StudyMed医師国家試験

医師になるまでは医師法、保険で診るのは健康保険法―「保険医の登録」が浮いている理由

第120回医師国家試験 C問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第120回 C問題 第11問

医師法で規定されていないのはどれか。

  1. a.共用試験(CBT,OSCE)
  2. b.医師国家試験
  3. c.医籍登録
  4. d.臨床研修
  5. e.保険医の登録

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医師法がどこまでをカバーしている法律なのかを問う問題だ。ポイントは、医師という「資格」とその「業務」を定める法律と、保険診療の仕組みを定める法律を区別できるかどうか。まず、医師法には何が書かれていると思う?
医学生医学生
医師免許の取り方と、応招義務や診療録の記載義務みたいな医師の義務、でしょうか。
ドクタードクター
いいね、大筋はそれで合っている。医師の任務、免許の要件と欠格事由、医籍への登録、医師国家試験、臨床研修、医業の業務独占と名称独占、そして応招義務・無診察治療の禁止・異状死体の届出・処方箋の交付・診療録の記載と保存といった義務が並んでいる。
医学生医学生
選択肢を見ると、国家試験も医籍登録も臨床研修も入っていそうです。でも共用試験って大学の試験じゃないんですか。4年生のときにCBTとOSCEを受けましたけど、法律と関係あるとは思っていませんでした。
ドクタードクター
そこがこの問題の一番の落とし穴だね。共用試験は、2021年の医師法改正で法的に位置づけられたんだ。共用試験に合格した医学生は、大学の臨床実習で医師の指導監督の下に医業を行うことができる、と医師法に明記された。さらに、医師国家試験の受験資格にも共用試験の合格が組み込まれている。
医学生医学生
じゃあ、臨床実習で僕たちが患者さんを診察できるのは医師法が根拠になっているんですね。スチューデントドクターの認定証の意味がやっと分かりました。
ドクタードクター
そういうこと。知識をコンピュータで問うのがCBT、模擬患者さんなどを相手に技能と態度を評価するのがOSCEだ。では、医師国家試験と医籍登録はどうかな。
医学生医学生
医師になるには国家試験に合格して厚生労働大臣の免許を受ける、というのは医師法の最初のほうにありますよね。医籍登録も免許そのものに関わりそうです。
ドクタードクター
その通り。国家試験に合格した人が申請し、厚生労働省に備えられた医籍に登録されることで免許が与えられる。登録されると免許証が交付される。さらに医師には2年ごとに氏名や住所、従事先などを届け出る義務もあるんだ。
医学生医学生
臨床研修も、たしか2004年度から必修化されたんでしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。診療に従事しようとする医師は、2年以上、大学病院か厚生労働大臣の指定する病院などで臨床研修を受けなければならないと医師法に定められている。修了すると、その旨が医籍に登録される。
医学生医学生
そうすると残るのは保険医の登録です。でも医師免許を取ったら自動的に保険診療もできるものだと思っていました。
ドクタードクター
そう誤解している人は多いよ。保険医の登録は健康保険法に規定されていて、医師法には書かれていない。だからこれが正解だ。保険診療を行うには、医療機関が保険医療機関として指定を受け、かつ診療する医師個人が保険医として登録されている必要がある。これを二重指定制度と呼ぶ。
医学生医学生
なぜ医師法じゃなくて健康保険法なんでしょう。医師なら誰でも保険で診療するように思えるんですが。
ドクタードクター
医師免許を持っていても、全員が保険診療をするわけではないからだよ。基礎医学の研究者、行政で働く医師、自由診療だけを行う医師もいる。保険医というのは、医療保険のルールの中で診療して保険から診療報酬を受け取る立場のことだから、医療保険の法律で扱われるんだ。保険医は、保険医療機関及び保険医療養担当規則、いわゆる療担規則に従って診療しなければならない。
医学生医学生
医学生が医師になるまでの道のり、つまり共用試験から国家試験、医籍登録、臨床研修までは医師法で、そのあと保険で診療する資格は健康保険法、という整理ですね。
ドクタードクター
完璧だ。関連する法律の役割分担も確認しておこう。医師法は医師という資格と業務、医療法は病院や診療所の開設許可や医療計画、医療安全などの医療提供体制、健康保険法や国民健康保険法は保険者・給付・保険医療機関の指定・保険医の登録を扱う。国試では、ある規定がどの法律に属するかを問う問題が繰り返し出ているよ。
医学生医学生
異状死体を24時間以内に警察署に届け出る義務や、診療録の5年間保存も医師法でしたよね。
ドクタードクター
その通り。臨床研修が始まると、診断書の交付や処方箋、診療録の記載はすべて日常業務になる。それぞれが医師法上の義務だと意識しておくと、法的に正しい診療の土台になる。そして保険診療では療担規則に沿わない診療は認められないことがあるから、研修医のうちから保険のルールにも目を向けておくといいね。

まとめ

医師法は医師という資格と業務を定める法律で、医師国家試験、医籍登録、臨床研修、業務独占・名称独占、応招義務や診療録記載などの義務を規定しています。共用試験(CBT・OSCE)も2021年の医師法改正で法的に位置づけられ、合格した医学生は臨床実習で指導監督下に医業を行えるようになり、国家試験の受験資格にも組み込まれました。一方、保険医の登録は保険医療機関の指定とともに健康保険法に規定される「二重指定制度」の一部で、医師資格とは別に医療保険の法律で扱われます。「医師になるまでと医師の義務は医師法、保険で診療するためのルールは健康保険法、医療機関の体制は医療法」と役割分担で整理することが、関連法規の問題を解く鍵であり、研修医として適切な診療を行う基礎にもなります。

解答・解説

正解はeです

医師法は、医師という「資格」と、その資格を持つ者の「業務上の権利・義務」を定めた法律である。具体的には、医師の任務、免許の要件と欠格事由、医籍への登録、医師国家試験、臨床研修、医業の独占、そして応招義務・無診察治療の禁止・異状死体の届出・処方箋交付・診療録記載などの義務を規定している。 これに対して、医療保険の中で診療を行い、保険から診療報酬を受け取る仕組み(保険診療)に関わる事項は、医療保険の各法律で定められる。保険医療機関の指定と保険医の登録という、いわゆる「二重指定制度」は健康保険法に規定されている。医師免許を持つ者がすべて保険診療を行うわけではない(基礎医学の研究者、行政医、自由診療のみを行う医師など)ため、保険医であることは医師の資格そのものとは別の法律で扱われる。 したがって、医学生が医師になるまでの道のり(共用試験 → 卒業 → 医師国家試験 → 免許・医籍登録 → 臨床研修)は医師法に、医師になった後に保険診療を行うための保険医登録は健康保険法に規定されている、と整理すると判断しやすい。

選択肢考察

  1. ×a.  共用試験(CBT,OSCE)

    医師法に規定されている。共用試験は、医学生が臨床実習を始める前に必要な知識と技能を身につけているかを評価する、全国の大学共通の試験である。知識をコンピュータで問う CBT(Computer Based Testing)と、技能・態度を模擬患者などで評価する OSCE(Objective Structured Clinical Examination、客観的臨床能力試験)からなる。2021年の医師法改正(2023年4月施行)で法的に位置づけられ、第17条の2により、共用試験に合格した医学生は大学の臨床実習において医師の指導監督の下で医業を行うことができると定められた。さらに第11条では、医師国家試験の受験資格を、共用試験に合格したうえで医学の正規の課程を修めて卒業した者などに限っている。

  2. ×b.  医師国家試験

    医師法に規定されている。第2条で医師になろうとする者は医師国家試験に合格して厚生労働大臣の免許を受けなければならないと定め、第9条で国家試験が臨床上必要な医学と公衆衛生に関して医師として具有すべき知識・技能について行われること、第11条で受験資格が定められている。

  3. ×c.  医籍登録

    医師法に規定されている。厚生労働省に医籍が備えられ(第5条)、医師免許は国家試験合格者の申請により医籍に登録することによって与えられる(第6条)。登録されると医師免許証が交付される。医師には2年ごとに氏名・住所・従事先などを届け出る義務もある(医師届出票、第6条第3項)。

  4. ×d.  臨床研修

    医師法に規定されている。第16条の2により、診療に従事しようとする医師は、2年以上、大学病院または厚生労働大臣の指定する病院などで臨床研修を受けなければならない。2004年度から必修化された。臨床研修を修了した医師はその旨が医籍に登録される。また、医療法上、臨床研修を修了していない医師は診療所を開設する際に許可を要するなど、修了の有無が他の制度にも影響する。

  5. ○e.  保険医の登録

    医師法には規定されておらず、これが正解である。保険医の登録は健康保険法に定められ(保険医療機関で診療に従事する医師は厚生労働大臣の登録を受けた保険医でなければならないとする第64条、登録手続きの第71条など)、具体的な手続きは同法に基づく省令(保険医療機関及び保険薬局の指定並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する省令)で定められている。保険診療を行うには、医療機関が保険医療機関として指定を受け、かつ診療する医師個人が保険医として登録されていることの両方が必要である(二重指定制度)。保険医は保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)に従って診療しなければならない。医師の中には診療に携わらない者もおり、保険診療への参加は医師資格とは別に、医療保険の法律で扱われている。

医師法の主な規定

・第1条:医師の任務(医療と保健指導を通じて公衆衛生の向上・増進に寄与し、国民の健康な生活を確保する) ・第2条:免許(国家試験に合格し厚生労働大臣の免許を受ける) ・第3条・第4条:欠格事由(絶対的欠格事由:未成年者。相対的欠格事由:心身の障害、麻薬・大麻・あへん中毒、罰金以上の刑、医事に関する犯罪・不正行為) ・第6条:医籍登録、2年ごとの届出 ・第9条〜第11条:医師国家試験、受験資格(共用試験合格が要件) ・第16条の2:臨床研修(2年以上) ・第17条:医師でなければ医業をしてはならない(業務独占) ・第17条の2:共用試験合格者の臨床実習における医業 ・第18条:医師でなければ医師またはこれに紛らわしい名称を用いてはならない(名称独占) ・第19条:応招義務、診断書・検案書・出生証明書・死産証書の交付義務 ・第20条:無診察治療等の禁止 ・第21条:異状死体等の届出義務(検案して異状を認めたら24時間以内に所轄警察署へ) ・第22条:処方箋の交付義務 ・第23条:療養方法等の指導義務 ・第24条:診療録の記載義務と5年間の保存義務

医療関係の主な法律と役割の違い

・医師法:医師という資格と業務 ・医療法:病院・診療所などの医療提供体制(開設許可、医療計画、医療安全など) ・健康保険法・国民健康保険法など:医療保険(保険者、給付、保険医療機関の指定、保険医の登録) ・保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則):保険診療のルール

POINT

・医師法は医師の資格と業務を定める法律:共用試験、医師国家試験、医籍登録、臨床研修、業務独占・名称独占、各種義務。 ・保険医の登録・保険医療機関の指定(二重指定制度)は健康保険法に規定される。 ・共用試験(CBT・OSCE)は2021年改正医師法で法的に位置づけられ、合格した医学生は臨床実習で指導監督下に医業ができる(第17条の2)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。