StudyMed医師国家試験

名前と業績がシャッフル!―日本人ノーベル生理学・医学賞を「臨床へのつながり」で覚える

第118回医師国家試験 E問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第118回 E問題 第10問

ノーベル生理学・医学賞を受賞した日本人研究者と研究内容の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.大隅良典 ―― 免疫チェックポイント阻害因子の発見
  2. b.大村智 ―― 抗体の多様性に関する遺伝的原理の発見
  3. c.利根川進 ―― 寄生虫感染症の治療法の発見
  4. d.本庶佑 ―― オートファジーの解明
  5. e.山中伸弥 ―― 多能性幹細胞〈iPS細胞〉の作製

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、ノーベル生理学・医学賞を受賞した日本人研究者と業績の組合せを問う問題だ。選択肢をよく見ると、5人の名前と5つの業績が全部そろっていて、人物と業績が入れ替えられている。つまり正しい対応表が頭にあれば一発で解ける。せっかくなので、それぞれの業績が今の医療にどうつながっているかも一緒に整理しよう。
医学生医学生
iPS細胞は山中先生、というのはさすがに知っています。ほかは名前と業績がちょっと曖昧です。
ドクタードクター
その山中伸弥先生とiPS細胞の作製の組合せが正解だ。2012年にJohn Gurdonと共同で受賞した。成熟した体細胞にOct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycという4つの転写因子を導入して、さまざまな細胞に分化できる能力を取り戻させたんだ。
医学生医学生
発生学の講義で山中因子として習いました。Gurdonはどんな研究をした人ですか。
ドクタードクター
Gurdonはカエルの核移植実験で、分化した細胞の核でも初期化されうることを示した。いわば「初期化は可能だ」と示した人と、「それを少数の因子で実現した」人の共同受賞だね。iPS細胞は再生医療だけでなく、患者さん由来の細胞で疾患モデルをつくったり、創薬研究に使ったりと応用が広がっている。
医学生医学生
では、利根川進先生が寄生虫というのは違いますよね。免疫学の講義で名前が出てきた気がします。
ドクタードクター
その記憶は正しい。利根川先生は1987年、日本人で初めてこの賞を単独受賞した。業績は抗体の多様性を生み出す遺伝的原理の発見だ。B細胞が分化する過程で、免疫グロブリン遺伝子のV・D・J断片が組み替わる遺伝子再構成によって、限られた遺伝子から膨大な種類の抗体がつくられることを示したんだ。
医学生医学生
遺伝子再構成って、血液内科の実習でリンパ腫のクローン性を調べる検査として出てきました。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。B細胞がクローン性に増えているかを遺伝子再構成で確認するのは、まさにこの原理の臨床応用だ。そして寄生虫感染症の治療法を見つけたのは大村智先生で、2015年の受賞。静岡県の土壌から分離した放線菌からエバーメクチンを発見し、その誘導体のイベルメクチンがオンコセルカ症やリンパ系フィラリア症の制圧に大きく貢献した。
医学生医学生
イベルメクチンって、皮膚科で疥癬の治療薬として出てきた薬ですよね。
ドクタードクター
その通り。今では疥癬や糞線虫症の治療にも使われている。残るのはオートファジーと免疫チェックポイント。どちらが誰か整理できるかな。
医学生医学生
オートファジーが本庶先生……ではなく、本庶先生はがん免疫のほうだった気がします。オプジーボのニュースを覚えています。
ドクタードクター
正解。本庶佑先生は2018年にJames Allisonと共同で受賞した。T細胞上の抑制性受容体PD-1を発見し、それが抗PD-1抗体ニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害薬の開発につながった。Allisonは同じく抑制性分子のCTLA-4を研究した人だ。
医学生医学生
ということは、オートファジーは大隅良典先生ですね。
ドクタードクター
そう。2016年の単独受賞で、酵母を使ってオートファジーに必須のATG遺伝子群を同定し、細胞が自分の成分を分解して再利用する仕組みを分子レベルで明らかにした。これで5人全員の対応がそろったね。
医学生医学生
免疫チェックポイント阻害薬って、腫瘍内科の実習で副作用の話をたくさん聞きました。
ドクタードクター
臨床ではそこが大切だ。免疫のブレーキを外す薬だから、間質性肺炎、大腸炎、甲状腺機能異常、1型糖尿病、副腎不全など、免疫関連有害事象が全身のどこにでも起こりうる。基礎研究の発見が、こうして日常診療の注意点にまでつながっているわけだ。
医学生医学生
年代順に並べると、利根川、山中、大村、大隅、本庶ですね。
ドクタードクター
よく整理できた。補足すると、この問題が出た後の2025年には、坂口志文先生が末梢性免疫寛容に関わる制御性T細胞の発見で受賞している。PD-1と同じく「免疫を抑える仕組み」の研究だね。外国人受賞者でも、Helicobacter pyloriの発見、HPVと子宮頸癌、C型肝炎ウイルスの発見、mRNAワクチンにつながるヌクレオシド修飾など、臨床に直結するテーマは押さえておきたい。名前だけでなく、何の薬や検査、治療につながったかとセットで覚えると忘れにくいよ。

まとめ

日本人のノーベル生理学・医学賞受賞者は、利根川進(1987年、免疫グロブリン遺伝子の再構成による抗体の多様性)、山中伸弥(2012年、iPS細胞の作製)、大村智(2015年、エバーメクチン発見による寄生虫感染症の治療法)、大隅良典(2016年、オートファジーの解明)、本庶佑(2018年、PD-1の発見と免疫チェックポイント阻害によるがん治療)で、本問の正しい組合せは山中伸弥とiPS細胞の作製です。その後2025年には坂口志文が制御性T細胞の発見で受賞しています。これらの業績は、リンパ腫のクローン性評価、疥癬や糞線虫症に対するイベルメクチン、ニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害薬とその免疫関連有害事象、再生医療や創薬研究など、日常診療に直結しています。人物名と業績を単に暗記するのではなく、それが臨床で何につながったかとセットで理解することが、知識を定着させ、基礎医学と臨床をつなぐ視点を養う近道になります。

解答・解説

正解はeです

ノーベル生理学・医学賞を受賞した日本人研究者と、その受賞理由となった業績の対応を問う知識問題である。本問の選択肢には、受賞者5人の名前と5つの業績がすべて登場しており、a〜dでは人物と業績が互いに入れ替えられている。正しい対応は次のとおりである。 ・利根川進(1987年):抗体の多様性を生み出す遺伝的原理の発見 ・山中伸弥(2012年):成熟した細胞を初期化して多能性幹細胞(iPS細胞)を作製 ・大村智(2015年):寄生虫感染症の新規治療法の発見(イベルメクチンの開発につながるエバーメクチンの発見) ・大隅良典(2016年):オートファジー(自食作用)の仕組みの解明 ・本庶佑(2018年):免疫チェックポイント分子PD-1の発見と、免疫の抑制を解除することによるがん治療への応用 この対応表を頭に入れておけば、正しい組合せは山中伸弥とiPS細胞の作製のみであるとすぐに判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  大隅良典 ―― 免疫チェックポイント阻害因子の発見

    大隅良典は2016年に単独で受賞し、その業績はオートファジーの機構解明である。酵母を用いてオートファジーに必須の遺伝子群(ATG遺伝子)を同定し、細胞が自らの成分を分解・再利用する仕組みを分子レベルで明らかにした。免疫チェックポイントに関する業績は本庶佑のものである。

  2. ×b.  大村智 ―― 抗体の多様性に関する遺伝的原理の発見

    大村智は2015年にWilliam Campbellと共同で受賞し(同年にはマラリア治療薬アルテミシニンを発見した屠呦呦も受賞)、業績は線虫などの寄生虫による感染症の新たな治療法の発見である。静岡県の土壌から分離した放線菌(Streptomyces avermitilis)からエバーメクチンを発見し、その誘導体であるイベルメクチンはオンコセルカ症(河川盲目症)やリンパ系フィラリア症の制圧に大きく貢献した。現在は糞線虫症や疥癬の治療にも用いられる。抗体の多様性に関する業績は利根川進のものである。

  3. ×c.  利根川進 ―― 寄生虫感染症の治療法の発見

    利根川進は1987年に日本人として初めてノーベル生理学・医学賞を単独受賞した。業績は抗体の多様性を生み出す遺伝的原理の発見であり、B細胞が分化する過程で免疫グロブリン遺伝子のV・D・J断片が再構成(遺伝子再構成)されることで、限られた遺伝子から膨大な種類の抗体が作られることを示した。寄生虫感染症の治療法に関する業績は大村智のものである。

  4. ×d.  本庶佑 ―― オートファジーの解明

    本庶佑は2018年にJames Allisonと共同で受賞し、業績は免疫の負の制御(免疫チェックポイント)を阻害することによるがん治療法の発見である。本庶はT細胞上の抑制性受容体PD-1を発見し、これが抗PD-1抗体ニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害薬の開発につながった(Allisonは同じく抑制性分子であるCTLA-4の研究を行った)。オートファジーの解明は大隅良典の業績である。

  5. ○e.  山中伸弥 ―― 多能性幹細胞〈iPS細胞〉の作製

    山中伸弥は2012年にJohn Gurdonと共同で受賞した。業績は、成熟した体細胞に少数の転写因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycのいわゆる山中因子)を導入することで、さまざまな細胞に分化できる多能性を再獲得させた人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製である(2006年にマウス、2007年にヒトで報告)。Gurdonはカエルの核移植実験で、分化した細胞の核が初期化されうることを示した。iPS細胞は再生医療、疾患モデルの作製、創薬研究に応用されている。

日本人のノーベル生理学・医学賞受賞者(受賞年順)

・1987年 利根川進:抗体の多様性の遺伝的原理(免疫グロブリン遺伝子の再構成) ・2012年 山中伸弥:iPS細胞の作製(体細胞の初期化) ・2015年 大村智:寄生虫感染症の治療法(エバーメクチン、イベルメクチン) ・2016年 大隅良典:オートファジーの仕組みの解明 ・2018年 本庶佑:PD-1の発見と免疫チェックポイント阻害によるがん治療 ・2025年 坂口志文:末梢性免疫寛容に関わる制御性T細胞(Treg)の発見(Mary Brunkow、Fred Ramsdellと共同受賞) 本問が出題された時点(2024年)の受賞者は本問に登場する5人であったが、その後2025年に坂口志文が加わった。

国家試験で問われうる主な外国人受賞者と業績の例

・Alexander Fleming ら(1945年):ペニシリンの発見 ・Robert Edwards(2010年):体外受精技術の開発 ・Barry Marshall、Robin Warren(2005年):Helicobacter pyloriの発見と胃炎・消化性潰瘍への関与 ・Harald zur Hausen(2008年):ヒトパピローマウイルスによる子宮頸癌の発見 ・Harvey Alter、Michael Houghton、Charles Rice(2020年):C型肝炎ウイルスの発見 ・Katalin Karikó、Drew Weissman(2023年):mRNAワクチン開発につながるヌクレオシド修飾の発見

POINT

・利根川進=抗体の多様性(1987年)、山中伸弥=iPS細胞(2012年)、大村智=イベルメクチン/寄生虫感染症(2015年)、大隅良典=オートファジー(2016年)、本庶佑=PD-1/免疫チェックポイント(2018年)。 ・2025年には坂口志文が制御性T細胞の発見で受賞している。 ・業績と、それが臨床で何につながったか(イベルメクチン、ニボルマブ、再生医療など)をセットで覚える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。