StudyMed医師国家試験

脳脊髄液の色で見抜け―CT・T1・T2・FLAIR・拡散強調像の見分け方

第99回医師国家試験 D問題 第103問

国試問題にチャレンジ

第99回 D問題 第103問

頭部の画像(①~⑤)を示す。 頭部単純MRIのT1強調像はどれか。

第99回 D問題 第103問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、頭部の5種類の画像からMRIのT1強調像を選ぶ問題だ。撮像法の見分けには「骨の色」と「脳脊髄液の色」という2つの目印を順番に使う。この手順さえ身につければ、どの画像でも迷わなくなるよ。
医学生医学生
正直、MRIの画像はどれも同じ白黒に見えてしまって、なんとなく雰囲気で答えていました。
ドクタードクター
そういう人は多いね。まず最初の分岐は、CTかMRIかだ。骨はどう写るか覚えているかな。
医学生医学生
CTはエックス線をよく吸収する骨が真っ白に写ります。MRIだと骨は……白いんでしたっけ?
ドクタードクター
そこがよくある誤解だ。MRIはプロトン、つまり水素原子の信号を見ているので、水素の少ない皮質骨はほとんど信号を出さず黒く写る。むしろ外側の皮下脂肪や骨髄の脂肪が白っぽく見えるんだ。5枚のうち頭蓋骨が真っ白に縁取られている1枚が単純CTで、これは除外できる。
医学生医学生
残りの4枚がMRIということですね。次は何を見ればいいですか。
ドクタードクター
脳室や脳溝にある脳脊髄液だ。ほぼ純粋な水なので、撮像法ごとの性格がいちばんはっきり出る。脳脊髄液が真っ白に光っている画像がT2強調像だよ。T2強調像では水のようにT2緩和時間が長いものが白くなるからね。
医学生医学生
じゃあ脳脊髄液が黒い画像がT1強調像ですね。
ドクタードクター
惜しい、黒く写るのはT1強調像だけじゃない。FLAIR像と拡散強調像も脳脊髄液は黒いんだ。FLAIR像は反転回復法で自由水の信号だけを消したT2強調像なので、脳脊髄液は黒いけれど、灰白質が白質よりやや白いというT2らしいコントラストが残る。拡散強調像は画質が粗く、正常なら脳全体がのっぺりした均一な灰色に見える。
医学生医学生
なるほど。T1強調像だと灰白質と白質の関係が逆になるんですか。
ドクタードクター
その通り。白質は髄鞘の脂質が多くてT1緩和時間が短いので、T1強調像では白質のほうが灰白質より白く写る。脳脊髄液が黒く、白質が白く、脳溝や脳回の輪郭がくっきりして解剖がよくわかる画像、これがT1強調像だ。今回の正解はそれにあたる1枚目だね。
医学生医学生
神経解剖の講義でMRIのアトラスを見たときも、構造を確認するのはT1の画像でした。だから解剖向きなんですね。
ドクタードクター
いい結びつけ方だ。では、ほかの撮像法が臨床でどう使い分けられるかも確認しよう。頭部外傷や脳卒中の疑いで救急に来た患者さんに、まず行う検査は何かな。
医学生医学生
CTです。救急科の実習で、意識障害の方が来たらまずCT室に直行していました。急性期の出血が白く写るからですよね。
ドクタードクター
そう、くも膜下出血や脳出血を短時間で除外できるのがCTの強みだ。一方で超急性期の脳梗塞はCTではまだ写らないことが多い。そこで活躍するのが拡散強調像で、細胞性浮腫によって水分子の動きが制限された部分が、発症から早い時期に高信号になる。ADCマップで低値を確認すると、本当の拡散制限だと判断できる。
医学生医学生
FLAIR像はどんなときに役立ちますか。
ドクタードクター
T2強調像だと脳室の真っ白な脳脊髄液にまぎれてしまう脳室周囲や脳溝沿いの病変を拾うのが得意だ。多発性硬化症の脱髄巣や陳旧性梗塞、くも膜下出血の検出などで使われるね。
医学生医学生
T1強調像で白く写る病変もあるんでしょうか。
ドクタードクター
あるよ。脂肪、亜急性期の血腫に含まれるメトヘモグロビン、メラニン、蛋白濃度の高い液体、そしてガドリニウムで造影された部分だ。正常の下垂体後葉もT1強調像で高信号に見えて、bright spotと呼ばれる。腫瘍や炎症の広がりは造影T1強調像で評価するのが基本だから、T1強調像は解剖を見るだけの画像ではないんだ。
医学生医学生
骨でCTかMRIかを分けて、脳脊髄液でT2を分けて、白質と灰白質の関係と画質でT1・FLAIR・拡散強調像を分ける、という3段階ですね。
ドクタードクター
完璧だ。この順番で読めば、国試でも実臨床でも撮像法を取り違えることはまずない。そして撮像法がわかれば、「なぜこの検査を選んだのか」という臨床の意図まで読み取れるようになるよ。

まとめ

頭部画像の撮像法は、まず骨の写り方でCT(骨が白い)とMRI(皮質骨が黒い)を分け、次に脳脊髄液の信号で絞り込むと判別できます。脳脊髄液が白ければT2強調像で、黒い場合は、白質が灰白質より白く解剖が明瞭ならT1強調像、T2様のコントラストが残ればFLAIR像、画質が粗く均一な灰色なら拡散強調像です。臨床では、急性期の出血除外にはCT、超急性期脳梗塞には拡散強調像、脳室周囲の脱髄巣などにはFLAIR像、腫瘍や炎症の評価には造影T1強調像と、目的に応じて使い分けます。T1強調像では脂肪や亜急性期血腫、造影剤などが高信号になる点も押さえておきましょう。各撮像法の原理と写り方を理解しておくことは、画像問題の正答だけでなく、適切な検査選択と読影の土台になります。

解答・解説

正解はaです

本問は、頭部の代表的な画像検査(CT、MRIの各撮像法)を見分ける問題である。画像は、①T1強調像、②単純CT、③FLAIR像、④T2強調像、⑤拡散強調像である。

見分け方の手順

(1) まずCTかMRIかを区別する。CTはエックス線の吸収の差を画像にしたもので、エックス線をよく吸収する頭蓋骨が真っ白に写る。MRIでは皮質骨に水素原子(プロトン)がほとんどなく信号が出ないため、骨は黒く写り、その外側の皮下脂肪や骨髄の脂肪が白く見える。 (2) MRIでは、脳室や脳溝にある脳脊髄液(CSF、ほぼ純粋な水)の信号に注目する。 ・CSFが白い(高信号)→ T2強調像 ・CSFが黒いが、画像全体のコントラストはT2強調像に似ている(灰白質が白質よりやや白い)→ FLAIR像 ・CSFが黒く、白質が灰白質より白い → T1強調像 (3) 画質が粗くコントラストに乏しく、CSFが黒い画像は拡散強調像(DWI)である。正常では脳全体がほぼ均一な灰色に写る。 この手順で進めると、CSFが低信号で、白質が灰白質より高信号に写り、脳の形がよくわかる①がT1強調像である。

選択肢考察

  1. ○a.  ①

    T1強調像である。T1強調像では、T1緩和時間が短い組織ほど白く(高信号)、長い組織ほど黒く(低信号)写る。水はT1が長いため、脳室や脳溝のCSFは黒く写る。ミエリン(髄鞘)の脂質が多い白質は灰白質よりT1が短いので、白質が灰白質より白く写る。皮下脂肪も高信号である。脳の輪郭や脳溝・脳回の形がよくわかるため、解剖学的な構造を見るのに向いている。

  2. ×b.  ②

    頭部単純CTである。CTでは組織のエックス線吸収の程度をCT値(水を0HU、空気を−1000HUとする)で表し、吸収の大きいものほど白く写る。頭蓋骨は真っ白、CSFは黒、脳実質はその中間の灰色に写る。急性期の出血は高吸収(白)に写るため、くも膜下出血や脳出血の初期診断で第一に行う検査である。

  3. ×c.  ③

    FLAIR(fluid-attenuated inversion recovery)像である。反転回復法を使って自由水(CSF)の信号だけを抑えたT2強調像で、CSFは黒く写るが、そのほかのコントラストはT2強調像と似ている(灰白質が白質よりやや白く、病変は白く写る)。T2強調像ではCSFの高信号にまぎれてしまう、脳室周囲や脳溝に接する病変(脱髄巣、陳旧性梗塞、くも膜下出血など)を見つけやすい。

  4. ×d.  ④

    T2強調像である。T2緩和時間が長い組織ほど白く写るため、水であるCSFは強い高信号(白)となる。灰白質は白質よりやや白い。浮腫、梗塞、腫瘍、炎症などの病変は水分が増えるため多くが高信号に写り、病変を見つけやすい。

  5. ×e.  ⑤

    拡散強調像(DWI: diffusion-weighted imaging)である。水分子の拡散(ブラウン運動)の起こりやすさを画像にしたもので、拡散が妨げられている部分が高信号に写る。自由に動けるCSFは黒く写る。超急性期の脳梗塞では、細胞のエネルギーが不足して細胞性浮腫が起こり、水分子の拡散が制限されるため、発症後早い時期(数十分〜数時間)から高信号となる。CTやT2強調像で異常が見えない段階で梗塞を見つけられる点が最大の利点である。画質は粗く、コントラストに乏しいのが特徴である。

主な撮像法での信号(写り方)のまとめ

・CT: 骨 白 / 急性期の血腫 白 / CSF 黒 / 脂肪 黒 / 空気 黒 ・T1強調像: CSF 黒 / 白質 灰白質より白い / 脂肪 白 / 皮質骨 黒 ・T2強調像: CSF 白 / 灰白質 白質より白い / 脂肪 やや白い / 皮質骨 黒 ・FLAIR像: CSF 黒 / そのほかのコントラストはT2強調像に近い / 病変 白 ・拡散強調像: CSF 黒 / 拡散が制限される部分(急性期の梗塞、膿瘍、類表皮嚢腫など) 白

T1強調像で高信号になるもの

脂肪、亜急性期の血腫(メトヘモグロビン)、ガドリニウム造影剤で造影された部分、メラニン、高濃度の蛋白を含む液体など。正常の下垂体後葉もT1強調像で高信号(bright spot)を示す。

臨床での使い分け

・頭部外傷や脳卒中が疑われる急性期: まずCTで出血の有無を確認する。 ・急性期の脳梗塞: 拡散強調像が最も早く異常をとらえる。見かけの拡散係数(ADC)マップで低値であることを確認すると、真の拡散制限であることがわかる。 ・脱髄疾患(多発性硬化症など): FLAIR像やT2強調像で脳室周囲の高信号病変を評価する。 ・腫瘍や炎症: ガドリニウム造影T1強調像で造影される範囲を評価する。

POINT

・CTは骨が白く、MRIは皮質骨が黒い。 ・MRIではまずCSFを見る。CSFが白いのがT2強調像、黒いのがT1強調像・FLAIR像・拡散強調像。 ・T1強調像: CSFが黒く、白質が灰白質より白い。解剖学的な構造を見るのに向く。 ・FLAIR像: CSFの信号を抑えたT2強調像。脳室周囲の病変を見つけやすい。 ・拡散強調像: 超急性期の脳梗塞で早い時期から高信号になる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。