「健康」とは何か―WHO憲章の一語に込められた身体・精神・社会の三本柱
第119回医師国家試験 F問題 第25問
国試問題にチャレンジ
The constitution of the world health organization 〈WHO〉 is shown below. “Health is a state of complete physical, ( ) and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.” Select the correct answer from below to complete the sentence.
- a.mental
- b.spiritual
- c.emotional
- d.psychiatric
- e.psychological
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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ドクターまとめ
WHO憲章前文は、健康を「physical, mental and social well-being(身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態)であり、単に病気や虚弱がないことではない」と定義しており、空欄にはmentalが入ります。psychologicalやemotionalは意味が近くても定義の文言ではなく、psychiatricは精神医学という分野を表す語です。spiritualとdynamicを加える改正案は1998年に提案されましたが、採択されていない点がひっかけになりやすいところです。WHO憲章は1946年採択、1948年4月7日発効(世界保健デー)で、健康を基本的人権と位置づけたこと、さらにアルマ・アタ宣言やオタワ憲章へと続く流れも合わせて押さえておくと、公衆衛生分野の理解の土台になります。
解答・解説
正解はaです
問題文の和訳
世界保健機関〈WHO〉憲章を以下に示す。 「健康とは、身体的、( )および社会的に完全に良好な状態(well-being)であって、単に病気や虚弱がないということではない。」 下から正しいものを選び、文を完成させよ。
考え方
WHO憲章の前文に掲げられた健康の定義をそのまま問う問題である。原文は “Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.” であり、空欄には mental(精神的)が入る。 この定義の要点は、健康を「病気がない状態」という消極的なとらえ方ではなく、身体・精神・社会の3つの側面がいずれも満たされた積極的な状態として示した点にある。physical, mental, social の3語をひとまとまりで覚えておけば、似た意味の語が並んでいても迷わない。
選択肢考察
- ○a. mental
正しい。WHO憲章前文の健康の定義は physical, mental and social well-being であり、mental は日本語では「精神的」と訳される。わが国の公定訳でも「肉体的、精神的及び社会的」に完全に良好な状態と表現されている。
- ×b. spiritual
誤り。spiritual は「霊的」と訳される語である。1998年にWHO執行理事会で、健康の定義に spiritual と dynamic(動的)を加える改正案が提案され、日本でも「霊的」という訳語とともに報じられた。しかし翌1999年の世界保健総会では審議が見送られ、現在まで採択されていない。したがって現行の定義には含まれない。
- ×c. emotional
誤り。emotional は「感情的・情緒的」という意味で、精神面の一部を表すが、WHO憲章の健康の定義には用いられていない。
- ×d. psychiatric
誤り。psychiatric は「精神医学の、精神科の」という医学の分野・診療科を表す形容詞であり、人の状態としての健康を表す語ではない。定義にも含まれていない。
- ×e. psychological
誤り。psychological は「心理的、心理学的」という意味で、mental と意味は近いが、WHO憲章の定義で用いられている語ではない。
WHO憲章の成り立ち
WHO憲章は1946年にニューヨークで開かれた国際保健会議で採択・署名され、1948年4月7日に発効した。これによりWHOが正式に発足し、4月7日は世界保健デー(World Health Day)とされている。日本は1951年に加盟した。
前文の主な内容
健康の定義に続いて、「到達しうる最高水準の健康を享受することは、人種、宗教、政治的信念、経済的・社会的条件の差別なしに、すべての人間の基本的権利の一つである」という趣旨が述べられている。健康を人権として位置づけた点も重要である。
健康の定義改正の議論
1998年のWHO執行理事会で、“Health is a dynamic state of complete physical, mental, spiritual and social well-being …” とする改正案が提案された。dynamic は健康と疾病が連続したものであることを、spiritual は人間の尊厳や生きる意味といった側面を表現しようとしたものである。しかし1999年の世界保健総会では緊急性が低いなどの理由で審議されず、改正には至らなかった。
関連する概念
・アルマ・アタ宣言(1978年):プライマリヘルスケアの理念を提唱し、「2000年までにすべての人に健康を」を掲げた。 ・オタワ憲章(1986年):ヘルスプロモーションを「人々が自らの健康をコントロールし、改善できるようにするプロセス」と定義した。
POINT
・WHO憲章の健康の定義:physical, mental and social well-being(身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態)であり、単に病気や虚弱がないことではない。 ・spiritual(霊的)と dynamic(動的)を加える改正案は1998年に提案されたが、採択されていない。 ・WHO憲章は1946年採択、1948年4月7日発効(世界保健デー)。
