StudyMed医師国家試験

IX・X・XIはひとまとめ―頸静脈孔を通る脳神経を整理する

第99回医師国家試験 D問題 第50問

国試問題にチャレンジ

第99回 D問題 第50問

頸静脈孔を通るのはどれか。3つ選べ。

  1. a.聴神経
  2. b.舌咽神経
  3. c.迷走神経
  4. d.副神経
  5. e.舌下神経

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は頭蓋底の孔と、そこを通る脳神経の対応を問う問題だ。頸静脈孔を通るものを3つ選ぶ。単なる暗記に見えるけれど、どの神経が隣り合っているかを理解しておくと、臨床の症候群の理解にもつながるよ。まず、頸静脈孔はどこにある孔か分かるかな。
医学生医学生
後頭蓋窩にあって、内頸静脈が出ていく孔ですよね。
ドクタードクター
その通り。後頭骨と側頭骨錐体部の間にできる孔で、S状静脈洞の続きである内頸静脈や下錐体静脈洞が通る。そして脳神経では、舌咽神経、迷走神経、副神経の3本がまとまってここを通るんだ。
医学生医学生
解剖実習で頭蓋底を見たとき、頸静脈孔のすぐ近くにもう一つ小さな孔がありました。あれは舌下神経管でしたっけ。
ドクタードクター
よく観察していたね。舌下神経は延髄の錐体とオリーブの間から出て、後頭骨の舌下神経管を通る。頸静脈孔のすぐ近くを走るけれど、通る孔は別なんだ。ここが今回のひっかけポイントだね。
医学生医学生
延髄から出る神経なのでつい一緒にしたくなりますが、舌下神経だけは別ルートなんですね。
ドクタードクター
そう。舌咽・迷走・副神経の延髄根はオリーブの後ろの溝から、舌下神経はオリーブの前の溝から出る。出てくる位置からして違うんだ。では聴神経はどうかな。
医学生医学生
聴神経は顔面神経と一緒に内耳道に入るので、内耳孔ですね。頸静脈孔ではないと思います。
ドクタードクター
正解。内耳神経は蝸牛神経と前庭神経からなる感覚神経で、顔面神経や迷路動脈とともに内耳孔から内耳道へ入る。では正解の3本を一つずつ確認しよう。舌咽神経は延髄外側から出て頸静脈孔を通り、舌の後方3分の1の味覚と一般感覚、咽頭の感覚、耳下腺の分泌を担う。
医学生医学生
迷走神経は頸静脈孔を出たあと頸動脈鞘の中を下って、咽頭・喉頭の運動や胸腹部内臓の副交感神経支配をするんですよね。
ドクタードクター
その通り。そして一番ユニークなのが副神経だ。脊髄根は上位頸髄から起こって大後頭孔を上行し、いったん頭蓋内に入ってから、迷走神経と一緒に頸静脈孔を通って出ていく。
医学生医学生
下から入って、また出ていくんですか。CBTの問題集で見たとき、遠回りな経路だなと不思議に思いました。
ドクタードクター
大後頭孔を入り、頸静脈孔から出る、と覚えておくといい。支配するのは胸鎖乳突筋と僧帽筋だね。ここで臨床に目を向けてみよう。3本が同じ孔を通るということは、その部位に病変があると何が起こると思う?
医学生医学生
3本がまとめて障害されそうです。嚥下障害や声がれ、肩が上がりにくくなるといった症状でしょうか。
ドクタードクター
素晴らしい。それが頸静脈孔症候群、Vernet症候群だ。頸静脈球腫瘍(グロムス腫瘍)や神経鞘腫、転移性腫瘍、骨折などで起こり、舌後方の味覚障害、嚥下障害、声帯麻痺による嗄声、カーテン徴候、胸鎖乳突筋・僧帽筋の筋力低下がみられる。
医学生医学生
神経内科の実習で、カーテン徴候は迷走神経麻痺のとき健側に軟口蓋が引かれる所見だと教わりました。
ドクタードクター
よく覚えているね。さらに隣の舌下神経まで障害されると、舌の偏位も加わってCollet-Sicard症候群とよばれる。頸静脈孔と舌下神経管が隣り合っていることを反映しているんだ。
医学生医学生
解剖で孔の位置関係を押さえておくと、症状の組み合わせから病変部位を推定できるんですね。
ドクタードクター
その通り。ほかの孔もまとめて整理しておこう。上眼窩裂はIII・IV・V1・VI、正円孔はV2、卵円孔はV3、内耳孔はVII・VIII、頸静脈孔はIX・X・XI、舌下神経管はXII。番号順にきれいに並ぶので、頭蓋底を前から後ろへたどるように覚えるといいよ。

まとめ

頸静脈孔は後頭骨と側頭骨錐体部の間にある後頭蓋窩の孔で、舌咽神経(IX)・迷走神経(X)・副神経(XI)の3本の脳神経と内頸静脈、下錐体静脈洞が通ります。聴神経(VIII)は顔面神経とともに内耳孔を、舌下神経(XII)は隣接する舌下神経管を通るため、頸静脈孔とは別経路です。副神経の脊髄根は大後頭孔からいったん頭蓋内に入り、頸静脈孔から出るという特徴的な経路をとります。頸静脈孔部の病変ではIX・X・XIがまとめて障害されるVernet症候群、舌下神経まで及べばCollet-Sicard症候群を呈します。頭蓋底の孔と脳神経の対応を位置関係ごと理解しておくことは、脳神経症状から病変部位を推定する臨床推論の基礎になります。

解答・解説

正解はb, c, dです

頭蓋底には脳神経や血管が頭蓋の内外を行き来するための孔(あな)が多数あり、「どの脳神経がどの孔を通るか」は解剖学の基本事項である。本問はそのうち頸静脈孔(jugular foramen)を通る構造を問うている。 頸静脈孔は後頭骨と側頭骨錐体部の間にできる孔で、後頭蓋窩に位置する。ここを通るのは、舌咽神経(第IX脳神経)、迷走神経(第X脳神経)、副神経(第XI脳神経)の3本の脳神経と、内頸静脈(S状静脈洞の続き)、下錐体静脈洞などである。「IX・X・XIの3本がまとまって頸静脈孔」と覚えるのが基本となる。 選択肢のうち、聴神経(第VIII脳神経、内耳神経)は内耳孔(内耳道)を、舌下神経(第XII脳神経)は舌下神経管を通るので、頸静脈孔とは別の経路である。

選択肢考察

  1. ×a.  聴神経

    聴神経(第VIII脳神経、内耳神経)は、蝸牛神経と前庭神経からなる感覚神経で、顔面神経(第VII脳神経)とともに内耳孔から内耳道に入り、内耳へ向かう。頸静脈孔は通らない。

  2. ○b.  舌咽神経

    舌咽神経(第IX脳神経)は延髄の外側から出て、頸静脈孔を通って頭蓋外へ出る。頸静脈孔内の神経部(前内側部)を通り、舌後方1/3の味覚・一般感覚、咽頭の感覚、耳下腺の分泌(副交感)などを担う。頸静脈孔を通る神経の一つである。

  3. ○c.  迷走神経

    迷走神経(第X脳神経)は延髄から出て、舌咽神経・副神経とともに頸静脈孔を通って頭蓋外へ出る。その後、頸動脈鞘の中を下行し、咽頭・喉頭の運動や胸腹部内臓の副交感支配を担う。頸静脈孔を通る神経である。

  4. ○d.  副神経

    副神経(第XI脳神経)の脊髄根は上位頸髄から起こって大後頭孔(大孔)を上行し、いったん頭蓋内に入ってから、迷走神経とともに頸静脈孔を通って頭蓋外へ出る。胸鎖乳突筋と僧帽筋を支配する。頸静脈孔を通る神経であり、大後頭孔を「入り」、頸静脈孔から「出る」という経路が特徴的である。

  5. ×e.  舌下神経

    舌下神経(第XII脳神経)は延髄の錐体とオリーブの間から出て、後頭骨の舌下神経管を通って頭蓋外へ出る。舌筋の運動を支配する。頸静脈孔のすぐ近くを走るが、通る孔は別である。

主な頭蓋底の孔と通過する脳神経

・篩板(篩骨の小孔群): 嗅神経(I) ・視神経管: 視神経(II)、眼動脈 ・上眼窩裂: 動眼神経(III)、滑車神経(IV)、眼神経(V1)、外転神経(VI)、上眼静脈 ・正円孔: 上顎神経(V2) ・卵円孔: 下顎神経(V3) ・棘孔: 中硬膜動脈 ・内耳孔(内耳道): 顔面神経(VII)、内耳神経(VIII)、迷路動脈 ・頸静脈孔: 舌咽神経(IX)、迷走神経(X)、副神経(XI)、内頸静脈、下錐体静脈洞 ・舌下神経管: 舌下神経(XII) ・大後頭孔(大孔): 延髄、椎骨動脈、副神経の脊髄根(上行)

頸静脈孔症候群(Vernet症候群)

頸静脈孔部の腫瘍(グロムス腫瘍=頸静脈球腫瘍、神経鞘腫、転移性腫瘍など)や骨折により、IX・X・XIの3神経がまとめて障害される病態をVernet症候群という。舌後方1/3の味覚障害、嚥下障害、嗄声(声帯麻痺)、カーテン徴候、胸鎖乳突筋・僧帽筋の筋力低下がみられる。さらに舌下神経(XII)も障害されるとCollet-Sicard症候群とよばれ、頸静脈孔と舌下神経管が隣接していることを反映している。

POINT

・頸静脈孔を通る脳神経は舌咽神経(IX)・迷走神経(X)・副神経(XI)の3本。内頸静脈も通る。 ・内耳孔は顔面神経(VII)と内耳神経(VIII)。 ・舌下神経(XII)は舌下神経管。 ・IX・X・XIの同時障害はVernet症候群(頸静脈孔症候群)、XIIまで及べばCollet-Sicard症候群。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。