StudyMed医師国家試験

パリパリ、ゴロゴロ、ヒューヒュー―副雑音を「音の出どころ」で聴き分ける

第116回医師国家試験 E問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第116回 E問題 第15問

疾患と聴診所見の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.COPD ―― stridor
  2. b.胸膜炎 ―― rhonchi
  3. c.石綿肺 ―― fine crackles
  4. d.肺水腫 ―― Hamman’s crunch
  5. e.気管支喘息 ―― friction rub

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、疾患と聴診所見の組合せを問う問題だ。副雑音の名前を丸暗記するより、「その音が胸のどこで、どういう仕組みで鳴っているか」を考えると、組合せの正誤は自然に見えてくる。まずは副雑音の分類から整理しよう。
医学生医学生
OSCEの前に聴診シミュレータで練習しました。連続性ラ音と断続性ラ音に分けるんでしたよね。
ドクタードクター
そう。肺や気道から出る音をラ音と呼び、一定時間続く楽音のような連続性ラ音と、短く途切れる破裂音の集まりである断続性ラ音に分ける。連続性ラ音は狭くなった気道を空気が通り抜けて鳴る音で、高調な笛のようなwheezes、低調でいびきのようなrhonchiがある。
医学生医学生
断続性のほうは、fine cracklesとcoarse cracklesですね。でも、どちらも「プツプツ」していて、違いがいまひとつつかめません。
ドクタードクター
そこは仕組みで区別するといい。fine cracklesは捻髪音とも呼ばれ、細かく高調な「パリパリ」という音で、吸気の後半に聴こえる。線維化で硬くなった肺では、呼気の間に末梢の気道や肺胞がつぶれていて、吸気の終わりに一気に再開放される。そのときの音なんだ。一方coarse cracklesは水泡音で、気道や肺胞に溜まった液体の中を空気が通過する、粗く低調な「ブツブツ」という音だ。
医学生医学生
硬い肺が開く音か、水の中を空気が通る音か、という違いなんですね。そうすると、石綿肺は間質の線維化だからfine cracklesでしょうか。
ドクタードクター
その通り、それが正解の組合せだ。石綿肺はアスベストの長期吸入で起こる塵肺で、下葉の胸膜直下を中心にびまん性の間質性肺線維症を来す。特発性肺線維症などの間質性肺疾患と同じく、背側の肺底部でfine cracklesがよく聴こえる。では、ほかの組合せも確認しよう。COPDとstridorはどうかな。
医学生医学生
COPDも呼吸が苦しくてゼーゼーするので、stridorが聴こえてもおかしくない気がしました。
ドクタードクター
そこが引っかけだね。stridorは胸郭外の上気道、つまり喉頭や頸部の気管が狭くなったときに、主に吸気時に聴こえる高調な喘鳴だ。気道異物、急性喉頭蓋炎、クループ、アナフィラキシーによる喉頭浮腫などで起こる。COPDは末梢気道と肺胞の病気で胸郭内の病変だから、呼吸音の減弱や呼気延長、wheezesやrhonchiは聴かれても、stridorは特徴的ではない。
医学生医学生
胸膜炎とrhonchiも、何となく合いそうに見えてしまいました。
ドクタードクター
rhonchiは太い気道に分泌物が溜まったり、気道が狭くなったりして生じる低調な連続音で、COPDや気管支拡張症、気管支炎などで聴かれる。咳で痰を出すと変化するのも特徴だ。胸膜炎で特徴的なのは、炎症で表面が粗くなった臓側胸膜と壁側胸膜がこすれ合う胸膜摩擦音、つまりfriction rubなんだ。
医学生医学生
ということは、気管支喘息とfriction rubの組合せは、胸膜の音と気道の音を入れ替えたものですね。喘息ならwheezesです。
ドクタードクター
よく気づいたね。喘息では、平滑筋の収縮や炎症・浮腫で狭くなった気道を空気が通り、主に呼気時に高調なwheezesが聴かれる。なおfriction rubは心膜同士がこすれる心膜摩擦音を指すこともあり、心膜炎で聴かれる。残る肺水腫とHamman's crunchはどうだろう。
医学生医学生
Hamman's crunchは名前は覚えているんですが、どんな病態の音だったか自信がありません。
ドクタードクター
Hamman's crunchは縦隔気腫、つまり縦隔に空気が漏れ出た状態で、心拍に同期して胸骨左縁付近に聴かれる「バリバリ」という音だ。呼吸ではなく心拍に合わせて鳴るのがポイント。肺水腫では、さっき話したcoarse cracklesが聴かれる。
医学生医学生
整理すると、上気道の狭窄はstridor、細い気道はwheezes、太い気道の分泌物はrhonchi、硬い肺はfine crackles、水っぽい肺はcoarse crackles、胸膜はfriction rub、縦隔の空気はHamman's crunch、ですね。
ドクタードクター
完璧だ。臨床での注意点も押さえておこう。胸膜炎で胸水が多量に溜まると、胸膜同士が離れて摩擦音は消え、呼吸音が減弱する。摩擦音が消えたから良くなったとは限らないんだ。またstridorは聴診器なしでも聞こえることが多く、緊急の気道確保が必要になることがある。
医学生医学生
救急科の実習で、喉頭蓋炎疑いの患者さんのときにすぐ耳鼻咽喉科の先生が呼ばれていたのを思い出しました。石綿肺のほうで気をつけることはありますか。
ドクタードクター
アスベスト曝露では、石綿肺のほかに胸膜プラーク、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚、肺癌、悪性中皮腫が起こりうる。悪性中皮腫や肺癌は曝露から数十年たって発症することが多いから、職業歴を丁寧に聞くことが大切だ。背部の肺底部でfine cracklesを聴いたら、間質性肺疾患を考え、職業歴まで掘り下げる習慣をつけておこう。

まとめ

副雑音は、狭窄した気道を空気が通る連続性ラ音(高調なwheezes、低調なrhonchi)と、短く途切れる断続性ラ音(fine crackles、coarse crackles)、そして胸膜摩擦音やHamman's crunchなどその他の音に分けて理解します。fine cracklesは線維化で硬くなった末梢気道・肺胞が吸気終末に再開放される細かい音で、石綿肺や特発性肺線維症などの間質性肺疾患に特徴的です。stridorは胸郭外の上気道狭窄、wheezesは気管支喘息、rhonchiは太い気道の分泌物、coarse cracklesは肺水腫や肺炎、friction rubは胸膜炎、Hamman's crunchは縦隔気腫と対応します。音の発生部位と機序から考えれば暗記に頼らず組合せを判断でき、ベッドサイドでの聴診から病変部位を推定する力につながります。

解答・解説

正解はcです

胸部聴診で聴かれる異常音(副雑音)の名称と、それが生じる部位・機序、代表的な疾患を対応させる問題である。 副雑音は、肺・気道から生じる「ラ音(ラッセル音)」と、それ以外の音に大別される。 ・連続性ラ音:一定時間続く楽音様の音。気道が狭くなった部位を空気が通過して生じる。高調な笛のような wheezes(笛音)と、低調でいびきのような rhonchi(いびき音)がある。 ・断続性ラ音:短く途切れる破裂音の集まり。細かく高調な fine crackles(捻髪音)と、粗く低調な coarse crackles(水泡音)がある。 ・その他:胸膜摩擦音(pleural friction rub)、Hamman's crunch(縦隔気腫で心拍に同期して聴かれる音)など。 また、stridor(吸気性喘鳴)は胸郭外の上気道(喉頭・気管上部)の狭窄で生じる高調な連続音である。 各選択肢の組合せについて「その音がどこで、どのような機序で生じるか」を考えれば判断できる。石綿肺はびまん性の間質性肺線維症であり、間質性肺疾患に特徴的な fine crackles を聴取するため、c が正しい組合せである。

選択肢考察

  1. ×a.  COPD ―― stridor

    stridor は、胸郭外の上気道(喉頭や頸部気管)が狭窄したときに主に吸気時に聴かれる高調な喘鳴である。気道異物、急性喉頭蓋炎、クループ、アナフィラキシーによる喉頭浮腫、腫瘍による上気道狭窄などで生じる。COPD(慢性閉塞性肺疾患)は末梢気道病変と肺気腫を主体とする胸郭内の疾患であり、呼吸音の減弱や呼気延長、wheezes や rhonchi を聴取することはあっても、stridor は特徴的な所見ではない。

  2. ×b.  胸膜炎 ―― rhonchi

    rhonchi は比較的太い気道に分泌物が貯留したり気道が狭窄したりすることで生じる低調な連続性ラ音であり、COPD や気管支拡張症、気管支炎などで聴かれる。咳で痰を出すと変化・消失することがある。胸膜炎で特徴的なのは、炎症で粗くなった臓側胸膜と壁側胸膜がこすれ合って生じる胸膜摩擦音(friction rub)である。なお胸水が多量に貯留すると、胸膜同士が離れて摩擦音は消え、呼吸音が減弱する。

  3. ○c.  石綿肺 ―― fine crackles

    石綿肺はアスベスト(石綿)の長期吸入により肺の間質に線維化が生じる塵肺であり、下葉の胸膜直下優位にびまん性の間質性肺線維症を来す。fine crackles(捻髪音)は、線維化で硬くなり呼気時に閉塞していた末梢気道・肺胞が、吸気の後半(吸気終末)に急に再開放されることで生じる、細かく高調な「パリパリ」という音である。特発性肺線維症などの間質性肺疾患に特徴的で、背側の肺底部でよく聴取される。石綿肺でも同様に聴取するため、正しい組合せである。

  4. ×d.  肺水腫 ―― Hamman’s crunch

    Hamman's crunch(Hamman徴候)は、縦隔気腫(縦隔内に空気が漏れ出た状態)で、心臓の拍動に同期して胸骨左縁付近に聴かれる「バリバリ」「ガリガリ」という捻髪様の音である。肺水腫では、肺胞や気道内に漏出した液体の中を空気が通過して生じる、粗く低調な断続性ラ音である coarse crackles(水泡音)を聴取する。

  5. ×e.  気管支喘息 ―― friction rub

    friction rub(胸膜摩擦音)は、炎症で表面が粗くなった胸膜同士がこすれて生じる音で、胸膜炎などで聴かれる(心膜同士がこすれる心膜摩擦音も同じく friction rub と呼ばれ、心膜炎で聴かれる)。気管支喘息では、気道平滑筋の収縮や気道の炎症・浮腫で狭くなった気道を空気が通過することにより、主に呼気時に高調な連続性ラ音である wheezes(笛音)を聴取する。

肺の副雑音の分類と代表疾患

1. ラ音(肺・気道由来) ・連続性ラ音  wheezes(笛音):高調、主に呼気時。細めの気道の狭窄。気管支喘息、COPD など。  rhonchi(いびき音):低調。太い気道の分泌物・狭窄。COPD、気管支拡張症、気管支炎など。 ・断続性ラ音  fine crackles(捻髪音):細かく高調、吸気後半(吸気終末)。間質性肺炎・肺線維症、石綿肺、過敏性肺炎など。  coarse crackles(水泡音):粗く低調、吸気早期から聴かれ呼気にも及ぶことがある。肺水腫、細菌性肺炎、気管支拡張症など。 2. その他の副雑音 ・胸膜摩擦音(pleural friction rub):胸膜炎。吸気・呼気の両相で聴かれ、咳で変化しない。 ・Hamman's crunch:縦隔気腫。心拍に同期する。

上気道由来の音

・stridor(吸気性喘鳴):胸郭外の上気道狭窄で、主に吸気時に聴かれる。気道異物、急性喉頭蓋炎、クループ、喉頭浮腫など。聴診器を用いなくても聴取できることが多く、緊急の気道確保を要する場合がある。

石綿関連疾患

アスベスト曝露では、石綿肺のほか、胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚、肺癌、悪性中皮腫が起こりうる。悪性中皮腫や肺癌は曝露から数十年の潜伏期を経て発症することが多い。

POINT

・fine crackles(捻髪音)=吸気終末の細かい断続音=間質性肺疾患(石綿肺、肺線維症など)。 ・coarse crackles(水泡音)=肺水腫・肺炎。 ・wheezes=気管支喘息、rhonchi=太い気道の分泌物(COPD など)。 ・stridor=胸郭外の上気道狭窄(異物、喉頭蓋炎、喉頭浮腫)。 ・胸膜摩擦音=胸膜炎、Hamman's crunch=縦隔気腫。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。