StudyMed医師国家試験

副腎皮質と性腺は「ステロイド工場」の兄弟―共通酵素から読み解く先天性副腎皮質過形成

第119回医師国家試験 F問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第119回 F問題 第6問

副腎皮質と共通のホルモン合成酵素が存在するのはどれか。

  1. a.視床下部
  2. b.下垂体
  3. c.副甲状腺
  4. d.副腎髄質
  5. e.性腺

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、副腎皮質とホルモン合成酵素を共有する臓器を選ぶ問題だ。着眼点は、各臓器がつくるホルモンを化学構造で分類すること。副腎皮質のホルモンは何からできているかな。
医学生医学生
コレステロールを材料にしたステロイドホルモンです。アルドステロン、コルチゾール、副腎アンドロゲンですね。
ドクタードクター
その通り。ではステロイドを作る臓器を探せばいい。まず視床下部と下垂体はどうだろう。
医学生医学生
下垂体はACTHを出して副腎皮質を刺激するので、関係が深そうに思えてしまいます。
ドクタードクター
調節の関係は深いけれど、合成酵素を共有しているわけではないんだ。視床下部のCRHやGnRH、下垂体のACTHやLHはすべてペプチドや糖タンパクで、遺伝子から翻訳された前駆体を切断して作られる。ACTHならPOMCという前駆体から切り出される。ステロイド合成酵素の出番はない。
医学生医学生
副甲状腺のPTHもアミノ酸がつながったペプチドなので、同じ理由で外れますね。
ドクタードクター
そうだね。ちなみに活性型ビタミンDはステロイド骨格を持つけれど、1α水酸化を担うのは腎臓で、副甲状腺ではない。では副腎髄質は?同じ副腎の中にあるけれど。
医学生医学生
組織学の実習で、皮質と髄質は由来が違うと習いました。髄質は神経堤由来でしたっけ。
ドクタードクター
よく覚えているね。皮質は中胚葉、髄質は神経堤由来で、髄質が作るのはチロシンから合成されるカテコールアミンだ。チロシン水酸化酵素やPNMTといった酵素を使うから、ステロイド合成酵素とは別系統。皮質から流れ込む高濃度のコルチゾールがPNMTを誘導するという機能的なつながりはあるけれど、酵素の共有ではない。
医学生医学生
残るのは性腺ですね。テストステロンやエストラジオールもステロイドです。
ドクタードクター
正解。ステロイドホルモンを作るのは副腎皮質と性腺、妊娠中は胎盤もだ。精巣のライディッヒ細胞や卵巣の莢膜細胞・顆粒膜細胞は、副腎皮質と同じ経路をたどる。具体的には、コレステロールをミトコンドリアに運ぶStAR、側鎖を切るCYP11A1、3β-HSD、17α-水酸化酵素/17,20-リアーゼのCYP17A1が共通なんだ。
医学生医学生
逆に副腎皮質にしかない酵素もあるんですか。
ドクタードクター
ある。21-水酸化酵素、11β-水酸化酵素、アルドステロン合成酵素は副腎皮質にほぼ特有だ。一方、テストステロンを作る17β-HSDの3型やエストロゲンを作るアロマターゼは主に性腺や末梢組織で働く。副腎皮質が直接出すアンドロゲンは主にDHEAやアンドロステンジオンだ。
医学生医学生
それって先天性副腎皮質過形成の病型の違いにつながりますよね。小児科の実習で、21-水酸化酵素欠損症の女児の外性器男性化について教わりました。
ドクタードクター
いいところに気づいた。21-水酸化酵素は副腎にしかないから、欠損するとコルチゾールが下がってACTHが上がり、行き場を失った前駆体が副腎アンドロゲンに流れる。性腺自体の機能は保たれるんだ。
医学生医学生
では17α-水酸化酵素欠損症では、性腺にも同じ酵素があるので性ステロイドが作れなくなる、ということですか。
ドクタードクター
その通り。副腎でも性腺でも性ステロイドができないので性腺機能低下となり、46,XYでは女性型外性器になる。さらに鉱質コルチコイドの前駆体がたまって高血圧と低K血症をきたす。3β-HSD欠損症やStAR異常によるリポイド副腎過形成も、副腎と性腺の両方が障害される。
医学生医学生
性腺症状が出るかどうかは、欠けた酵素が性腺にもあるかで説明できるんですね。丸暗記しなくて済みそうです。
ドクタードクター
まさにそこがこの問題の学びだ。合成経路の地図と酵素の分布をセットで覚えておけば、CAHの各病型の症状は自然と導けるよ。

まとめ

副腎皮質のホルモンはコレステロールから作られるステロイドホルモンであり、同じくステロイドを合成する性腺(精巣・卵巣、妊娠中は胎盤も)とは、StAR、CYP11A1、3β-HSD、CYP17A1といった合成酵素を共有しています。視床下部・下垂体・副甲状腺のホルモンはペプチド、副腎髄質はチロシン由来のカテコールアミンであり、ステロイド合成酵素は持ちません。一方、21-水酸化酵素や11β-水酸化酵素、アルドステロン合成酵素は副腎皮質にほぼ特有です。この酵素分布の違いから、21-水酸化酵素欠損症では性腺が保たれ、17α-水酸化酵素欠損症や3β-HSD欠損症では副腎と性腺の両方が障害されることが説明できます。ホルモンを化学構造で分類し、合成経路と酵素の分布を結びつけて理解することは、内分泌疾患全般を整理するうえでの基礎になります。

解答・解説

正解はeです

副腎皮質で作られる鉱質コルチコイド(アルドステロン)、糖質コルチコイド(コルチゾール)、副腎アンドロゲン(DHEA:デヒドロエピアンドロステロン、アンドロステンジオン)はいずれもステロイドホルモンであり、コレステロールを出発材料として一連の酵素反応で合成される。 本問では「副腎皮質と同じ合成酵素を持つ臓器」が問われている。そこでまず各選択肢の臓器が分泌するホルモンを化学構造で分類するとよい。 ・ペプチド(タンパク質)ホルモン:視床下部ホルモン(CRH、TRH、GnRH など)、下垂体ホルモン(ACTH、GH、TSH、LH、FSH、PRL、ADH、オキシトシン)、副甲状腺ホルモン(PTH)。これらは遺伝子の転写・翻訳と、その後の前駆体の切断(プロセシング)によって作られるため、ステロイド合成酵素は関与しない。 ・アミン(カテコールアミン):副腎髄質のアドレナリン、ノルアドレナリン、ドパミン。アミノ酸のチロシンから作られる。 ・ステロイドホルモン:副腎皮質ホルモンと、性腺(精巣・卵巣)の性ステロイド(テストステロン、エストラジオール、プロゲステロン)。 ステロイドホルモンを作るのは副腎皮質と性腺(妊娠中は胎盤も)だけであり、両者はコレステロールからアンドロゲンに至るまでの経路と酵素を共有している。したがって正解は性腺である。

選択肢考察

  1. ×a.  視床下部

    視床下部が分泌するCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)、ソマトスタチンなどの放出・抑制ホルモン、および神経分泌細胞で作られ下垂体後葉から放出されるバソプレシン・オキシトシンは、いずれもペプチドホルモンである。前駆体ペプチドを切断して作られ、副腎皮質のステロイド合成酵素は用いない。CRHは副腎皮質の機能を調節するが、合成酵素を共有しているわけではない点に注意する。

  2. ×b.  下垂体

    下垂体前葉はACTH(副腎皮質刺激ホルモン)、GH(成長ホルモン)、TSH(甲状腺刺激ホルモン)、PRL(プロラクチン)、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)を、後葉はADH(抗利尿ホルモン)とオキシトシンを分泌する。いずれもペプチドまたは糖タンパクホルモンであり、たとえばACTHは前駆体POMC(プロオピオメラノコルチン)がプロホルモン変換酵素で切断されて生じる。ステロイド合成酵素は持たない。

  3. ×c.  副甲状腺

    副甲状腺ホルモン(PTH)は84個のアミノ酸からなるペプチドホルモンで、11番染色体短腕上のPTH遺伝子から前駆体(pre-pro-PTH)として翻訳され、切断を経て分泌される。血中Ca濃度の調節に働くが、合成経路は副腎皮質のステロイド合成とは無関係である。なお、活性型ビタミンD(1,25-(OH)2D)はステロイド骨格を持つが、その活性化(1α水酸化)を担うのは腎臓であり副甲状腺ではない。

  4. ×d.  副腎髄質

    副腎髄質は副腎皮質と同じ臓器の内部にあるが、発生学的には神経堤由来であり(皮質は中胚葉由来)、分泌するのはカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドパミン)である。チロシン→ドパ→ドパミン→ノルアドレナリン→アドレナリンと、チロシン水酸化酵素、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素、ドパミンβ水酸化酵素、PNMT(フェニルエタノールアミンN-メチル基転移酵素)によって合成され、ステロイド合成酵素とは共通しない。皮質から流れ込む高濃度のコルチゾールがPNMTの発現を高めるという機能的な連関はあるが、合成酵素の共有ではない。

  5. ○e.  性腺

    精巣(ライディッヒ細胞)や卵巣(莢膜細胞・顆粒膜細胞)は、副腎皮質と同じくコレステロールからステロイドホルモンを作る。コレステロールのミトコンドリア内への輸送を担うStAR(ステロイド産生急性調節タンパク)、コレステロール側鎖切断酵素(CYP11A1)、3β-水酸化ステロイド脱水素酵素(3β-HSD)、17α-水酸化酵素/17,20-リアーゼ(CYP17A1)は副腎皮質と性腺に共通して存在する。そのため、これらの酵素の先天的欠損(リポイド副腎過形成、3β-HSD欠損症、17α-水酸化酵素欠損症)では、副腎皮質ホルモンと性ステロイドの両方の産生が障害される。性腺ではさらに17β-HSD(3型)によってテストステロンが、アロマターゼ(CYP19A1)によってエストロゲンが作られる。

ステロイドホルモン合成経路の概要

コレステロール →(StAR によるミトコンドリア内への輸送、CYP11A1)→ プレグネノロン プレグネノロンから先は大きく三つに分かれる。 ・鉱質コルチコイド系(球状層):プレグネノロン →(3β-HSD)→ プロゲステロン →(21-水酸化酵素:CYP21A2)→ 11-デオキシコルチコステロン →(11β-水酸化酵素:CYP11B1/アルドステロン合成酵素:CYP11B2)→ コルチコステロン → アルドステロン ・糖質コルチコイド系(束状層):17α-ヒドロキシプレグネノロン/17α-ヒドロキシプロゲステロン →(CYP21A2)→ 11-デオキシコルチゾール →(CYP11B1)→ コルチゾール ・アンドロゲン系(網状層・性腺):17α-ヒドロキシプレグネノロン →(CYP17A1 の17,20-リアーゼ活性)→ DHEA → アンドロステンジオン →(17β-HSD)→ テストステロン →(アロマターゼ)→ エストラジオール

臓器ごとの酵素分布

・副腎皮質と性腺に共通:StAR、CYP11A1、3β-HSD、CYP17A1 ・副腎皮質にほぼ特有:CYP21A2(21-水酸化酵素)、CYP11B1、CYP11B2 ・主に性腺(および末梢組織):17β-HSD3、アロマターゼ 副腎皮質が直接分泌するアンドロゲンは主にDHEA、DHEA-S、アンドロステンジオンであり、これらは脂肪組織などの末梢でテストステロンやエストロゲンに変換される。

先天性副腎皮質過形成(CAH)との関連

コルチゾール合成に関わる酵素の欠損で、コルチゾール低下→ACTH上昇→副腎皮質の過形成をきたす疾患群である。 ・21-水酸化酵素欠損症(最多):コルチゾール・アルドステロン低下、副腎アンドロゲン過剰(女児の外性器男性化、塩喪失)。性腺には影響しない。 ・11β-水酸化酵素欠損症:アンドロゲン過剰に加え、11-デオキシコルチコステロン蓄積による高血圧。 ・17α-水酸化酵素欠損症:副腎と性腺の両方で性ステロイドが作れず、性腺機能低下(46,XYでは女性型外性器)、鉱質コルチコイド前駆体蓄積による高血圧・低K血症。 ・3β-HSD欠損症、リポイド副腎過形成(StAR異常):副腎・性腺の両方のステロイド産生が障害される。 性腺症状の有無は「欠損した酵素が性腺にも存在するか」で説明できる。

POINT

・ステロイドホルモンを作る内分泌臓器は副腎皮質と性腺(および胎盤)である。 ・視床下部・下垂体・副甲状腺のホルモンはペプチド、副腎髄質はカテコールアミンで、ステロイド合成酵素を持たない。 ・副腎皮質と性腺に共通する酵素:StAR、CYP11A1、3β-HSD、CYP17A1。 ・21-水酸化酵素・11β-水酸化酵素・アルドステロン合成酵素は副腎皮質に特有。 ・共通酵素の欠損(17α-水酸化酵素欠損症など)では副腎と性腺の両方に異常が出る。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。