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「ものもらい」は何の病気?―患者の言葉と医学用語をつなぐ俗称の基本

第119回医師国家試験 B問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第119回 B問題 第1問

疾患とその俗称の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.鶏眼 ―― うおのめ
  2. b.色素性母斑 ―― とびひ
  3. c.水痘 ―― みずいぼ
  4. d.麦粒腫 ―― そばかす
  5. e.風疹 ―― はしか

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は皮膚科や眼科、小児科でよく耳にする「俗称」と正式な疾患名の対応を問う問題だ。地味に見えるけれど、外来では患者さんは「とびひになった」「ものもらいができた」と俗称で話すことがほとんど。それを頭の中で医学用語に置き換えられるかがポイントになる。まずは選択肢を眺めて、どれが正しそうかな。
医学生医学生
鶏眼が「うおのめ」なのは確実だと思います。でも、ほかの選択肢もどこかで聞いた言葉ばかりで、一瞬迷いました。
ドクタードクター
その「聞いたことがある感じ」がこの問題のひっかけなんだ。誤りの選択肢は、右側の俗称がどれも別の実在する疾患の俗称になっている。だから「左の疾患の本当の俗称は何か」と「右の俗称はどの疾患を指すか」を両方向から確かめるのがコツだよ。正解は鶏眼と「うおのめ」の組合せだね。
医学生医学生
鶏眼は、足の裏にできる硬いものですよね。たこ(胼胝)との違いが曖昧です。
ドクタードクター
どちらも繰り返す圧迫や摩擦で角質が厚くなるものだけど、鶏眼は中心に硬い芯があって、角質がくさび状に皮膚の深部へ向かって増える。その芯が神経を圧迫するから、歩くと痛いんだ。芯の見た目が魚の目に似ているので「うおのめ」。胼胝は芯がなく、表面側に平たく厚くなるので痛みは少ない。これが「たこ」だね。
医学生医学生
皮膚科の実習で、足の裏のいぼを削ったら点状に出血していて、鶏眼じゃなくてウイルス性のいぼだと教わりました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。足底疣贅はヒトパピローマウイルスによる尋常性疣贅で、見た目が鶏眼とよく似る。削って点状出血が見えれば疣贅を考える、というのは臨床で役立つ鑑別点だ。では、色素性母斑と「とびひ」はどうだろう。
医学生医学生
色素性母斑は「ほくろ」ですよね。とびひは確か、細菌感染だったような。
ドクタードクター
その通り。とびひは伝染性膿痂疹の俗称で、黄色ブドウ球菌やA群β溶血性レンサ球菌による皮膚の感染症だ。搔きこわした手で周りに広がる様子が、火事の火の粉が飛ぶようだからこの名前がついた。ほくろとは全く関係ないね。
医学生医学生
水痘と「みずいぼ」は名前が似ているので、正直ひっかかりそうでした。
ドクタードクター
ここは要注意だね。水痘の俗称は「みずぼうそう」。水痘・帯状疱疹ウイルスの初感染で、紅斑、丘疹、水疱、痂皮が同時に混在するのが特徴だ。一方「みずいぼ」は伝染性軟属腫で、ポックスウイルスによる、中心にくぼみ(臍窩)のあるつやつやした小さな丘疹。アトピー性皮膚炎の子どもで広がりやすい。
医学生医学生
麦粒腫が「そばかす」というのは明らかにおかしいですね。麦粒腫は「ものもらい」だと眼科の講義で聞きました。
ドクタードクター
そう、麦粒腫は眼瞼の脂腺や汗腺の急性化膿性炎症で、主に黄色ブドウ球菌が原因。地域によっては「めばちこ」「めいぼ」とも呼ぶ。「そばかす」は雀卵斑で、頬や鼻にできる小さな褐色斑だ。炎症と色素斑だから全く別物だね。最後に風疹と「はしか」はどうかな。
医学生医学生
風疹は「三日はしか」なので、近いけれど違う、ということでしょうか。
ドクタードクター
その通り。単に「はしか」と言えば麻疹のこと。麻疹はKoplik斑や二峰性の発熱が特徴で、風疹とは別のウイルス疾患だ。風疹は発疹が3日ほどで消えることが多いので「三日はしか」と呼ばれる。似た名前の取り違えを狙った選択肢だね。
医学生医学生
みずぼうそうとみずいぼ、はしかと三日はしか、のようにペアで覚えておくと混乱しにくそうです。
ドクタードクター
いい整理の仕方だ。ほかにも、おたふくかぜは流行性耳下腺炎、りんご病は伝染性紅斑、みずむしは足白癬、にきびは尋常性痤瘡、しみは肝斑と、外来でよく出会う俗称はまとめて押さえておきたい。
医学生医学生
OSCEの医療面接でも、患者さんの言葉をそのまま受け止めて、説明は分かりやすい言葉で、と指導されました。
ドクタードクター
まさにそこが臨床での意義だよ。患者さんの言う俗称を正しい疾患に置き換えて考え、説明するときは逆に俗称や平易な言葉に言い換える。ただし、患者さんが「はしか」と言っても実は風疹だった、ということもあり得るから、俗称を鵜呑みにせず、症状や経過を確認して自分で診断することも忘れないでほしい。

まとめ

鶏眼は中心に硬い芯をもち深部へくさび状に角質が増殖する病変で、俗に「うおのめ」と呼ばれ、芯のない胼胝(たこ)とは圧痛の有無などで区別されます。色素性母斑は「ほくろ」、伝染性膿痂疹は「とびひ」、水痘は「みずぼうそう」、伝染性軟属腫は「みずいぼ」、麦粒腫は「ものもらい」、雀卵斑は「そばかす」、麻疹は「はしか」、風疹は「三日はしか」と対応します。特に「みずぼうそう/みずいぼ」「はしか/三日はしか」のように似た俗称は取り違えやすいため、ペアで整理しておくことが有効です。患者は俗称で症状を訴えることが多く、医師はそれを正確な疾患名に置き換えて考え、説明では平易な言葉に戻すことが求められるため、俗称の知識は円滑な医療コミュニケーションの基礎になります。

解答・解説

正解はaです

問われていること

医学用語(正式な疾患名)と、一般の人が日常会話で使う呼び名(俗称)の対応を問う問題である。診察の場面では、患者が「ものもらいができた」「子どもがとびひになった」のように俗称で訴えることが多い。医師はそれを正しい疾患名に置き換えて理解し、逆に患者へ説明するときには分かりやすい言葉に言い換える必要がある。そのため、俗称と医学用語を正確に結びつけておくことが求められる。

解き方

各選択肢について「左の疾患名の本当の俗称は何か」「右の俗称はどの疾患を指すか」の両方向から確認すると、誤りの組合せを確実に見抜ける。本問の誤りの選択肢は、いずれも右側の俗称が別の実在する疾患の俗称になっている(例:とびひ=伝染性膿痂疹、みずいぼ=伝染性軟属腫)という、言葉の印象が似ているものを入れ替えたひっかけである。正しい組合せは鶏眼と「うおのめ」である。

選択肢考察

  1. ○a.  鶏眼 ―― うおのめ

    鶏眼(けいがん)は、足底や趾(あしゆび)などで繰り返し圧迫・摩擦を受ける部位の角質が、皮膚の深部へ向かってくさび状に厚くなったものである。中央に硬い芯(角質柱)があり、その見た目が魚や鶏の目に似ていることから、俗に「うおのめ(魚の目)」と呼ばれる。芯が真皮側の神経を圧迫するため、歩行時などに押すと痛むのが特徴である。組合せは正しい。

  2. ×b.  色素性母斑 ―― とびひ

    色素性母斑は母斑細胞(メラニンをもつ細胞)が増えてできる良性の病変で、俗称は「ほくろ」である。小型のものを黒子(こくし)と呼ぶこともある。一方「とびひ」は伝染性膿痂疹の俗称である。伝染性膿痂疹は黄色ブドウ球菌やA群β溶血性レンサ球菌による皮膚の細菌感染症で、搔きこわした手を介して病変が火の粉が飛ぶように周囲や他の部位へ広がることからこの名がある。組合せは誤りである。

  3. ×c.  水痘 ―― みずいぼ

    水痘は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の初感染による発疹性疾患で、俗称は「みずぼうそう」である。紅斑・丘疹・水疱・痂皮といった各段階の発疹が同時に混在するのが特徴である。一方「みずいぼ」は伝染性軟属腫の俗称で、ポックスウイルス科の伝染性軟属腫ウイルスによる、中心にくぼみ(臍窩)をもつ光沢のある小丘疹である。小児に多く、アトピー性皮膚炎の児で広がりやすい。名前が似ているが別の疾患であり、組合せは誤りである。

  4. ×d.  麦粒腫 ―― そばかす

    麦粒腫は眼瞼の脂腺や汗腺などに生じる急性の化膿性炎症で、主に黄色ブドウ球菌が原因となる。俗称は「ものもらい」(地域により「めばちこ」「めいぼ」などとも呼ばれる)である。一方「そばかす」は雀卵斑の俗称で、顔面(特に頬や鼻)に生じる小さな褐色斑であり、紫外線で濃くなる。炎症性疾患と色素斑は全く別のものであり、組合せは誤りである。

  5. ×e.  風疹 ―― はしか

    風疹は風疹ウイルスによる発疹性疾患で、発疹が3日程度で消えることが多いことから、俗に「三日はしか」と呼ばれる。単に「はしか」といえば麻疹を指す。麻疹は麻疹ウイルスによる感染症で、カタル期の頰粘膜のKoplik斑、二峰性の発熱などを特徴とし、風疹とは別の疾患である。「三日はしか」と「はしか」の取り違えを狙った選択肢であり、組合せは誤りである。

主な疾患と俗称の対応

・鶏眼 ― うおのめ ・胼胝(べんち) ― たこ(芯をもたず、角質が皮膚表面側へ平たく厚くなる。通常は痛みが少ない) ・色素性母斑 ― ほくろ(黒子) ・伝染性膿痂疹 ― とびひ ・水痘 ― みずぼうそう ・伝染性軟属腫 ― みずいぼ ・尋常性疣贅 ― いぼ(ヒトパピローマウイルス感染による) ・麦粒腫 ― ものもらい(めばちこ、めいぼ) ・雀卵斑 ― そばかす ・麻疹 ― はしか ・風疹 ― 三日はしか ・流行性耳下腺炎 ― おたふくかぜ ・伝染性紅斑 ― りんご病 ・突発性発疹 ― (乳児の)突発疹 ・尋常性痤瘡 ― にきび ・蕁麻疹 ― じんましん ・足白癬 ― みずむし ・爪白癬 ― つめみずむし ・肝斑 ― しみ

鶏眼と胼胝の違い

どちらも慢性的な機械的刺激による角質の増殖であるが、鶏眼は中心に芯があって深部に向かって増殖し圧痛が強いのに対し、胼胝は芯がなく広く平らに厚くなり、痛みはあまり伴わない。また、足底の尋常性疣贅(足底疣贅)は外観が鶏眼に似るが、表面を削ると点状の出血(血管)がみられる点で区別される。

POINT

・鶏眼=うおのめ、胼胝=たこ ・とびひ=伝染性膿痂疹、ほくろ=色素性母斑 ・みずぼうそう=水痘、みずいぼ=伝染性軟属腫 ・ものもらい=麦粒腫、そばかす=雀卵斑 ・はしか=麻疹、三日はしか=風疹 ・名前の似た俗称(みずぼうそう/みずいぼ、はしか/三日はしか)の取り違えに注意する

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。