StudyMed医師国家試験

「受けるべき」か「受けてもよい」か―予防接種法の定期接種をA類・B類で読み解く

第116回医師国家試験 C問題 第29問

国試問題にチャレンジ

第116回 C問題 第29問

予防接種法に規定されている定期接種について正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.1類疾病と2類疾病がある。
  2. b.実施主体は都道府県である。
  3. c.接種費用が公費で負担される。
  4. d.医師は副反応を疑う症状を知った時に報告する義務がある。
  5. e.すべての対象疾病について,接種対象者には接種の努力義務がある。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は予防接種法に基づく定期接種の仕組みを問う問題だ。押さえるべき軸は、疾病の分類、実施主体、費用負担、副反応疑い報告、努力義務の5つ。一つずつ整理していこう。まず、定期接種の対象疾病はどう分類されているかな。
医学生医学生
1類と2類があったと思います。感染症法でも1類から5類までありましたし。
ドクタードクター
そこが典型的な混同ポイントだね。かつての予防接種法では「一類疾病」「二類疾病」と呼ばれていたけれど、2013年の法改正で「A類疾病」「B類疾病」に名称が変わった。1類〜5類という数字の分類は感染症法のものだ。法律ごとに分類の呼び方が違う点に注意しよう。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、感染症法と予防接種法の分類を表にまとめた覚えがあります。A類とB類の違いは何でしたか。
ドクタードクター
目的の違いだね。A類は集団予防、つまり社会全体での発生やまん延の防止と、重篤な疾患の予防が主な目的。麻疹、風疹、百日咳、ポリオ、BCGなど小児期の接種の多くがここに入る。B類は主に個人の発病や重症化の予防が目的で、高齢者のインフルエンザや肺炎球菌感染症などが代表だ。
医学生医学生
実施主体はどこでしょうか。都道府県が予防接種の計画を立てていそうなイメージです。
ドクタードクター
定期接種の実施主体は市町村だよ。対象者への通知や接種勧奨、地域の医療機関との委託契約など、住民に身近な市町村が担っている。小児科の実習で、母子手帳と一緒に市町村から届く予診票を持ってくる親御さんを見なかったかな。
医学生医学生
見ました。確かに市の名前が入った予診票でした。都道府県が出てくるのは臨時接種のほうでしたっけ。
ドクタードクター
そう、まん延防止上緊急の必要がある臨時接種では都道府県知事が実施主体になる場合がある。でも定期接種は市町村だ。次に費用はどうだろう。
医学生医学生
定期接種は公費ですよね。ただ、祖母がインフルエンザワクチンでお金を払っていた気がします。
ドクタードクター
いい気づきだね。定期接種の費用は公費で負担されるのが原則で、A類は原則として自己負担なし。B類は一部自己負担とする市町村が多いけれど、公費で負担されていることに変わりはない。だから「接種費用が公費で負担される」は正しい。
医学生医学生
副反応の報告義務についてはどうですか。因果関係がはっきりしないと報告しにくい気がします。
ドクタードクター
そこが大事なところだ。予防接種法では、医師などが定期接種を受けた人に省令で定める症状、たとえばアナフィラキシーやけいれんなどが一定期間内に生じたことを知ったときは、厚生労働大臣に報告する義務がある。これを副反応疑い報告といって、実務上はPMDAに提出する。因果関係が確定していなくても「疑い」の段階で報告するのがポイントだよ。
医学生医学生
疑いの段階で集めるからこそ、まれな副反応のシグナルを早く拾えるわけですね。では、努力義務はすべての疾病にあるのでしょうか。
ドクタードクター
いいえ、努力義務が課されるのはA類疾病だけだ。小児では保護者に努力義務がある。B類は個人予防が主目的なので努力義務はなく、本人の判断で受ける。市町村による接種勧奨もA類が対象だよ。だから「すべての対象疾病について努力義務がある」は誤りになる。
医学生医学生
まとめると、名称はA類・B類、実施主体は市町村、費用は公費、医師には副反応疑い報告の義務、努力義務はA類だけ、ということですね。
ドクタードクター
その通り。最後に発展知識を補っておこう。B類には近年、新型コロナウイルス感染症や帯状疱疹が加わっている。また、法に基づかない任意接種、たとえばおたふくかぜワクチンや定期接種の対象年齢外の接種もある。定期接種による健康被害は予防接種法の救済制度の対象だけど、任意接種の健康被害は医薬品副作用被害救済制度の対象になる、という違いも試験でよく問われるよ。
医学生医学生
外来で接種を勧めるときも、定期か任意かで費用や救済が変わると説明できないといけませんね。
ドクタードクター
そうだね。保護者や高齢の患者さんは費用や副反応を心配することが多いから、制度を正しく説明できることは臨床医にとって大切なスキルなんだ。

まとめ

予防接種法に基づく定期接種の対象疾病は、集団予防や重篤疾患の予防を目的とするA類疾病と、個人予防を主目的とするB類疾病に分けられ、1類〜5類という分類は感染症法のものです。定期接種の実施主体は市町村で、費用は公費で負担され(A類は原則無料、B類は一部自己負担が多い)、接種の努力義務と接種勧奨はA類のみに適用されます。医師は定期接種後に省令で定める症状を知ったとき、因果関係が不明でも厚生労働大臣へ副反応疑い報告を行う義務があり、これが安全性監視の基盤となっています。任意接種の健康被害は医薬品副作用被害救済制度の対象となるなど、定期接種との違いも重要です。制度の仕組みを理解しておくことは、患者や保護者に接種の意義・費用・安全性を説明する臨床の場面で直接役立ちます。

解答・解説

正解はc, dです

予防接種法に基づく定期接種の仕組み(疾病の分類、実施主体、費用負担、副反応疑い報告、努力義務)を問う問題である。 予防接種法の予防接種には、定期接種(対象疾病・対象年齢・接種時期が政令などで定められ、計画的に実施されるもの)と臨時接種(まん延防止上緊急の必要がある場合に行うもの)がある。定期接種の対象疾病は、目的によってA類疾病とB類疾病に分けられる。 ・A類疾病:主に集団予防(社会全体での発生・まん延の防止)や、重篤な疾患の予防を目的とする。接種対象者(小児では保護者)には接種を受ける努力義務がある。 ・B類疾病:主に個人の発病・重症化の予防を目的とし、その積み重ねとして集団予防にも資するもの。努力義務はなく、本人の判断で接種を受ける。 定期接種の実施主体は市町村(市町村長)であり、費用は公費で負担される(A類はほぼ無料、B類は一部自己負担が多い)。また、医師などは定期接種後に副反応を疑う一定の症状を知った場合、厚生労働大臣へ報告する義務を負う。 これらを押さえると、名称(A類・B類)、実施主体(市町村)、努力義務の範囲(A類のみ)が誤りの肢であり、公費負担(c)と副反応疑い報告の義務(d)が正しいとわかる。

選択肢考察

  1. ×a.  1類疾病と2類疾病がある。

    現在の予防接種法では、定期接種の対象疾病は「A類疾病」と「B類疾病」に分類される。2013年の法改正前は「一類疾病」「二類疾病」と呼ばれていたが、名称が改められた。なお「1類〜5類」は感染症法の感染症分類であり、混同しないよう注意が必要である。

  2. ×b.  実施主体は都道府県である。

    定期接種の実施主体は市町村(市町村長)である。住民に身近な市町村が対象者への通知・接種勧奨や接種医療機関との委託契約などを行う。なお臨時接種では都道府県知事が実施主体となる場合があるが、定期接種は市町村である。

  3. ○c.  接種費用が公費で負担される。

    定期接種の費用は市町村が負担し、公費で実施される。A類疾病は原則として自己負担なし(無料)で接種でき、B類疾病は費用の一部を自己負担とする市町村が多い(低所得者などは免除されることがある)。費用の多くは地方交付税によって財源措置されている。

  4. ○d.  医師は副反応を疑う症状を知った時に報告する義務がある。

    予防接種法第12条により、病院・診療所の開設者または医師は、定期接種(および臨時接種)を受けた者に、厚生労働省令で定める症状(例:アナフィラキシー、けいれんなど、接種後の一定期間内に生じたもの)が生じたことを知ったときは、厚生労働大臣に報告しなければならない(副反応疑い報告。実務上は医薬品医療機器総合機構〈PMDA〉へ提出する)。因果関係が確定していなくても「疑い」の段階で報告する点が重要である。

  5. ×e.  すべての対象疾病について,接種対象者には接種の努力義務がある。

    接種の努力義務が課されるのはA類疾病のみである。B類疾病(高齢者のインフルエンザ・肺炎球菌感染症など)は個人予防を主目的とするため努力義務はなく、本人の希望に基づいて接種する。また、市町村による接種勧奨もA類疾病に対して行われる。

定期接種の主な対象疾病

・A類疾病:ジフテリア、百日咳、急性灰白髄炎(ポリオ)、破傷風、麻疹、風疹、日本脳炎、結核(BCG)、Hib(インフルエンザ菌b型)感染症、小児の肺炎球菌感染症、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症、水痘、B型肝炎、ロタウイルス感染症など ・B類疾病:高齢者などのインフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症、新型コロナウイルス感染症(2024年度から)、帯状疱疹(2025年度から)など

A類とB類の比較

・目的:A類は集団予防・重篤疾患の予防/B類は個人予防が主 ・努力義務:A類はあり/B類はなし ・接種勧奨:A類はあり/B類はなし ・費用:いずれも公費(A類はほぼ無料、B類は一部自己負担が多い) ・健康被害救済:いずれも予防接種法に基づく救済制度の対象(給付水準はA類の方が手厚い)

予防接種の種類

・定期接種:予防接種法に基づき、市町村が実施 ・臨時接種:まん延予防上緊急の必要があるとき、都道府県知事または市町村長が実施(新型コロナワクチンの特例臨時接種など) ・任意接種:法に基づかない接種(定期接種の対象年齢外の接種、おたふくかぜワクチンなど)。健康被害は医薬品副作用被害救済制度の対象となる。

副反応疑い報告制度

医師などが報告した情報は厚生労働省・PMDAで集約・評価され、審議会で安全性が検討される。

POINT

・定期接種の対象疾病はA類・B類(1類〜5類は感染症法の分類)。 ・実施主体は市町村、費用は公費(B類は一部自己負担あり)。 ・努力義務・接種勧奨があるのはA類のみ。 ・医師は副反応を疑う症状を知ったら厚生労働大臣へ報告する義務がある(予防接種法第12条)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。