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代謝水はどちら側?―イン・アウトバランス計算で差がつく2つの落とし穴

第119回医師国家試験 A問題 第75問

国試問題にチャレンジ

第119回 A問題 第75問

体重50kg,飲水量1,200mL/日,食事からの水分摂取量1,000mL/日,尿量1,000mL/日,不感蒸泄15mL/kg/日,代謝水5mL/kg/日,便中水分量100mL/日,輸液なし,として水分出納〈イン・アウト〉バランスを求めよ。 解答:①②③mL/日

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は水分出納、いわゆるイン・アウトバランスの計算問題だ。考え方はシンプルで、体に入る水分の合計から出ていく水分の合計を引くだけ。ただし、各項目をインとアウトのどちらに振り分けるか、そして単位をそろえられるかで差がつく。まず、イン側に入る項目を挙げてみよう。
医学生医学生
飲水と食事からの水分、それに輸液ですね。今回は輸液なしなので0です。
ドクタードクター
そこまではいいね。もう一つ、忘れられやすいイン項目がある。
医学生医学生
代謝水でしょうか。でも、口から入る水ではないので、どちらに入れるか迷います。
ドクタードクター
そこが一つ目の落とし穴だ。代謝水は、糖質や脂質、蛋白質が体内で酸化されるときに新しく生じる水だ。生化学の講義で、ブドウ糖が完全に酸化されるとCO2とH2Oになる反応式を習ったよね。
医学生医学生
C6H12O6と6O2から6CO2と6H2Oができる、ですね。そのH2Oが体内で生まれて体液に加わるから、イン側なんですね。
ドクタードクター
その通り。外から入ったわけではないけれど、体の水分を増やす方向に働くからインに数える。では次に、アウト側の項目は?
医学生医学生
尿と便中の水分と、不感蒸泄です。不感蒸泄は皮膚や呼気から気づかないうちに失われる水分ですよね。
ドクタードクター
正解。汗のように自覚できる発汗は不感蒸泄には含まない点も押さえておこう。ここで二つ目の落とし穴が単位だ。不感蒸泄と代謝水は、体重1kgあたりで与えられている。
医学生医学生
そのまま足すと単位が合わないので、体重50kgを掛けて1日量に直すんですね。代謝水は5×50で250mL、不感蒸泄は15×50で750mLです。
ドクタードクター
そう。ではインの合計を出してみよう。
医学生医学生
飲水1,200、食事1,000、代謝水250で、合計2,450mLです。アウトは尿1,000、不感蒸泄750、便100で1,850mL。差し引きで600mL/日のプラスですね。
ドクタードクター
正解だ。プラスバランスは体内に水分がたまる方向、マイナスバランスは失われる方向を意味する。ちなみに、代謝水を計算から外すと350、アウト側に入れてしまうと100になる。どちらも解答欄に入りそうな数字だから要注意だね。
医学生医学生
CBTの勉強のときは代謝水と不感蒸泄の数字を丸暗記していましたが、どちら側かを意識していませんでした。代謝水は5、不感蒸泄は15mL/kg/日、とセットで覚えておきます。
ドクタードクター
それでいい。成人の代謝水はだいたい200〜300mL/日、不感蒸泄は900mL/日前後が目安だ。臨床ではさらに、不感蒸泄が増える状況を知っておくことが大切になる。
医学生医学生
発熱でしょうか。外科の実習で、術後に熱が出た患者さんの輸液量を増やしていたのを見ました。
ドクタードクター
いい観察だね。体温が1℃上がるごとに不感蒸泄はおよそ15%増えるとされる。ほかにも高い室温や低湿度、頻呼吸や過換気、そして広範囲熱傷では皮膚のバリアが失われて大きく増える。
医学生医学生
実際の病棟では、嘔吐や下痢、ドレーンや胃管からの排液もアウトに入りますよね。
ドクタードクター
そう。その他の喪失として必ず加える。測りきれない喪失もあるから、維持輸液はバランスがややプラスになるように設定することが多い。尿量についても、老廃物を排泄するには最低でも1日400〜500mLほど必要で、これを下回ると乏尿だ。
医学生医学生
毎日の体重測定も、水分出納をざっくり確認する方法になりますね。
ドクタードクター
その通り。短期間の体重変化は、主に体の水分量の変化を反映する。計算と体重の推移を両方見て、水分管理が適切かを判断していくんだ。

まとめ

水分出納バランスは、イン(飲水+食事中の水分+代謝水+輸液)からアウト(尿+不感蒸泄+便中水分+その他の喪失)を差し引いて求めます。代謝水は栄養素の酸化で体内に生じる水なのでイン側に数え、約5mL/kg/日、不感蒸泄はアウト側で約15mL/kg/日が目安であり、kgあたりで示された値は必ず体重を掛けて1日量に直してから計算します。本問ではイン2,450mLからアウト1,850mLを引いて、600mL/日のプラスバランスとなります。不感蒸泄は発熱、熱傷、過換気などで増え、臨床では嘔吐・下痢・ドレーン排液なども加わるため、こうした出納の考え方は輸液計画や術後管理の基本となります。

解答・解説

正解は600mL/日です

考え方

水分出納〈イン・アウト〉バランスとは、1日に体内へ入る水分の総量(イン)から、体外へ出ていく水分の総量(アウト)を差し引いた値である。プラスであれば体内に水分が貯留する方向、マイナスであれば体内の水分が失われる方向を意味する。 本問では「mL/kg/日」で与えられている項目(不感蒸泄・代謝水)があるため、まず体重50kgを掛けて1日量(mL/日)に換算し、そのうえで各項目をインとアウトに振り分ける。

1. kg当たりの値を1日量に換算する

・代謝水:5mL/kg/日 × 50kg = 250mL/日 ・不感蒸泄:15mL/kg/日 × 50kg = 750mL/日

2. イン(体内に入る水分)

・飲水量:1,200mL/日 ・食事からの水分:1,000mL/日 ・代謝水:250mL/日 ・輸液:なし(0mL/日) 合計:1,200 + 1,000 + 250 = 2,450mL/日 代謝水は口から摂取する水ではないが、体内で糖質・脂質・蛋白質が酸化されるときに新たに生じる水であり、体液に加わるためインに数える点が重要である。

3. アウト(体外に出る水分)

・尿量:1,000mL/日 ・不感蒸泄:750mL/日 ・便中水分:100mL/日 合計:1,000 + 750 + 100 = 1,850mL/日

4. バランスを求める

イン − アウト = 2,450 − 1,850 = +600mL/日 したがって、水分出納バランスは600mL/日(プラスバランス)であり、解答欄には「600」と記入する。

間違えやすい点

・代謝水をアウト側に入れたり、計算から除外したりすると答えがずれる(除外すると350mL/日、アウトに入れると100mL/日になる)。 ・不感蒸泄や代謝水に体重を掛け忘れると、単位がそろわず誤答になる。

水分出納の構成要素(成人の目安)

イン ・飲水:状況により大きく変動する ・食物中の水分:通常の食事でおよそ1,000mL/日前後 ・代謝水:約5mL/kg/日(成人で200〜300mL/日程度) ・輸液・経管栄養:入院患者では重要なイン項目 アウト ・尿:通常1,000〜1,500mL/日程度。老廃物(溶質)を排泄するために最低でも約400〜500mL/日は必要とされ、これを下回ると乏尿と呼ぶ ・不感蒸泄:皮膚からの蒸散と呼気中の水蒸気による、自覚されない水分喪失。約15mL/kg/日(成人で約900mL/日)。汗(感知できる発汗)は含まない ・便中水分:通常100〜200mL/日程度

代謝水とは

栄養素が酸化されてエネルギーを生み出す過程で生成される水である。例えばブドウ糖1分子(C6H12O6)は、解糖系・クエン酸回路・電子伝達系を経て完全に酸化されると、差し引き6分子のH2Oを生じる(C6H12O6 + 6O2 → 6CO2 + 6H2O)。脂質は重量当たりの代謝水の産生量が多い。

不感蒸泄が増える状況

・発熱(体温上昇に伴い増加し、1℃上昇ごとに約15%増えるとされる) ・高い室温、低湿度 ・頻呼吸、過換気 ・広範囲熱傷(皮膚のバリアが失われ大きく増加する)

臨床での使い方

実際の水分管理では、上記以外に発汗、下痢、嘔吐、ドレーンや胃管からの排液など「その他の喪失」も加わる。測定しきれない喪失があることを考慮し、維持輸液量や1日必要水分量はバランスがゼロよりやや多め(ややプラス)になるように設定することが多い。日々の体重変化も、水分出納を反映する簡便な指標として用いられる。

POINT

・水分出納バランス = イン(飲水+食事中の水分+代謝水+輸液)− アウト(尿+不感蒸泄+便中水分+その他の喪失) ・代謝水はイン側に数える(約5mL/kg/日) ・不感蒸泄はアウト側(約15mL/kg/日)で、発熱・熱傷・過換気で増える ・mL/kg/日で与えられた値は必ず体重を掛けて1日量に直してから足し引きする ・本問:イン2,450mL − アウト1,850mL = +600mL/日

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。