StudyMed医師国家試験

介護保険の「骨格」をつかむ―誰が運営し、誰が認定し、何を給付するのか

第117回医師国家試験 C問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第117回 C問題 第13問

介護保険について正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.自己負担率は5割である。
  2. b.福祉事務所が認定を行う。
  3. c.介護予防サービスが含まれる。
  4. d.保険料は市町村によって異なる。
  5. e.高齢者医療確保法で規定されている。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は介護保険制度の基本を問う問題だ。細かい数字の暗記よりも、根拠法、保険者、認定、給付、負担、保険料という制度の「骨格」を押さえることが大切だよ。まず、介護保険の保険者は誰か覚えているかな。
医学生医学生
国民健康保険と同じように、市町村だったと思います。
ドクタードクター
正解。東京23区の特別区も含めて、住民に最も身近な自治体が保険者になっている。これが分かると、いくつかの選択肢は自然に判断できるんだ。たとえば保険料について考えてみよう。
医学生医学生
保険者が市町村ごとなら、保険料も市町村ごとに違う、ということでしょうか。
ドクタードクター
その通り。65歳以上の第1号被保険者の保険料は、各市町村が地域の高齢化の程度やサービス基盤から見込まれる介護サービス量に応じて、3年ごとの介護保険事業計画に合わせて基準額を決める。そこに所得段階が加わるから、同じ所得でも住む市町村によって保険料が違ってくるんだ。
医学生医学生
40〜64歳の第2号被保険者の保険料はどうなっていますか。
ドクタードクター
第2号被保険者は医療保険の加入者で、介護保険料は医療保険の保険料と一緒に徴収される。ちなみに第2号被保険者が給付を受けられるのは、末期がんや関節リウマチ、脳血管疾患など、加齢に伴う16種類の特定疾病が原因の場合に限られる点も頻出だよ。
医学生医学生
では認定は誰がするんですか。福祉事務所というのは違和感があったんですが。
ドクタードクター
その違和感は正しい。要介護・要支援の認定を行うのも保険者である市町村だ。申請を受けると訪問調査が行われ、その結果と主治医意見書をもとにコンピュータで一次判定をする。続いて保健・医療・福祉の専門家からなる介護認定審査会が二次判定を行い、それに基づいて市町村が認定する。
医学生医学生
福祉事務所は生活保護の窓口というイメージです。
ドクタードクター
そうだね。福祉事務所は生活保護や児童・母子・障害者福祉などを担う機関で、要介護認定には関わらない。次は給付の中身だ。介護保険で受けられるのは、要介護者向けの介護サービスだけだと思うかな。
医学生医学生
要支援の人も対象なので、予防的なサービスもありそうです。総合診療科の実習で、要支援の方が通所リハビリで体操をしていると聞きました。
ドクタードクター
いいエピソードだね。給付には要介護1〜5の人への介護給付と、要支援1・2の人への予防給付がある。予防給付で提供される介護予防訪問看護や介護予防通所リハビリテーションなどが介護予防サービスで、要介護状態になることや状態の悪化を防ぐことが目的だ。だから介護予防サービスが含まれる、は正しい。さらに市町村は地域支援事業として介護予防・日常生活支援総合事業も行っている。
医学生医学生
自己負担は医療保険と同じ3割くらいだと思っていました。少なくとも5割ではないですよね。
ドクタードクター
5割という区分は存在しない。介護保険の利用者負担は原則1割で、一定以上の所得があれば2割、現役並み所得なら3割になる。負担が高額になったときは高額介護サービス費で上限を超えた分が払い戻される。医療保険の負担割合と混同しやすいから注意しよう。
医学生医学生
根拠法は高齢者医療確保法ではなく、そのまま介護保険法ですよね。
ドクタードクター
そう。介護保険法は1997年に制定され、2000年に施行された。高齢者医療確保法は後期高齢者医療制度や、40〜74歳を対象とする特定健康診査・特定保健指導を定める法律だ。特別養護老人ホームなどの老人福祉施設は老人福祉法、という具合に、高齢者に関わる法律は役割で整理しておくといい。
医学生医学生
まとめると、正しいのは介護予防サービスが含まれることと、保険料が市町村によって異なること、ですね。
ドクタードクター
その通り。最後に臨床とのつながりを話しておこう。医師が必ず関わるのが主治医意見書だ。認定の判定材料になるから、病名だけでなく、認知機能や日常生活での困りごと、介護の手間を具体的に書くことが、患者さんが適切なサービスを受けられるかどうかに直結する。
医学生医学生
退院支援カンファレンスで、ケアマネジャーさんが意見書の内容を参考にしていたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそれだね。要介護者のケアプランは主にケアマネジャーが、要支援者の介護予防ケアプランは地域包括支援センターが中心になって作る。財源は保険料と公費が半分ずつという点も合わせて押さえておこう。制度を知っておくと、退院後の生活まで見据えた診療ができるようになるよ。

まとめ

介護保険制度は介護保険法に基づく社会保険で、保険者は市町村(特別区を含む)です。そのため要介護・要支援の認定は、訪問調査と主治医意見書をもとにした一次判定、介護認定審査会による二次判定を経て市町村が行い、第1号被保険者の保険料も市町村ごとに異なります。給付には要介護者への介護給付と要支援者への予防給付(介護予防サービス)があり、利用者負担は原則1割(所得により2割・3割)です。高齢者医療確保法は後期高齢者医療制度や特定健診を、老人福祉法は老人福祉施設を規定するなど、関連法を役割で区別することが得点につながります。医師は主治医意見書を通じて認定に直接関わるため、制度の骨格を理解することは患者の退院後の生活を支える診療にも役立ちます。

解答・解説

正解はc, dです

問われていること

介護保険制度の基本的な仕組み(根拠法、保険者、被保険者、要介護認定、給付の種類、利用者負担、保険料)についての知識を問う問題である。

考え方

介護保険制度は、高齢化と家族介護の限界を背景に、介護を社会全体で支える仕組みとして介護保険法(1997 年制定、2000 年施行)により創設された社会保険である。押さえるべき骨格は次のとおりである。 ・保険者:市町村および特別区(東京 23 区)。住民に最も身近な自治体が運営する。 ・被保険者:65 歳以上の第 1 号被保険者と、40〜64 歳の医療保険加入者である第 2 号被保険者。 ・認定:市町村が介護認定審査会の審査・判定に基づいて要介護・要支援の認定を行う。 ・給付:要介護者への介護給付と、要支援者への予防給付(介護予防サービス)がある。 ・利用者負担:原則 1 割(一定以上の所得があれば 2 割または 3 割)。 ・保険料:第 1 号被保険者の保険料は市町村ごとに設定される。 この骨格に照らすと、介護予防サービスを含むこと、保険料が市町村によって異なることの 2 つが正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  自己負担率は5割である。

    誤り。介護サービス利用時の自己負担は原則 1 割である。一定以上の所得がある第 1 号被保険者は 2 割、特に所得の高い者(現役並み所得者)は 3 割となる。5 割負担という区分は存在しない。なお、自己負担が高額になった場合には高額介護サービス費により上限を超えた分が払い戻される。

  2. ×b.  福祉事務所が認定を行う。

    誤り。要介護・要支援の認定を行うのは保険者である市町村(特別区を含む)である。本人や家族の申請を受けて市町村が訪問調査を行い、その結果と主治医意見書をもとにコンピュータによる一次判定を行う。続いて、保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会が二次判定(審査・判定)を行い、その結果に基づいて市町村が認定する。福祉事務所は生活保護や児童・母子・障害者福祉などの業務を担う機関であり、要介護認定には関与しない。

  3. ○c.  介護予防サービスが含まれる。

    正しい。介護保険の給付には、要介護 1〜5 の者に対する介護給付と、要支援 1・2 の者に対する予防給付がある。予防給付で提供される介護予防サービス(介護予防訪問看護、介護予防通所リハビリテーションなど)は、心身機能の低下を防ぎ、要介護状態になることや状態の悪化を予防することを目的としている。さらに、市町村が行う地域支援事業として介護予防・日常生活支援総合事業も位置づけられている。

  4. ○d.  保険料は市町村によって異なる。

    正しい。介護保険の保険者は市町村であり、第 1 号被保険者(65 歳以上)の保険料は、各市町村がその地域の介護サービスの見込み量(高齢化の程度やサービス基盤など)に応じて 3 年ごとの介護保険事業計画に合わせて基準額を定める。そのうえで本人や世帯の所得に応じて段階的に設定されるため、同じ所得でも住む市町村によって保険料が異なる。なお、第 2 号被保険者(40〜64 歳)の保険料は、加入している医療保険の保険料と一括して徴収される。

  5. ×e.  高齢者医療確保法で規定されている。

    誤り。介護保険制度の根拠法は介護保険法である。高齢者医療確保法(高齢者の医療の確保に関する法律)は、75 歳以上を対象とする後期高齢者医療制度や、40〜74 歳を対象とする特定健康診査・特定保健指導などを規定する法律であり、介護保険とは別の制度である。

介護保険制度の概要

・根拠法:介護保険法(2000 年 4 月施行) ・保険者:市町村・特別区 ・財源:保険料 50%と公費 50%(国・都道府県・市町村)で賄われ、利用者負担はこれとは別に支払う。

被保険者

・第 1 号被保険者:65 歳以上の者。原因を問わず要介護・要支援状態であれば給付を受けられる。保険料は原則として年金から天引き(特別徴収)される。 ・第 2 号被保険者:40〜64 歳の医療保険加入者。給付は、加齢に伴う 16 種類の特定疾病(末期がん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、脳血管疾患、初老期における認知症など)が原因で要介護・要支援となった場合に限られる。

要介護認定の流れ

申請(市町村)→ 認定調査(訪問調査)+主治医意見書 → 一次判定(コンピュータ)→ 介護認定審査会による二次判定 → 市町村が認定(要支援 1・2、要介護 1〜5、非該当)

給付とケアマネジメント

・要介護 1〜5:介護給付(居宅サービス、施設サービス、地域密着型サービス)。ケアプランは居宅介護支援事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成することが多い。 ・要支援 1・2:予防給付(介護予防サービス)。介護予防ケアプランは地域包括支援センターが中心となって作成する。 ・非該当者などを含め、市町村は地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業など)を行う。

利用者負担

原則 1 割、一定以上の所得で 2 割、現役並み所得で 3 割。月ごとの負担上限を超えた分は高額介護サービス費として支給される。

関連する法律との区別

・介護保険法:介護保険制度 ・高齢者医療確保法:後期高齢者医療制度、特定健康診査・特定保健指導 ・老人福祉法:特別養護老人ホームなどの老人福祉施設、措置制度

POINT

・介護保険の根拠法は介護保険法、保険者は市町村(特別区を含む)。 ・要介護認定は介護認定審査会の判定に基づき市町村が行う。 ・利用者負担は原則 1 割(所得により 2 割・3 割)。 ・給付は要介護者への介護給付と、要支援者への予防給付(介護予防サービス)。 ・第 1 号被保険者の保険料は市町村ごとに異なる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。