夜になると脚の奥がうずく―むずむず脚症候群が眠りを奪うしくみ
第119回医師国家試験 A問題 第6問
国試問題にチャレンジ
むずむず脚症候群で正しいのはどれか。
- a.不眠を生じる。
- b.明け方に生じる。
- c.上肢から生じる。
- d.歩行を続けると増悪する。
- e.異常感覚は脚の表面に出現する。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
むずむず脚症候群(restless legs syndrome)は、安静時、とくに夕方から夜にかけて脚の深部に不快な異常感覚が生じ、脚を動かしたい衝動にかられる睡眠関連運動障害です。脚を動かすと一時的に軽くなり、横になると悪化するため入眠障害が起こり、周期性四肢運動の合併による中途覚醒も加わって不眠の原因となります。症状は下肢が中心で明け方には軽く、異常感覚は皮膚表面ではなく脚の奥に感じられる点が、こむら返りや末梢神経障害、アカシジアとの鑑別に役立ちます。二次性の原因として鉄欠乏、透析、妊娠が重要で血清フェリチンの測定が欠かせず、治療では鉄補充やα2δリガンド、ドパミンアゴニストを用い、後者ではオーグメンテーションに注意します。不眠の訴えの背景にこの疾患を想起できることは、安易な睡眠薬処方を避けるうえでも臨床的に重要です。
解答・解説
正解はaです
むずむず脚症候群は、英語のrestless legs syndrome(RLS)の訳語で、下肢静止不能症候群ともよばれる。最近はWillis-Ekbom病(WED)という名称も使われる。安静にしていると脚に不快な感覚が生じ、脚を動かしたくてたまらなくなる感覚運動性の疾患で、睡眠関連運動障害に分類される。 診断は問診で得られる症状によって行う。国際RLS研究グループ(IRLSSG)の診断基準の中心となる特徴は次のとおりである。 (1) 脚を動かしたいという強い衝動があり、多くは脚の不快な異常感覚を伴う。 (2) その衝動や不快感は、横になる・座るなど安静にしているときに始まるか、悪くなる。 (3) 歩く、脚を伸ばすなど体を動かすと、動かしている間は部分的または完全に軽くなる。 (4) 夕方から夜にかけて起こるか、悪くなる(日内変動がある)。 (5) 上の症状が、こむら返りや姿勢による不快感など、ほかの病気や行動だけでは説明できない。 これらの特徴から、症状は寝床に入って安静にしたときに最も起こりやすい。その結果、寝つけない(入眠障害)、夜中に目が覚める(中途覚醒)といった不眠が生じる。正解を選ぶには、上の基準と各選択肢を照らし合わせればよい。「出る時間帯」「出る部位」「動いたときの変化」「異常感覚がどの深さにあるか」が判断のポイントとなる。
選択肢考察
- ○a. 不眠を生じる。
正しい。症状は夕方から夜の安静時、特に就寝しようと横になったときに強くなる。脚を動かさずにいられないので寝つけず、入眠障害が起こる。また、患者の多くは睡眠中に周期性四肢運動(睡眠中に足首や膝が周期的に繰り返し動くこと)を伴う。これによって中途覚醒が起こり、睡眠の質も落ちる。日中の眠気や疲労感の原因にもなり、不眠を訴えて受診する患者が多い。
- ×b. 明け方に生じる。
誤り。症状にははっきりした日内変動があり、夕方から夜間、特に就寝前後に出やすく強くなる。逆に、明け方から午前中は症状が最も軽い時間帯である。日内変動にはドパミン系の概日リズムが関わると考えられている。
- ×c. 上肢から生じる。
誤り。症状の中心は下肢で、特にふくらはぎなど下腿に多い。重症になると上肢や体幹に広がることもある。ただし、上肢から始まるのは典型的ではない。
- ×d. 歩行を続けると増悪する。
誤り。歩く、脚を伸ばす、さするなど脚を動かすと、動かしている間は症状が軽くなるか消える。これは診断基準の必須項目の一つである。ただし効果は一時的で、再び横になると症状がぶり返すことが多い。
- ×e. 異常感覚は脚の表面に出現する。
誤り。異常感覚は皮膚の表面ではなく、脚の深いところ(筋肉や骨のあたり)に感じられるのが特徴である。患者は「脚の中を虫がはうような」「脚の奥がむずむずする、うずく、ほてる」などと表現し、脚をたたいたりこすったりしたくなると訴える。皮膚表面のしびれやピリピリ感が中心であれば、末梢神経障害など別の病気を考える。
分類と原因
・一次性(特発性): 家族歴を持つことが多く、遺伝的な要因が関わる。 ・二次性: 鉄欠乏(貧血の有無にかかわらず血清フェリチン低値)、慢性腎不全(特に透析患者)、妊娠(特に妊娠後期)、末梢神経障害、パーキンソン病などに伴う。 ・薬剤で誘発・増悪することもある。抗ヒスタミン薬、ドパミン遮断作用をもつ抗精神病薬や制吐薬、一部の抗うつ薬などが原因となる。カフェイン・アルコール・喫煙も症状を悪化させる。 ・病態には、脳内の鉄不足とドパミン神経系の機能障害が関わると考えられている。
検査
・血清フェリチンなど鉄の指標を必ず調べる。 ・終夜睡眠ポリグラフ検査で周期性四肢運動が多くみられれば、診断の参考になる。
治療
・まず原因を取り除く。誘因となる薬の中止・変更、カフェインやアルコールを控える、睡眠衛生の指導などを行う。 ・鉄欠乏がある場合(血清フェリチンが低い場合)は、鉄を補充する。 ・薬物療法には、ドパミンアゴニスト(プラミペキソール、ロチゴチン貼付剤)と、α2δリガンド(ガバペンチン エナカルビル、プレガバリンなど)を用いる。 ・ドパミンアゴニストを長く使うと、オーグメンテーション(症状増強現象)が起こることがある。症状が出始める時刻が早まり、症状が強くなり、上肢など他の部位へ広がる現象である。このため近年の海外ガイドラインでは、α2δリガンドや鉄補充を優先する傾向にある。
鑑別
・こむら返り: 筋肉が痛みを伴って強く収縮する。動きたい衝動はない。 ・アカシジア: 抗精神病薬などの副作用で、全身がじっとしていられなくなる。時間帯による変化が乏しい。 ・末梢神経障害: 皮膚表面のしびれや痛みが主で、動かしても良くならない。
POINT
・むずむず脚症候群(RLS)は、安静時、特に夕方〜夜に脚の深部に不快な異常感覚が生じ、脚を動かしたい衝動にかられる疾患である。 ・脚を動かすと軽くなり、横になると悪化するため、入眠障害などの不眠を生じる。 ・症状は主に下肢に出る。上肢に及ぶのは重症例である。 ・周期性四肢運動をしばしば合併する。 ・二次性の原因として、鉄欠乏、慢性腎不全・透析、妊娠が重要である。血清フェリチンを測る。 ・治療は鉄補充、ドパミンアゴニスト、α2δリガンドで、ドパミンアゴニストではオーグメンテーションに注意する。
