「誰が、どこで、誰に」―積極的疫学調査は感染の鎖を断つための聞き取りだ
第120回医師国家試験 F問題 第3問
国試問題にチャレンジ
積極的疫学調査の目的はどれか。
- a.ワクチン接種を普及すること。
- b.感染症の新たな治療薬を開発すること。
- c.個々の症例の診断を迅速に確定すること。
- d.医療機関における医療費の削減を図ること。
- e.感染者拡大阻止のために感染経路を特定すること。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生まとめ
積極的疫学調査は感染症法第15条に基づき、主に保健所が行う調査で、患者や接触者の行動歴・接触歴を能動的に聞き取って感染源・感染経路・接触者を明らかにし、二次感染とまん延を防ぐことを目的とします。個々の患者の診断確定は医療機関の役割であり、ワクチン普及、治療薬開発、医療費削減も調査の目的ではありません。調査結果を受けて接触者への検査、健康観察、緊急予防接種などの措置が講じられる点は、目的と手段を区別して理解しておくことが大切です。医師からの届出をもとに継続的に情報を集めるサーベイランスとの違いも押さえておきましょう。臨床医は届出と保健所への情報提供を通じてこの仕組みを支える一員であり、その意義を理解することが地域の感染対策に直結します。
解答・解説
正解はeです
積極的疫学調査とは、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)第15条に基づき、都道府県知事等(実務上は主に保健所)が行う調査である。感染症の発生を受けて、行政側から能動的に(積極的に)患者や関係者に聞き取りなどを行う点が特徴である。 調査の対象は、感染症の患者・疑似症患者・無症状病原体保有者、その家族や接触者などである。発症前後の行動歴、飲食歴、接触した人や場所などを把握することで、 ・感染源(どこから感染したか) ・感染経路(どのように広がったか) ・接触者(誰に感染させた可能性があるか) を明らかにする。その結果をもとに、接触者への検査や健康観察、消毒、施設への指導などの措置を講じ、二次感染と感染の拡大(まん延)を防ぐことが目的である。 つまり積極的疫学調査は、目の前の個々の患者を治療・診断するための行為ではなく、集団への感染拡大を阻止するための公衆衛生上の調査である。この位置づけを押さえれば、選択肢のうち目的に合致するのは「感染者拡大阻止のために感染経路を特定すること」と判断できる。
選択肢考察
- ×a. ワクチン接種を普及すること。
ワクチン接種の推進は、予防接種法に基づく感染症の一次予防施策として重要であるが、積極的疫学調査の目的ではない。調査の結果として、接触者への緊急的な予防接種などの対策につながる場合はあるものの、それは調査結果を受けて講じる措置の一つであり、調査そのものの目的はあくまで感染源・感染経路・接触者の把握によるまん延防止である。
- ×b. 感染症の新たな治療薬を開発すること。
新しい治療薬の開発は、基礎研究や臨床試験(治験)によって行われる研究開発の領域である。積極的疫学調査は保健所等の行政機関が感染拡大を防ぐために行う調査であり、治療薬の開発を目的としていない。
- ×c. 個々の症例の診断を迅速に確定すること。
個々の患者の診断の確定は、診察や検査を通じて医師・医療機関が行うものである。積極的疫学調査は、診断が確定した患者(あるいは疑い例)を起点として、その周囲の接触者や感染源を追跡し、感染の広がりを把握・阻止するために行われる。調査の過程で接触者に検査を行うことはあるが、目的は個々の診断ではなく、集団への拡大防止である。
- ×d. 医療機関における医療費の削減を図ること。
医療費の削減は医療保険制度や医療提供体制の運営上の課題であり、積極的疫学調査とは関係がない。結果的に感染拡大が防がれれば社会全体の医療負担が軽減されることはありうるが、それは調査の目的ではない。
- ○e. 感染者拡大阻止のために感染経路を特定すること。
積極的疫学調査は、感染症法第15条に基づき、患者や接触者の行動歴・接触歴などを調べて感染源と感染経路を明らかにし、接触者を特定するものである。特定した接触者に対して検査や健康観察、外出自粛の要請などを行うことで、二次感染を防ぎ、感染の拡大(まん延)を阻止する。本選択肢はこの目的を正しく表している。
感染症法第15条の概要
都道府県知事(保健所設置市・特別区の長を含む)は、感染症の発生を予防し、またはその発生の状況、動向および原因を明らかにするため必要があると認めるときは、職員に感染症の患者等に質問させ、または必要な調査をさせることができる。厚生労働大臣も、必要に応じて同様の調査を行うことができる。調査には、検体の提出を求めることも含まれる。
調査の主な内容
・患者の基本情報、症状、発症日 ・発症前(潜伏期間に相当する期間)の行動歴、飲食歴、渡航歴:感染源の推定 ・感染可能期間中の行動と接触者:二次感染のリスク評価 ・接触者への検査、健康観察、予防内服や予防接種の検討
調査が行われる代表的な場面
結核の接触者健診、食中毒や腸管出血性大腸菌感染症の集団発生、麻疹の発生、新型インフルエンザ等感染症の発生初期など。新型コロナウイルス感染症の流行時には、クラスター(患者集団)の把握に用いられた。
感染症サーベイランスとの違い
感染症発生動向調査(サーベイランス)は、医師からの届出などをもとに感染症の発生状況を継続的に収集・分析・公表する仕組みであり、いわば受動的に情報を集めるものである。これに対し、積極的疫学調査は、個別の発生事例を起点に行政が能動的に関係者へ調査を行う点が異なる。
POINT
・積極的疫学調査の根拠法は感染症法第15条であり、主に保健所が実施する。 ・目的は、患者の行動歴や接触者を調べて感染源・感染経路を特定し、二次感染の防止とまん延防止を図ることである。 ・個々の患者の診断・治療、ワクチン普及、治療薬開発、医療費削減は目的ではない。
