StudyMed医師国家試験

画面越しでも診察室は「個室」―オンライン診療の基本ルールを押さえる

第120回医師国家試験 F問題 第9問

国試問題にチャレンジ

第120回 F問題 第9問

遠隔診療(オンライン診療)で正しいのはどれか。

  1. a.処方箋の交付はできない。
  2. b.プライバシーが保たれた空間で行う。
  3. c.感染症のリスクの軽減につながらない。
  4. d.第三者の立ち合いに医師の許可は必要ない。
  5. e.文字,写真および録画動画のみのやり取りも認められる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はオンライン診療のルールを問う問題だ。考え方のコツは、オンライン診療を「場所が離れているだけで、対面診療と同じ医療行為」と捉えること。そう考えると、守るべきことも、できることも自然に見えてくるよ。
医学生医学生
コロナ禍で一気に広がったイメージがありますが、実はかなり制限が多いんじゃないかと思っていました。処方もできないのでは?
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。オンライン診療は医師法上の診療行為として認められていて、診察の結果として処方箋を交付できる。電子処方箋を使ったり、処方箋の原本を薬局へ送ったりする方法があるんだ。
医学生医学生
では、まったく制限なしですか。
ドクタードクター
いや、安全のための制限はある。厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、初診からのオンライン診療で麻薬や向精神薬を処方しないこと、基礎疾患などの情報が把握できていない初診患者には8日分以上の処方をしないこと、などが定められている。「できない」と全否定するのは誤りだけど、何でも出せるわけでもない、ということだね。
医学生医学生
なるほど。対面と同じ診療行為なら、守秘義務も同じようにかかりますよね。
ドクタードクター
その通り。そしてそれが今回の正解につながる。オンライン診療は、医師側も患者側もプライバシーが保たれた空間で行う必要がある。病状や病歴は個人情報保護法でいう「要配慮個人情報」にあたるから、外に会話や画面が漏れない環境が求められるんだ。
医学生医学生
患者さんが駅のホームやカフェ、職場の共用スペースから接続するのは不適切、ということですね。OSCEの医療面接でも、まずカーテンを閉めてプライバシーに配慮するよう指導されました。
ドクタードクター
いい例えだ。対面の診察室が個室になっているのと同じ発想だよ。医師側も原則として医療機関内か、それと同等の環境が確保された場所で行う。では、その場に家族など第三者がいる場合はどうだろう。
医学生医学生
患者さんが同席を望むなら、医師の許可は特に要らない気がします。
ドクタードクター
そこが引っかけだね。指針では、患者側に第三者が同席する場合は医師がそれを確認し了承する、逆に医師側に他の医療者などがいる場合は患者の同意を得る、と双方向に定められている。誰が聞いているかを双方が把握しないまま診療を進めてはいけない。同席が診療の妨げになると判断すれば、医師が断ることもできるんだ。
医学生医学生
感染症のリスクについてはどうですか。画面越しなら直接接触しないので、リスクは下がりますよね。
ドクタードクター
そうだね。通院の公共交通機関や待合室での接触、医療者との接触がなくなるから、患者と医療者双方の感染リスクを減らせる。実際にCOVID-19流行期には、感染拡大防止策として電話やオンラインでの初診が特例的に認められた。「軽減につながらない」は誤りだ。
医学生医学生
チャットや写真、録画した動画だけのやり取りで診療するのはどうでしょう。忙しい人には便利そうですが。
ドクタードクター
便利だけど、それだけでは認められない。オンライン診療は、患者の表情や声、様子をその場で把握できるよう、リアルタイムの映像と音声による双方向通信で行うのが原則だ。文字や写真、録画動画だけでは状態を同時的に評価できず、なりすましや情報の欠落の危険もある。補助的に併用するのは構わないけれどね。
医学生医学生
整理すると、処方は制限付きで可能、プライバシー確保は必須、第三者の同席は双方で確認、感染リスクは下がる、診察はリアルタイムの映像と音声、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として、遠隔医療の分類も押さえておこう。医師と患者の間で行うD to Pには、診断や処方まで行うオンライン診療のほか、受診すべき診療科を勧めるにとどまるオンライン受診勧奨、一般的な医学情報を提供する遠隔健康医療相談がある。医師同士で行う遠隔画像診断や遠隔病理診断はD to Dと呼ばれる。
医学生医学生
地域医療実習で離島の診療所に行ったとき、本土の専門医に画像を送って相談していたのはD to Dですね。
ドクタードクター
まさにそう。臨床で忘れてはいけないのは、オンライン診療では触診や聴診ができず、検査も限られるという限界だ。十分な情報が得られないと判断したら速やかに対面診療に切り替えること、急変時に対応できる医療機関をあらかじめ確保しておくことも、指針で求められている大事なポイントだよ。

まとめ

オンライン診療は、場所が離れているだけで対面診療と同じ診療行為であり、医師・患者双方がプライバシーの保たれた空間で行う必要があります。処方箋の交付は可能ですが、初診時の麻薬・向精神薬の処方禁止や、情報が不十分な初診患者への8日分以上の処方禁止などの制限があります。第三者の同席は医師・患者双方で確認・同意し、診察はリアルタイムの映像と音声による双方向通信で行うのが原則で、文字・写真・録画動画のみの診療は認められません。通院や待合室での接触がなくなるため感染リスクの軽減につながる一方、身体診察ができないなどの限界もあり、必要に応じて対面診療へ切り替える判断が求められます。「対面診療と同じ医療行為」という軸で考えれば指針の個々のルールも理解しやすく、今後さらに広がる遠隔医療に適切に関わる基盤になります。

解答・解説

正解はbです

問われているテーマ

オンライン診療(遠隔診療のうち、医師と患者が情報通信機器を介してリアルタイムに診察・診断・処方などを行う形態)の基本ルールを問う問題である。わが国では厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(2018年策定、その後数次改訂)がオンライン診療の実施方法を定めており、本問の各選択肢もこの指針の内容に沿って判断する。

考え方

オンライン診療は「場所が離れているだけで、対面診療と同じ医療行為」と考えると整理しやすい。したがって、①対面と同じく医師の守秘義務・患者のプライバシー保護が求められる、②診療行為である以上、診断や処方も可能(ただし安全確保のための制限はある)、③診察は患者の状態をリアルタイムに把握できる方法(原則として映像と音声の双方向通信)で行う、という3点が基本になる。 さらに、医療機関への移動や待合室での接触が不要になるため、院内感染などの感染症リスクを下げられることがオンライン診療の利点の一つである。また診療で扱う病歴や病名は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」にあたるため、第三者がその場にいる状態で診療する場合は、医師・患者双方の確認と同意が必要とされる。 これらを踏まえると、診察を行う空間のプライバシー確保を述べた選択肢が正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  処方箋の交付はできない。

    誤り。オンライン診療は医師法上の診療行為として認められており、診察の結果として処方箋を交付することができる(電子処方箋の利用や、処方箋原本を薬局へ送付する方法がある)。ただし安全性確保のため制限があり、指針では、初診からのオンライン診療では麻薬や向精神薬を処方しないこと、基礎疾患などの情報が把握できていない初診患者に対しては8日分以上の処方を行わないこと、などが定められている。「交付できない」という全面的な否定は誤りである。

  2. ○b.  プライバシーが保たれた空間で行う。

    正しい。オンライン診療でも医師は守秘義務を負い、患者の病状や病歴といった機微な情報(要配慮個人情報)を扱う。そのため指針は、医師側は診療内容が外部に漏れない場所(原則として医療機関内、またはそれと同等の環境が確保された場所)で、患者側も第三者に会話や画面が見聞きされない場所で診療を受けることを求めている。公共の場所や職場の共用スペースなどでの受診は不適切である。対面診療で診察室が個室になっているのと同じ考え方である。

  3. ×c.  感染症のリスクの軽減につながらない。

    誤り。オンライン診療では患者が医療機関に出向かずに済むため、通院中の公共交通機関や待合室での接触、医療従事者との接触が避けられ、患者・医療者双方の感染リスクを減らせる。実際、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期には、感染拡大防止策として電話やオンラインによる初診が時限的・特例的に認められ、オンライン診療の普及が大きく進んだ。

  4. ×d.  第三者の立ち合いに医師の許可は必要ない。

    誤り。指針では、患者側に家族などの第三者が同席する場合には医師がそれを確認し了承すること、逆に医師側に第三者(他の医療従事者など)がいる場合には患者の同意を得ることが求められている。診療で扱う情報は要配慮個人情報であり、誰がその場にいるかを双方が把握しないまま診療を進めることは許されない。また、患者の同意があっても、同席者の存在が診療に支障をきたす場合には医師は同席を断ることができる。

  5. ×e.  文字,写真および録画動画のみのやり取りも認められる。

    誤り。指針では、オンライン診療は患者の表情や様子、声などをその場で把握できるよう、リアルタイムの視覚・聴覚情報を含む双方向の通信(ビデオ通話)で行うことが求められている。チャットなどの文字のやり取りや、写真・録画動画の送受信だけでは、患者の状態を同時的に評価できず、なりすましや情報の欠落の危険もあるため、これらのみによる診療は認められない(診療を補完する手段として併用することは可能)。

遠隔医療の分類

遠隔医療は大きく、医師と患者の間で行う D to P(Doctor to Patient)と、医師同士で行う D to D(Doctor to Doctor:遠隔画像診断や遠隔病理診断など)に分けられる。D to P はさらに次のように整理される。 ・オンライン診療:リアルタイムの通信で、診察・診断・処方など診療行為を行う。 ・オンライン受診勧奨:診察したうえで、疾患の可能性を示し受診すべき診療科などを勧める(一般用医薬品の使用指示を含む)。個別の診断や処方は行わない。 ・遠隔健康医療相談:一般的な医学情報の提供にとどまり、個別の診断は行わない(医師以外も実施可能)。 また、医師と患者の間に看護師などが同席する D to P with N(看護師等)や、主治医と専門医が連携する D to P with D という形態もある。

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の主なポイント

・実施にあたっては、医師と患者の間の合意と、診療計画の作成が必要である。 ・初診は原則として「かかりつけの医師」が行うが、2022年の改訂で、かかりつけ医以外でも事前の「診療前相談」を経れば初診からのオンライン診療が可能となった。 ・診察はリアルタイムの映像と音声で行い、文字・写真・録画動画のみのやり取りでは不可。 ・医師はオンライン診療で十分な情報が得られないと判断した場合、速やかに対面診療へ切り替える。急変時に対応できる医療機関をあらかじめ確保しておく。 ・医師・患者双方がプライバシーの保たれた環境で実施し、第三者の同席は双方で確認する。 ・医師は本人確認(必要に応じ身分証明書などで確認)を行い、患者も医師の資格を確認できるようにする。 ・使用する通信システムは十分な情報セキュリティ対策を講じたものとする。 ・医師は厚生労働省が定める研修を受講する必要がある。 ・処方については、初診時の麻薬・向精神薬の処方禁止、情報が不十分な初診患者への8日分以上の処方禁止などの制限がある。

オンライン診療の利点と限界

利点:通院負担の軽減(遠隔地・離島・高齢者・就労者)、感染リスクの低減、治療継続率の向上など。 限界:触診・聴診・打診などの身体診察ができない、検査ができない、通信環境に左右される、緊急時の対応に制約がある、など。

POINT

・オンライン診療は対面診療と同じ診療行為であり、処方箋の交付も可能(ただし初診時の麻薬・向精神薬処方禁止などの制限あり)。 ・医師・患者双方がプライバシーの保たれた空間で行う。 ・第三者の同席は医師・患者双方が確認・同意したうえで行う。 ・診察はリアルタイムの映像と音声による双方向通信が原則で、文字・写真・録画動画のみの診療は不可。 ・通院や待合室での接触がなくなるため感染症リスクの軽減につながる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。