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免許は医師法、守秘義務は刑法―「人の法律」と「場の法律」で解く医事法規

第117回医師国家試験 F問題 第34問

国試問題にチャレンジ

第117回 F問題 第34問

医師法に規定されているのはどれか。

  1. a.医師の免許
  2. b.医師の守秘義務
  3. c.医療機関の種類
  4. d.医療の安全の確保
  5. e.特定機能病院の要件

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医事法規の問題だ。医療に関わる法律はたくさんあるけれど、まず「人(資格と業務)」を定める法律なのか、「場(医療機関と医療提供体制)」を定める法律なのかで分けて考えると、ぐっと整理しやすくなる。医師法はどちらだと思う?
医学生医学生
名前からして、医師という「人」についての法律ですよね。公衆衛生の講義で、医師法と医療法の区別がややこしかった記憶があります。
ドクタードクター
その通り。医師法は医師という資格、つまり身分を定める法律だ。免許の要件、免許を与えない欠格事由、医籍への登録、免許取消しや医業停止の処分、医師国家試験、臨床研修。そして医師個人に課される義務が規定されている。
医学生医学生
じゃあ、まさに医師の免許が医師法の中心なんですね。「国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない」という条文を見たことがあります。
ドクタードクター
よく覚えているね。それが医師法第2条で、今回の正解は医師の免許だ。では、迷いやすい選択肢を見ていこう。医師の守秘義務はどうかな。
医学生医学生
医師の義務なんだから医師法……と思ったんですが、これはひっかけでしょうか。
ドクタードクター
そう、ここが最頻出のひっかけだ。医師の守秘義務は医師法ではなく、刑法第134条の秘密漏示罪に規定されている。医師・薬剤師・助産師・弁護士などが、正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らすと処罰される。
医学生医学生
看護師さんも同じ刑法なんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。看護師・保健師・准看護師の守秘義務は、保健師助産師看護師法に規定されている。助産師だけは刑法側、というのも混乱しやすいポイントだ。同じ医療職でも根拠法が違うんだよ。
医学生医学生
残りの医療機関の種類、医療の安全の確保、特定機能病院の要件は、全部「場」の話に見えます。
ドクタードクター
その感覚で正しい。これらはすべて医療法の規定だ。病院は患者20人以上の入院施設をもつもの、診療所は入院施設なしか19人以下のもの、という定義は医療法にある。医療安全の確保も医療法で、病院や診療所の管理者に安全管理体制の整備が義務付けられているし、医療事故調査制度も医療法に基づいて運用されている。
医学生医学生
特定機能病院は大学病院の本院とかですよね。臨床実習で回っている病院がまさにそうです。
ドクタードクター
そうだね。高度な医療の提供、高度な医療技術の開発・評価、高度な医療に関する研修を行う能力などを要件に、厚生労働大臣が承認する。これも医療機関の承認要件だから医療法だ。地域医療支援病院や臨床研究中核病院も同じ枠組みに入る。
医学生医学生
整理すると、医師個人の資格と義務が医師法、医療機関と体制が医療法、守秘義務は例外的に刑法、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。ここで医師法に定められた医師の義務もまとめておこう。診察治療の求めを正当な事由なく拒めない応招義務、診断書や死亡診断書などの交付義務、自ら診察せずに治療や診断書交付をしてはならない無診察治療等の禁止、処方箋の交付義務、療養方法などの指導義務、そして診療録の記載と5年間の保存義務がある。
医学生医学生
異状死体の届出も医師法でしたよね。CBTの勉強で「24時間以内」と覚えました。
ドクタードクター
その通り。死体または妊娠4月以上の死産児を検案して異状を認めたら、24時間以内に所轄警察署へ届け出る。届け出先を保健所と間違えやすいから注意しよう。研修医になると、当直で死亡診断書を書いたり、異状死かどうかを判断したりする場面が実際にある。法律の知識は試験のためだけでなく、自分の身を守り、患者さんや家族に誠実に対応するための土台なんだ。
医学生医学生
インフォームド・コンセントはどちらの法律ですか。
ドクタードクター
医療法に、医療の担い手が適切な説明を行い理解を得るよう努める、という努力義務として書かれている。医療提供の理念や情報提供の一環として医療法側にある、と覚えておくといい。

まとめ

医事法規は、医師という「人」の資格と義務を定める医師法と、医療を提供する「場」と体制を定める医療法に分けて整理すると理解しやすくなります。医師の免許、国家試験、臨床研修、応招義務、診断書交付義務、異状死体の24時間以内の所轄警察署への届出、診療録の記載と5年保存は医師法の規定です。一方、病院・診療所の定義、医療安全の確保、特定機能病院の承認要件、インフォームド・コンセントの努力義務は医療法に置かれています。医師の守秘義務は医師法ではなく刑法の秘密漏示罪に規定され、看護師などは保健師助産師看護師法に定められている点が頻出のひっかけです。根拠法を正しく知ることは、研修医として日々の診療で法的責任を果たすための基盤になります。

解答・解説

正解はaです

医療に関する主な法律は、「人(医療職の資格と業務)」を定める身分法と、「場(医療機関・医療提供体制)」を定める法律に大きく分けて整理すると理解しやすい。 医師法は医師という資格(身分)について定める法律であり、免許の要件・欠格事由・医籍登録、医師国家試験、臨床研修、医師の業務独占・名称独占、そして応招義務や診療録の記載・保存義務などの医師個人に課される義務を規定している。 一方、医療法は医療を提供する「場」と体制について定める法律であり、病院・診療所・助産所の定義、特定機能病院や地域医療支援病院などの承認要件、医療安全の確保、医療計画などを規定している。 また、医師の守秘義務は医師法ではなく刑法(秘密漏示罪)に規定されている点がよく問われる。 本問は、各選択肢が「医師個人の資格・義務」なのか「医療機関・医療提供体制」なのか、あるいは他の法律に基づくものなのかを見分ければ解ける。医師の免許だけが医師法の規定事項である。

選択肢考察

  1. ○a.  医師の免許

    医師法第2条は「医師になろうとする者は、医師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない」と定めている。このほか、免許を与えない場合(絶対的欠格事由・相対的欠格事由)、医籍への登録、免許取消しや医業停止などの行政処分、医師国家試験、臨床研修も医師法に規定されている。医師という資格そのものを定める事項であり、医師法の中心的な内容である。

  2. ×b.  医師の守秘義務

    医師の守秘義務は医師法には規定されておらず、刑法第134条(秘密漏示罪)に定められている。医師・薬剤師・助産師・弁護士などが、正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らした場合に処罰される(6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金。2025年の刑法改正前は「懲役」とされていた)。なお、看護師・保健師・准看護師の守秘義務は保健師助産師看護師法に規定されており、同じ医療職でも根拠法が異なる点に注意する。

  3. ×c.  医療機関の種類

    病院(患者20人以上の入院施設を有するもの)、診療所(入院施設なし、または19人以下の入院施設を有するもの)、助産所といった医療機関の種類と定義は医療法に規定されている。さらに医療法は、一定の要件を満たす病院を特定機能病院・地域医療支援病院・臨床研究中核病院として承認する仕組みも定めている。医療を提供する「場」に関する事項であり、医師法の規定ではない。

  4. ×d.  医療の安全の確保

    医療の安全の確保は医療法に規定されている。2006年(第五次医療法改正)で医療安全の確保が明文化され、病院・診療所などの管理者に医療安全管理体制(指針の整備、医療安全管理委員会の開催、職員研修、事故報告体制など)の整備が義務付けられた。2015年からは医療事故調査制度(医療事故調査・支援センターへの報告と院内調査)も医療法に基づいて運用されている。医療機関の管理者に課される体制整備の義務であり、医師法の規定ではない。

  5. ×e.  特定機能病院の要件

    特定機能病院は、1992年の第二次医療法改正で創設され(1993年施行)、医療法に規定された制度である。高度な医療の提供、高度な医療技術の開発・評価、高度な医療に関する研修を行う能力を備えることなどが要件とされ、厚生労働大臣が承認する。大学病院本院などが該当する。医療機関の承認要件であり、医師法の規定ではない。

医師法の主な規定

・免許:国家試験合格と厚生労働大臣の免許、欠格事由、医籍登録、免許取消し・医業停止などの処分 ・医師国家試験、臨床研修(診療に従事しようとする医師は2年以上の臨床研修を受けなければならない) ・業務独占(医師でなければ医業をしてはならない)と名称独占 ・医師の義務  応招義務:診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合、正当な事由がなければ拒んではならない  診断書・出生証明書・死亡診断書などの交付義務:正当な事由なく拒んではならない  無診察治療等の禁止:自ら診察せずに治療・診断書や処方箋の交付をしてはならない  異状死体等の届出義務:死体または妊娠4月以上の死産児を検案して異状を認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出る  処方箋の交付義務  療養方法等の指導義務  診療録の記載と保存義務(保存期間は5年)

医療法の主な規定

・医療提供の理念、医療に関する情報提供(インフォームド・コンセントの努力義務を含む) ・病院・診療所・助産所の定義、開設・管理 ・特定機能病院、地域医療支援病院、臨床研究中核病院の承認要件 ・医療安全の確保、医療事故調査制度 ・医療計画、地域医療構想

守秘義務の根拠法

・医師・薬剤師・助産師:刑法(秘密漏示罪) ・保健師・看護師・准看護師:保健師助産師看護師法 ・診療放射線技師、臨床検査技師、理学療法士など:それぞれの資格法

POINT

・医師法は「医師個人(資格と義務)」、医療法は「医療機関・医療提供体制(場)」を定める。 ・医師の免許、国家試験、臨床研修、応招義務、診断書交付義務、異状死体の届出(24時間以内・所轄警察署)、診療録の記載と保存(5年)は医師法。 ・医師の守秘義務は医師法ではなく刑法(秘密漏示罪)に規定。 ・医療機関の種類、医療安全の確保、特定機能病院の要件は医療法。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。