「重い病気」と「よくある病気」は違う―2歳児のけいれん、最多の原因は?
第118回医師国家試験 B問題 第3問
国試問題にチャレンジ
2歳児のけいれんの原因で最も頻度が高いのはどれか。
- a.急性脳症
- b.てんかん
- c.細菌性髄膜炎
- d.熱性けいれん
- e.憤怒けいれん〈泣き入りひきつけ〉
対話形式の解説
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ドクターまとめ
2歳前後の乳幼児のけいれんで最も頻度が高い原因は熱性けいれんで、日本では小児の7〜11%が経験するとされ、生後6か月〜5歳が好発年齢です。頻度の目安は、熱性けいれん>憤怒けいれん(4〜5%)>てんかん(約1%)>細菌性髄膜炎・急性脳症で、憤怒けいれんは泣いた後の呼吸停止による一過性低酸素が本態で自然に消失します。熱性けいれんは焦点性発作、15分以上の持続、24時間以内の反復のいずれかがあれば複雑型とし、約30%が再発しますが大部分はてんかんに移行しません。一方で、発熱とけいれんを伴う乳幼児では、頻度は低くても重篤な細菌性髄膜炎や急性脳症を必ず鑑別し、5分以上続く発作はベンゾジアゼピン系薬で治療を開始します。「よくあるもの」と「見逃してはいけないもの」を両立して考える姿勢は、小児救急診療の土台になります。
解答・解説
正解はdです
問われていること
乳幼児期、とくに2歳前後の子どもにみられるけいれんの原因として、どれが最も多いかを問う問題である。疾患の重症度ではなく「頻度」を比べていることに注意する。
考え方
乳幼児期の脳は未熟で、発熱をきっかけにけいれん発作を起こしやすい。このため、生後6か月から5歳(60か月)ごろまでの子どものけいれんでは、発熱に伴って起こり、ほかに明らかな原因が見つからない熱性けいれんが圧倒的に多い。日本では小児の7〜11%が一度は経験するとされ、10人に1人前後という高い頻度である。2歳はまさにその好発年齢の中心にあたる。 ほかの選択肢の頻度をおおまかに比べると、次のようになる。 ・てんかん:小児での有病率はおよそ0.5〜1%程度で、熱性けいれんの1/10前後。 ・憤怒けいれん(泣き入りひきつけ):生後6か月〜2、3歳の子どもの4〜5%程度で、熱性けいれんより少ない。また、本態は泣いた後の呼吸停止に伴う脳の一過性低酸素であり、狭い意味のけいれん性疾患とはいえない。 ・急性脳症、細菌性髄膜炎:重篤で見逃してはならない疾患だが、頻度は低い。 したがって、2歳児のけいれんの原因として最も頻度が高いのは熱性けいれんである。実際の診療では「発熱+けいれん」の子どもを熱性けいれんと考えつつも、髄膜炎や急性脳症など頻度は低くても重い疾患を見逃さないように評価する、という姿勢が大切である。
選択肢考察
- ×a. 急性脳症
急性脳症は、主にウイルス感染症(インフルエンザ、突発性発疹の原因となるヒトヘルペスウイルス6型など)をきっかけに、急激に意識障害やけいれんが出現し、広い範囲の脳機能が障害される病態である。脳そのものに病原体が侵入する脳炎とは異なり、炎症性サイトカインや代謝異常などを介して脳が障害されると考えられている。乳幼児、とくに数か月〜2歳前後に多いが、国内の年間発症数は数百人程度(400〜700人程度と推定)とまれである。重症例では死亡や神経学的後遺症を残しうるため重要な鑑別疾患だが、けいれんの原因として最多ではない。
- ×b. てんかん
てんかんは、明らかな誘因なしに反復するてんかん発作を特徴とする慢性の脳疾患である。全人口での有病率はおよそ1,000人あたり4〜9人程度、小児での有病率も1%前後(100人に1人弱)とされ、決してまれな病気ではない。小児期は発症が多い時期であり日常診療でもよく出会うが、頻度は熱性けいれん(小児の7〜11%)の1/10程度にとどまる。したがって2歳児のけいれん原因として最多ではない。
- ×c. 細菌性髄膜炎
細菌性髄膜炎は、細菌が髄膜(脳と脊髄を包む膜)に感染して起こる重篤な感染症で、発熱、けいれん、意識障害、大泉門膨隆などを呈しうる。国内の発症は年間1,500人程度と推定され、その多くが小児であった。しかしインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンと肺炎球菌結合型ワクチンが2013年に定期接種となって以降、小児の細菌性髄膜炎は大きく減少した。発熱とけいれんを伴う乳幼児では必ず鑑別すべき疾患だが、頻度は熱性けいれんよりはるかに低い。
- ○d. 熱性けいれん
熱性けいれんは、主に生後6か月から60か月(5歳)までの乳幼児に、通常38℃以上の発熱に伴って起こる発作性疾患で、髄膜炎などの中枢神経感染症、代謝異常、その他の明らかな発作の原因がないものをいう(以前に発熱のない発作を起こしたことがある場合は除く)。日本では小児の7〜11%が経験するとされ、乳幼児のけいれんの原因として最も多い。2歳は好発年齢の中心にあたる。多くは数分以内に自然に止まる全身性の発作で、予後は良好な良性疾患である。
- ×e. 憤怒けいれん〈泣き入りひきつけ〉
憤怒けいれんは、痛み・怒り・驚きなどで激しく泣いた後、呼気の状態で呼吸が止まり、顔色が悪くなって意識を失ったり、体が硬直・けいれんしたりする発作である。生後6か月から2〜3歳ごろの子どもの4〜5%にみられ、成長とともに自然に消失し、予後は良好である。てんかんではなく、抗てんかん薬は不要である(鉄欠乏性貧血を伴う例では鉄剤で発作が減ることがある)。好発年齢は本問の2歳と重なるが、頻度は熱性けいれんより低い。
熱性けいれんの整理
・定義:主に生後6〜60か月の乳幼児に、通常38℃以上の発熱に伴って起こる発作性疾患(けいれん性・非けいれん性を含む)で、中枢神経感染症、代謝異常、その他の明らかな発作原因がなく、無熱性発作の既往がないもの。 ・単純型と複雑型:次のいずれか1つ以上を満たすものを複雑型熱性けいれんとよぶ。(1) 焦点性発作(部分発作)の要素がある、(2) 発作が15分以上続く、(3) 一回の発熱のあいだ(おおむね24時間以内)に発作を繰り返す。これらがなければ単純型である。 ・再発:熱性けいれんを起こした子どもの約30%が再び熱性けいれんを起こす。1歳未満での発症、両親や同胞の熱性けいれん歴、短時間の発熱で発作が起きた、比較的低い体温で発作が起きた、などが再発の危険因子である。 ・てんかんへの移行:一般の子どもより移行率はやや高いが、大部分はてんかんに移行しない。複雑型の特徴や、発症前からの神経学的異常、両親・同胞のてんかん歴などが危険因子となる。
乳幼児のけいれんで見逃してはいけない疾患
発熱とけいれんを伴う乳幼児では、熱性けいれんとして経過観察してよいかを判断する前に、次の疾患を考える。 ・細菌性髄膜炎・脳炎:項部硬直(乳児では目立たないことが多い)、大泉門膨隆、意識障害の遷延など。疑えば髄液検査を行う。 ・急性脳症:発作後の意識障害が長く続く、発作が重積するなど。国内ではけいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)、可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS)、急性壊死性脳症(ANE)などが知られる。 ・電解質異常(低ナトリウム血症、低カルシウム血症)、低血糖など代謝性の原因。
けいれん重積への初期対応
発作が5分以上続く場合は、自然に止まりにくくなるため、てんかん重積状態とみなして治療を始めることが推奨されている。発作が30分以上続くと神経学的後遺症の危険が高まる。第一選択はベンゾジアゼピン系薬であり、静脈路が確保できればジアゼパムやミダゾラム、ロラゼパムの静注を行う。静脈路の確保が難しい場面では、ミダゾラム口腔用液(頬の内側の粘膜に注入して吸収させる製剤。日本では2020年に発売)が使用でき、病院外での早期治療に役立つ。
POINT
・乳幼児(とくに6か月〜5歳)のけいれんの原因で最多は熱性けいれんで、小児の7〜11%が経験する。 ・頻度の目安:熱性けいれん(7〜11%)>憤怒けいれん(4〜5%)>てんかん(約1%)>細菌性髄膜炎・急性脳症(まれ)。 ・複雑型熱性けいれん:焦点性発作、15分以上の持続、24時間以内の反復のいずれか。 ・発熱+けいれんでは、頻度の低い細菌性髄膜炎・急性脳症を必ず鑑別する。 ・憤怒けいれんはてんかんではなく、自然消失する予後良好な発作。 ・けいれんが5分以上続けば重積として治療を開始する(第一選択はベンゾジアゼピン系薬)。
