StudyMed医師国家試験

尿意を我慢した血圧は「本当の血圧」ではない―朝の家庭血圧、正しい測り方の理屈

第119回医師国家試験 A問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第119回 A問題 第5問

朝の家庭血圧を測定する条件で適切でないのはどれか。

  1. a.朝食前
  2. b.排尿前
  3. c.服薬前
  4. d.座位安静後
  5. e.起床後1時間以内

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、朝の家庭血圧を測るときの条件を問う問題だ。家庭血圧は毎日同じ条件で測ってこそ比較できる。それぞれの条件が「何の影響を取り除くためにあるのか」を考えると、適切でないものが見えてくるよ。
医学生医学生
家庭血圧って、診察室の血圧の補助くらいのイメージでした。
ドクタードクター
実は逆に近いんだ。家庭血圧は診察室血圧よりも脳心血管病の発症や死亡をよく予測するとされていて、日本高血圧学会のガイドラインでも診断や治療方針の決定で重視されている。だからこそ測り方が標準化されている。朝の標準法は、起床後1時間以内、排尿後、服薬前、朝食前、座位で1〜2分安静にした後、の5つだ。
医学生医学生
あれ、排尿「後」なんですね。選択肢には排尿前とあるので、それが誤りでしょうか。
ドクタードクター
その通り、それが正解だ。膀胱に尿がたまって尿意を我慢していると、交感神経が刺激されて血圧が一時的に上がる。しかも尿意の強さは日によって違うから、値が高めに出るうえにばらつきも大きくなる。だから起床後にまず排尿を済ませてから測るんだ。
医学生医学生
生理学で習った排尿反射と自律神経の話が、こんなところにつながるんですね。
ドクタードクター
そう、理屈がわかると忘れない。では残りの条件も理由を確認しよう。起床後1時間以内に測るのはなぜだと思う?
医学生医学生
朝は血圧が上がりやすいと聞きます。モーニングサージ、でしたっけ。
ドクタードクター
よく知っているね。起床前後は交感神経の活動が高まって血圧が上がりやすい。早朝高血圧は脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めるから、それを捉えるために起床後早めに測るんだ。次は服薬前。
医学生医学生
薬を飲んだ後に測ったほうが、薬が効いているかわかるのではと思ってしまいます。
ドクタードクター
そう考える人は多いけれど、目的が違うんだ。朝の服薬前は、前日に飲んだ降圧薬の効果が最も弱まる時間帯にあたる。そこで血圧がコントロールできていれば、薬の効果が24時間持続していると判断できる。服薬後に測ると、薬の効果が切れて早朝高血圧になっている状態を見逃すおそれがある。
医学生医学生
なるほど、一番効きが弱いところを見るわけですね。朝食前のほうはどうでしょう。
ドクタードクター
食事をとると消化管への血流が増えて、食後に血圧が下がることがある。逆に食事で交感神経が興奮して変動することもある。いずれにしても食事の影響が入ると早朝の本来の血圧を評価できないから、朝食前に測る。
医学生医学生
座位安静後は、OSCEの血圧測定でも1〜2分安静にしてから測るよう指導されました。
ドクタードクター
同じ考え方だね。背もたれのある椅子に脚を組まずに座り、カフを心臓の高さに合わせて1〜2分安静にしてから測る。動いた直後や体位を変えた直後は血圧が安定しないし、測定中の会話も避けたい。
医学生医学生
晩の測定にも決まりがあるんですか。
ドクタードクター
晩は就寝前に、同じく座位で1〜2分安静にしてから測る。ほかの注意点として、機器は上腕カフ式を使うこと、測定前の喫煙やカフェイン、飲酒、入浴、運動を避けること。1回の機会に原則2回測ってその平均をとり、評価には朝と晩それぞれ、できれば7日間、少なくとも5日間の平均値を使う。
医学生医学生
基準値も診察室とは違いましたよね。
ドクタードクター
家庭血圧では135/85mmHg以上を高血圧とする。診察室血圧の140/90mmHgより低い設定だ。診察室では高いのに家庭では正常なのが白衣高血圧、診察室では正常なのに家庭で高いのが仮面高血圧。仮面高血圧には早朝高血圧や夜間高血圧が含まれ、脳心血管リスクが高いから見逃したくない。
医学生医学生
外来の血圧だけでは仮面高血圧はわからないので、家庭血圧の記録が欠かせないということですね。
ドクタードクター
その通り。臨床では、患者さんが自己流で朝食後や服薬後に測っていて、記録の解釈を誤ることがよくある。測定条件を具体的に説明して、記録手帳に時刻や服薬のタイミングも書いてもらうと、治療調整の精度がぐっと上がるよ。

まとめ

朝の家庭血圧は、起床後1時間以内、排尿後、服薬前、朝食前、座位で1〜2分安静にした後に測定するのが標準法であり、排尿前の測定は適切ではありません。尿意を我慢すると交感神経の緊張で血圧が上昇し、日によって値がばらつくためです。服薬前の測定は降圧薬の効果が最も弱まる時間帯の値として24時間の降圧持続性を評価する意味があり、起床後早期の測定はモーニングサージや早朝高血圧を捉える目的があります。家庭血圧の高血圧基準は135/85mmHg以上で、朝・晩それぞれの複数日の平均値で評価し、白衣高血圧や仮面高血圧の判別にも役立ちます。各条件の理由を理解して患者さんに正しく指導できることは、高血圧診療の質を左右する基本的な技能です。

解答・解説

正解はbです

家庭血圧は、診察室血圧よりも脳心血管病の発症や死亡をよく予測するとされ、高血圧の診断と治療方針の決定で重視されている。ただし、測定条件が日によって違うと値がばらつき、比べられなくなる。そこで日本高血圧学会のガイドラインは、毎日できるだけ同じ条件で測るための標準的な方法を定めている。

朝の測定条件(標準法)

・起床後1時間以内 ・排尿を済ませた後 ・朝の服薬前 ・朝食前 ・座位で1〜2分安静にした後

晩の測定条件

・就寝前 ・座位で1〜2分安静にした後 本問は「適切でないもの」を選ぶ問題である。上の条件と照らし合わせると、排尿前の測定だけが標準法から外れる。膀胱に尿がたまって尿意を我慢していると、交感神経が刺激されて血圧が一時的に上がる。そのため、朝の家庭血圧は排尿を済ませてから測るのが正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  朝食前

    適切な条件である。食事をとると消化管への血流が増え、食後に血圧が下がることがある(食後低血圧)。逆に、食事による交感神経の興奮で血圧が変わることもある。どちらにしても食事の影響が入ると、早朝の本来の血圧を評価できない。そのため朝食前に測る。

  2. ○b.  排尿前

    適切でない条件であり、これが正解である。膀胱が充満し尿意を我慢している状態では、交感神経の緊張で血圧が上昇する。尿意の強さは日によって違うので、排尿前に測ると値が高めに出るうえ、ばらつきも大きくなる。標準法では起床後に排尿を済ませてから測定することになっている。

  3. ×c.  服薬前

    適切な条件である。朝の服薬前の血圧は、前日に飲んだ降圧薬の効果が最も弱まる時間帯の値である。そのため、薬の効果が24時間続いているか(降圧効果の持続性)を評価でき、薬の種類・量・服用時刻を調整する根拠になる。服薬後に測ると薬の効果がかかった値になり、早朝高血圧を見逃すおそれがある。

  4. ×d.  座位安静後

    適切な条件である。背もたれのある椅子に脚を組まずに座り、カフを心臓の高さに合わせ、1〜2分安静にしてから測る。動いた直後や体位を変えた直後は血圧が安定しない。測定中は会話を控える。

  5. ×e.  起床後1時間以内

    適切な条件である。起床前後は交感神経の活動が高まり、血圧が上がりやすい(モーニングサージ)。早朝高血圧は脳卒中や心筋梗塞などの脳心血管イベントのリスクを高めるため、それを捉える目的で起床後1時間以内に測定する。

家庭血圧測定のその他の注意点

・測定機器は上腕カフ式の自動血圧計を使う。手首式・指式は、推奨される上腕式より誤差が出やすい。 ・静かで適度な室温の環境で測る。 ・測定前の喫煙、カフェイン入り飲料の摂取、飲酒、入浴、運動は避ける。 ・1回の機会に原則2回測定し、その平均値を用いる。すべての値を記録する。 ・評価には、朝と晩それぞれについて、できれば7日間(少なくとも5日間)の平均値を用いる。

家庭血圧による高血圧の基準

・家庭血圧では135/85mmHg以上を高血圧とする。診察室血圧の基準である140/90mmHgより低く設定されている。 ・診察室血圧は高いのに家庭血圧が正常な状態を白衣高血圧という。逆に、診察室血圧は正常なのに家庭血圧が高い状態を仮面高血圧という。仮面高血圧のなかには早朝高血圧や夜間高血圧が含まれ、脳心血管リスクが高い。

早朝高血圧

朝の家庭血圧が135/85mmHg以上の状態をいう。原因には、夜間高血圧が朝まで続くもの(夜間高血圧持続型)と、起床前後に血圧が急に上がるもの(モーニングサージ型)がある。降圧薬の作用時間が短く、朝に効果が切れていることも一因となる。

POINT

・朝の家庭血圧は「起床後1時間以内、排尿後、服薬前、朝食前、座位1〜2分安静後」に測る。 ・晩の家庭血圧は「就寝前、座位1〜2分安静後」に測る。 ・尿意を我慢すると交感神経の緊張で血圧が上がるため、排尿後に測る。 ・家庭血圧で高血圧と診断する基準は135/85mmHg以上(診察室血圧は140/90mmHg以上)。 ・評価には朝・晩それぞれの平均値(できれば7日間、少なくとも5日間)を用いる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。