検案書は、実際に検案を行った医師が交付しなければならない。他の医師が代わりに交付することはできない。
死亡診断書・死体検案書に関する主な法規定
・医師法第19条第2項:診察・検案・出産に立ち会った医師は、診断書・検案書・出生証明書・死産証書の交付を求められた場合、正当な事由がなければ拒んではならない。 ・医師法第20条:自ら診察しないで診断書を交付すること、自ら検案しないで検案書を交付することを禁じる。ただし診療中の患者が最終の診察後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書はこの限りでない。なお、24時間を超えていても、診療中の傷病による死亡と判断できれば、改めて死後診察を行ったうえで死亡診断書を交付できる(24時間を超えたら必ず検案書、というわけではない)。 ・医師法第21条:死体を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄の警察署に届け出なければならない。 ・歯科医師法:歯科医師は診療した患者の死亡診断書を交付できるが、死体検案書は交付できない。
死亡届と人口動態統計の流れ
死亡診断書/死体検案書 → 届出義務者(親族など)が死亡届とともに市区町村へ提出(7日以内)→ 市区町村が人口動態調査票を作成 → 保健所 → 都道府県 → 厚生労働省で集計(人口動態統計)。
死因の記載
死亡の原因欄は、直接死因(I欄ア)から順に、その原因となった傷病をさかのぼって記載し、最も根本となる原死因(統計上の死因)が分かるようにする。「心不全」「呼吸不全」などの終末状態だけを書くのは避けるべきとされる。
死体の取り扱いの用語
・検案:医師が死体を医学的に調べ、死因などを判断すること ・検視:検察官(代行として警察官)が犯罪性の有無を判断するために死体を調べること(刑事訴訟法) ・司法解剖:犯罪の疑いがある死体の死因究明のための解剖 ・行政解剖(監察医解剖など):犯罪性はないが死因不明の死体の死因究明のための解剖
POINT
・死体検案書は死亡診断書と同じく死亡届に添付され、人口動態統計(死因統計)の資料になる。 ・死体検案書を交付できるのは、自ら検案した医師のみ(医師法第20条)。 ・歯科医師は死亡診断書は交付できるが、死体検案書は交付できない。 ・死因の判断は医師が行う。警察官ではない。 ・異状死体は24時間以内に所轄警察署へ届け出る(医師法第21条)。
