StudyMed医師国家試験

「医師法」か「医療法」か―「人」と「場」で見分ける医療関連法規

第118回医師国家試験 C問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第118回 C問題 第4問

法律とその内容の組合せで誤っているのはどれか。

  1. a.医療法 ―― 無診察治療の禁止
  2. b.児童福祉法 ―― 小児慢性特定疾患の医療費助成
  3. c.労働基準法 ―― 産前産後休業
  4. d.がん対策基本法 ―― がん治療の均てん化
  5. e.労働者災害補償保険法 ―― 業務災害に関する給付

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、医療・福祉・労働に関わる法律と、その中身の対応を問う問題だ。公衆衛生では名前の似た法律が多く、とくに医師法と医療法の区別がよく狙われる。それぞれの法律が「誰を、何を対象にしているか」に注目して考えてみよう。
医学生医学生
正直、医師法と医療法はCBTの勉強のときからずっと混ざっています。どちらも医療のルールという印象しかなくて。
ドクタードクター
多くの人がつまずくところだね。コツはシンプルで、医師法は「医師という人」についての法律、医療法は「医療を提供する場と体制」についての法律、と整理することだ。
医学生医学生
医師法は医師免許や国家試験、臨床研修のことですよね。医療法は病院や診療所の話、という感じでしょうか。
ドクタードクター
その通り。医師法は免許や臨床研修に加えて、医師個人に課される義務を定めている。応招義務、無診察治療等の禁止、診断書や処方箋の交付義務、異状死体の届出義務、診療録の記載と5年間の保存などだ。一方の医療法は、病院・診療所・助産所の開設と管理、医療計画、医療安全、医療事故調査制度、特定機能病院や地域医療支援病院の制度などを扱う。
医学生医学生
そうすると、無診察治療の禁止は医師が自分で診察せずに治療や処方をしてはいけない、という医師個人の行為の話だから……医師法ですね。
ドクタードクター
正解。無診察治療等の禁止は医師法第20条の規定だ。医療法と組み合わせているものが誤りで、これが本問の答えになる。ほかの組合せも確認しておこう。小児慢性特定疾患の医療費助成はどうかな。
医学生医学生
子どもの医療費だから母子保健法かと思ったんですが、児童福祉法なんですね。
ドクタードクター
間違えやすいポイントだ。小児がんや慢性腎疾患、先天性代謝異常など、長期療養が必要な子どもの慢性疾患への医療費助成は児童福祉法に定められている。2015年の改正以降は「小児慢性特定疾病」と呼ばれているよ。母子保健法は母子健康手帳、妊婦健診、乳幼児健診、低体重児の届出、未熟児養育医療などが中心だ。
医学生医学生
大人の指定難病の医療費助成は難病法でしたよね。子どもと大人で根拠法が違うのは覚えておかないと。
ドクタードクター
よく整理できているね。次は産前産後休業だ。
医学生医学生
臨床実習で産科を回ったとき、妊婦さんが産休の話をしていました。働く人を守る法律だから労働基準法でいいと思います。
ドクタードクター
その通り。労働基準法は労働時間や賃金などの最低基準を定める法律で、出産予定日前6週間(多胎妊娠では14週間)は本人が請求すれば就業させてはならず、産後8週間は原則として就業させてはならないとしている。産後6週間を過ぎて本人が請求し、医師が支障なしと認めた業務なら就業できる、という例外も押さえておこう。
医学生医学生
がん治療の均てん化というのは、どこに住んでいても同じ質のがん医療を受けられるようにする、という意味でしたっけ。
ドクタードクター
そうだよ。がん対策基本法の柱の一つで、その仕組みとしてがん診療連携拠点病院が整備されている。ほかにも、がんの予防と早期発見、がん登録などの研究推進、がん対策推進基本計画の策定、がん患者の就労支援などを定めている。
医学生医学生
労災保険法は名前のとおり、仕事中のけがや病気に対する給付ですね。
ドクタードクター
そう。業務災害に対して療養補償給付や休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付などを支給する。業務災害だけでなく通勤災害への給付や、二次健康診断等給付も定めているよ。ちなみに産業医の選任や健康診断、ストレスチェックは労働安全衛生法なので、労働関係の3つの法律も区別しておこう。
医学生医学生
労働基準法、労働安全衛生法、労災保険法……これも似ていて混乱しそうです。
ドクタードクター
労働基準法は働く条件の最低基準、労働安全衛生法は職場の健康と安全を守る仕組み、労災保険法は起きてしまった災害への補償、と役割で分けると覚えやすい。医師の守秘義務が刑法の秘密漏示罪で定められている、という点もあわせて押さえておくといい。
医学生医学生
法律の名前から何となく推測するのではなく、「誰の何を規定するか」で整理するのが大事なんですね。
ドクタードクター
その通り。研修医になれば、診断書の交付や異状死体の届出、診療録の管理など、医師法の義務に日々直面する。電話で状態を聞いただけで処方してしまう、といった行為が無診察治療にあたらないかも常に意識しなければならない。法律は試験のためだけでなく、自分の診療を守るための知識でもあるんだ。

まとめ

無診察治療等の禁止は医師個人の行為を規制する規定であり、医療法ではなく医師法第20条に定められています。医師法は医師免許・臨床研修・応招義務・診断書や処方箋の交付・異状死体の届出・診療録の保存など「医師という人」を、医療法は病院・診療所の開設と管理、医療計画、医療安全、医療事故調査制度など「医療を提供する場と体制」を対象とすると整理すると区別しやすくなります。小児慢性特定疾病の医療費助成は児童福祉法、指定難病は難病法、産前産後休業(産前6週・多胎14週、産後8週)は労働基準法、がん医療の均てん化はがん対策基本法、業務災害・通勤災害の給付は労災保険法が根拠です。法律を「誰の何を規定するか」で整理する考え方は、国家試験の頻出分野を確実に得点するだけでなく、医師として日常診療で求められる法的義務を正しく果たすための土台になります。

解答・解説

正解はaです

本問は、医療・福祉・労働に関わる主な法律が「何を定めているか」を問う問題である。名前の似た法律、特に医師法と医療法の違いがポイントになる。

考え方

・医師法は「医師という人」についての法律である。医師免許、臨床研修、医師の義務(応招義務、無診察治療の禁止、異状死体の届出、処方箋の交付、診療録の記載・保存など)を定める。 ・医療法は「医療を提供する場と体制」についての法律である。病院・診療所・助産所の開設と管理、医療計画、医療安全、医療事故調査制度、インフォームド・コンセント(説明と同意)の努力義務などを定める。 「無診察治療の禁止」は医師個人の行為を規制するものなので医師法(第20条)の規定であり、医療法とする組合せは誤りである。他の4つはいずれも法律と内容が正しく対応している。

選択肢考察

  1. ○a.  医療法 ―― 無診察治療の禁止

    医師が自ら診察しないで治療をし、診断書や処方箋を交付することを禁じる「無診察治療等の禁止」は医師法第20条に定められている。医療法が扱うのは病院・診療所・助産所の開設と管理、医療計画、医療安全の確保、医療事故調査制度、特定機能病院・地域医療支援病院・臨床研究中核病院などの医療提供体制である。したがってこの組合せは誤りであり、本問の正解である。

  2. ×b.  児童福祉法 ―― 小児慢性特定疾患の医療費助成

    小児がん、慢性腎疾患、先天性代謝異常など、長期の療養が必要な小児の慢性疾患に対する医療費助成は児童福祉法に定められている(2015年の法改正後の名称は「小児慢性特定疾病医療費」)。児童福祉法は、すべての児童の健やかな育ちを保障する法律で、児童相談所、児童福祉施設(乳児院、保育所、児童養護施設、障害児入所施設など)、結核児童の療育の給付なども定めている。組合せは正しい。

  3. ×c.  労働基準法 ―― 産前産後休業

    労働基準法は、労働時間・休日・賃金などの最低基準を定める法律である。産前産後休業として、出産予定日前の6週間(多胎妊娠では14週間)は本人が請求すれば就業させてはならず、産後8週間は原則として就業させてはならない(産後6週間を過ぎて本人が請求し、医師が支障なしと認めた業務は可)と定めている。妊産婦の危険有害業務の制限、時間外労働の制限、育児時間、年少者の保護などの規定もある。組合せは正しい。

  4. ×d.  がん対策基本法 ―― がん治療の均てん化

    がん対策基本法(2006年制定、2007年施行)は、がん対策を総合的かつ計画的に進めるための法律である。「均てん化」とは、住んでいる地域に関わらず等しく質の高いがん医療を受けられるようにすることで、この法律の基本的施策の一つである。ほかに、がんの予防・早期発見の推進、がん登録などの研究の推進、がん対策推進基本計画の策定、がん患者の就労や学習の支援なども定めている。均てん化を進める仕組みとして、がん診療連携拠点病院が整備されている。組合せは正しい。

  5. ×e.  労働者災害補償保険法 ―― 業務災害に関する給付

    労働者災害補償保険法(労災保険法)は労災保険制度の根拠となる法律である。業務上の負傷・疾病・障害・死亡(業務災害)に対して、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付などを支給する。業務災害のほか、通勤災害に関する給付や二次健康診断等給付も定めている。組合せは正しい。

医療・保健・福祉・労働に関わる主な法律と主な規定

・医師法:医師免許、臨床研修、応招義務、無診察治療等の禁止、診断書等の交付義務、異状死体等の届出義務、処方箋の交付義務、療養指導義務、診療録の記載と保存(5年)、行政処分 ・医療法:病院・診療所・助産所の開設と管理、医療計画、医療安全支援センター、医療事故調査制度、特定機能病院・地域医療支援病院・臨床研究中核病院、インフォームド・コンセントの努力義務 ・刑法:医師の守秘義務(秘密漏示罪) ・児童福祉法:小児慢性特定疾病医療費の支給、児童相談所、児童福祉施設、結核児童の療育の給付、要保護児童の通告 ・母子保健法:母子健康手帳、妊婦健康診査、乳幼児健康診査(1歳6か月児健診、3歳児健診)、低体重児の届出、未熟児養育医療 ・障害者総合支援法:自立支援医療(更生医療、育成医療、精神通院医療) ・難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律):指定難病の特定医療費の支給 ・労働基準法:労働時間、産前産後休業、育児時間、妊産婦・年少者の就業制限、災害補償 ・労働安全衛生法:産業医の選任、健康診断、ストレスチェック、面接指導、作業環境測定 ・労働者災害補償保険法:業務災害・通勤災害に関する給付、二次健康診断等給付 ・がん対策基本法:がん対策推進基本計画、がん医療の均てん化、予防・早期発見の推進、がん患者の就労支援

医師法と医療法の区別のコツ

医師個人に課される義務・禁止事項は医師法、医療機関の施設・体制・医療提供の仕組みは医療法と整理するとまちがえにくい。

POINT

・無診察治療等の禁止は医師法第20条の規定であり、医療法ではない。 ・医師法=医師個人の資格と義務、医療法=医療機関と医療提供体制。 ・小児慢性特定疾病の医療費助成は児童福祉法、指定難病の医療費助成は難病法。 ・産前産後休業は労働基準法(産前6週・多胎14週、産後8週)。 ・がん医療の均てん化はがん対策基本法、業務災害・通勤災害の給付は労災保険法。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。