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病名でも一人暮らしでもない―介護予防サービスを受ける「制度上の根拠」とは

第118回医師国家試験 E問題 第40問

国試問題にチャレンジ

第118回 E問題 第40問

74歳の女性。①高血圧症で通院治療を受けている。1年前から変形性膝関節症と診断され,杖をついて屋外歩行をしている。②一人暮らしで,③年金生活をしている。食事摂取,着替え,排泄および入浴は自立している。④認知機能に問題はない。膝の痛みのため掃除と洗濯ができない。要介護認定は⑤要支援1である。介護予防ケアプランに基づいて予防給付(介護予防サービス)を受けている。  予防給付(介護予防サービス)を受ける根拠はどれか。

  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、介護保険の仕組みを問う問題だ。症例には病気、生活状況、収入、認知機能、認定結果といった情報が並んでいるけれど、問われているのは「予防給付を受けられる理由は制度上どれか」という一点。背景情報と制度上の要件を区別できるかがポイントだよ。
医学生医学生
膝が痛くて家事ができず、一人暮らしなので支援が必要、という流れで考えると、どれも理由に見えてしまいます。
ドクタードクター
そう感じるのは自然だね。ただ介護保険では、給付を受けるにはまず市町村に申請して、要介護認定(要支援認定を含む)を受ける必要がある。給付の種類を決めるのは、その認定で確定した区分なんだ。
医学生医学生
ということは、認定結果の「要支援1」が根拠ですか。
ドクタードクター
正解。要支援1・2と認定されれば予防給付、つまり介護予防サービスの対象になる。要介護1〜5なら介護給付だ。区分によって給付の種類がはっきり分かれているんだよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、要介護度は7段階と習いました。要支援が2段階、要介護が5段階ですね。
ドクタードクター
その通り。では他の情報がなぜ根拠にならないか見ていこう。高血圧症で通院していることはどうかな。
医学生医学生
病気があることが介護保険を使う前提のように思っていました。
ドクタードクター
65歳以上の第1号被保険者なら、原因を問わず要支援・要介護と認定されれば給付を受けられる。逆に病気があっても生活に支障がなければ認定されない。高血圧の通院は医療保険の話で、病名そのものは根拠にならないんだ。
医学生医学生
病名が関係するのは40〜64歳の第2号被保険者でしたよね。特定疾病が原因のときだけ給付を受けられる、と。
ドクタードクター
よく覚えているね。末期がん、関節リウマチ、脳血管疾患、初老期における認知症など16種類の特定疾病がある。両側の膝関節や股関節に著しい変形を伴う変形性関節症も含まれるけれど、この人は74歳だから第1号被保険者で、特定疾病かどうかは問われない。
医学生医学生
一人暮らしという点は、支援の必要性に直結する気がします。
ドクタードクター
ケアプランを考えるうえでは大事な情報だよ。でも世帯構成は給付の要件ではなく、家族と同居していても要支援と認定されれば予防給付を受けられる。年金生活という収入の状況も同じで、給付を受けられるかどうかは左右しない。所得が影響するのは、原則1割、一定以上の所得なら2割または3割という自己負担割合や保険料のほうだ。
医学生医学生
認知機能に問題がないというのは、要介護ではなく要支援になった理由になりそうですが。
ドクタードクター
鋭いね。認知機能は認定の調査や審査で考慮される要素で、同じくらいの介護の手間でも、認知機能の低下や病状の不安定さがあれば要支援2ではなく要介護1と判定されることがある。ただ、それは認定の判断材料であって、認知機能が正常なこと自体が給付の根拠になるわけではない。あくまで認定の結果が根拠なんだ。
医学生医学生
認定の流れも確認したいです。主治医意見書は医師が書くんですよね。
ドクタードクター
そう。申請のあと、認定調査員による訪問調査と主治医意見書の作成が行われ、コンピュータによる一次判定、保健・医療・福祉の専門家からなる介護認定審査会による二次判定を経て、市町村が認定する。結果は原則として申請から30日以内に通知される。研修医になると主治医意見書を書く機会は意外と多いから、ADLやIADLの状態を具体的に書けるようにしておくといい。
医学生医学生
この人はADLは自立していて、掃除や洗濯といったIADLに支障がある状態ですね。地域医療実習で訪問した高齢者のお宅でも、ヘルパーさんが家事を手伝っていました。
ドクタードクター
まさに典型的な要支援の像だね。予防給付のケアプランは主に地域包括支援センターが作成し、要介護のケアプランは主に居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作成する。また、予防給付には特別養護老人ホームなどの施設サービスは含まれない点も重要だ。
医学生医学生
要支援の人向けのサービスが、市町村の事業に移ったと聞いたことがあります。
ドクタードクター
訪問型・通所型サービスの一部は、地域支援事業の一つである介護予防・日常生活支援総合事業に移行しているね。総合事業は、認定で非該当だった人でも基本チェックリストで事業対象者と判断されれば利用できる。制度は改正が多い分野だから、最新の仕組みを確認する習慣をつけておこう。

まとめ

介護保険の予防給付(介護予防サービス)を受ける根拠は、市町村に申請して要介護認定を受け、要支援1または2と認定されたことです。要介護1〜5と認定されれば介護給付の対象となり、給付の種類は認定区分で決まります。疾患名、世帯構成、収入、認知機能の状態は生活背景や認定の判断材料にはなりますが、それ自体は受給の根拠ではなく、収入は自己負担割合や保険料に影響するにとどまります。65歳以上の第1号被保険者は原因を問わず給付対象となり、40〜64歳の第2号被保険者は16の特定疾病が原因の場合に限られます。主治医意見書の作成など医師も制度の一端を担うため、認定の流れと区分ごとの給付の違いを理解しておくことは臨床でも役立ちます。

解答・解説

正解はeです

症例の整理

74歳の女性で、高血圧症で通院中、1年前から変形性膝関節症があり杖を使って屋外を歩いている。一人暮らしで年金収入により生活している。食事、更衣、排泄、入浴といった基本的日常生活動作(ADL:activities of daily living)は自立しており、認知機能にも問題はない。一方、膝の痛みのため掃除や洗濯といった手段的日常生活動作(IADL:instrumental activities of daily living、家事や買い物など自立した生活に必要な応用的動作)に支障がある。要介護認定の結果は要支援1で、介護予防ケアプランに基づいて予防給付を受けている。

設問の考え方

問われているのは、この女性が介護保険の予防給付を受けられる「制度上の根拠」である。介護保険では、保険給付を受けるために、まず市町村に申請して要介護認定(要支援認定を含む)を受ける必要がある。認定の結果、要介護1〜5と判定されれば介護給付、要支援1・2と判定されれば予防給付の対象となる。つまり給付の種類を決めるのは、病名や家族構成、収入、認知機能の有無そのものではなく、市町村の認定によって確定した「要支援」という区分である。 本例では、病気(高血圧症・変形性膝関節症)、一人暮らし、年金生活、認知機能の状態はいずれも認定の判断材料や生活背景にはなり得るが、それ自体が予防給付の受給資格を与えるわけではない。予防給付を受ける直接の根拠は⑤の「要支援1」である。なお、74歳であることから本例は第1号被保険者(65歳以上)にあたり、原因疾患を問わず要支援・要介護状態と認定されれば給付を受けられる。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    高血圧症で通院しているという事実は医療保険による診療の対象であり、介護保険の予防給付の受給要件ではない。疾病があっても日常生活に支障がなければ要支援・要介護とは認定されず、逆に65歳以上の第1号被保険者では、どのような原因であっても認定を受ければ給付対象になる。疾患名そのものは根拠にならない。

  2. ×b.  ②

    一人暮らしであることは、生活支援の必要性を考えるうえで重要な背景情報であり、ケアプランの内容にも影響する。しかし世帯構成は介護保険の給付要件ではなく、同居家族がいても要支援と認定されれば予防給付を受けられる。したがって予防給付の根拠ではない。

  3. ×c.  ③

    年金生活かどうか、すなわち収入の状況は給付を受けられるかどうかを左右しない。所得は利用者負担割合(原則1割、一定以上の所得がある場合は2割または3割)や保険料額に影響するが、予防給付の対象者を決める要件ではない。低所得者への支援は生活保護など別の制度で扱われる。

  4. ×d.  ④

    認知機能に問題がないことは要介護認定の調査項目や審査判定で考慮される要素であり、要支援2と要介護1の振り分けでも認知機能の低下や状態の不安定さが判断材料になる。しかし、認知機能が正常であること自体が給付の根拠になるわけではない。あくまで認定の結果として「要支援」と判定されたことが根拠である。

  5. ○e.  ⑤

    介護保険の予防給付(介護予防サービス)は、市町村から要支援1または要支援2と認定された者が対象である。本例は申請に基づく要介護認定で要支援1と判定されているため、予防給付を受けることができる。要介護1〜5と判定された場合は介護給付(介護サービス)の対象となり、両者は認定区分によって明確に分けられている。

介護保険の被保険者

・第1号被保険者:65歳以上の者。原因を問わず、要介護・要支援と認定されれば給付を受けられる。 ・第2号被保険者:40〜64歳の医療保険加入者。加齢に伴う16種類の特定疾病(末期がん、関節リウマチ、脳血管疾患、初老期における認知症、両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症など)が原因で要介護・要支援状態となった場合に限り給付を受けられる。

要介護認定の流れ

1. 本人または家族などが市町村に申請する。 2. 認定調査員による訪問調査(心身の状況に関する調査)と、主治医意見書の作成が行われる。 3. 調査結果をもとにコンピュータによる一次判定を行う。 4. 保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会が二次判定を行う。 5. 市町村が要支援1・2、要介護1〜5、非該当(自立)のいずれかを認定する。原則として申請から30日以内に結果が通知される。

認定区分と給付

・要支援1・2 → 予防給付(介護予防サービス)。ケアプラン(介護予防サービス計画)は主に地域包括支援センターが作成する。 ・要介護1〜5 → 介護給付(介護サービス)。ケアプランは主に居宅介護支援事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成し、施設サービス(特別養護老人ホームなど)も利用対象となる。 ・予防給付には施設サービスは含まれない。 ・要支援者向けの訪問型・通所型サービスの一部は、現在は市町村が実施する介護予防・日常生活支援総合事業(地域支援事業の一つ)に移行している。総合事業は非該当でも基本チェックリストで事業対象者と判断されれば利用できる。

区分の目安

認定は7段階(要支援1・2、要介護1〜5)で、この順に介護の必要量が多くなる。要支援は「日常生活の基本動作はおおむね自立しているが、家事などの一部に支援が必要で、悪化予防が重要な状態」、要介護は「日常生活の基本動作にも介護が必要な状態」と理解するとよい。同程度の介護の手間であっても、認知機能の低下や病状の不安定さがある場合は要支援2ではなく要介護1と判定される。本例のようにADLは自立しIADLの一部に支障がある程度の状態は、典型的な要支援の像である。

POINT

・介護保険の給付を受けるには、市町村に申請して要介護認定(要支援認定)を受けることが必要である。 ・要支援1・2 → 予防給付(介護予防サービス)、要介護1〜5 → 介護給付。 ・予防給付には施設サービスが含まれない。 ・疾患名、世帯構成、収入、認知機能の状態そのものは給付の根拠ではない(収入は自己負担割合や保険料に影響する)。 ・第1号被保険者は65歳以上(原因不問)、第2号被保険者は40〜64歳(16特定疾病が原因の場合のみ)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。