脳脊髄液の色で見抜け―CT・T1・T2・FLAIR・拡散強調像の見分け方
第99回医師国家試験 D問題 第103問
国試問題にチャレンジ
頭部の画像(①~⑤)を示す。 頭部単純MRIのT1強調像はどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
頭部画像の撮像法は、まず骨の写り方でCT(骨が白い)とMRI(皮質骨が黒い)を分け、次に脳脊髄液の信号で絞り込むと判別できます。脳脊髄液が白ければT2強調像で、黒い場合は、白質が灰白質より白く解剖が明瞭ならT1強調像、T2様のコントラストが残ればFLAIR像、画質が粗く均一な灰色なら拡散強調像です。臨床では、急性期の出血除外にはCT、超急性期脳梗塞には拡散強調像、脳室周囲の脱髄巣などにはFLAIR像、腫瘍や炎症の評価には造影T1強調像と、目的に応じて使い分けます。T1強調像では脂肪や亜急性期血腫、造影剤などが高信号になる点も押さえておきましょう。各撮像法の原理と写り方を理解しておくことは、画像問題の正答だけでなく、適切な検査選択と読影の土台になります。
解答・解説
正解はaです
本問は、頭部の代表的な画像検査(CT、MRIの各撮像法)を見分ける問題である。画像は、①T1強調像、②単純CT、③FLAIR像、④T2強調像、⑤拡散強調像である。
見分け方の手順
(1) まずCTかMRIかを区別する。CTはエックス線の吸収の差を画像にしたもので、エックス線をよく吸収する頭蓋骨が真っ白に写る。MRIでは皮質骨に水素原子(プロトン)がほとんどなく信号が出ないため、骨は黒く写り、その外側の皮下脂肪や骨髄の脂肪が白く見える。 (2) MRIでは、脳室や脳溝にある脳脊髄液(CSF、ほぼ純粋な水)の信号に注目する。 ・CSFが白い(高信号)→ T2強調像 ・CSFが黒いが、画像全体のコントラストはT2強調像に似ている(灰白質が白質よりやや白い)→ FLAIR像 ・CSFが黒く、白質が灰白質より白い → T1強調像 (3) 画質が粗くコントラストに乏しく、CSFが黒い画像は拡散強調像(DWI)である。正常では脳全体がほぼ均一な灰色に写る。 この手順で進めると、CSFが低信号で、白質が灰白質より高信号に写り、脳の形がよくわかる①がT1強調像である。
選択肢考察
- ○a. ①
T1強調像である。T1強調像では、T1緩和時間が短い組織ほど白く(高信号)、長い組織ほど黒く(低信号)写る。水はT1が長いため、脳室や脳溝のCSFは黒く写る。ミエリン(髄鞘)の脂質が多い白質は灰白質よりT1が短いので、白質が灰白質より白く写る。皮下脂肪も高信号である。脳の輪郭や脳溝・脳回の形がよくわかるため、解剖学的な構造を見るのに向いている。
- ×b. ②
頭部単純CTである。CTでは組織のエックス線吸収の程度をCT値(水を0HU、空気を−1000HUとする)で表し、吸収の大きいものほど白く写る。頭蓋骨は真っ白、CSFは黒、脳実質はその中間の灰色に写る。急性期の出血は高吸収(白)に写るため、くも膜下出血や脳出血の初期診断で第一に行う検査である。
- ×c. ③
FLAIR(fluid-attenuated inversion recovery)像である。反転回復法を使って自由水(CSF)の信号だけを抑えたT2強調像で、CSFは黒く写るが、そのほかのコントラストはT2強調像と似ている(灰白質が白質よりやや白く、病変は白く写る)。T2強調像ではCSFの高信号にまぎれてしまう、脳室周囲や脳溝に接する病変(脱髄巣、陳旧性梗塞、くも膜下出血など)を見つけやすい。
- ×d. ④
T2強調像である。T2緩和時間が長い組織ほど白く写るため、水であるCSFは強い高信号(白)となる。灰白質は白質よりやや白い。浮腫、梗塞、腫瘍、炎症などの病変は水分が増えるため多くが高信号に写り、病変を見つけやすい。
- ×e. ⑤
拡散強調像(DWI: diffusion-weighted imaging)である。水分子の拡散(ブラウン運動)の起こりやすさを画像にしたもので、拡散が妨げられている部分が高信号に写る。自由に動けるCSFは黒く写る。超急性期の脳梗塞では、細胞のエネルギーが不足して細胞性浮腫が起こり、水分子の拡散が制限されるため、発症後早い時期(数十分〜数時間)から高信号となる。CTやT2強調像で異常が見えない段階で梗塞を見つけられる点が最大の利点である。画質は粗く、コントラストに乏しいのが特徴である。
主な撮像法での信号(写り方)のまとめ
・CT: 骨 白 / 急性期の血腫 白 / CSF 黒 / 脂肪 黒 / 空気 黒 ・T1強調像: CSF 黒 / 白質 灰白質より白い / 脂肪 白 / 皮質骨 黒 ・T2強調像: CSF 白 / 灰白質 白質より白い / 脂肪 やや白い / 皮質骨 黒 ・FLAIR像: CSF 黒 / そのほかのコントラストはT2強調像に近い / 病変 白 ・拡散強調像: CSF 黒 / 拡散が制限される部分(急性期の梗塞、膿瘍、類表皮嚢腫など) 白
T1強調像で高信号になるもの
脂肪、亜急性期の血腫(メトヘモグロビン)、ガドリニウム造影剤で造影された部分、メラニン、高濃度の蛋白を含む液体など。正常の下垂体後葉もT1強調像で高信号(bright spot)を示す。
臨床での使い分け
・頭部外傷や脳卒中が疑われる急性期: まずCTで出血の有無を確認する。 ・急性期の脳梗塞: 拡散強調像が最も早く異常をとらえる。見かけの拡散係数(ADC)マップで低値であることを確認すると、真の拡散制限であることがわかる。 ・脱髄疾患(多発性硬化症など): FLAIR像やT2強調像で脳室周囲の高信号病変を評価する。 ・腫瘍や炎症: ガドリニウム造影T1強調像で造影される範囲を評価する。
POINT
・CTは骨が白く、MRIは皮質骨が黒い。 ・MRIではまずCSFを見る。CSFが白いのがT2強調像、黒いのがT1強調像・FLAIR像・拡散強調像。 ・T1強調像: CSFが黒く、白質が灰白質より白い。解剖学的な構造を見るのに向く。 ・FLAIR像: CSFの信号を抑えたT2強調像。脳室周囲の病変を見つけやすい。 ・拡散強調像: 超急性期の脳梗塞で早い時期から高信号になる。
