StudyMed医師国家試験

黄疸より先に「かゆい」がやってくる―閉塞性黄疸の症状を病態から読み解く

第118回医師国家試験 E問題 第9問

国試問題にチャレンジ

第118回 E問題 第9問

閉塞性黄疸に伴いやすい症状はどれか。

  1. a.紫斑
  2. b.かゆみ
  3. c.黒色便
  4. d.立ちくらみ
  5. e.肉眼的血尿

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は閉塞性黄疸で出やすい症状を選ぶ問題だ。丸暗記で解くこともできるけれど、「胆汁がせき止められると何が起こるか」という病態から考えると、症状が自然に導けるようになる。まず、閉塞性黄疸とはどういう状態か説明できるかな。
医学生医学生
胆石や腫瘍で胆管が詰まって、胆汁が十二指腸に流れなくなる状態ですよね。消化器の講義で、膵頭部癌の無痛性黄疸の話を聞きました。
ドクタードクター
その通り。行き場を失った胆汁の成分、つまり抱合型ビリルビンや胆汁酸、コレステロールが血液中に逆流する。だから症状は「血中に増えるもの」と「腸に届かなくなるもの」の2つに分けると整理しやすいんだ。
医学生医学生
血中に増えるほうは、皮膚や眼球結膜が黄色くなる黄疸そのものですね。
ドクタードクター
うん。それに加えて、抱合型ビリルビンは水溶性だから尿に出て、尿が紅茶やコーラのような褐色になる。そして今回の正解、皮膚のかゆみも胆汁うっ滞でとても多い症状だ。黄疸が目立つ前からかゆみが出ることもある。
医学生医学生
かゆみの原因はビリルビンが皮膚にたまるからだと思っていました。
ドクタードクター
そう考える人は多いけれど、実はビリルビンそのものの関与は小さいとされている。原因物質は完全には解明されていないものの、血中に増えた胆汁酸や、オートタキシンによってつくられるリゾホスファチジン酸、内因性オピオイドなどが関わると考えられているんだ。夜に悪化しやすく、掻き壊した跡が残っていることも多い。
医学生医学生
臨床実習の消化器内科で、ERCPでステントを入れた患者さんが「かゆみが一番つらかった、楽になった」と話していたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそれが大事な点で、胆道ドレナージで胆汁の流れが戻ると、かゆみは改善していく。では腸に届かなくなるほうはどうだろう。
医学生医学生
ビリルビンが腸に出ないので便が白っぽくなります。だから黒色便は逆ですね。
ドクタードクター
正解。閉塞性黄疸では灰白色便になる。黒色便、いわゆるタール便は、食道・胃・十二指腸など上部消化管からの出血で、ヘモグロビンが胃酸などで変化して黒くなるもの。鉄剤を飲んでいても黒くなるね。
医学生医学生
褐色尿と肉眼的血尿も紛らわしいです。どちらも尿の色が変わりますし。
ドクタードクター
そこはよく混同されるポイントだ。肉眼的血尿は腎・尿管・膀胱・尿道からの出血で、尿路上皮癌や尿路結石などを考える。一方、閉塞性黄疸の褐色尿はビリルビン尿だから、試験紙で尿潜血は陰性、尿中ビリルビンが陽性になる。尿定性検査で区別できるんだ。
医学生医学生
紫斑はどうでしょう。胆汁酸が届かないと脂溶性ビタミンが吸収できないので、ビタミンK欠乏で出血しやすくなる気がします。
ドクタードクター
鋭いね。長引く閉塞性黄疸ではビタミンK依存性凝固因子のII・VII・IX・Xが低下して、PT延長や出血傾向をきたすことは実際にある。ただ、それは長期化したときの二次的な合併症で、閉塞性黄疸に典型的に伴う症状とまではいえない。紫斑はむしろ血小板減少や血管炎、老人性紫斑などをまず考える症状だ。
医学生医学生
立ちくらみは、出血や脱水、貧血、起立性低血圧の症状なので、閉塞性黄疸とは直接関係しないですね。
ドクタードクター
その通り。胆汁うっ滞の結果として説明できるのは、選択肢のなかではかゆみだけということになる。
医学生医学生
血中に増えるものと腸に届かないもの、の2つで考えると、褐色尿、灰白色便、脂肪便、ビタミンK欠乏まで全部つながりますね。
ドクタードクター
いいまとめだ。臨床での注意点も押さえよう。閉塞が長引いた患者さんでは、処置の前にPTを確認し、延長していればビタミンKを非経口で投与する。経口では吸収されにくいからね。もう一つ怖いのは、うっ滞した胆汁に細菌が感染して起こる急性胆管炎だ。発熱・腹痛・黄疸のCharcotの3徴に、意識障害とショックが加わったReynoldsの5徴は重症で、緊急の胆道ドレナージが必要になる。
医学生医学生
CBTの勉強で、悪性の閉塞では腫れた胆嚢を痛みなく触れるCourvoisier徴候も覚えました。
ドクタードクター
よく覚えているね。診断はまず腹部超音波で胆管の拡張を確認して閉塞性と判断し、CTやMRCP、超音波内視鏡で閉塞部位と原因を調べる。かゆみを訴える患者さんを見たら、皮膚の問題だけでなく胆汁うっ滞の可能性も頭に浮かべられるようにしておこう。

まとめ

閉塞性黄疸は胆管の閉塞により胆汁が十二指腸へ流れず、胆汁成分が血中へ逆流する状態で、症状は「血中に増えるもの」と「腸に届かなくなるもの」に分けると整理できます。前者には黄疸、ビリルビン尿による褐色尿、皮膚掻痒感があり、後者には灰白色便、脂肪便、脂溶性ビタミンの吸収障害があります。かゆみは黄疸に先行することもある代表的な症状で、ビリルビン自体よりも胆汁酸などの関与が考えられており、胆道ドレナージで改善します。黒色便は上部消化管出血、肉眼的血尿は尿路出血を示唆し、褐色尿(尿潜血陰性・尿中ビリルビン陽性)とは区別が必要です。長期例ではビタミンK欠乏による出血傾向や急性胆管炎の合併に注意が必要で、病態から症状を組み立てる考え方は黄疸の鑑別全般に役立ちます。

解答・解説

正解はbです

閉塞性黄疸とは、肝臓で作られた胆汁の十二指腸への流出が、胆管の閉塞・狭窄によって妨げられて生じる黄疸である。胆汁成分(抱合型〔直接〕ビリルビン、胆汁酸、コレステロールなど)が血中へ逆流することで、さまざまな症状が現れる。 症状は「血中に増えるもの」と「腸管に届かなくなるもの」に分けると整理しやすい。 ・血中に増えるもの:抱合型ビリルビン上昇による皮膚・眼球結膜の黄染、水溶性の抱合型ビリルビンが尿中に排泄されることによる褐色尿(ビリルビン尿)、胆汁うっ滞に伴う皮膚掻痒感。 ・腸管に届かなくなるもの:ビリルビンが腸に出ないため便が白っぽくなる(灰白色便)、胆汁酸不足による脂肪の消化吸収障害(脂肪便)と脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収障害。 このうち、選択肢中で閉塞性黄疸に「伴いやすい」症状として代表的なのは、かゆみ(皮膚掻痒感)である。その他の選択肢はそれぞれ別の病態(上部消化管出血、尿路出血、貧血・起立性低血圧など)を示唆する症状である。

選択肢考察

  1. ×a.  紫斑

    紫斑は皮下出血であり、血小板減少・血小板機能異常、凝固因子の低下、血管の脆弱性や炎症(IgA血管炎など)、加齢(老人性紫斑)などで生じる。閉塞性黄疸が長期化すると、ビタミンK吸収障害によってビタミンK依存性凝固因子(II・VII・IX・X)が低下し、PT(プロトロンビン時間)延長などの出血傾向をきたすことはある。しかしこれは二次的な合併症であり、閉塞性黄疸に典型的に伴う症状とはいえない。

  2. ○b.  かゆみ

    胆汁うっ滞では皮膚掻痒感が高頻度にみられ、黄疸の出現に先行することもある。原因物質は完全には解明されていないが、血中に増加した胆汁酸のほか、リゾホスファチジン酸(オートタキシンにより産生)や内因性オピオイドなどの関与が考えられている。ビリルビンそのものの関与は小さいとされる。夜間に増悪しやすく、掻破痕を伴うことも多い。胆道ドレナージで胆汁うっ滞が解除されると改善する。

  3. ×c.  黒色便

    黒色便(タール便)は、主に上部消化管(食道・胃・十二指腸)からの出血で、血液中のヘモグロビンが胃酸や腸内細菌により変化して生じる。鉄剤内服でも便が黒くなる。閉塞性黄疸ではむしろ胆汁色素が腸に届かないため灰白色便となる。

  4. ×d.  立ちくらみ

    立ちくらみは起立時の脳血流低下による症状で、脱水や出血などによる循環血液量減少、貧血、自律神経障害による起立性低血圧、薬剤、心疾患などで生じる。めまいとしては内耳性・中枢性の原因もある。閉塞性黄疸に特徴的な症状ではない。

  5. ×e.  肉眼的血尿

    肉眼的血尿は腎・尿管・膀胱・尿道からの出血(尿路上皮癌、腎細胞癌、尿路結石、出血性膀胱炎など)でみられる。閉塞性黄疸では抱合型ビリルビンが尿中に出るため尿が濃い褐色(コーラ色・紅茶色)になるが、これはビリルビン尿であり血尿ではない。尿潜血は陰性で、尿中ビリルビンが陽性となる点で区別できる。

閉塞性黄疸の主な原因

・結石:総胆管結石(胆嚢結石の落下を含む) ・悪性腫瘍:胆管癌、膵頭部癌、十二指腸乳頭部癌、胆嚢癌、肝門部へのリンパ節転移(胃癌など) ・良性狭窄:慢性膵炎、自己免疫性膵炎・IgG4関連硬化性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、術後胆管狭窄など

閉塞性黄疸の症状・所見

・皮膚・眼球結膜の黄染、皮膚掻痒感 ・褐色尿(尿中ビリルビン陽性、尿中ウロビリノゲンは低下〜陰性) ・灰白色便、脂肪便 ・脂溶性ビタミン吸収障害:ビタミンK欠乏によるPT延長・出血傾向など ・血液検査:直接ビリルビン優位の上昇、ALP・γ-GTPなど胆道系酵素の上昇 ・悪性腫瘍による閉塞では、無痛性黄疸と腫大した胆嚢の触知(Courvoisier徴候)がみられることがある

合併症

うっ滞した胆汁に細菌感染が加わると急性胆管炎となり、発熱・腹痛・黄疸(Charcotの3徴)を呈する。さらに意識障害とショックが加わったもの(Reynoldsの5徴)は重症で、緊急の胆道ドレナージが必要である。

検査・治療の流れ

腹部超音波で肝内・肝外胆管の拡張を確認して閉塞性と判断し、CT・MRCP(MR胆管膵管造影)・EUS(超音波内視鏡)で閉塞部位と原因を調べる。治療はERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)下の胆道ドレナージや結石除去、原因疾患に対する手術などである。

POINT

・閉塞性黄疸の症状:黄疸、皮膚掻痒感、褐色尿、灰白色便、脂肪便。 ・掻痒感は胆汁うっ滞に伴い、黄疸に先行することもある。 ・長期の胆汁うっ滞ではビタミンK吸収障害による出血傾向(PT延長)に注意し、ビタミンKを非経口投与する。 ・黒色便は上部消化管出血、肉眼的血尿は尿路出血を示唆する。褐色尿(ビリルビン尿)と血尿を混同しない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。