StudyMed医師国家試験

健診で初めて言われた高血圧―薬の前にまず「測り直し」と「減量」

第101回医師国家試験 G問題 第22問

国試問題にチャレンジ

第101回 G問題 第22問

58歳の男性。健康診査で初めて高血圧を指摘され来院した。自営業。喫煙歴はない。飲酒はビール中ビン1本/日を20年間。身長168cm,体重75kg。血圧148/92mmHg。尿所見と血液生化学所見とに異常を認めない。 初診時の対応として適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. a.降圧薬を処方する。
  2. b.血圧の経過をみる。
  3. c.禁酒するよう指導する。
  4. d.体重を減らすよう指導する。
  5. e.ブドウ糖負荷試験を実施する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、健診で初めて高血圧を指摘された人に、初診で何をするかを考える問題だ。注目点は3つ。血圧がどの程度の高血圧に当たるか、合併症や臓器障害を示す所見があるか、そして是正すべき生活習慣は何か。まずは血圧の分類から確認しよう。
医学生医学生
140〜159/90〜99mmHgがⅠ度高血圧なので、この方はⅠ度ですね。高血圧と分かったなら、すぐ降圧薬を出すべきかと思ってしまいます。
ドクタードクター
そう考える学生は多いね。でも、ここで大事なのは「1回の診察室血圧だけで方針を決めない」ということ。病院では緊張で血圧が普段より高く出ることがあって、これを白衣効果という。診察室では高いのに家庭では正常という人は白衣高血圧と呼ばれるんだ。
医学生医学生
OSCEの練習で血圧測定をしたとき、同級生同士でも1回目と2回目でかなり値が違って驚きました。
ドクタードクター
まさにそれが日常的に起こる。だから日を改めて複数回測ったり、家庭血圧を測ってもらったりして、本当の血圧レベルを確認するのが基本なんだ。家庭血圧では135/85mmHg以上が高血圧の基準になる。というわけで、血圧の経過をみるのは適切な対応だ。
医学生医学生
では、降圧薬はいつ始めるんですか。
ドクタードクター
ガイドラインでは、Ⅰ度高血圧の場合、ほかの危険因子や臓器障害の有無でリスクを層別化する。この方は男性であることが危険因子で、尿や血液検査に異常がなく糖尿病やCKDもないから中等リスクと考えられる。中等リスクなら生活習慣の修正から始めて、おおむね1か月後に再評価し、それでも140/90mmHg以上なら薬を考える。初診でいきなり処方するのは早いね。
医学生医学生
逆に、すぐ薬を始めるのはどんな場合ですか。
ドクタードクター
糖尿病やCKD、心血管病の既往がある高リスクの人や、180/110mmHg以上のⅢ度高血圧では、生活習慣の修正と同時に降圧薬を始める。この方はそこに当たらない。次に生活習慣を見よう。身長と体重から何が分かるかな。
医学生医学生
BMIを計算すると、75÷1.68の2乗で約26.6です。25以上なので肥満ですね。
ドクタードクター
その通り。肥満はインスリン抵抗性や交感神経の亢進、ナトリウム貯留を介して血圧を上げる。体重を1kg減らすと収縮期血圧がおよそ1mmHg下がるとも言われていて、BMI 25未満を目標に食事と有酸素運動で減量を指導するのが、この方の生活指導の中心になる。
医学生医学生
お酒はどうでしょう。毎日飲んでいるので禁酒を勧めたくなります。
ドクタードクター
そこが引っかけどころだ。高血圧の生活指導で求められるのは禁酒ではなく節酒で、目標は男性でエタノール20〜30mL/日以下。ビール中ビン1本はおよそ500mLで、エタノールは約20〜25mLだから、ちょうど許容範囲に収まっている。量を増やさないよう伝えれば十分で、完全な禁酒まで指導する必要はないんだ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で習った「節度ある適度な飲酒」がちょうどその量でした。ブドウ糖負荷試験はどうですか。肥満があるので糖尿病が気になります。
ドクタードクター
気にする姿勢はいいね。ただ、経口ブドウ糖負荷試験は空腹時血糖やHbA1cが境界域で診断がつかないときなどに行う検査だ。この方は尿糖も含めて尿所見と血液生化学所見に異常がないから、初診で行う根拠がない。
医学生医学生
まとめると、血圧を測り直して経過をみることと、減量を指導することの2つが正解ですね。
ドクタードクター
そう。最後に臨床での注意点を補足しておこう。家庭血圧は白衣高血圧を見分けるだけでなく、診察室では正常なのに家庭で高い仮面高血圧を見つけるのにも役立つ。仮面高血圧は見逃されやすく心血管リスクが高いので要注意だ。
医学生医学生
家庭血圧はどう測ってもらえばいいですか。
ドクタードクター
朝と晩に、座って1〜2分安静にしてから測るのが基本だ。朝は起床後1時間以内、排尿後、服薬や朝食の前に測る。生活習慣の修正としては、減量のほかに減塩(食塩6g/日未満)、毎日30分以上の有酸素運動、禁煙なども組み合わせる。薬はあくまで、こうした土台の上に上乗せするものだと覚えておこう。

まとめ

健診で初めて指摘されたⅠ度高血圧(140〜159/90〜99mmHg)で、臓器障害や糖尿病・CKDなどの合併がない場合は、初診ですぐに降圧薬を始めず、家庭血圧を含めて血圧の経過を確認しながら生活習慣の修正を行います。1回の診察室血圧は白衣効果で高く出ることがあるため、複数回の測定や家庭血圧(基準135/85mmHg以上)で真の血圧レベルを見極めることが大切です。本例はBMI約26.6の肥満であり減量指導が中心となる一方、ビール中ビン1本はエタノール約20〜25mLで男性の節酒目標内のため禁酒までは不要で、検査異常がなければブドウ糖負荷試験も必要ありません。高リスク例やⅢ度高血圧では速やかな薬物療法が必要となるため、リスク層別化に基づいて初期対応を選ぶ考え方を身につけておきましょう。

解答・解説

正解はb, dです

所見の整理

・58歳男性。健康診査で初めて高血圧を指摘された。自覚症状の記載はない。 ・血圧148/92mmHg:日本高血圧学会の分類では、診察室血圧140~159/90~99mmHgがⅠ度高血圧に当たる。 ・BMI(体格指数)=体重(kg)÷身長(m)²=75÷(1.68×1.68)≒26.6。日本肥満学会の基準ではBMI 25以上が肥満であり、本例は肥満(1度)に該当する。 ・喫煙歴なし。飲酒はビール中ビン1本(約500mL)/日。ビールのアルコール度数を約5%とするとエタノール量は約20~25mL(g)/日で、男性の節酒目標(エタノール20~30mL/日以下)の範囲内である。 ・尿所見・血液生化学所見に異常がなく、糖尿病・脂質異常症・慢性腎臓病(CKD)などの合併や、二次性高血圧を示唆する所見(低カリウム血症など)もない。

診断と評価のプロセス

血圧は測定状況で大きく変動し、特に医療機関では緊張によって普段より高く出ることがある(白衣効果、白衣高血圧)。一度の診察室血圧だけで高血圧の重症度や治療方針を確定せず、日を改めた複数回の測定や家庭血圧の測定で確認することが基本である。 次に、高血圧以外の心血管病の危険因子と臓器障害の有無から、心血管病の発症リスクを層別化する。本例は危険因子として男性であること(年齢65歳未満、喫煙・糖尿病・脂質異常症・CKDなし)があり、Ⅰ度高血圧と合わせて中等リスクと評価される。肥満も心血管病の危険を高める重要な要因である。

設問の考え方

低~中等リスクのⅠ度高血圧では、初診時にすぐ降圧薬を始めるのではなく、まず生活習慣の修正(減塩、減量、運動、節酒など)を指導し、家庭血圧を含めて血圧の経過を観察する。中等リスクではおおむね1か月後に再評価し、なお140/90mmHg以上であれば降圧薬の開始を考慮する。本例で是正すべき生活習慣は肥満であり、減量指導が適切である。

選択肢考察

  1. ×a.  降圧薬を処方する。

    本例は初めて指摘されたⅠ度高血圧で、臓器障害や糖尿病などの合併がない中等リスクである。まず生活習慣の修正を行い、約1か月後に再評価して改善しない場合に降圧薬を考慮する。1回の測定値で直ちに薬物療法を始めると、白衣高血圧の患者に不要な投薬を行うおそれもある。なお、高リスク(糖尿病・CKD・心血管病の既往などを伴う場合)やⅢ度高血圧(180/110mmHg以上)では、生活習慣の修正と同時に速やかな降圧薬開始が勧められる。

  2. ○b.  血圧の経過をみる。

    診察室血圧は緊張などで高く出やすく、1回の測定値だけでは真の血圧レベルを判断できない。家庭血圧の測定(朝・晩、座位で1~2分安静後など)を指導し、日を改めて繰り返し血圧を確認することで、白衣高血圧の除外や治療方針の決定ができる。家庭血圧では135/85mmHg以上が高血圧の基準である。生活習慣の修正の効果を評価するうえでも、経過観察は欠かせない。

  3. ×c.  禁酒するよう指導する。

    過度の飲酒は血圧を上昇させるため節酒が推奨されるが、その目標は男性でエタノール20~30mL/日以下、女性で10~20mL/日以下である。ビール中ビン1本(約500mL)はエタノール約20~25mLで、この範囲内に収まっている。したがって現時点で完全な禁酒を指導する必要はなく、量を増やさないよう伝える程度でよい。

  4. ○d.  体重を減らすよう指導する。

    BMIは約26.6で肥満(BMI 25以上)に該当する。肥満はインスリン抵抗性、交感神経活性の亢進、ナトリウム貯留などを介して血圧を上げ、減量により血圧は低下する(体重1kgの減量で収縮期血圧が約1mmHg低下するとされる)。BMI 25未満を目標に、食事療法と有酸素運動を組み合わせた減量を指導するのは、本例の生活習慣の修正の中心となる。

  5. ×e.  ブドウ糖負荷試験を実施する。

    経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)は、空腹時血糖やHbA1cが境界域で糖尿病の診断が確定しない場合などに行う検査である。本例は尿所見(尿糖を含む)と血液生化学所見に異常がなく、糖代謝異常を疑う根拠がないため、初診時にあえて行う必要はない。

成人の血圧値の分類(日本高血圧学会、診察室血圧)

・正常血圧:120/80mmHg未満 ・正常高値血圧:120~129/80mmHg未満 ・高値血圧:130~139/80~89mmHg ・Ⅰ度高血圧:140~159/90~99mmHg ・Ⅱ度高血圧:160~179/100~109mmHg ・Ⅲ度高血圧:180/110mmHg以上 (収縮期と拡張期が異なる分類に属する場合は高い方に分類する。家庭血圧の高血圧基準は135/85mmHg以上。)

リスク層別化と初期対応の目安

・心血管病の危険因子:65歳以上の高齢、男性、喫煙、脂質異常症、糖尿病、CKD、心血管病の既往など。 ・低リスク:Ⅰ度高血圧で危険因子なし→生活習慣の修正を行い、おおむね3か月後に改善がなければ降圧薬を考慮。 ・中等リスク:Ⅰ度高血圧で男性・高齢・喫煙・脂質異常症などを有する→生活習慣の修正を行い、おおむね1か月後に改善がなければ降圧薬を考慮。 ・高リスク:糖尿病・CKD・心血管病既往などを伴う、またはⅢ度高血圧→生活習慣の修正と同時に直ちに降圧薬を開始。

生活習慣の修正項目

・減塩:食塩6g/日未満 ・減量:BMI 25未満を目指す ・運動:中等度の有酸素運動を毎日30分以上(または週180分以上) ・節酒:エタノールで男性20~30mL/日以下、女性10~20mL/日以下 ・禁煙(受動喫煙の防止を含む) ・野菜・果物(重篤な腎障害がない場合)や魚の積極的摂取、飽和脂肪酸・コレステロールの摂取制限

白衣高血圧と仮面高血圧

診察室血圧は高いが家庭血圧・自由行動下血圧が正常なものを白衣高血圧、逆に診察室血圧は正常だが家庭血圧などが高いものを仮面高血圧という。仮面高血圧は見逃されやすく、心血管リスクが高い。いずれも家庭血圧の測定によって見分ける。

POINT

・初めて指摘されたⅠ度高血圧(140~159/90~99mmHg)で合併症のない例では、すぐに降圧薬を開始せず、生活習慣の修正と血圧の経過観察(家庭血圧)から始める。 ・BMI=体重÷身長²、25以上は肥満。肥満があれば減量を指導する。 ・節酒の目標は男性でエタノール20~30mL/日以下(ビール中ビン1本程度)であり、これ以内なら禁酒は不要。 ・尿・血液検査に異常がなければ、ブドウ糖負荷試験をルーチンに行う必要はない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。